制度ガイド

日本の高齢者介護にかかる費用

介護にかかるお金は、介護保険の自己負担だけではありません。施設の居住費や食費、医療費、保険外サービスなど、家族が見落としやすい費用と考え方の目安を整理します。

公開日
2026-06-03
最終更新日
2026-07-03
情報確認日
2026-07-03
出典
3件の一次情報・公的情報

介護にいくらかかるかは、「平均いくら」という一つの数字では答えられません。介護保険で賄える部分、自己負担の割合、在宅か施設か、施設の種類、そして見落とされがちな家族側の出費。これらの組み合わせで決まります。このガイドでは、費用の全体像を項目ごとに分け、目安の金額帯と、負担を抑える仕組みまで整理しました。

まず知る介護費の全体像

まず押さえる:介護保険で賄える部分の仕組み

要介護認定を受けると、区分ごとの支給限度額の範囲内で、介護サービスを1〜3割の自己負担で利用できます(割合は所得によって決まり、多くの方は1割です)。限度額を超えた分は全額自己負担になります。

目安として、在宅で中程度の区分のサービスを限度額近くまで使った場合の自己負担は、1割負担の方で月1〜3万円程度に収まることが多いです。ここに、保険ではまかなえない生活費や医療費が上乗せされていきます。なお、ケアマネジャーへの依頼は無料です。

そもそも、生涯でいくらかかる? 平均の目安

金額の見当をつけるために、まず全体像の平均を押さえます。生命保険文化センターの2021年度の調査が、よく使われる目安です。

平均の介護期間と月額をかけ合わせると、一時費用も含めた累計は、ひとりおよそ580万円という計算になります。あくまで平均で、認知症などで介護が長引けば、これを大きく上回ることもあります。大切なのは、介護を「短期の出費」ではなく「数年続く家計」として見ることです。そう捉えると、目先の安さより、続けられる体制と負担軽減の仕組みを優先する判断ができます。

  • 介護期間:平均およそ5年1か月。数か月で終わる前提は危険です
  • 一時費用:住宅改修や介護ベッドの購入などで、平均約74万円
  • 月々の費用:平均約8.3万円(在宅は平均約4.8万円、施設は平均約12.2万円)

親の年金で、介護費は賄えるか

費用の計画で最も知りたいのは、結局「親の年金で足りるのか」です。平均値で大まかな見当をつけてみます。

厚生労働省の集計(令和5年度)では、老齢年金の平均受給額は、会社員などが受け取る厚生年金で月約14.7万円、自営業や専業主婦だった方などの国民年金で月約5.8万円です。在宅介護の月々の費用は平均約8.3万円なので、単純に並べると、厚生年金で在宅なら年金の範囲に収まることが多い一方、国民年金だけ、あるいは施設の場合は、年金だけでは足りず、貯蓄や負担軽減制度で埋めることになります。

大事なのは、平均から離れて「その人の数字」で突き合わせることです。親の実際の年金額は、毎年6月ごろに届く年金額改定通知書や年金振込通知書で確認できます。足りない分は、まず高額介護サービス費や負担限度額認定などの軽減制度を使い切り、それでも不足する分を貯蓄で補う、という順番で考えます。海外から支える場合は、為替も含めて親のお金の見える化を先に行うと、毎月いくら足りないかがはっきりします。

年金の平均受給額と介護費の目安(月額)
項目月額の目安
厚生年金(老齢・平均)約14.7万円
国民年金(老齢・平均)約5.8万円
在宅介護の費用(平均)約8.3万円+保険外
施設の費用10〜30万円

負担を抑える公的制度

1割・2割・3割で、月額はこう変わる

在宅の自己負担は、使ったサービス量に負担割合をかけて決まります。同じサービスでも、割合が違えば月額は数倍変わります。区分ごとの上限額(令和6年度)と、限度いっぱいまで使った場合の自己負担は次のとおりです。

