主治医意見書は要介護認定の判定材料になる医師の意見書です。記載内容とかかりつけ医がいない場合の対応、海外在住家族が事前にできる準備を整理しました。
制度の基本
主治医意見書とは何か
主治医意見書(ja: 主治医意見書/romaji: shujii ikensho/en: doctor's opinion)は、要介護認定の申請を受けた市区町村が、申請者の主治医に対して直接作成を依頼する書類です。申請者本人や家族が用紙を入手して医師に持ち込む形式ではなく、申請時に記入した「かかりつけ医の氏名・医療機関名」をもとに、自治体から医師へ照会が行われます。家族がこの書類そのものを追いかける必要はほとんどありませんが、医師が何を根拠に記入するかを知っておくと、認定結果の見え方が変わります。
意見書には、心身の状態や病歴、日常生活の自立度、今後の見通しなどが記載されます。これは訪問調査員が本人・家族から聞き取る74項目の調査結果と並ぶ、判定のもう一方の柱です。訪問調査が「暮らしの実態」を映すのに対し、主治医意見書は「医学的な裏づけ」を映す役割を持ちます。
40〜64歳で申請する場合の特定疾病との関係
65歳以上(第1号被保険者)は原因を問わず要介護認定を申請できますが、40〜64歳(第2号被保険者)が申請する場合は、加齢に伴う16種類の特定疾病のいずれかに該当することが条件になります。この年代の申請では、主治医意見書に記載される傷病名がその特定疾病に該当するかどうかが、認定の入口として重要な意味を持ちます。該当するかどうか判断がつかない場合は、まずかかりつけ医や自治体の窓口に相談するのが確実です。
認定プロセスでの役割
要介護認定は、訪問調査の結果をコンピュータ処理する一次判定と、保健・医療・福祉の専門家で構成する介護認定審査会が行う二次判定の二段階で進みます。主治医意見書は一次判定の入力データの一部になるとともに、二次判定では訪問調査だけでは見えにくい病状の背景(進行性か安定しているか、特別な医療的管理が必要かなど)を審査会が確認する材料になります。訪問調査の結果と意見書の内容に大きな食い違いがある場合、審査会がその整合性を検討したうえで最終区分を決めます。
認定結果がどのように要支援・要介護の区分へつながるかは、要介護認定と介護度のガイドで整理しています。意見書だけでなく訪問調査や日常生活の困りごとを合わせて見ると、結果通知を受け取った後のサービス選びも判断しやすくなります。
意見書の中身
記載される主な項目
主治医意見書には、一般的に次のような項目が含まれます。傷病名と経過、生活機能の低下の直接的な原因、認知症の中核症状・行動心理症状の有無、麻痺や関節の拘縮といった身体状況、褥瘡(じょくそう)や特別な医療処置の必要性、日常生活の自立度に関する医師の所見などです。様式や記載の詳細は年度により見直されることがあるため、最新の様式は厚生労働省または居住地の自治体の案内で確認するのが確実です。
家族にとって実務的に重要なのは、「本人の申告だけでは伝わりにくい変化」を医師がどこまで把握しているかです。物忘れの進行、転倒の頻度、食欲や睡眠の変化などは、日常的に近くで見ていないと医師にも伝わりにくい情報です。
かかりつけ医がいない場合の対応
日本国内にかかりつけ医がいない、あるいは受診歴が浅い場合は、市区町村が指定する医師(いわゆる指定医)の診察を受けて意見書を作成してもらう仕組みが用意されています。海外からの呼び寄せや長期間受診が途切れていたケースでは、まず地域包括支援センターや申請窓口に相談し、指定医の案内を受けるのが近道です。継続的にかかりつけ医を持っておくことは、意見書の精度だけでなく、今後の医療的な相談全般にとっても役立ちます。
海外・遠距離から
受診に同席できないときの情報の届け方
海外在住や遠距離居住のために、本人の受診や認定調査に立ち会えない家族は少なくありません。この場合でも、事前に情報を整理して医師や自治体窓口に伝える方法はあります。具体的には、最近の生活の変化(転倒の有無、服薬の管理状況、外出頻度、会話のかみ合い方など)を日付つきでメモにまとめ、国内にいる親族や、受診に同行できる人を通じて医師に共有する方法が現実的です。電話やオンライン面談での相談を受け付けている医療機関もあるため、事前に医療機関へ問い合わせておくと安心です。
医師が把握している情報が薄いと、意見書の内容も本人の状態を十分に反映しないまま作成されてしまうことがあります。海外にいるからこそ、直近の変化を言葉にして残しておく作業が、離れていてもできる具体的な備えになります。
一時帰国のタイミングで受診に同行できる場合は、その診察でまとまった時間を取ってもらい、直近数か月の変化を医師に直接説明しておくと、その後の意見書作成にも活きてきます。一時帰国の予定が立てにくい場合は、国内の親族に付き添いを依頼し、伝えたい内容を事前にメモとして渡しておく方法も現実的です。
国内に頼れる親族がいない場合
同席を頼める親族が国内にいない場合は、地域包括支援センターに相談する方法があります。地域包括支援センターは、要介護認定の申請前後を含めた高齢者の生活相談全般を受け付けており、認定調査や意見書作成にあたって家族がどう関わればよいか、地域の実情に応じた案内をしてくれます。海外在住であることを最初に伝えておくと、そのうえでの現実的な進め方を一緒に考えてもらいやすくなります。
親が日本語での聞き取りにうまく答えられない可能性がある場合は、認定調査の日程調整の段階で通訳の同席が可能か相談しておく方法もあります。対応は自治体や調査を担当する事業者によって異なるため、まずは申請窓口に「言葉の面で不安がある」と伝えておくことが最初の一歩になります。
