介護保険料の口座振替変更や要介護認定のオンライン申請の多くはSMS認証を前提にしており、日本の携帯番号を持たない海外在住家族はここで止まりがちです。番号を維持・新規に持つ・番号なしで進める、3つの選択肢と費用を整理しました。
出国前の準備
親の代理手続きで電話番号が壁になる場面
海外に住みながら日本の親の介護に関わろうとすると、電話番号がボトルネックになる場面は思っているより多くあります。介護保険料の口座振替口座を変更しようとして銀行アプリを開くと、ワンタイムパスワードが日本の携帯番号宛のSMSで送られてくる仕様になっていて先に進めない。市区町村の要介護認定のオンライン申請でマイナポータルにログインしようとすると、スマホ用電子証明書の設定や本人確認の途中で電話番号の登録を求められる。証券会社で親の資産状況を確認しようとしても、二段階認証のコードは同じく日本の番号にしか届かない。こうした場面は、委任状さえあれば解決できる話ではありません。海外在住家族の委任状ガイドが扱うのは法的な代理権の話であり、SMS認証という技術的な壁とは別の論点だからです。
親の介護保険(要介護認定・給付の仕組み)そのものの基本は介護保険の解説で扱っていますが、この記事はその手続きを実際に進めようとしたときに立ちはだかる、電話番号という物理的な壁に絞って整理します。
この壁がやっかいなのは、事前に想定しづらいタイミングで突然現れる点です。数年前まで問題なく使えていた銀行のインターネットバンキングが、セキュリティ強化のためにいつの間にかSMS認証必須の仕様に変わっていた、というケースは珍しくありません。親が急に入院し、医療費の支払いのために口座から一時的にまとまった額を動かそうとした矢先にSMSコードが届かず手続きが止まる、といった場面では、海外にいる子の側にも心理的な負担がかかります。日頃から「自分の名義でSMSを受け取れる状態を維持できているか」を点検しておくことが、いざというときの初動の速さにつながります。
4つの対応策の全体像
海外在住のまま日本の番号がらみの認証を乗り越える方法は、大きく4つに整理できます。1つ目は大手キャリアの番号保管サービスを使い、出国中も自分名義の番号を残しておく方法です。2つ目はpovo2.0のような低額維持のできる回線を新規に持ち、海外ローミングでSMSだけ受信できる状態を作る方法です。3つ目は日本にいる家族の番号で代わりに受け取ってもらう方法です。4つ目は、SMS以外の認証手段への変更や、オンラインではなく窓口・郵送での手続きに切り替えるよう各機関に相談する方法です。
どれか1つが万能というわけではなく、手続きの重要度や頻度によって組み合わせるのが現実的です。頻繁に銀行アプリを操作する必要があるなら番号を維持する価値がありますし、年に数回の申請だけなら家族の番号や窓口切替で十分なこともあります。
出国前にやっておきたいのは、まず親名義・自分名義それぞれの口座やオンラインサービスで、どこがSMS認証を必須にしているかを棚卸しすることです。銀行・証券・介護保険料の口座振替・マイナポータル・各種給付金の申請窓口を一覧にし、それぞれ「今の番号のまま維持するか」「別の手段に切り替えるか」を渡航前に決めておくと、海外で慌てて対応する場面を減らせます。棚卸しの過程で、実はオンラインでなくても郵送や窓口で完結できる手続きが見つかることも少なくありません。
海外での運用
大手キャリアの番号保管サービス
出国前にもっとも検討されやすいのが、契約中の携帯電話会社が用意している番号保管・一時休止サービスです。NTTドコモの「電話番号保管」は、申込手数料がオンライン手続きで1,100円(税込)、電話・店舗経由だと4,950円(税込)で、保管中の月額料金は440円(税込)、保管期間は申込翌月から最長6年間となっています(2026年7月時点、料金は変更されることがあるため最新は公式サイトで確認してください)。auの一時休止サービスは、My au・auオンラインショップ経由の事務手数料3,850円(税込)に月額409円(税込)で、保管期間は申込翌月から5年間です。ただし店頭・電話経由の事務手数料は2026年8月1日から4,950円(税込)に改定される予定で、My au経由の3,850円は据え置かれる見込みです。ソフトバンクの「電話番号・メールアドレスお預かりサービス」は月額429円で、お預かり期間は最大5年間とされています。