負担割合は所得で決まり、多くの方は1割です(65歳以上で本人の所得や年金収入が一定以上だと2割・3割)。判定は毎年8月に見直され、7月ごろに届く「介護保険負担割合証」で確認できます。なお、これはあくまで「限度額まで使った場合」で、実際は必要な量だけ使えば自己負担も少なくなります。限度額を超えて使った分は、割合に関係なく全額自己負担です。さらに、自己負担が一定額を超えると、次に説明する高額介護サービス費で払い戻しを受けられます。

区分支給限度額と、限度額まで使った場合の自己負担(令和6年度・1単位10円換算の目安)
区分支給限度額(月)1割負担2割負担3割負担
要支援1約5万円約5,000円約1万円約1万5,000円
要支援2約10.5万円約1万500円約2万1,000円約3万1,500円
要介護1約16.8万円約1万6,800円約3万3,500円約5万300円
要介護2約19.7万円約2万円約3万9,400円約5万9,100円
要介護3約27万円約2万7,000円約5万4,000円約8万1,000円
要介護4約30.9万円約3万1,000円約6万1,900円約9万2,800円
要介護5約36.2万円約3万6,000円約7万2,400円約10万8,700円

負担を抑える2つの仕組み

自己負担には上限を設ける仕組みがあり、知っているかどうかで家計が大きく変わります。

  • 高額介護サービス費:1か月の自己負担が所得に応じた上限額を超えると、超えた分が払い戻されます
  • 高額医療・高額介護合算制度:医療費と介護費の年間合計が基準を超えた場合の払い戻し。入院と介護が重なった年は特に確認を
  • 施設の居住費・食費には所得に応じた負担軽減(負担限度額認定)があります。対象になりそうなら市区町村へ申請を
  • いずれも申請が必要なものがあります。「知らないと戻らないお金」なので、ケアマネジャーや市区町村に確認しましょう

高額介護サービス費の上限を、具体額で知る

高額介護サービス費は、1か月の自己負担が上限を超えた分を払い戻す仕組みです。上限は世帯の所得で決まります。代表的な区分を挙げます。

たとえば一般的な所得の世帯で、ひと月の自己負担が6万円かかったとすると、上限44,400円を超えた約1万5,600円が後から払い戻されます。初回は申請が必要で、いったん認められれば次回以降は自動で振り込まれることが多いです。施設に入った月や介護が重くなった月は対象になりやすいので、心当たりがあるときは市区町村の介護保険課に確認してください。なお、保険料の滞納で自己負担が引き上げられている間は、この払い戻しを受けられないので注意が必要です。

  • 一般的な所得の世帯:月44,400円
  • 住民税非課税世帯:月24,600円
  • とくに所得が低い世帯(年金収入などが一定以下):月15,000円
  • 現役並みに所得が高い世帯:月93,000円または140,100円

施設の食費・居住費を下げる「負担限度額認定」

施設に入ると、介護サービスの自己負担とは別に、食費と居住費(部屋代)がかかります。所得の低い方には、これを軽くする補足給付があります。

負担限度額認定と呼ばれ、住民税非課税の世帯などが対象です(所得に加えて、預貯金などの資産にも要件があります)。認定されると、食費と居住費に所得段階に応じた上限が設けられ、施設での月額が大きく下がります。対象になりそうなときは、市区町村へ申請してください。申請しなければ軽減は受けられません。特別養護老人ホームなどの公的な施設で効果が大きく、有料老人ホームは原則対象外です。施設を検討する段階で、ケアマネジャーや施設の相談員に「負担限度額認定の対象になりそうか」を聞いておくと、見積もりが現実に近づきます。

医療と介護が重なる年は「合算制度」を使う

入院と介護が同じ年に重なると、出費が一気に膨らみます。そんな年に効くのが、高額医療・高額介護合算制度です。

これは、1年間(毎年8月から翌年7月まで)の医療費と介護費の自己負担を合計し、所得に応じた上限を超えた分を払い戻す仕組みです。高額介護サービス費(月単位)や高額療養費(医療の月単位)を使ってもなお重い負担が残る世帯を救うための、年単位の安全網です。手続きは市区町村への申請が必要なので、医療と介護の両方が重なった年は、領収書を保管しておき、忘れずに確認してください。