言葉の問題だけでなく、日本での暮らしに慣れていないことで、聞き取りの場でうまく説明できないケースもあります。日ごろの生活で困っていることを、日付つきの簡単なメモにまとめておき、調査当日に渡せるようにしておくと、本人の自己申告だけに頼らずに実態を伝えやすくなります。
認定調査とあわせて準備しておきたいこと
主治医意見書と並行して行われる訪問調査についても、家族の立ち会いが判定の精度に影響します。立ち会えない場合は、国内の親族に代理での同席を依頼するか、日ごろの困りごとを記録した資料を事前に渡しておく方法があります。かかりつけ医の連絡先や最終受診日、服薬内容を一枚にまとめておくと、申請窓口とのやり取りも滞りにくくなります。
誤解と関連制度
意見書だけで区分が決まるわけではない
主治医意見書は判定材料の一つであり、これだけで要介護度が確定するわけではありません。訪問調査の結果との組み合わせで一次判定が出て、その後の二次判定で審査会が総合的に区分を決めます。医師の記載内容が重いからといって必ず重い区分になるとは限らず、逆に調査結果が実態を的確に反映していれば、意見書の記載が簡潔でも妥当な区分に至ることがあります。個別の判定結果についての疑問は、担当のケアマネジャーや自治体の窓口に確認するのが確実です。
更新・区分変更のときも同じ流れ
認定には有効期間があり、更新申請や状態変化にともなう区分変更の申請でも、同様に主治医意見書が新しく作成されます。前回と担当医が変わっている場合や、転居で医療機関が変わった場合は、申請時に記入するかかりつけ医情報を最新の状態にしておく必要があります。更新の時期が近づくと自治体から案内が届くのが一般的ですが、海外在住の家族が郵便物を直接受け取れないことも多いため、国内の親族や見守りサービスと連携して更新のタイミングを見逃さない工夫をしておくと安心です。
かかりつけ医自身が高齢で診療を続けられなくなったり、担当を引き継いだりする場合も起こり得ます。長く付き合ってきた医師が変わると、それまで積み重ねてきた病状の経過が新しい医師に十分伝わらないことがあるため、引き継ぎのタイミングでは、これまでの経過をまとめた資料を渡しておくと、次の意見書作成にも役立ちます。
比較表
検討の材料になるよう、違いを表で整理しました。
| 比較項目 | 主治医意見書 | 認定調査(訪問調査) |
|---|---|---|
| 作成者 | かかりつけ医(またはいなければ指定医) | 市区町村の調査員 |
| 依頼のタイミング | 申請後、市区町村が医師へ直接依頼 | 申請後、日程調整のうえ自宅等を訪問 |
| 主な内容 | 傷病・医学的所見・生活機能低下の原因 | 74項目の聞き取りによる生活動作の実態 |
| 家族が準備すること | 医師への情報共有(体調変化のメモなど) | 立ち会い、または日ごろの困りごとの記録 |
| 判定での役割 | 一次判定の入力+二次判定の医学的背景資料 | 一次判定の主データ |
よくある質問
主治医意見書は家族が用紙を取りに行く必要がありますか
一般的には不要です。申請時に記入したかかりつけ医の情報をもとに、市区町村が医師へ直接作成を依頼します。ただし依頼から作成までに一定の時間がかかるため、申請前にかかりつけ医の連絡先を確認しておくとスムーズです。
かかりつけ医が高齢や海外の病院で、日本の意見書作成に不慣れな場合はどうすればよいですか
日本国内での作成が原則のため、国内に継続的に診てもらえるかかりつけ医がいない場合は、市区町村指定の医師の診察を受ける案内があります。まず地域包括支援センターか申請窓口に相談してください。
主治医意見書の内容に納得できない場合、修正を依頼できますか
記載内容について疑問がある場合は、担当のケアマネジャーや自治体の窓口に相談するのが基本です。個別の医学的判断は医師の領域になるため、必要に応じて医師に直接確認することも検討してください。
認定調査と主治医意見書の内容が食い違うとどうなりますか
二次判定を行う介護認定審査会が、両方の情報を突き合わせて総合的に区分を検討します。食い違いがあるからといって自動的に不利になるわけではなく、審査会が実態に即して判断します。
海外在住の家族が電話やビデオ通話で医師に状況を伝えることはできますか
医療機関によって対応が異なるため一律には言えませんが、事前に電話で相談できるか問い合わせておくと安心です。対応が難しい場合は、国内の親族にメモを託して伝える方法も有効です。
更新のたびに主治医意見書は毎回作成し直されますか
更新申請や区分変更の申請のたびに、その時点の状態に基づいて新しく作成されます。転居や通院先の変更があった場合は、申請時に最新のかかりつけ医情報を記入してください。
40〜64歳の親の場合、主治医意見書の扱いは65歳以上と違いますか
40〜64歳(第2号被保険者)の申請では、加齢に伴う16種類の特定疾病に該当することが条件になります。主治医意見書に記載される傷病名がこの特定疾病に該当するかどうかが認定の入口になるため、該当性に不安がある場合はかかりつけ医や自治体の窓口に早めに相談してください。
一次情報・公的情報
本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-02.
この記事について
この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。
