川崎市で親の通院・外出の足を確保する方法は、介護保険の通院等乗降介助・自費の介護タクシー・NPOの福祉有償運送・市の福祉タクシー利用券・サポート救急の5通りに整理でき、対象や料金の仕組みがそれぞれ異なります。
移動手段を選ぶ前の確認
4つの移動手段とケアプランでの位置づけ
親の通院や外出のたびにタクシー代がかさんで困る、という相談は多くの家族から聞かれます。まず整理しておきたいのは、川崎市で使える移動手段は1つに絞られておらず、性格の異なる4種類が並んでいるという点です。1つ目は介護保険の訪問介護に含まれる「通院等乗降介助」で、要介護1〜5の認定を受けた人が対象になり、乗車前の準備・乗降時の介助・降車後の受診手続きの介助までを含む1回97単位のサービスとして評価されます。ただし要支援の認定では利用できません。2つ目は保険を使わない自費の「介護タクシー」で、運転手が介護資格を持ち、運賃に迎車料と介助料が上乗せされる料金体系です。3つ目はNPO法人や社会福祉法人が担う「福祉有償運送」で、公共交通機関の利用が難しい人に限定した低廉な移送サービスです。4つ目は、一般のタクシー会社が用意する福祉車両(車いす対応車等)で、介助を前提としない移動そのものの手段になります。
この4つのうち、介護保険を使う通院等乗降介助だけは介護保険の解説に基づく公的サービスとして、必ずケアプラン・訪問介護計画書に位置づけられている必要があります。逆に言えば、ケアプランに入っていない状態でいきなり事業者へ直接予約しても、介護保険は適用されず全額自己負担になります。この順番の違いを知らないまま動くと、あとから「保険を使えたはずなのに自費で払ってしまった」という後悔につながりやすい部分です。
また、通院等乗降介助は「身体介護が中心である場合」とは別区分で評価される点も知っておくと混乱が減ります。乗り降りの介助だけでなく、着替えや排せつ介助など体に直接触れる身体介護を伴う時間が長い場合は、通院等乗降介助ではなく身体介護中心型として算定されることがあり、どちらで計画するかはケアマネジャーが本人の状態を見て判断します。家族が「乗り降りだけ頼みたい」と思っていても、実際には身体介護が必要な状態であれば単位数や評価の仕方が変わるため、思い込みで手段を決めず、まず専門職の判断を仰ぐことが結果的に無駄のない選び方になります。
ケアマネジャー相談による保険適用の可否判定
通院の予定が決まったら、最初にすべきことは移動手段の予約ではなく、ケアマネジャーへの相談です。通院等乗降介助を使えるかどうかは、要介護度だけでなく、本人の状態(一人で歩行・乗降ができるか)、通院先の性質、他の訪問介護サービスとの組み合わせによっても変わるため、判断はケアマネジャーが担います。ケアプランに通院等乗降介助が位置づけられれば、片道につき97単位(1割〜3割負担なので実質の自己負担は数十円から数百円程度)で乗車前後の介助を受けられます。往復で利用した場合は2回分としてカウントされる点も押さえておくとよいでしょう。
一方、院内での長時間の待ち時間の同行や、診察室での医師の説明の聞き取りまで頼みたい場合は、介護保険の枠を超えるため、自費の通院付き添い代行を組み合わせる家庭もあります。移動の介助と院内の付き添いは制度上別のサービスなので、どこまでを保険内、どこからを自費で頼むかを、ケアマネジャーと事前に切り分けておくと当日の混乱が減ります。
要支援認定や自立段階の親の代替手段
通院等乗降介助は要介護1〜5が対象で、要支援1・2や、まだ介護認定を受けていない親には使えません。この場合の選択肢は、自費の介護タクシー、福祉有償運送(要支援認定者も対象に含まれる場合がある)、一般タクシーの福祉車両のいずれかになります。特に、まだ要介護認定を受けていないものの足腰が弱ってきた親の通院に付き添いたい、という段階の家族は、介護保険サービスを前提にせず、まずは自費でどこまで対応できるかを把握しておくと、認定が下りるまでの空白期間を安心して過ごせます。地域包括支援センターに相談すれば、認定の見込みや、認定前でも使える地域の移動支援の情報を教えてもらえることもあります。
事業者選びと料金の仕組み
介護タクシーの料金構造と予約の流れ
