海外で暮らしながら、日本で一人になった親に訪問介護を頼みたい。けれど、料金がいくらかかるのか、何割を自分たちが負担するのかが見えないと、仕送りの額も決められません。このガイドでは、介護保険が使える公的な訪問介護について、2024年度(令和6年度)の介護報酬をもとに、単位数から1か月の自己負担額までを実際の数字で追います。料金は地域区分や加算で変わるため、最終的な額はケアプランと事業所の見積もりで確認することを前提に読んでください。
訪問介護とは何か(家族が日本にいなくても使える公的サービス)
訪問介護はホームヘルプとも呼ばれ、ホームヘルパーが自宅を訪ねて、入浴・排泄・食事などの身体介護や、掃除・洗濯・買い物といった生活援助を行う介護保険サービスです。要介護1〜5の認定を受けた人が対象で、要支援1・2の人は市区町村の総合事業による訪問型サービスを使います。家族が遠方や海外にいても、ケアマネジャーと訪問介護事業所が日々の支援を担うため、親が一人で暮らしていても在宅生活を続けやすくなります。
ここで扱うのは、あくまで介護保険が適用される公的な訪問介護です。介護保険を使わず全額自分たちで払う民間の家事代行や付き添いは料金の仕組みがまったく別なので、保険外の自費ヘルパーについては自費ヘルパーのガイドで分けて解説しています。まずは公的サービスでどこまでまかなえるかを把握し、足りない部分を自費で補うと考えると整理しやすくなります。
- 身体介護:入浴・着替え・排泄・食事・移動の介助、服薬の見守りなど体に直接触れる支援
- 生活援助:掃除・洗濯・調理・買い物・薬の受け取りなど、本人に代わって行う家事
- 通院等乗降介助:通院のための車の乗り降りの介助(いわゆる介護タクシーの介助部分)
料金の決まり方:1単位はおおむね10円、地域で11.40円まで上がる
訪問介護の料金は、サービスの種類と時間ごとに単位数が国によって定められています。この単位数に1単位あたりの単価(おおむね10円)を掛けたものがサービス費の総額で、利用者はそのうち1割・2割・3割を負担します。単価は全国一律ではなく、人件費の高い地域ほど上がる仕組みで、最も高い東京23区などでは訪問介護で1単位11.40円になります。同じ30分の身体介護でも、地域によって数十円の差が出るのはこのためです。
海外から見ると分かりにくいのは、請求書に単位と円が混在する点です。事業所が国民健康保険団体連合会に請求するときは単位で計算し、利用者に請求する自己負担額は円で示されます。明細に並ぶ単位数を見て高いと感じても、実際に支払うのはその1〜3割なので、まず総額と自己負担を分けて読むのが理解の早道です。
身体介護と生活援助の単位数(2024年度・令和6年度改定後)
2024年度の介護報酬改定で、訪問介護の基本報酬はわずかに引き下げられました。改定後の主な単位数は次の表のとおりです。身体介護は時間が長いほど単位が上がり、生活援助は身体介護より低く設定されています。週に何回、どの種類を何分使うかで月額が大きく変わるため、ケアプランの内容をこの表に当てはめると、おおよその費用が見えてきます。
この表は単価を10円とした最も基本的な目安で、実際には地域区分の単価(10〜11.40円)や、夜間・早朝・深夜の割増、各種加算が乗ります。たとえば処遇改善加算などが加わると総額は1〜2割ほど上振れするため、表の数字は下限に近い目安として見てください。正確な額は、ケアマネジャーが作るケアプランと事業所の見積もりで確認できます。
| サービス区分 | 時間 | 単位数 | 1単位10円・1割負担の自己負担目安 |
|---|---|---|---|
| 身体介護 | 20分未満 | 163単位 | 約163円 |
| 身体介護 | 20分以上30分未満 | 244単位 | 約244円 |
| 身体介護 | 30分以上1時間未満 | 387単位 | 約387円 |
| 身体介護 | 1時間以上1時間30分未満 | 567単位 | 約567円 |
| 生活援助 | 20分以上45分未満 | 179単位 | 約179円 |
| 生活援助 | 45分以上 | 220単位 | 約220円 |
| 通院等乗降介助 | 1回 | 97単位 | 約97円 |
1か月の自己負担を計算してみる(要介護2・週5回の例)
単位数だけでは生活実感がわかないので、よくある利用パターンで1か月を計算します。一人暮らしの要介護2の親が、平日に身体介護30分以上1時間未満(387単位)を週3回、生活援助45分以上(220単位)を週2回使う場合を考えます。1か月を約4.3週として、身体介護は387単位×3回×4.3週でおよそ4,992単位、生活援助は220単位×2回×4.3週でおよそ1,892単位、合計でおよそ6,884単位です。
これを1単位10円で円に直すと約68,840円がサービス費の総額です。負担割合が1割なら自己負担は約6,884円、2割なら約13,768円、3割なら約20,652円となります。実際には加算や地域単価で上振れし、東京23区など単価11.40円の地域では総額が約78,500円まで上がります。仕送りで費用を負担する場合は、最も高い3割・割増ありの前提で月2万〜2万5千円ほどを見ておくと、為替が動いても足りなくなりにくくなります。費用全体の見方は介護費用の全体像で整理しています。
