制度ガイド

仕事と介護の両立ガイド

介護を理由に辞める前に使い切りたい制度を整理。介護休業93日の正しい使い方、介護休暇や残業免除、職場への伝え方、自分がいなくても回る介護体制のつくり方まで解説します。

公開日
2026-06-07
最終更新日
2026-07-03
情報確認日
2026-07-03
出典
3件の一次情報・公的情報

親の介護が始まったとき、まず頭をよぎるのが「仕事を辞めるしかないのか」という問いです。介護を理由に仕事を辞める人は年間およそ10万人。そして辞めた多くの方が、収入・年金・再就職・孤立の面で「辞めなければよかった」と振り返ります。日本の制度は「辞めずに介護する」ことを前提に設計されています。このガイドでは、介護休業・介護休暇などの両立支援制度の使い方と、職場への伝え方、続けるための介護体制づくりを整理します。

辞めない判断を支える数字

辞める前に使い切る両立支援の鉄則

介護離職には、あとから取り返しにくい代償があります。収入が途絶えるのは介護費用が増え始める時期と重なり、厚生年金の加入期間が止まり、数年後の再就職は想像以上に厳しくなります。そして介護が一人の肩に集中し、共倒れのリスクが上がります。

「辞めれば介護に専念できる」は、多くの場合うまくいきません。介護の負担を決めるのは、時間より体制だからです。介護保険のサービス、職場の両立支援制度、家族の役割分担。この3つを使い切る前の退職は、選択肢を狭めるだけになりがちです。どうしても働き方を変える必要があるときも、退職は最後の手段として、まず転職や勤務形態の変更を検討してください。

辞める前に知っておきたい「数字」

感情ではなく数字で見ると、辞めない判断がしやすくなります。介護は思っているより長く続き、費用も継続してかかります。

言いかえると、辞める判断は「5年以上、収入なしで月8万円超の出費を支える」判断とほぼ同じ重さを持ちます。まず制度を使い切る価値があるのは、このためです。国も2030年には仕事と介護を両立する人(ビジネスケアラー)が約318万人に達すると見込み、両立支援を強めています。あなた一人だけが直面している問題ではありません。

  • 介護期間は平均およそ5年1か月(生命保険文化センター 2021年度調査)。数か月で終わる前提は危険です
  • 自己負担は、住宅改修や介護ベッドなどの一時費用が平均約74万円、月々の費用が平均約8.3万円
  • 介護を理由に離職する人は、2022年の調査で年間およそ10万6,000人。収入が途絶える時期は、介護費用が増える時期と重なります
  • いったん辞めると厚生年金の加入が止まり、再就職は前職より低い処遇になりやすいという調査もあります

使える両立支援制度の全体像

40歳になったら、両立の備えは始まっている

40歳になると、給与から介護保険料が天引きされ始めます。介護保険との接点は、介護が始まる前から生まれています。

40歳から64歳までは介護保険の第2号被保険者として保険料を負担し、加齢に伴う特定の病気(特定疾病)が原因であれば、この年代でも介護保険のサービスを使えます。2025年の法改正では、従業員が40歳になる時期などに、両立支援制度の情報を事業主が提供する努力義務が加わりました。親がまだ元気なうちに、自分の勤務先にどんな制度があるか、就業規則を一度見ておくと、いざというときに迷いません。

介護休業93日は「介護をする期間」ではない

法律上、家族1人につき通算93日まで、3回まで分けて介護休業を取れます。誤解されがちですが、この93日は自分で介護をするための期間ではなく、介護の体制をつくるための期間です。

93日を「自分が介護する期間」として使うと、休業が終わった日に振り出しに戻ります。有効な使い方は、要介護認定の申請ケアマネジャーとの体制づくり、サービスの試行、家族での役割分担の合意など、「自分がいなくても回る仕組み」の構築に充てることです。休業中は雇用保険から介護休業給付金(賃金のおおむね67%)が支給されます。支給には条件があるため、勤務先の人事またはハローワークで確認してください。

日常を支える「小さい制度」を組み合わせる

介護休業のほかにも、日常の通院付き添いやケアマネ面談に使える制度があります。長期戦の両立は、むしろこちらの使いこなしで決まります。

  • 介護休暇:年5日(対象家族が2人以上なら10日)。時間単位でも取得可能
  • 残業の免除・深夜業の制限:請求すれば所定外労働を免除してもらえる仕組み
  • 短時間勤務・フレックス・時差出勤など:事業主が用意する選択的措置から利用
  • 2025年の法改正で、介護に直面したと申し出た従業員への制度の個別周知などが事業主に義務づけられ、「知らなかった」が起きにくくなりました
  • 詳細な条件は雇用形態や勤務先の規定で異なります。人事・労務、または都道府県労働局が確認先です