在宅・施設の実費とその内訳

見落とされがちな「保険外」の出費

介護費用の見積もりが甘くなる原因は、たいてい保険でまかなえない出費の見落としです。在宅でも施設でも、次のような費用が別にかかります。

これらは1つひとつは小さくても、積み上がると介護保険の自己負担を上回ることもあります。在宅と施設を比べるときは、保険の自己負担だけでなく、こうした周辺の出費まで「全部込み」で1年分を見積もるのが鉄則です。

  • おむつ・パッド類:在宅で月5,000〜15,000円ほど。施設では別料金のことが多いです
  • 配食・家事代行などの保険外サービス、見守り機器の費用
  • 通院の交通費・付き添い費、医療費(窓口負担や差額ベッド代)
  • 福祉用具の自費購入分、住宅リフォームの補助を超える部分
  • 施設の日用品・理美容・レクリエーション費、個室の差額
  • 遠方の家族の帰省・滞在費(年間で見ると大きな額になります)

在宅介護の費用は、サービス費より「周辺」がかさむ

在宅の場合、介護保険の自己負担そのものは比較的小さく収まる一方、保険の外側の出費が積み重なります。

おむつなどの消耗品、配食や家事代行などの保険外サービス、通院の交通費、見守り機器、住宅の修繕。そして最大の「見えない費用」が家族の時間です。仕事を休む、定期的に帰省する、毎晩電話する。こうした時間を金額に換算せずに在宅と施設を比べると、判断を誤ります。遠方から支える場合は、交通費と滞在費も年間で見積もっておきましょう。

施設の費用は、種類によって桁が変わる

施設は種類ごとに費用構造がまったく異なります。あくまで目安ですが、よく見かける金額帯は次のとおりです(地域・所得・部屋のタイプで大きく変動します)。

認知症の対応に力を入れた施設は、月30万円前後になることもあります。同じ種類でも、個室か相部屋か、立地、付帯サービスで金額は大きく動くので、必ず個別の料金表で確認してください。

施設タイプ別の費用の目安(月額・入居一時金)
施設タイプ月額の目安入居一時金主な対象・特徴
特別養護老人ホーム(特養)8〜15万円なし原則要介護3以上。待機が出やすい。負担限度額認定で軽減も
介護老人保健施設(老健)8〜15万円なし在宅復帰を目指す。原則3〜6か月の中間施設
グループホーム12〜20万円0〜数十万円認知症対応。地域の住民票が必要
介護付き有料老人ホーム15〜35万円0〜数千万円24時間の介護付き。認知症対応が手厚いほど高め
サービス付き高齢者向け住宅10〜25万円+介護費敷金15〜50万円自立度の高い方向け

施設を比べるときは「料金表」と「退去条件」を見る

パンフレットの「月額◯円〜」だけで比べるのは危険です。確認すべきは、費用の内訳が書かれた料金表と、契約書の退去・返金条件です。

  • 月額の内訳:家賃相当・食費・介護費の自己負担・上乗せサービス・消耗品
  • 介護度が上がったら月額はどう変わるか
  • 入居一時金の償却ルールと、退去時の返金条件
  • 医療対応の範囲と、「対応できなくなったら退去」となる条件

施設費用は「入居一時金」と「月額」の二階建て

有料老人ホームなどの費用が分かりにくいのは、入居時にまとまったお金を払う「入居一時金」と、毎月の「月額費用」の二階建てになっているからです。

入居一時金は、家賃の前払い的な性格を持つお金で、0円のところから数百万円、数千万円までさまざまです。一時金は入居後に一定の期間をかけて少しずつ償却され、早期に退去すると未償却分が返ってくる仕組みが一般的です。この償却ルールと返金条件は施設ごとに違うので、契約前に必ず確認します。月額費用は、家賃相当・管理費・食費・介護サービスの自己負担・上乗せサービスの合計です。「月額◯円〜」の表示は最低ラインのことが多く、実際の介護度や使うサービスで上がります。一時金が高い施設ほど月額が低い、あるいはその逆、といった設計もあるので、入居から数年間の総額で比べるのが正しい見方です。