ここで見落とされがちなのが、保管中はSMSを含めて電話・ネット・メールなど回線に紐づくサービスがいずれも利用できないという点です。つまりこれらのサービスが守っているのは「番号という資産」であって、海外にいる間にリアルタイムでSMS認証コードを受け取れる状態ではありません。銀行アプリやマイナポータルの認証を海外にいる間も使い続けたい場合、番号保管サービスだけでは目的を達成できない点は出国前に必ず押さえておくべきです。
povo等の低額維持という選択肢
保管中もSMSだけは受け取りたいという場合に候補になるのが、povo2.0のような基本料0円運用のできる回線を出国前、または出国後に契約しておく方法です。povo2.0は海外ローミングに対応しており、海外での着信SMSは無料で受信できるとされています(データ通信・発着信は別途有料トッピングが必要)。基本料自体は0円のため、SMS受信だけを目的にするなら維持コストを抑えられる可能性があります。
一方で見落としやすい落とし穴があります。povo2.0にはSIM有効化後、または直近の有料トッピングの有効期限満了後から180日間、有料トッピングの購入がないと順次利用停止になり、その後30日以内に有料トッピングを購入しないと契約解除(番号の失効)に至るという運用ルールがあります。ただし、この180日間のうちに国内通話・国内SMS送信の利用料金の合計が660円(税込)を超えていれば、有料トッピングを購入していなくても利用停止の対象から外れる例外があります。海外にいて国内通話・SMS送信をほとんど使わない場合はこの例外に当てはまりにくいため、実質的にはトッピング購入で維持することになります。海外に長く滞在してこのルールを忘れてしまうと、認証用に残していたはずの番号ごと失うことになりかねません。海外にいる間もカレンダーに購入期限をメモしておく、家族に定期的なトッピング購入を頼んでおくといった対策が必要です。ほかの格安SIM事業者にも同様の長期未利用ルールがあることが多いため、契約前に各社の公式ページで条件を確認してください。
家族名義の番号で受け取る場合の規約上の注意
3つ目の選択肢は、日本国内にいる家族(きょうだいや配偶者など)の携帯電話番号で認証コードを受け取ってもらい、電話やメッセージアプリで内容を伝えてもらう方法です。手続きの発生頻度が低い場合は現実的な手段ですが、いくつか注意点があります。まず、銀行や証券会社の多くは、登録した電話番号の名義人と口座名義人が異なる状態を想定していない場合があり、規約上は本人以外の電話番号での認証利用がどこまで許容されるか、サービスごとに解釈が分かれます。認証コード自体を第三者に伝達する行為が、各社の利用規約やセキュリティポリシーに抵触しないか、事前に各機関へ確認しておくと安心です。
また、これは家族間の信頼を前提にした運用であるため、送金や手続き内容の透明性を保つことも重要です。海外からの介護費の手配・送金の記録の残し方は海外からの介護サービス手配ガイドでも扱っているとおり、誰が何を代行したかを記録しておくと、後になって家族間で行き違いが生じにくくなります。
実務上は、代理受信を頼む家族が1人に固定されていると、その家族が旅行や体調不良で連絡が取れないタイミングに手続きが集中してしまうリスクもあります。可能であれば代理受信の役割を担える家族を複数人確保しておく、あるいは緊急時の連絡順を決めておくといった備えをしておくと、1人に負担が偏る事態を避けやすくなります。認証コードを伝える手段も、電話の口頭伝達だけに頼らず、スクリーンショットを直接共有できる家族間の連絡アプリを決めておくと、聞き間違いによる入力ミスを減らせます。
認証方法変更と窓口・郵送への切替
4つ目は、認証手段そのものをSMS以外に変更してもらうよう、金融機関や自治体に直接相談する方法です。銀行によっては、SMS認証が受け取れない海外居住者向けに、専用アプリでのプッシュ通知型認証、ワンタイムパスワード生成器(トークン)、あるいは音声通話での認証コード読み上げといった代替手段を用意している場合があります。ただし対応の有無・条件は金融機関ごとに異なるため、「海外に住んでいてSMSが届かない」という状況を伝えたうえで、各社の窓口・お問い合わせフォームで個別に確認する必要があります。
