ダブルケアの実態と負担の構造
「ダブルケア」という名前と実態
幼い子どもと高齢の親の間で板挟みになる状態を、英語ではサンドイッチ世代と呼びます。日本にはダブルケアという言葉があり、公的な調査の裏づけのある社会課題として扱われています。
内閣府の調査は、日本でダブルケアを担う人を約25万人(女性約17万人・男性約8万人)と推計し、30〜40代がそのおよそ8割を占めるとしています。背景は構造的です。出産年齢が上がり、親が長生きするようになり、2つの責任が人生の同じ時期に重なりやすくなっています。もしいまこの状況にあるなら、それは段取りの失敗ではなく、よくある、そして増えている形です。名前をつけることが、一人で抱える漠然とした重さを、対処できる段取りの問題に変える第一歩になります。
単独より重くなる理由
ダブルケアは、育児と介護を単純に足したものではありません。2つの要求が衝突し、合計が和より重くなります。
限られた同じ時間・お金・注意を奪い合い、感情の向きも逆です。子どもは自立へ向かい、親はそこから遠ざかっていきます。危機は示し合わせて来てくれないので、子どもの発熱と親の転倒が同じ週に重なることもあります。内閣府の調査でも負担は偏っており、女性は男性に比べて配偶者から日常的な手助けを得にくく、労働時間を減らしたり離職したりする割合が高くなっています。日本で暮らす外国籍のご家族の場合は、慣れてきた子育ての側にはもうない言語と制度の壁が、介護の側に加わります。衝突をはっきり見ることの意味は、一人で乗り切ろうとするのではなく、使える仕組みと手をすべて使うべきだと分かることにあります。
ダブルケアで疲弊しやすいのは、どちらも「待ってくれない」からです。保育園の呼び出し、学校行事、子どもの発熱、親の通院、ケアマネ面談、認定調査、退院日。どれも日程変更が難しく、しかも平日昼間に集中します。家族の問題というより、2つの制度が別々のカレンダーで動くことが負担を生みます。そこで、最初にするべきことは気合いを入れることではありません。予定を一枚に重ねて、誰がどの時間帯を受け持てるかを見える化することです。
公的支援の活用と予定調整
同時に使う2つの公的な仕組み
日本には、ダブルケアの両端に対応する2つの支援の仕組みがあります。板挟みのご家族は、介護を一人で抱える対象とせず、両方に同時に頼ってよいのです。
最初の相談先も、育児と介護で分けて同じ日に動かします。介護側は地域包括支援センター、担当ケアマネジャー、退院前なら病院の地域連携室です。子育て側は保育園、学童、自治体の子育て支援窓口、ファミリー・サポートです。勤務先には、介護だけ、育児だけ、と切り分けず、同じ週にどの予定が重なるのかを出します。支援者は、それぞれの制度の中では解決策を持っていますが、家族の全体像は見えていません。家族側が一枚の予定表にまとめて渡すことで、支援の組み合わせが作りやすくなります。
相談するときは、困っている気持ちだけを伝えるより、3つの事実をそろえると話が進みます。親の要介護度や認定申請の状況、子どもの年齢と預け先、仕事を休めない曜日や時間帯です。これに、親の通院日、保育園や学校の予定、家族が現地に行ける日、海外家族が連絡できる時間帯を足します。支援を受ける順番は、介護認定を待つあいだの暫定サービス、子どもの一時預かり、勤務先の休暇制度、私費支援の順に並べると、急場と長期の両方を同時に考えられます。
- 介護の側では、親の要介護認定を受け、デイサービス・訪問介護・ショートステイに負担の一部を担ってもらい、無料のケアマネジャーに計画を任せます
- 子育ての側では、保育園・学童・ファミリー・サポートが、介護にも必要になった時間を空けます
- 親のショートステイと一時保育は、すべてが同時に来る週のためにこそあります。レスパイト(介護者の休息)の発想です
- 私費の支援(訪問ヘルパー、ベビーシッター、両側の配食)は、ぜいたくではなく「乗り切るための買い物」と考えます
同じ週にぶつかる予定を制度で分ける方法
ダブルケアでは、育児と介護の予定を一つの手帳で見ます。どちらかを我慢させる発想では続きません。予定の性質ごとに、使う制度や人を分けます。