控除・相談・予算の手続き

介護費用は、医療費控除で一部取り戻せる

確定申告の医療費控除で、介護にかかったお金の一部を取り戻せることがあります。見落とされがちな節税です。

医療系の介護サービス(訪問看護やリハビリなど)や、施設サービス費の一部、通院の交通費などは、医療費控除の対象になることがあります。寝たきりの方のおむつ代も、医師が発行する「おむつ使用証明書」があれば対象になり得ます。1年間に支払った医療費と、対象になる介護費の合計が一定額(おおむね10万円)を超えると、超えた分が所得から控除され、税金が戻る場合があります。領収書をまとめて保管し、対象になるかどうかは税務署やケアマネジャー、市区町村に確認してください。親を扶養している子どもが、自分の確定申告で合算できる場合もあります。

親のお金を「見える化」してから動く

費用の計画は、親にいくら使えるお金があるかを把握することから始まります。判断能力があるうちに、ざっくりでも一覧にしておきます。

「年金と貯蓄で、月いくらまでなら無理なく介護に回せるか」が見えると、在宅か施設か、どの施設かの判断が現実的になります。お金の話は切り出しにくいものですが、親の判断能力があるうちにしか整理できません。具体的な進め方は、親のお金と権限のガイドにまとめています。介護費用は親のお金から、が大原則で、子ども世帯の家計や老後資金を削るのは最後の手段です。

  • 毎月の収入:年金の額(振込通帳で確認できます)
  • 貯蓄:預貯金、保険、いざというときに動かせる資産のおおよその額
  • 毎月の固定費:家賃や住宅ローン、光熱費、通信費、保険料
  • 負債:借入やローンの有無

お金が足りないと感じたときの相談先

「親の蓄えでは足りないかもしれない」と感じても、抱え込まないでください。負担を下げる制度と相談先があります。

大切なのは、サービスを減らして親の安全を削る前に、使える軽減制度を出し切ることです。どの制度が使えるかは世帯の状況で変わるので、まず地域包括支援センターか市区町村の窓口に、正直に家計の状況を伝えて相談してください。

  • 市区町村の介護保険課:高額介護サービス費、負担限度額認定など、軽減制度の申請窓口です
  • 地域包括支援センター:費用を含めた暮らし全体の相談ができます
  • 社会福祉協議会:生活福祉資金の貸付など、当面の資金の相談に乗ってもらえます
  • 生活保護の相談:資産や収入が一定以下なら、介護扶助でサービスを受けられる場合があります

1年分の介護予算を組み立ててみる

平均値だけでは自分の家の計画は立ちません。在宅と施設、それぞれのモデルで、1年分をざっくり組み立ててみると、必要な額の感覚がつかめます。

ここに、家族の帰省費や、状態が変わったときの追加費用を上乗せして考えます。大事なのは、1か月の数字を12倍して年額で見ることです。月3万円の差でも、1年で36万円、5年で180万円の違いになります。年単位で見れば、目先の安さより、負担軽減の制度を使い切ることのほうが効くと分かります。

  • 在宅(要介護2の例):介護保険の自己負担 月1〜2万円+おむつや配食などの保険外 月1〜3万円+医療費。年間でおよそ40〜80万円が一つの目安です
  • 施設(特養の例):月10〜15万円(食費・居住費・介護費込み)。年間でおよそ120〜180万円。負担限度額認定が使えればさらに下がります
  • 施設(介護付き有料の例):月15〜30万円+入居一時金。年間でおよそ180〜360万円以上