使える制度の早見表

両立支援制度は介護休業だけではありません。日常を支える仕組みを、まとめて把握しておきましょう。どれも「請求・申し出」が起点です。

対象になる「家族」の範囲は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。会社が自動で用意してくれるわけではないので、使いたい制度を名指しで伝えるのがコツです。「残業免除を請求します」「介護休暇を時間単位で使いたい」と具体的に言えば、人事も動きやすくなります。条件は勤務先の規定で細部が異なるため、わからないときは都道府県労働局の窓口でも確認できます。なお、遠距離・海外から帰省して介護する場合は、航空会社の介護帰省割引(要介護・要支援認定の親族の介護のための割引運賃)を、これらの休暇制度と組み合わせると、時間と費用の両面で負担を抑えられます。

仕事と介護の両立支援制度(育児・介護休業法)
制度内容・日数給付・ポイント
介護休業対象家族1人につき通算93日、最大3回まで分割介護休業給付金=賃金の約67%(雇用保険、上限あり)
介護休暇年5日(対象家族2人以上は10日)、1時間単位も可通院付き添いなど単発の用事に
所定外労働の制限請求すれば残業を免除介護が続くあいだ繰り返し請求できる
時間外労働の制限残業を月24時間・年150時間以内に請求制
深夜業の制限午後10時〜午前5時の勤務を免除請求制
選択的措置短時間勤務・フレックス・時差出勤・介護費用助成のいずれか利用開始から3年で2回以上
2025年改正テレワーク導入が努力義務に介護に直面した従業員への個別周知・意向確認が義務化

職場で動かし体制をつくる

職場への伝え方

両立支援制度は、申し出て初めて動きます。介護を隠して有給と気力でしのぐ働き方は、ある日突然続かなくなります。

伝える相手は直属の上司と人事。伝える内容は「介護に直面していること」「当面の見通し」「使いたい制度」の3点で十分で、親の病状を詳しく話す必要はありません。あわせてケアマネジャーには「自分は仕事を続ける」と明確に伝えてください。働く家族を前提にしたケアプラン(デイサービスの曜日、ショートステイの定期利用など)を組んでもらえるかどうかが、両立の成否を分けます。

「自分がいなくても回る」介護体制のつくり方

平日の日中を介護保険のサービスがカバーし、家族は判断と週末の関わりを受け持つ。両立できている家庭の形は、おおむねこれに収れんします。

具体的には、デイサービスを週の柱にして入浴と昼食と見守りをまかせ、ヘルパーの訪問で家事の穴を埋め、月1回のショートステイで自分の休息を先に予定へ入れてしまう組み方です。夜間や緊急時が不安な場合は、見守り機器や定期巡回・随時対応型のサービスも選択肢になります。在宅でどこまで支えられるか、施設を考える目安はどこかは、「在宅介護と施設介護の比較」ガイドにまとめています。

遠距離・限界時の続け方と相談

海外勤務・遠距離で働く家族の両立

海外赴任中や遠隔地勤務で親の介護が始まると、制度の使い方も少し変わります。まず確認すべきは、自分がどの制度の対象かです。

介護休業や介護休暇は、日本の雇用主のもとで雇用保険に加入している人の制度です。海外の現地法人に現地採用されている場合は、日本の制度を使えないことがあるため、自分の雇用契約がどちらかを先に確かめてください。日本企業からの駐在であれば、就業規則上の両立支援を使えることが多いので、人事に相談します。物理的に通えない場合は、現地の体制づくりが両立の鍵です。ケアマネジャーや地域包括支援センターと連絡線をつくり、緊急時に誰が動くかを決めておけば、毎回帰国しなくても支えられます。一時帰国は、要介護認定の調査日やサービス担当者会議に合わせると、限られた日数を有効に使えます。