親は1割・2割・3割のどれか(単身世帯の判定)
自己負担割合は所得で決まり、多くの高齢者は1割です。判定は本人の合計所得金額と、年金収入を含めた所得の合計で行われます。親が一人暮らし(単身世帯)の場合、おおまかには次の表のように分かれます。海外在住の家族にとっては、毎年7月ごろに市区町村から届く介護保険負担割合証を確認するのが確実で、これに1割・2割・3割の別と適用期間が書かれています。
この基準は2026年7月までのもので、2026年8月からは判定の考え方が見直される予定です。親の所得が境目に近いときは、改定の前後で割合が変わる可能性があるため、毎年届く負担割合証を家族で共有しておくと安心です。割合が1段階上がると自己負担は2倍・3倍になるので、家計への影響は小さくありません。
| 負担割合 | 本人の合計所得金額 | 年金収入+その他の合計所得金額(単身)の目安 |
|---|---|---|
| 3割 | 220万円以上 | 340万円以上 |
| 2割 | 160万円以上 | 280万円以上340万円未満 |
| 1割 | 上記未満、または住民税非課税 | 280万円未満 |
区分支給限度基準額:使いすぎると超過分は全額自費
介護保険には、1か月に保険で使えるサービス量の上限があります。これを区分支給限度基準額といい、要介護度ごとに単位数で決まっています。訪問介護だけでなく、デイサービスや福祉用具レンタルなど在宅サービス全体の合計がこの枠に収まっていれば1〜3割負担で済みますが、枠を超えた分は10割(全額自己負担)になります。訪問介護を手厚く入れたいときほど、この上限を意識する必要があります。
たとえば要介護2の上限は19,705単位なので、訪問介護とデイサービスを合わせて月20,000単位を使うと、超えた約295単位(約2,950円)はそのまま全額が親の負担になります。海外から回数を増やしてほしいと頼むときは、この上限を超えていないかをケアマネジャーに確認してください。上限はあくまで天井であって、使い切る必要はありません。
| 区分 | 支給限度の単位数 | 10円換算の上限額 | 1割負担なら月の上限 |
|---|---|---|---|
| 要支援1 | 5,032単位 | 約50,320円 | 約5,032円 |
| 要支援2 | 10,531単位 | 約105,310円 | 約10,531円 |
| 要介護1 | 16,765単位 | 約167,650円 | 約16,765円 |
| 要介護2 | 19,705単位 | 約197,050円 | 約19,705円 |
| 要介護3 | 27,048単位 | 約270,480円 | 約27,048円 |
| 要介護4 | 30,938単位 | 約309,380円 | 約30,938円 |
| 要介護5 | 36,217単位 | 約362,170円 | 約36,217円 |
ケアプランがないと訪問介護は始まらない
訪問介護は、申し込めばすぐ来てもらえるものではありません。まず要介護認定を受け、ケアマネジャー(居宅介護支援事業所)がケアプランを作り、その計画に沿って訪問介護事業所と契約して初めて利用が始まります。ケアプランの作成と相談には自己負担がかからないため、ここは費用を気にせず使える部分です。海外在住の家族にとって、ケアマネジャーは現地での窓口になる存在です。
家族が日本にいない場合は、初回の契約や鍵の受け渡し、緊急時の連絡先をどうするかを最初に決めておくと、その後の運営が滞りません。在宅で続けるか施設に移すかで迷うときは在宅介護と施設介護の比較もあわせて確認してください。
- 市区町村に要介護認定を申請(申請から結果まで原則30日ほど)
- ケアマネジャーを選び、本人・家族の希望を伝えてケアプランを作成
- ケアプランに沿って訪問介護事業所と契約・サービス開始
- 毎月、ケアマネジャーがサービスの実施状況を確認し必要に応じて見直し
訪問入浴・重度訪問介護:手厚いケアが必要なときの選択肢
通常の訪問介護で入浴介助が難しい場合は、専用の浴槽を自宅に持ち込む訪問入浴介護があります。看護職員を含む数名が訪問し、寝たきりの人でも入浴できます。料金は介護保険サービスの一つで、令和6年度の単位数は全身浴でおおむね1,260単位前後、1割負担なら1回あたり約1,260円が目安です(部分浴・清拭はこれより低くなります)。要介護度が高く、見守りを含めた長時間の支援が要るときは、障害福祉制度の重度訪問介護が使える場合もあります。
重度訪問介護は、重い肢体不自由や重度の知的・精神障害があり、常時介護を必要とする人を対象に、介護・家事・見守りを長時間まとめて提供する仕組みです。介護保険の訪問介護のように身体介護・生活援助で単価を分けず、滞在時間をもとに報酬が決まるのが特徴です。原則1割負担で、所得に応じた月の負担上限が設けられています。利用できるかは市区町村の判断によるため、対象になりそうな状態かはケアマネジャーや自治体の窓口に相談してください。