ケース別の費用と早見表

認知症は、費用が読みにくい

認知症の介護は、身体の介護より費用の見通しが立てにくい傾向があります。理由を知って、早めに備えます。

認知症は、介護期間が長くなりやすく、徘徊や夜間の不穏といった症状が出ると、見守りの手が増えてデイやショートの利用も増えます。在宅が難しくなって施設を選ぶ場合も、認知症対応の手厚い施設は費用が上がりがちです。加えて、判断能力が落ちると、本人の口座が事実上動かせなくなり、家族が立て替えに追われることもあります。だからこそ、認知症が疑われる早い段階で、親のお金の管理と権限の備えを始めておくことが、費用面でも効いてきます。

おむつ代は、自治体の給付と医療費控除で抑える

在宅で地味に効いてくるのが、おむつ代です。月数千円から1万円を超えることもありますが、抑える手があります。

多くの市区町村には、要介護度などの条件を満たす在宅の高齢者へ、紙おむつを現物支給したり購入費を助成したりする制度があります(内容や条件は自治体によって異なります)。親の住所地の市区町村やケアマネジャー、地域包括支援センターに確認してみてください。さらに、寝たきりなどでおむつが必要な方は、医師が発行する「おむつ使用証明書」があれば、おむつ代を確定申告の医療費控除に含められる場合があります。小さな出費に見えて、年間では無視できない額になるので、給付と控除の両面で抑えるのが得策です。

福祉用具は「買う」より「借りる」が基本

車いすや介護ベッドのような福祉用具は、原則レンタルが基本です。状態が変わりやすい介護では、買うより借りるほうが理にかなっています。

介護ベッド、車いす、歩行器、手すりなどは、介護保険のレンタルで1〜3割負担で借りられます。状態が変わって不要になったり、別のタイプが必要になったりしたときに、返却・交換できるのがレンタルの強みです。一方、入浴やトイレに使う、他人が再利用しにくい用具(ポータブルトイレ、入浴用いすなど)は、特定福祉用具として年間10万円までの購入費が補助されます。何を借り、何を買うべきかはケアマネジャーが提案してくれます。自費で先に買ってしまうと補助の対象外になることがあるので、購入前に必ず相談してください。

費用を抑える制度の早見表

ここまでに出てきた負担軽減の仕組みを、一覧にまとめます。多くが申請しないと受けられないので、心当たりのあるものから確認してください。

どれが使えるかは世帯の状況で変わります。一度に全部を覚える必要はなく、ケアマネジャーや市区町村の介護保険課に「うちが使える軽減はありますか」と聞けば、当てはまるものを案内してもらえます。

  • 高額介護サービス費:月の自己負担の上限(一般世帯で月44,400円など)を超えた分が払い戻し
  • 高額医療・高額介護合算制度:1年間の医療費と介護費の合計が上限を超えた分が払い戻し
  • 負担限度額認定(補足給付):住民税非課税世帯などの施設の食費・居住費を軽減
  • 医療費控除:医療系サービス・施設費の一部・おむつ代などを確定申告で控除
  • 自治体の紙おむつ給付・助成:要介護度などの条件を満たす在宅の方に支給・補助
  • 住宅改修費・特定福祉用具購入費:20万円・年10万円まで1〜3割負担で補助

家族・海外からの費用運用

海外の家族が費用を支えるときのコツ

海外から親の介護費を支える場合は、距離と為替のぶん、お金の管理に一手間かけておくと、あとで揉めずに済みます。

送金は、金額とタイミングを決めて「不定期の善意」を「決まった分担」に変えるのがコツです。為替や送金手数料で金額がそろわないことも、後から誤解の種になります。日本側に支払い実務を担う人(家族、日常生活自立支援事業、コーディネートサービス)を置き、海外側は承認と記録に回ると回りやすくなります。そして、親のお金からいくら、誰がいくら立て替えたかを、日付つきの共有メモに残しておきます。介護費用は親のお金から、が大原則で、相続の場面で生きるのは気持ちの記憶ではなく記録です。日本の制度や費用の確認を遠隔で進めるのが難しいときは、現地で動く窓口を一つ持っておくと安心です。