みずほ銀行の公式FAQは、みずほダイレクトのSMS認証について「国内でのご利用を前提としたサービス」であり、090・080・070・020から始まる国内の携帯電話番号でなければSMS認証を利用できない旨を明示しています。銀行側が海外からの利用を制度上は想定していないと明言しているケースがあるということは、海外にいる家族が「自分のやり方が悪いのではなく、そもそも仕組みが国内在住者向けにできている」と理解する助けになります。原因が分かれば、番号を維持する・家族に頼む・窓口に切り替えるといった対応策を早い段階で選びやすくなります。
行政手続きについては、マイナポータルはスマートフォン用電子証明書を使ったログイン方法があり、SMS認証とは別の本人確認の仕組みが用意されています。ただし電子証明書の発行・更新自体に、住民票のある国内在住者であることが前提になっている手続きも多く、海外在住者が単独で完結できるとは限りません。オンライン申請にこだわらず、紙の申請書を郵送でやり取りする、代理人(家族や行政書士)に窓口で申請してもらうという選択に切り替えるのも現実的な対応です。役所窓口での代理手続きの進め方は海外家族向けの介護コーディネートガイドでも整理しています。
帰国時の復帰
一時帰国と本帰国で異なる復帰の段取り
番号保管サービスを使っていた場合、一時帰国のタイミングで保管を解除し、通常契約に戻すことができます。手続きには来店や本人確認書類の提示が必要になることが多く、短い一時帰国日数の中で済ませるなら、渡航前にキャリアへ必要書類・所要時間を確認しておくとスムーズです。頻繁な一時帰国を前提にした遠距離介護の全体設計は遠距離介護の進め方ガイドでも扱っています。
本帰国(永住帰国)の場合は、保管期間内であれば同じ番号を復活させられますが、保管期間の上限(ドコモ最長6年・au/ソフトバンク最大5年、2026年7月時点)を超えてしまうと番号自体が失われ、新規契約となる点に注意してください。長期の海外生活の後に帰国が視野に入っている場合は、保管期限がいつ切れるかをあらかじめ把握しておくことが欠かせません。
同じ番号を使い続けられるかどうかは、認証まわりの手続きの手間に直結します。銀行やマイナポータルに登録している電話番号を、帰国のたびに新しい番号へ変更するのは想像以上に手間がかかり、金融機関によっては本人確認書類の再提出を求められることもあります。永住帰国の時期がある程度見えている家庭では、保管期限が切れる前に一度帰国して保管を解除しておく、あるいは保管を延長する手続きを取っておくといった判断が必要になります。永住帰国前後の住民票・年金・健康保険の準備全般は、在外邦人向けの帰国準備の情報も合わせて確認しておくと手続きの抜け漏れを防ぎやすくなります。
認証方法を元に戻すタイミング
海外在住中にSMS以外の認証方法へ変更してもらっていた場合や、家族の番号を代理受信先として登録していた場合は、帰国後に自分名義の番号へ登録し直す手続きも必要になります。銀行・証券会社・行政サービスそれぞれで変更手続きの窓口が異なるため、帰国前後のタイミングで一覧化しておくと漏れを防げます。親の資産管理や口座の代理権限とあわせて認証手段を整理しておくと、帰国後の手続きが二度手間になりにくくなります。認証手段の整理と合わせて、親の口座・資産の代理権限をどう整えるかは親のお金と権限の整理ガイドにまとめています。
比較表
混同しやすい点を、表の形で切り分けます。
| 対応策 | 費用の目安 | 実現しやすさ | 使える場面・注意点 |
|---|---|---|---|
| 大手キャリアの番号保管サービス | 事務手数料1,100〜4,950円+月額409〜440円程度(2026年7月時点、各社公式で要確認) | 契約中の回線があれば手続きは比較的容易 | 番号の所有権は守れるがSMSは保管中に受信不可。帰国時の復帰が前提 |
| povo等の低額維持 | 基本料0円+SMS受信無料(データ・発着信は別途有料) | 契約・維持は容易だが180日ルールの管理が必要 | 海外にいながらSMS認証を受け取りたい場合に有効。放置すると番号失効のリスク |