それでも限界が見えたら

制度を使っても両立が崩れ始めたら、それは働き方ではなく介護体制を変えるサインです。我慢を積み増す前に、ケアマネジャーへの相談を。

状態が変わったのに介護度が軽いままなら区分変更の申請を、在宅の限界が近いなら施設の検討を、自分の心身が削れているなら家族会や地域包括支援センターへの相談を。「介護のために辞めます」と人事に言う前に、この3つを試したかを確認してください。辞める決断は、いつでもできます。辞めない選択肢は、体制があるうちにしか選べません。

両立支援を活かす、無料の部分と人手を借りる部分

介護休業や介護休暇などの手続きは会社の人事やハローワーク、労働局で進められ、ケアの調整はケアマネジャーが無料で担います。仕事で平日の日中に動けない、休業の限られた日数を体制づくりに使い切りたい、海外赴任で帰国が難しいといった事情があるとき、その日本側の進行をJCCが代わりに受け持ちます。どこを自分で進め、どこを任せると両立が崩れにくいかは、下の対応表で見比べてください。

手続きとケアの調整は無料で十分に進められますので、まずは人事とケアマネジャーに当たり、それでも平日に動けない部分や海外からの進行で詰まったときに、JCCにご相談ください。

両立を進める役割分担
会社・公的窓口・ケアマネ(無料)で進めることJCCに相談したほうがよいこと
介護休業・介護休暇・残業免除など制度の申請(人事・ハローワーク・労働局)限られた休業日数を体制づくりに使い切るための段取りの設計と進行管理
働く家族を前提にしたケアプランづくりの依頼(ケアマネジャー)平日の日中に自分が動けないぶんの面談同席・サービス見学の代行
デイサービスやヘルパーなど在宅サービスの手配(ケアマネジャー)自分が不在でも回る介護体制の組み立てと、緊急時に誰が動くかの設計
海外赴任中の制度確認や帰国時の窓口対応(人事・現地の家族)海外在住のあいだの日本側の連絡・進行を引き受ける窓口役

よくある質問

介護休業中の収入はどうなりますか?

雇用保険の被保険者であれば、介護休業給付金として休業開始時賃金のおおむね67%が支給されます。支給要件や手続きがあるため、勤務先の人事またはハローワークで事前に確認してください。

介護休業を会社に断られることはありますか?

介護休業は法律にもとづく労働者の権利で、要件を満たす申し出を事業主は原則拒めません。取得を理由とする不利益な取り扱いも禁止されています。困ったときは都道府県労働局の相談窓口が使えます。

パートや契約社員でも介護休業を取れますか?

有期雇用の方も一定の要件を満たせば取得できます。要件は法改正で緩和されてきており、雇用形態だけで諦めず、勤務先か労働局に確認することをお勧めします。

93日で介護が終わらない場合はどうすればいいですか?

93日は介護を終えるための期限ではありません。体制をつくる期間です。休業中に介護保険のサービスと家族の分担を整え、復職後は介護休暇や残業免除などの日常的な制度と組み合わせて続けるのが基本形です。

介護はどれくらいの期間続きますか?

個人差は大きいですが、生命保険文化センターの2021年度調査では平均およそ5年1か月でした。月々の自己負担は平均約8.3万円という調査もあります。数か月で終わる前提で離職を決めると、収入のない期間が長く続くおそれがあるため、まず両立支援制度を使うことをお勧めします。

海外で働いていても介護休業は使えますか?

日本の雇用主のもとで雇用保険に加入していれば対象です。海外の現地法人に現地採用されている場合は、日本の制度を使えないことがあるため、雇用契約と勤務先の規定を確認してください。日本企業からの駐在であれば、人事に両立支援の利用を相談しましょう。通えないぶんは、現地のケアマネジャーや地域包括支援センターと連絡線をつくっておくのが有効です。

介護休暇と介護休業は何が違いますか?

介護休業は体制づくりのためのまとまった休み(対象家族1人につき通算93日・最大3回まで分割)で、給付金が出ます。介護休暇は通院付き添いなど単発の用事に使う短い休み(年5日、対象家族が2人以上なら10日、1時間単位でも取得可)です。長期戦では、休業で体制をつくり、復職後は休暇で日々の用事に対応する、という組み合わせが基本です。

介護休業給付金に上限はありますか?

あります。給付金は休業開始時の賃金日額の約67%ですが、賃金日額には上限が設けられているため、収入が高い場合は実質67%より低い割合になることがあります。正確な額や支給要件は、勤務先の人事やハローワークで確認・試算してもらえます。

一次情報・公的情報

本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-03.

この記事について

この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。

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