デイサービス・ショートステイの費用感

在宅介護の柱になるデイサービスとショートステイは、1回あたりの目安を知っておくと、月の見積もりが立てやすくなります。

デイは家族の休息の時間にもなり、ショートは介護者がまとまった休みを取る「レスパイト」に使えます。費用は限度額の中でやりくりするため、何にどれだけ枠を使うかが、そのまま家計に効きます。優先順位はケアマネジャーと相談して決めましょう。

  • デイサービス(通所介護):1日あたり、1割負担で700〜1,200円ほど+食費(数百円程度)が目安。要介護度や時間で変わります
  • ショートステイ(短期入所):1泊あたり、1割負担で1,000円前後+食費・滞在費(部屋代)が目安。連泊で日数分かかります
  • いずれも区分支給限度額の枠を使うので、訪問介護などとの合計が限度内に収まるよう、ケアマネジャーが調整します

保険料そのものも、介護の固定費

サービスを使う前から、介護保険には毎月のコストがかかっています。65歳以上が払う第1号保険料です。

第1号被保険者(65歳以上)の保険料は、第9期(2024〜26年度)の全国平均で月額6,225円です。多くは年金からの天引きで納めます。住む市区町村によって差があり、3年ごとに見直されて、近年は上昇傾向です。サービスの自己負担とは別に、この保険料が生涯にわたる固定費としてかかっている、と意識しておくと、家計の全体像が正確になります。なお、納付書払いの保険料が未納のまま放置されると、いざサービスを使うときに自己負担が引き上げられるので、離れて暮らす家族は納付状況も一度確認しておくと安心です。

費用をめぐる「よくある誤解」

思い込みが、使えるはずの軽減を見逃させたり、不要な不安をあおったりします。代表的な誤解を整理します。

  • 「施設のほうが必ず高い」:在宅も保険外の出費や家族の時間を入れると差は縮まり、特養は有料老人ホームより安いことが多いです。種類によります
  • 「貯金があると軽減はいっさい使えない」:高額介護サービス費は資産に関係なく使えます。預貯金の要件があるのは施設の食費・居住費の負担限度額認定などです
  • 「親の家を売らないと払えない」:まず軽減制度を出し切り、年金と貯蓄で組み立てます。自宅の売却は最後の検討事項です
  • 「一度断られた軽減は二度と使えない」:所得や世帯の状況が変われば、また対象になります。毎年見直されます

家族で「お金の会議」をしておく

介護費用のトラブルの多くは、金額そのものより「誰が払うかを決めていなかったこと」から起こります。

親の年金と貯蓄でどこまで賄うのか、不足分は兄弟でどう分担するのか、想定外の出費は誰がいくらまで承認するのか。月ごとの収支メモを1枚つくり、家族で共有しておくと、感情論になりがちなお金の話が事務作業に変わります。介護費用は原則として親のお金から、が大原則です。子ども世帯の家計や老後資金を削る前に、負担軽減の仕組みと親の資産の整理を先に行いましょう。

自分でできる費用試算と、残る実費確認・支払いの段取り

このガイドの概算や、高額介護サービス費・負担限度額認定・医療費控除といった制度の申請は、ご家族が自分で調べて進められるよう作っています。私たちJCCがお手伝いするのは、その試算では埋まらない部分、つまり保険外サービスをどう自費で組むかの設計、地域の施設の実費の代理確認、海外のご家族間での費用分担と支払いの段取りです。自分・公的制度で進められることと、相談したほうがよいことを次の表で分けました。

申請して取り戻せるお金はご自身で出し切り、地域の実費や海外からの支払い実務でつまずいたときに、私たちを使ってください。

費用の把握・申請と、JCCが補う部分の線引き
自分・公的制度(無料)で進められることJCCに相談したほうがよいこと
概算の見積もりと、年金・貯蓄で賄える範囲の試算保険外サービスの隙間をどう自費で埋めるかの設計と総額の見通し
高額介護サービス費・負担限度額認定・医療費控除の申請申請の対象外になる実費を、地域の事情に合わせて抑える工夫
施設の料金表の取り寄せと、退去・返金条件の確認地域の施設の居住費・食費・上乗せサービスの実費を現地で代理確認
親のお金の見える化と、収支メモの共有海外のご家族間での費用分担と、日本側の支払いの段取り

よくある質問

介護には月いくらかかりますか?