ポイントは、すべてを家族本人の移動で解決しないことです。親の通院には、本人確認、医師への質問、薬の受け取り、次回予約があります。子どもの発熱には、看病、保育園への連絡、仕事の調整があります。同じ人が両方をその場で担うと、どちらも中途半端になります。介護側はケアマネジャーや通院付き添い、育児側は保育・学童・ファミリー・サポートに分けると、家族本人は判断と共有に集中できます。
遠方や海外にいる家族は、この表を一緒に作るだけでも支援になります。現地の家族が日中に動くなら、海外側は夜のうちに質問リスト、病院への確認事項、兄弟への共有文、費用の振込準備を担当できます。時差は負担にもなりますが、うまく使えば、現地の朝までに資料を整える時間にもなります。
| 起きること | 育児側の手当て | 介護側の手当て |
|---|---|---|
| 子どもの発熱と親の通院 | 病児保育、配偶者・祖父母、勤務先への看護休暇相談 | 通院付き添い代行、介護タクシー、医師への質問メモ共有 |
| 学校行事とケアマネ面談 | 行事の時間を先に固定し、録画や家族参加を検討 | オンライン参加、家族代表の一本化、面談メモの事前送付 |
| 退院日と保育園・学童の送迎 | 延長保育、ファミリー・サポート、近所の送迎協力 | 退院調整看護師、地域包括支援センター、暫定サービス相談 |
| 夜間の親の不安と子どもの睡眠 | 夜の家庭内ルールを守り、子どもの生活リズムを優先 | 緊急通報、見守り、翌朝確認、夜間対応先の整理 |
介護者を守るお金と体制
中心にいる人を守るための分担
ダブルケアでは、中心にいる人が荷重を支える壁です。その人がすべてを吸収する前提の家族計画は、一番崩れやすい計画です。
近い人・引き受けやすい人(多くは妻や長女)に流れるのを放っておかず、意図的に分担します。調査が示すのは、まさにその偏りだからです。お金・医療・学校・親のケアの担当を、兄弟間の介護の役割分担と同じように書き出して決めます。仕事と収入を守ることも大切です。追い込まれての離職は取り返しがつきにくく、介護休業の制度はまさにそれを防ぐためにあります。そして最低限の休息を確保します。親も子も、来年も機能している介護者を必要としているからです。燃え尽きは、あとで管理するリスクではありません。ダブルケアでは中心的なリスクであり、崩れる前に引き継ぐ視点が欠かせません。
厚生労働省は、2025年4月から介護関係の改正事項が施行されたことを案内しています。介護休暇を取得できる労働者の要件緩和や、介護に直面した労働者への制度の個別周知・意向確認など、職場側にも早めに知らせて両立を支える流れが強まっています。これは「会社に迷惑をかける話」ではありません。離職を防ぎ、仕事と介護の両方を続けるための法定の仕組みです。
ダブルケアの中心にいる人は、職場へ相談するときに育児と介護を別々に話すと伝わりにくいことがあります。「火曜午前は親の通院、水曜夕方は保育園、来月は認定調査と学校行事が重なる」という形で、具体的なカレンダーを見せます。必要なのが休業なのか、時間単位の休暇なのか、残業免除なのか、短時間勤務なのかが見えます。休む権利に加えて、体制を作る期限を決めることが大切です。
お金と時間を同じ表で見る整理法
ダブルケアでは、費用の話を後回しにすると、中心にいる人の時間で穴埋めされます。保育料、学童、病児保育、介護保険の自己負担、私費サービス、交通費、帰省費を同じ表に置きます。
「お金をかけない」方針にすると、実際には近くにいる家族の時間と体力が支払います。たとえば親の通院付き添いを毎回家族が担うと、半日単位で仕事や育児が崩れます。月に数回の私費支援で、子どもの生活リズムや仕事を守れるなら、それは無駄遣いではありません。家計の中で、介護保険でまかなえる部分、保険外で買う部分、家族が担う部分を分けておくと、責任の押しつけ合いになりにくくなります。
兄弟姉妹がいる場合は、現地で動く人だけが支払う形にしないことも重要です。送迎、面談、病院付き添いは目に見えますが、電話調整、書類作成、情報共有、子どもの世話の穴埋めも同じ負担です。費用に加えて時間も記録し、月に一度、分担を見直します。これは家族を責めるためではありません。続く形に直すための確認です。