海外在住家族の支払いと、負担を抑える仕組み
訪問介護の自己負担は事業所からの月々の請求で、多くは親の銀行口座からの引き落としや振込で支払います。海外送金を毎回行うのは手数料も為替差も負担になるため、親の年金が入る口座から引き落とす形にしておき、不足分だけを定期的に送金してならすのが現実的です。介護費用は親のお金からまかなうのが原則なので、まず親の年金と貯蓄で払える範囲を見極め、足りない分を仕送りで補うと家計が安定します。
高額介護サービス費の上限は所得区分で変わり、住民税非課税世帯ではさらに低く設定されています。訪問介護を手厚く使って自己負担が膨らんだ月でも、この仕組みで一定額に収まることが多いので、上限額は親の区分で一度確認しておく価値があります。事業者選びや保険と自費の組み合わせに迷うときは、JCCの在宅介護コーディネートにご相談ください。
- 高額介護サービス費:1か月の自己負担の合計が所得に応じた上限(一般的な所得の世帯で月44,400円など)を超えると、超過分が後から払い戻される
- 支払いは親の口座引き落としを基本にし、海外送金は不足分をまとめて補う形にすると手数料・為替の影響を抑えやすい
- 領収書・明細は医療費控除や家族間の記録のために保管し、何にいくら使ったかを共有しておく
ここまではケアマネと記事で足りる。JCCが手を貸すのはその先
単位数と自己負担の読み方、保険内でのサービス手配は、このガイドと担当ケアマネジャーへの相談で無料のまま進められます。JCCがお役に立てるのは、区分支給限度基準額を超える部分や保険外のヘルパーを自費でどう重ねるかの設計と、海外に住む家族の支払い段取り、そして複数事業所の比較と手配です。下の表で、自分で進められる範囲とJCCに任せたほうがよい範囲を分けて確認してください。
まずは保険内で無料で進められる部分を使い切り、それでも届かないところだけJCCにお預けいただく形が、費用の面でも無理がありません。
| ケアマネ・自分(保険内/無料)で進められること | JCCに相談したほうがよいこと |
|---|---|
| 単位数や自己負担割合の確認、保険内での訪問介護の手配 | 限度額を超える分や保険外ヘルパーを自費でどう組むかの全体設計 |
| 毎月のケアプラン見直しと回数の調整をケアマネに依頼 | 海外に住む家族としての支払い段取りと、不足分の送金のならし方 |
| 近所の訪問介護事業所をケアマネから紹介してもらう | 複数の事業所を条件で比較し、親に合う体制を選んで手配する |
| 負担割合証や高額介護サービス費の上限を市区町村で確認 | 所得や為替を踏まえた費用全体の見立てと、親の資金で払える範囲の整理 |
よくある質問
訪問介護の1か月の料金は、だいたいいくらが目安ですか?
使う回数と種類で大きく変わります。要介護2の人が身体介護30分以上1時間未満を週3回、生活援助45分以上を週2回使うと、サービス費の総額は月およそ68,840円で、1割負担なら約6,884円、3割負担なら約20,652円が自己負担の目安です。地域の単価(10〜11.40円)や加算で上振れするため、正確な額はケアプランと事業所の見積もりで確認してください。
親が単身で暮らしています。自己負担が1割か2割か3割か、どう確認すればよいですか?
毎年7月ごろに市区町村から届く介護保険負担割合証に、適用される割合と期間が記載されています。目安として、単身世帯で年金収入を含む所得の合計が340万円以上だと3割、280万円以上340万円未満で2割、それ未満は1割になることが多いです。この基準は2026年8月から見直される予定なので、毎年の負担割合証で確認するのが確実です。
区分支給限度基準額を超えて訪問介護を使うとどうなりますか?
上限を超えた分は1〜3割負担ではなく、全額(10割)が自己負担になります。たとえば要介護2の上限は約19,705単位で、訪問介護とデイサービスの合計が20,000単位になると、超えた約295単位(約2,950円)がそのまま親の負担になります。回数を増やしたいときは、上限を超えないかをケアマネジャーに確認してください。
費用が高くなった月でも、自己負担に上限はありますか?
あります。高額介護サービス費という仕組みで、1か月の自己負担の合計が所得に応じた上限を超えると、超えた分が後から払い戻されます。一般的な所得の世帯では月44,400円が上限で、住民税非課税世帯はさらに低く設定されています。上限額は親の所得区分で変わるため、市区町村に確認しておくと安心です。
海外に住んでいますが、訪問介護の支払いはどうすればよいですか?
多くの事業所は月々の自己負担を親の銀行口座から引き落とすか、振込で受け付けます。毎回海外送金をすると手数料と為替差が負担になるため、年金が入る親の口座から引き落とす形にしておき、不足分だけをまとめて送金してならすのが現実的です。介護費用は親のお金からまかなうのが原則で、足りない分を仕送りで補うと家計が安定します。
公的な情報源
この記事について
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