在宅なら介護保険の自己負担1〜3万円程度+生活費・保険外サービス、施設なら特養で月8〜15万円程度、有料老人ホームで月15〜35万円以上が、よく見かける目安です。地域や所得、状態によって大きく変わるため、必ず個別の料金表で確認してください。

自己負担が高額になったときの救済はありますか?

あります。高額介護サービス費(月単位の払い戻し)と高額医療・高額介護合算制度(年単位)が代表的です。施設の居住費・食費には所得に応じた負担軽減もあります。

親のお金で払うべきですか?子どもが負担すべきですか?

原則は親の年金・資産からです。子ども世帯の家計を削る前に、負担軽減制度の申請と、親の資産・収支の見える化を先に行いましょう。分担が必要な場合は、金額と承認ルールを家族で文書にしておくのがおすすめです。

施設の「月額◯円〜」はあてになりますか?

そのままでは比較に使えません。家賃・食費・介護費・上乗せサービス・消耗品まで含めた内訳の料金表を取り寄せ、介護度が上がった場合の金額と退去・返金条件まで確認してください。

介護は生涯でいくらくらいかかりますか?

生命保険文化センターの2021年度調査では、介護期間は平均およそ5年1か月、一時費用が平均約74万円、月々の費用が平均約8.3万円でした。単純計算で累計はひとりおよそ580万円ですが、認知症などで長引けばこれを上回ります。あくまで平均で、在宅か施設か、要介護度によって大きく変わります。

自己負担が1割か2割か3割かで、どのくらい違いますか?

使ったサービス量に割合をかけるので、数倍変わります。たとえば要介護3の限度額(約27万円分)をいっぱいに使うと、1割で約2万7,000円、2割で約5万4,000円、3割で約8万1,000円です。割合は所得で決まり、毎年8月に見直されます。

施設の食費や部屋代を安くする方法はありますか?

住民税非課税の世帯などは、負担限度額認定(補足給付)を申請すると、施設の食費・居住費が所得段階に応じて軽くなります。預貯金などの資産にも要件があります。特別養護老人ホームなどで効果が大きく、有料老人ホームは原則対象外です。申請しないと受けられないので、市区町村に確認してください。

介護費用は確定申告で戻ってきますか?

一部は医療費控除の対象になります。訪問看護などの医療系サービス、施設サービス費の一部、通院交通費、医師の証明があるおむつ代などが対象になり得ます。1年間の医療費と対象の介護費の合計が一定額を超えると控除を受けられます。親を扶養する子どもが合算できる場合もあるので、領収書を保管して税務署に確認してください。

おむつ代を安くする方法はありますか?

あります。多くの市区町村に、要介護度などの条件を満たす在宅の高齢者へ紙おむつを支給・助成する制度があります(内容は自治体によって異なります)。また、寝たきりなどでおむつが必要な方は、医師の「おむつ使用証明書」があれば、おむつ代を医療費控除に含められる場合があります。市区町村やケアマネジャーに確認してください。

デイサービスやショートステイは1回いくらくらいですか?

目安として、デイサービスは1日1割負担で700〜1,200円ほど+食費(数百円程度)、ショートステイは1泊1割負担で1,000円前後+食費・滞在費(部屋代)です。要介護度や時間・施設で変わります。いずれも区分支給限度額の枠を使うので、訪問介護などとの合計が限度内に収まるようケアマネジャーが調整します。

一次情報・公的情報

本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-03.

この記事について

この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。

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