制度ガイド

認知症の行方不明に備える|川崎市SOSネットワーク

認知症の親が行方不明になったとき家族がまず何をすべきかと、川崎市の認知症等行方不明SOSネットワーク(区役所や地域包括支援センターでの事前登録、24時間365日対応のコールセンター)の仕組みを解説します。海外在住家族が事前にできる登録の段取りも紹介します。

公開日
2026-07-11
最終更新日
2026-07-11
情報確認日
2026-07-11
出典
7件の一次情報・公的情報

認知症の親が行方不明になったとき家族がまず何をすべきかと、川崎市の認知症等行方不明SOSネットワーク(区役所や地域包括支援センターでの事前登録、24時間365日対応のコールセンター)の仕組みを解説します。海外在住家族が事前にできる登録の段取りも紹介します。

初動対応

まずすべき初動

認知症の親の姿が見当たらないと気づいた瞬間、多くの家族は「もう少し待てば戻るかもしれない」とためらいます。しかし認知症による行方不明は、時間が経つほど発見が難しくなり、真夏や真冬には命に関わる事態にもつながります。姿が見えなくなってから探し始めるまでの時間を短くすることが、なによりの安全策です。

近所を軽く探しても見つからない場合は、ためらわずに110番で警察へ届け出ます。「まだ大げさかもしれない」と迷う家族は多いですが、警察は認知症による行方不明を日常的に扱っており、届け出自体に費用や手続き上の負担はありません。あわせて、担当の地域包括支援センターや区役所の高齢・障害課にも連絡すると、地域の見守りネットワークを通じた情報共有につながります。地域包括支援センターの役割は、日頃の相談だけでなく、こうした緊急時の連絡先としても機能します。

警察に届け出るときに伝えると探しやすくなる情報

110番で届け出る際、家族が落ち着いて答えられるよう、事前にいくつかの情報を頭の中で整理しておくと発見までの時間が短くなります。具体的には、最後に姿を見た時刻と場所、着ていた服の色や特徴、普段よく行く場所(昔住んでいた家、よく通った駅や店など)、持病の有無、そして本人の年齢・身長・体格のおおよそです。認知症の症状が進んでいると、行き先が現在の生活圏から離れ、若い頃の記憶に基づく場所になっていることも珍しくありません。この視点をあらかじめ家族間で共有しておくと、警察や地域包括支援センターへの説明がスムーズになり、SOSネットワークへの事前登録がない場合でも初動の質を上げることができます。

事前登録の有無で変わる初動の速さ

事前にSOSネットワークへ登録していれば、警察や地域包括支援センターへの連絡と同時に、あらかじめ登録された写真・身体的特徴・よく行く場所などの情報がすぐに共有されます。登録がない場合、家族は行方不明になった直後に慌てて写真を探し、特徴を口頭で説明することになり、その分だけ初動が遅れます。事前登録は「使わずに済めば一番よい保険」と捉えておくと、気持ちの負担も減ります。

全国で年間1万7000人規模ある行方不明届け出

警察庁の統計によると、令和6年(2024年)中に警察へ届け出があった行方不明者のうち認知症を原因とするものは1万8,121人にのぼり、令和7年(2025年)は1万7,345人と前年より減少したものの、依然として高い水準が続いています。行方不明後に所在が確認された人が大半を占める一方、亡くなった状態で発見される例も一定数あり、早期の発見が生死を分ける場面があることを示しています。これは特別な家庭だけに起きることではなく、認知症の親を持つ家庭であればどこでも起こりうる備えの対象だと考えておくのが実際的です。

季節による危険度の違い

真夏の炎天下や真冬の冷え込みの中で行方不明の時間が長引くと、熱中症や低体温症のリスクが一気に高まります。夏場は日中の暑い時間帯に外出しがちな認知症の親が屋外で長時間発見されないと命に関わるおそれがあり、冬場は夜間の冷え込みが同様の危険を生みます。熱中症・ヒートショックへの備えともあわせて、季節ごとにリスクの質が変わることを家族で共有しておくと、発見までの初動がより慎重になります。

