連絡を受けた直後の30分でやること
まず病院の連絡先と面会ルールを確認する
連絡が入ったら、まず折り返し先が病院のどの部署かを確認します。多くの病院には医療ソーシャルワーカー(MSW)という、入院に伴う手続きや家族との連絡調整を担当する専門職がいます。海外や遠方にいて今すぐ病室へ行けない場合でも、MSWか病棟の看護師長に「海外(または遠方)にいて今すぐ行けないが、状況を共有してほしい」と伝えれば、面会時間や電話での説明を受けられる時間帯を教えてもらえることが多いです。病院によって面会や電話対応の運用は異なるため、断定的に「必ずこうなる」とは言えませんが、まず窓口を確認するという行動そのものは共通して有効です。
「キーパーソン」に指名されるかどうかを確認する
入院時、病院は治療方針の説明や意思決定の窓口として、家族の中から「キーパーソン」を指定することがあります。本人と最も連絡が取りやすい人、あるいは実際に病院へ来られる人が指名されるのが一般的です。海外在住で今すぐ来日できない場合でも、電話やビデオ通話での説明を条件にキーパーソンになれることもあれば、国内にいる別の家族がキーパーソンになり、海外側は情報共有を受ける立場に回ることもあります。誰がキーパーソンになるかは、最初の電話でMSWや看護師長に相談して決めておくと、後の連絡が滞りません。
きょうだい・親族間で最初の役割を仮決めする
きょうだいや同居家族がいる場合、連絡を受けた最初の30分で「誰が病院と連絡を取るか」「誰が来日するか」「誰が日本側の雑務(自宅の様子確認、郵便物、ペットなど)を引き受けるか」を仮決めしておくと、その後の判断が早くなります。全員が同時に来日する必要があるとは限りません。まず1人が動き、状況が分かった時点で追加の来日を判断する、という段階的な進め方でも問題ありません。役割分担の考え方は遠距離介護の全体ガイドにも整理しているので、事前に一度目を通しておくと当日の判断が速くなります。
フライトと休暇の手配を同時に進める
フライトは「検索」と「予約」を分けて進める
深夜・早朝の連絡でも、多くの航空会社は24時間予約を受け付けています。まず出発可能な日時で複数の航空会社・複数の空港(成田・羽田など)を横断的に検索し、最も早く出発できる便を洗い出します。座席に余裕があるかは時間帯によって変わるため、検索した便のうち最も条件の良いものから順に予約を進め、迷っている間に売り切れることを避けます。介護や慶弔目的の帰省に対する運賃の割引・当日予約の可否は航空会社ごとに条件が異なるため、詳しい確認事項は介護の交通費を抑える割引ガイドにまとめています。当日の緊急予約では、割引が使えるかどうかより先に「今すぐ出発できる便があるか」を優先して探すのが基本です。
休暇は「忌引き」「介護休暇」「年次有給」の3枠を整理して伝える
日本の会社員が使える休暇には性質の異なる3つがあります。忌引き休暇は法律で定められた休暇ではなく、就業規則で定める会社独自の制度です。介護休暇は育児・介護休業法に基づく法定休暇で、対象家族が1人であれば年5日まで、2人以上であれば年10日まで取得できます。年次有給休暇はどの理由でも使える通常の有給休暇です。親が「まだ入院しただけ」で慶弔(死亡・危篤)に該当しない段階では、忌引き休暇の対象外になる会社が多く、介護休暇か年次有給休暇を使う場面になります。最初の連絡では詳しい病状が分からないことも多いため、勤務先には「入院の連絡があり、詳細はこれから分かる。休暇が必要になりそうなので相談したい」と早めに伝え、状況が固まった時点でどの休暇枠を使うかを確定させる進め方が現実的です。介護と仕事の両立の考え方は仕事と介護の両立ガイドで扱っています。
海外勤務・時差がある場合の休暇連絡