| 家族名義の番号で受ける | 追加費用なし(家族の回線を利用) | 家族の協力があれば即実行可能 | 規約上の許容範囲を各機関に要確認。認証コードの伝達方法に注意 |
| 認証方法変更・窓口/郵送への切替 | 無料〜書類郵送の実費程度 | 対応可否は機関ごとに異なり事前確認が必須 | オンライン完結にこだわらない代替ルート。行政手続きは代理人経由も検討 |
よくある質問
親の介護保険料の口座振替を変更しようとしたら銀行アプリでSMSコードの入力を求められました、日本の番号を持っていない私はどうすればいいですか
まずは銀行の窓口・お問い合わせフォームに、海外在住でSMSが受け取れない旨を伝え、音声通話やアプリ認証など代替の本人確認手段がないか確認してください。対応が難しい場合は、日本にいる家族の番号を認証先として登録できるか、あるいは郵送・窓口での手続きに切り替えられるかを合わせて相談すると進めやすくなります。
要介護認定のオンライン申請でマイナポータルにログインしようとしたら電話番号の登録を求められました、海外からでも手続きできますか
マイナポータルにはスマートフォン用電子証明書を使ったログイン方法もありますが、発行・更新の前提条件は自治体やサービスによって異なります。オンライン申請にこだわらず、家族や行政書士に窓口で代理申請してもらう、紙の申請書を郵送でやり取りするという選択肢も現実的です。
出国前にpovoの回線だけ残しておけば海外でも銀行のSMS認証コードは届きますか
povo2.0は海外ローミングでのSMS受信が無料とされていますが、有料トッピングを180日間購入しないと利用停止、その後30日で契約解除になる運用ルールがあります。長期滞在中に忘れると番号ごと失うため、購入期限をカレンダーで管理するか家族に定期購入を頼んでおく必要があります。
弟のスマホに実家の銀行のSMSコードを転送してもらって手続きを進めても規約違反になりませんか
金融機関によっては、口座名義人以外の番号での認証利用がどこまで許容されるか規約上の解釈が分かれます。実際に運用する前に、各金融機関の窓口へ「海外在住で本人以外の番号を認証先にできるか」を個別に確認しておくと安心です。
一時帰国のタイミングで日本の電話番号を復活させたい場合どのくらい前から準備すればいいですか
番号保管サービスの解除には来店や本人確認書類の提示が必要になることが多いため、渡航前にキャリアへ必要書類と所要時間を問い合わせておくとスムーズです。短い一時帰国日数の中で済ませたい場合ほど、事前確認が重要になります。
認証方法をSMSから別の方法に変更してほしいと金融機関に頼むことはできますか
対応の有無・条件は金融機関ごとに異なります。プッシュ通知型のアプリ認証やワンタイムパスワード生成器を用意している金融機関もあるため、海外在住でSMSが届かない状況を説明したうえで、各社の窓口やお問い合わせフォームで個別に相談してください。
一次情報・公的情報
本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-11.
- 長期間利用されないとき(海外赴任・留学など)の電話番号保管・解除|NTTドコモ(curl verified 200)
- 一時休止・再利用|au(curl verified 200)
- 各種手数料などの改定について(2026年8月1日改定・KDDI News Room, curl verified 200)
- 電話番号・メールアドレスお預かりサービス|ソフトバンク(curl verified 200)
- 海外ローミング|povo2.0(curl verified 200)
- 長期間(180日間)トッピング未購入による利用停止について|povoサポート(curl verified 403、実在ページ・ボット拒否)
- 海外にいるため、みずほダイレクト[インターネットバンキング]のSMS認証が届きません|みずほ銀行(curl verified 200)
- 「介護ワンストップサービス」のご案内|WAM NET(curl verified 200)
- スマホ用電子証明書の利用開始|マイナポータル(curl verified 200)
この記事について
この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。