制度の違い

認知症等行方不明SOSネットワークとは

川崎市の「認知症等行方不明SOSネットワーク」は、認知症等により行方不明になるおそれのある高齢者について、あらかじめ本人の写真(全身・顔)と特徴を登録しておき、実際に行方不明になった際、家族からの届け出をもとに、24時間365日対応のコールセンターを通じて区役所・地域包括支援センター・警察署などの関係機関に情報を共有する仕組みです。登録者にはあわせて「SOSネームプリント」という、衣類等に貼り付けられる名前印刷シールが無料で作成・配布されます。登録は各区役所の高齢・障害課、または担当地区の地域包括支援センターで受け付けており、申請書と写真の提出から登録完了までにおおむね2〜3週間程度かかります。

携帯型緊急通報システムのGPS機能とは

一方、居場所そのものをGPSで確認したい場合は、SOSネットワークとは別の制度である「高齢者等緊急通報システム事業(携帯型)」への申し込みが必要です。専用端末に位置情報検索機能が搭載されており、家族が端末を通じて本人の居場所を確認できます。対象者は3つの区分に分かれ、(1)65歳以上で心臓疾患・高血圧等の慢性疾患等により日常生活に注意を要するひとり暮らし等の高齢者、(2)75歳以上のひとり暮らしの高齢者、(3)認知症による行方不明のため生命に危険の可能性がある65歳以上の方、または若年性認知症で要介護1〜5の認定を受けている方、のいずれかに当てはまれば申し込めます。利用料は所得に応じて月額0円から2,070円です。申し込みは地域包括支援センターまたは区役所で受け付けています。(3)の区分にあるとおり、単に認知症の診断を受けているだけでなく「行方不明による生命の危険の可能性」が要件に含まれるため、対象に当てはまるか迷う場合は窓口で個別に確認するのが確実です。

終了した徘徊高齢者発見システムに注意

以前は「徘徊高齢者発見システム」という別の制度もありましたが、令和6年3月31日をもって事業が終了しています。インターネット上には終了前の情報を載せたままの記事やページが残っていることがあるため、現在GPSで位置情報を確認したい場合は、上記の携帯型緊急通報システムが後継にあたる制度だと理解しておくと混乱しません。制度名や運用は見直されることがあるため、申し込み前に必ず川崎市公式サイトまたは各区の窓口で最新の内容を確認してください。

2つの制度の併用可否

SOSネットワークへの事前登録と、携帯型緊急通報システムのGPS機能は、それぞれ別の制度ですが併用が可能です。SOSネットワークは「行方不明になった後、地域全体で早く見つけてもらうための情報共有の仕組み」、緊急通報システムのGPSは「家族が自分で居場所を確認するための道具」という役割の違いがあります。両方を組み合わせておくことで、家族自身がまず位置を確認し、見つからなければSOSネットワークを通じた地域での捜索に切り替える、という二段構えの備えができます。

決め方

登録すべき人の目安

過去に一度でも道に迷った、外出先から自力で帰れなくなった、夜間に家を出ようとしたことがある、といった経験がある場合は、SOSネットワークへの事前登録を検討する目安になります。まだ一度もそうした様子がない場合でも、認知症の診断を受けている、もしくは物忘れが増えて外出時の見当識に不安があるようであれば、症状が進む前に登録しておくと、いざというときに慌てずに済みます。夜間の外出への不安が強い家庭では、夜間の見守りをどう組み立てるかという視点もあわせて検討すると備えの抜けが減ります。

申請の流れと窓口

登録の流れは、まず担当地区の地域包括支援センターまたは区役所高齢・障害課に相談し、「認知症等行方不明SOSネットワーク事前登録届」に必要事項を記入します。あわせて本人の全身写真と顔写真を用意して提出します。写真は普段の服装・髪型が分かるものが望ましく、更新のたびに新しい写真に差し替えることもできます。申請から登録完了までは2〜3週間ほどを見込んでおくとよいでしょう。区ごとの高齢・障害課の窓口や、そもそもどこに相談すればよいか分からない場合は、川崎市の介護相談窓口の入口から担当窓口を確認できます。