海外で勤務している場合、介護休暇・介護休業は日本国内の勤務先だけでなく、海外に拠点を置く企業の日本法人や、日本の雇用契約に基づく駐在であれば適用対象になり得ますが、適用の有無は雇用形態や勤務先の就業規則によって異なります。判断に迷う場合は、人事部門に「親の入院で緊急に一時帰国する必要がある」と伝えたうえで、忌引き・介護休暇・有給休暇のどれが使えるかを確認してください。時差で日本の病院やケアマネジャーへの連絡が取りにくい時間帯がある場合の設計は、海外在住家族向けの介護コーディネートガイドにまとめています。
日本到着後、病院に着くまでの初動
深夜・早朝到着なら空港からのアクセスを先に確認する
緊急のフライトは深夜・早朝着になることも多く、鉄道の始発前に到着すると移動手段が限られます。成田空港・羽田空港とも、深夜早朝時間帯はリムジンバスの深夜早朝便かタクシーが主な移動手段になり、始発を待つ場合は空港内で仮眠できる施設を使う選択肢もあります。到着ロビーに出てから移動手段を探すと時間をロスするため、フライトを予約した時点で、到着時刻に対して使えるバス便やタクシー乗り場の場所を先に確認しておくと、病院や実家までの移動がスムーズになります。
病院に到着したら最初に確認すること
病院に着いたら、まずMSWまたは病棟の看護師長に到着したことを伝え、現在の治療方針、今後の検査・手術の予定、面会や付き添いのルールを確認します。治療方針そのものの可否判断は医師の領域であり、家族が代わりに決められるものではありません。分からないことは遠慮せず質問し、必要であれば医師からの直接説明の時間を設けてもらうよう依頼します。同席できるきょうだいがいれば、この場で聞いた内容をその場で共有し、あとで「言った・言わない」の食い違いが起きないようにしておくと安心です。
退院の見通しが立ったら、次の体制を並行して考え始める
入院直後は目の前の対応で手一杯になりがちですが、退院の見通しが立ち始めたら、退院後に在宅でどう過ごすか、要介護認定の申請が必要か、ケアマネジャーへの相談が必要かを並行して考え始めます。入院中からケアマネジャーを探し始めることも可能で、退院のタイミングに合わせて在宅サービスの準備を進められます。ケアマネジャーの探し方・役割はケアマネジャーのガイド、地域の総合相談窓口は地域包括支援センターのガイドにまとめています。身元保証人を求められる場面がある場合は、身元保証人がいないときの介護・入院ガイドも参考にしてください。
次に備える: 今回の経験を仕組みにする
「緊急連絡シート」を今回の経験をもとに作り直す
今回、連絡を受けてから病院・かかりつけ医・薬・保険証の場所を確認するのに時間がかかったなら、それは次回のために仕組み化できる部分です。病院名・診察券番号・かかりつけ医・服薬中の薬・保険証や介護保険証の保管場所・親族の連絡先を1枚のシートにまとめておくと、次に同じような連絡が来たときの初動が大きく速くなります。時差がある海外在住の場合は、日本側で最初に動ける代理対応者を決めておくことも合わせて整理しておくと安心です。
勤務先との休暇の記録を残しておく
今回使った休暇の種類・日数・勤務先とのやり取りを記録しておくと、次回同様の事態が起きたときに「前回はこう対応した」という基準ができます。特に介護休暇は法定の年間上限(対象家族1人で年5日、2人以上で年10日)があるため、今回どれだけ使ったかを把握しておくと、次の帰国のタイミングでの判断がしやすくなります。継続的な介護が必要になりそうな場合は、仕事と介護の両立ガイドで介護休業(原則93日、3回まで分割取得可能な法定制度)との違いも確認しておくとよいでしょう。
遠隔でできることと、現地に人が必要な場面を切り分ける
一度の緊急帰国を経験すると、「次も同じように毎回駆けつけるのは難しい」と感じる家族も少なくありません。実家の片付けや退院後の環境整備など、体力的・時間的に負担の大きい作業は実家の生前整理ガイドのような専門サービスに委ねる選択肢もあります。また、見学同行や急変時の一次対応など「現地に体が必要な場面」を継続的に補う手段として、介護ナビゲーションサービスや医療コーディネートサービスのような調整サービスを日本側の窓口にする方法もあります。全体の進め方に迷う場合は介護の進め方ガイドも参考にしてください。