| 領域 | 見落としやすいもの | 先に決めること |
|---|---|---|
| 子育て | 延長保育、病児保育、学童、ベビーシッター、急な送迎 | 誰が予約し、誰が支払い、上限をいくらにするか |
| 介護保険 | デイサービス、訪問介護、ショートステイ、福祉用具の自己負担 | ケアマネジャーに、家族の就労と育児事情を必ず伝える |
| 保険外支援 | 通院付き添い、配食、見守り、掃除、買い物代行 | 家族の時間を買い戻す支出として、月額の上限を決める |
| 遠方・海外家族 | 帰省費、時差連絡、翻訳、送金、現地立ち会い | 現地で動く人と、遠隔で調べる人を分ける |
海外からのダブルケア
離れて暮らしながらのダブルケア
逆の形に直面する家族もいます。海外で子どもを育てながら、日本に高齢の親がいる。板挟みは同じで、時差をまたいで引き伸ばされます。
ここでの現実的な分担は、親については調整役(判断・お金・報告)を海外から担い、手のかかる部分は現地の専門職のケアと日本にいる連絡役に任せることです。こちらの子どもと向こうの親の両方に物理的に居ようとするのが、人を壊す形です。海外から日本の親を支える方法に、遠隔の調整役の進め方をまとめています。幼い子どもがいて、親に割けない「居ること」をその子が求めている場面では、なおさら効いてきます。
海外からのダブルケアでは、親の近くにいる親族へ「全部お願い」と言わないことが大切です。現地の人には、認定調査や退院日など対面が必要なところを頼みます。海外側は、制度調査、候補事業者の比較、費用負担、医師やケアマネジャーへの質問作成、家族会議の議事録を担えます。子どもの学校や保育の予定を動かしにくい時期は、帰省以外に現地支援の購入を選ぶ方が現実的なこともあります。
また、子どもにも年齢に応じた説明が必要です。親が急に日本の祖父母のことで電話や夜の会議に追われると、子どもは自分が後回しにされたと感じます。詳しい介護の話を背負わせる必要はありませんが、「日本のおばあちゃんの生活を整える相談をしている」「あなたの予定も大事にする」と伝え、家庭内の安心を保ちます。ダブルケアでは、親を支えることと、子どもの日常を守ることを同時に設計します。
よくある質問
ダブルケアとは何ですか?
ダブルケアは、子育てと親の介護を同時に担うことを指す言葉で、英語のサンドイッチ世代にあたります。内閣府の調査は、これを担う人を約25万人(女性約17万人・男性約8万人)と推計し、30〜40代がおよそ8割を占めるとしています。出産年齢の上昇と親の長寿化で、今後も増えると見られています。
子育てと介護の支援は同時に使えますか?
はい、使うべきです。2つは別の仕組みです。親は要介護認定を受ければ、デイサービス・訪問介護・ショートステイが負担の一部を担い、無料のケアマネジャーが計画を立てます。子どもは保育園・学童・ファミリー・サポートでカバーします。ダブルケアのご家族は、両方に同時に頼ってよいのです。
なぜダブルケアは、育児や介護を単独で担うより重いのですか?
2つの要求が同じ時間・お金・注意を奪い合い、感情の向きも逆で、危機も示し合わせては来ません。内閣府の調査では負担が偏り、女性ほど労働時間を減らしたり離職したりする割合が高いことが分かっています。外国籍のご家族では、介護の側の言語と制度の壁がさらに加わります。
ダブルケアを一人に背負わせないには?
近い人・引き受けやすい人に流れるのを放っておかず、意図的に分担します。お金・医療・学校・親のケアの担当を書き出して決め、介護休業の制度で仕事を守り、最低限の休息を確保します。ダブルケアでは介護者の燃え尽きが中心的なリスクなので、崩れる前に引き継ぐ備えをしておきます。
一次情報・公的情報
本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-03.
この記事について
この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。