費用の有無

SOSネットワークへの事前登録そのものに登録料はかかりません。一方、携帯型緊急通報システムのGPS機能を利用する場合は、所得に応じて月額0円から2,070円の利用料が発生します。生活保護受給世帯は無料、市町村民税課税世帯では上限額に近い負担となるなど、所得段階によって金額が変わるため、正確な負担額は申し込み時に窓口で確認するのが確実です。費用面で迷う場合は、まず費用のかからないSOSネットワークの登録から始め、GPSによる位置確認が必要かどうかは本人の外出頻度や不安の大きさを見ながら判断する、という順番で決めている家庭もあります。所得段階は世帯の課税状況によって毎年見直されることがあるため、金額を1度確認して終わりにせず、負担が変わっていないか窓口で定期的に確認しておくと安心です。

海外・遠距離から

帰国前に区役所へ電話一本

海外に住んでいると、親の物忘れが進んでいるらしいと聞いても、実際にどれくらい外出時の不安があるのか把握しづらいものです。一時帰国の予定が決まったら、帰国前に担当地区の地域包括支援センターまたは区役所高齢・障害課へ電話をかけ、SOSネットワークへの事前登録について相談日を予約しておくと、限られた滞在日数の中で手続きを終えやすくなります。登録には写真の提出と2〜3週間の作成期間が必要なため、滞在最終日に慌てて申し込むのではなく、滞在初日〜数日以内に窓口を訪ねるのが現実的です。海外在住家族向けの介護コーディネートガイドでも触れているとおり、一時帰国の日程は事前の電話予約で無駄なく使うことができます。

国内の家族・近隣との情報共有

登録が完了したら、国内に住む他の家族や、日頃から親と顔を合わせる近隣住民・民生委員にも、SOSネットワークに登録済みであることと、緊急時の連絡先(コールセンターや担当窓口の番号)を共有しておきます。海外にいる家族だけが登録の事実を知っていても、実際に行方不明になったときに国内の家族がすぐに動けなければ意味が薄れます。役割分担については遠距離介護のガイドでも扱っているとおり、「誰が最初に気づき」「誰が警察に届け出て」「誰が窓口に連絡するか」を事前に決めておくと、実際の場面で迷いません。

制度名・窓口・電話番号を添えた情報共有

海外在住家族が国内の家族から「登録は済んだ」とだけ聞いても、実際にどの制度に登録され、どの窓口が担当なのかまでは分からないままになりがちです。登録が完了したら、担当窓口の名称・電話番号・登録した制度名(SOSネットワークか、GPS付きの緊急通報システムか、あるいは両方か)を簡単な一覧にして、海外にいる家族にも共有しておくと安心です。緊急時に自分が何をすればいいか分からないまま連絡を待つより、あらかじめ流れを知っておく方が、いざというときに落ち着いて動けます。

認知症の進行に応じた備えの見直し

認知症は状態が固定されたものではなく、時間とともに変化します。登録時点では外出に大きな不安がなくても、半年後・1年後には状況が変わっていることがあります。一時帰国のたびに、写真を最新のものに更新する必要がないか、携帯型緊急通報システムのGPS機能が必要な段階に入っていないかを、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに確認しておくとよいでしょう。在宅介護の限界の見極め方老老介護で介護者が倒れたときの初動とあわせて、行方不明への備えも定期的に見直す項目の1つとして扱うと、備えの漏れが減ります。

比較表

違いが出やすいところを、表の形でまとめます。

誰が行方不明になったか取るべき初動使える制度・窓口
初めて外出先から帰れなくなった近隣を軽く確認後、速やかに110番。同時に地域包括支援センターへ連絡認知症等行方不明SOSネットワーク(未登録でも警察届出は可能)
過去にも道に迷った経験がある110番と同時に、登録済みの特徴情報の共有を依頼SOSネットワーク(事前登録済みなら情報共有が早い)
夜間に家を出ようとする様子が続く日中のうちに区役所・地域包括支援センターへ相談し、登録とGPS利用の両方を検討SOSネットワーク+高齢者等緊急通報システム(携帯型・GPS)
海外在住家族が状況を把握しきれていない一時帰国前に窓口へ電話予約し、滞在中に登録手続きを進めるSOSネットワーク事前登録/国内家族との役割分担の取り決め

よくある質問

SOSネットワークへの登録に費用はかかりますか?