比較表
主な違いを表で見比べられるように並べます。
| 休暇制度 | 法的性質 | 日数の目安 | 給与 |
|---|---|---|---|
| 忌引き休暇 | 会社独自の制度(就業規則次第。法律上の定めはない) | 会社により異なる(一般的な相場として親の場合5〜7日程度とされることが多い) | 会社の規定次第(有給・無給どちらもあり得る) |
| 介護休暇 | 育児・介護休業法に基づく法定休暇 | 対象家族1人につき年5日、対象家族2人以上で年10日(半日・時間単位の取得も可能) | 法律上の給与支払い義務はなく、多くの企業で無給 |
| 年次有給休暇 | 労働基準法に基づく法定休暇 | 勤続年数・所定労働日数に応じて付与(理由を問わず取得可能) | 通常の給与が支払われる |
よくある質問
忌引き休暇と介護休暇、親の入院時にはどちらを使えばいいですか
忌引き休暇は一般的に死亡・危篤など慶弔の場面を対象とする会社独自の制度で、単なる入院では対象外になる会社が多いです。入院に伴って通院の付き添いや手続きのために休む場合は、法定の介護休暇(対象家族1人で年5日、2人以上で年10日)や年次有給休暇を使うのが基本になります。どちらに該当するかは勤務先の就業規則次第なので、まず人事に相談してください。
深夜に連絡が来た場合、その日のうちに出発できるフライトは見つかりますか
見つかる場合も多いですが保証はできません。多くの航空会社は24時間予約を受け付けているため、複数の航空会社・複数の空港を横断的に検索し、最も早く出発できる便から順に予約を進めるのが現実的です。座席状況は時間とともに変わるため、迷っている間に埋まることもあります。
病院の「キーパーソン」に指名されたら、何をする必要がありますか
キーパーソンは治療方針の説明を受け、意思決定の窓口になる役割です。海外在住ですぐに来日できない場合でも、電話やビデオ通話での説明を条件にキーパーソンになれることがありますが、運用は病院によって異なります。国内にいる別の家族がキーパーソンになり、海外側は情報共有を受ける立場に回る形でも問題ありません。
きょうだいがいる場合、緊急帰国の役割はどう分担すればいいですか
全員が同時に来日する必要はありません。まず1人が病院と連絡を取り来日を判断し、他の家族は日本側の雑務や情報共有を分担する、という段階的な進め方が現実的です。最初の連絡を受けた30分以内に、誰が何を担当するかを仮決めしておくと、その後の判断が早くなります。
有給休暇がほとんど残っていない場合、どうやって休みを確保すればいいですか
まず介護休暇(対象家族1人で年5日、2人以上で年10日)が使えるか確認してください。介護休暇は法定休暇のため、勤務先は取得を拒否できません。それでも足りない場合は、無給での欠勤や、継続的な介護が必要な状況であれば介護休業(原則93日、3回まで分割取得可能)の利用を検討します。
日本に到着して病院に着いたら、まず何を確認すればいいですか
MSW(医療ソーシャルワーカー)または病棟の看護師長に到着を伝え、現在の治療方針、今後の検査・手術の予定、面会や付き添いのルールを確認します。治療方針の可否そのものは医師に確認する事項で、家族が代わりに判断するものではありません。
次に同じような連絡が来たときのために、今から準備できることはありますか
病院名・かかりつけ医・服薬中の薬・保険証の保管場所・親族の連絡先をまとめた「緊急連絡シート」を作っておくことが有効です。今回の対応でかかった時間や、勤務先とどう休暇を調整したかも記録しておくと、次回の初動が速くなります。
一次情報・公的情報
本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-02.
この記事について
この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。