登録自体に費用はかかりません。無料で申請書の提出と写真の登録ができ、SOSネームプリントも無料で作成・配布されます。別途、居場所をGPSで確認したい場合は、携帯型緊急通報システムの利用料(所得に応じて月額0円〜2,070円)が発生します。

登録の申請から完了まで、どのくらいの期間がかかりますか?

申請書と本人の写真を担当窓口に提出してから、登録完了までおおむね2〜3週間程度かかります。行方不明を経験してから慌てて申請せず、余裕を持って早めに手続きを進めることが大切です。

GPSで居場所を確認したいのですが、SOSネットワークに登録すれば分かりますか?

SOSネットワークへの登録だけでは、家族が自分でリアルタイムに居場所を確認することはできません。GPSによる位置情報の確認には、別制度である高齢者等緊急通報システム(携帯型)への申し込みが必要です。2つの制度は併用できます。

以前あった「徘徊高齢者発見システム」は今も使えますか?

徘徊高齢者発見システムは令和6年3月31日をもって事業を終了しています。現在GPSで位置情報を確認したい場合は、後継にあたる携帯型の高齢者等緊急通報システムへの申し込みが必要です。

認知症の親がまだ一度も行方不明になったことがない場合でも登録した方がよいですか?

一度も経験がなくても、認知症の診断を受けている、または外出時の見当識に不安がある場合は、症状が進む前に事前登録しておくことをおすすめします。登録は保険と同じで、使わずに済めば一番よい備えになります。

海外在住でも、親の代わりに登録手続きを進められますか?

登録は本人または家族が窓口で相談のうえ進める形になります。海外在住の場合は、一時帰国のタイミングに合わせて事前に窓口へ電話で相談日を予約し、滞在中に写真の提出まで済ませておくと手続きがスムーズです。

コールセンターは何時に連絡すればつながりますか?

認知症等行方不明SOSネットワークのコールセンターは24時間365日対応です。行方不明に気づいた時間帯を問わず連絡できますが、まず110番で警察へ届け出ることが優先されます。

一次情報・公的情報

本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-11.

この記事について

この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。

あわせて読みたい

関連するガイドとサービス

地域包括支援センターとは

介護の最初の相談先になる地域包括支援センターについて、役割、探し方、相談前に準備する情報を紹介します。

川崎市の介護相談窓口|地域包括支援センターの使い方

川崎市で親の介護を相談する最初の窓口は、住まいの地区を担当する地域包括支援センターです。市内49か所あるセンターの調べ方と、区役所高齢・障害課、社会福祉協議会との役割分担を、初動の順番で整理しました。

海外から日本の親を支える方法

海外にいながら日本の親御さんを支えるには、現地の見守り体制づくりが鍵になります。最初の現地確認、介護保険の手続き、時差のある家族連絡の進め方をまとめました。

遠距離介護の進め方

離れて暮らす親の介護は、体制づくりで負担が大きく変わります。最初の一歩、現地の連携先の見つけ方、帰省をムダにしない使い方まで、遠距離介護の進め方を解説します。

認知症の在宅介護と限界の見極め

認知症の親を在宅で支える家族へ。介護の限界サインのチェックリスト、訪問介護・認知症デイで頼めること、公的相談窓口、海外から遠隔で備える方法を実額とともに整理しました。

老老介護と共倒れ|介護していた親が倒れたとき

65歳以上同士の「老老介護」は世帯の63.5%を占め、介護していた親が倒れると残された要介護の親の生活が一気に立ち行かなくなります。入院対応と並行して動かせる、最初の72時間の手順を整理しました。