自費の介護タクシーを使う場合、料金は大きく3つの要素で構成されます。1つ目はメーター運賃と迎車料で、一般タクシーとほぼ同水準です。2つ目は基本介助料で、乗り降りの介助に対して1乗車あたり1,000円程度を設定している事業者が多く見られます。3つ目は車いすやストレッチャーなどの機材料で、車いすは無料から1,400円程度、ストレッチャーは4,000円から6,000円程度が目安とされています。実際の料金は事業者ごとに幅があるため、予約前に複数社へ見積もりを確認し、通院先までの距離・介助の内容・機材の要否を伝えたうえで比較すると安心です。要介護認定を受けている人で、ケアプランに通院等乗降介助が位置づけられていれば、97単位(1割負担で約105円)分は介護保険でまかなわれ、家族が別途負担するのは介護保険対応タクシーの運賃部分だけで済む場合もあります。
目安として、迎車料300円前後、初乗り運賃700円台、走行分のメーター運賃1,000円前後、基本介助料1,000円という組み合わせを足すと、片道あたり3,000円台後半になる例が事業者の公表資料に見られます。車いすのまま乗車できる車両を使う場合や、ストレッチャーでの搬送が必要な場合は、これに機材料が加わるため、事前に見積もりで総額を確認しておくと、月々の通院にかかる費用を把握しやすくなります。
福祉有償運送の対象と探し方
福祉有償運送は、NPO法人や社会福祉法人などの非営利法人が、国土交通省・運輸支局の登録を受けて行う移送サービスです(登録要件は出典の神奈川県ページを参照)。対象は、他人の介助によらずに移動することが困難で、かつ単独では一般のタクシーなどの公共交通機関を利用することが困難な人に限られ、具体的には要介護・要支援認定を受けている人、身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳のいずれかを持つ人、基本チェックリストに該当する人などが該当します。運賃はおおむねタクシー運賃の半分以下が目安とされますが、迎車料金・介助料金・待機料金・添乗料金が別途かかる事業者もあります。川崎市内で福祉有償運送を行う事業者は限られるため、まずは川崎市の福祉有償運送の案内窓口(出典参照)や、地域のNPO・市社会福祉協議会の運営協議会を通じて紹介を受ける、または担当のケアマネジャーに探してもらうのが確実です。会員登録制を取る団体が多く、初めて利用する際は入会手続きに数日かかる場合もあるため、通院日が決まった時点で早めに動き出すことが実務上のポイントです。
川崎市の福祉タクシー利用券とサポート救急
川崎市には、公的な費用補助として「福祉タクシー利用券」があります。1枚あたり500円までの運賃・迎車料を助成し、対象者には月7枚(人工透析で週3回以上通院している腎臓機能障害の人は月14枚)が交付されます。ただし対象は、身体障害者手帳1級・2級(下肢・体幹・視覚・内部障害のいずれかを含む)、3級(下肢・体幹・視覚・内部障害を含み療育手帳B1判定を併せ持つ場合)、療育手帳A1・A2、精神障害者保健福祉手帳1級を持つ人に限られており、要介護認定を受けているだけでは対象になりません。福祉タクシー利用券は障害福祉の制度として運用されているため、上記いずれかの手帳を持たない要介護高齢者は対象外です。
もう一つ、川崎市独自の仕組みとして「サポート救急」があります。これは救急車を呼ぶほどではないが自力や家族だけでは病院へ行けないときに、川崎市消防局が認定した民間の患者等搬送事業者(タクシー・民間救急車)を紹介する制度です。認定事業者の乗務員は応急手当の講習を受けており、入院・退院・通院・転院や施設への送迎で利用できます。料金は紹介先の事業者ごとに異なるため、利用前に個別に確認する必要があります。なお、症状が急変し緊急性がある場合はサポート救急ではなく迷わず119番を呼ぶことが前提です。
当日から支払いまで
予約から乗車・降車介助までの流れ
移動手段が決まったら、通院日の数日前までに事業者へ予約を入れます。介護タクシー・福祉有償運送とも、当日は自宅での準備介助(着替えや車いすへの移乗)、乗車前の見送り、車内での安全確保、通院先到着後の降車介助という流れで進みます。通院等乗降介助を使う場合は、訪問介護計画書に沿ってヘルパーが担当し、院内での受付や会計までの短い移動介助が含まれることもありますが、長時間の院内待機や診察室での同席までは範囲外になるのが一般的です。院内での付き添いも依頼したい場合は、別途通院付き添い代行のサービスと組み合わせる家庭もあります。当日の持ち物としては、介護保険被保険者証、診察券、お薬手帳、福祉タクシー利用券を使う場合はその利用券と障害者手帳を忘れずに準備しておきます。
精算方法と領収書の管理
精算は、介護保険を使う通院等乗降介助であれば通常の訪問介護と同じく月末にまとめて利用者負担分(原則1〜3割)を事業所へ支払う形になります。自費の介護タクシーや福祉有償運送は、その場で現金またはキャッシュレス決済で支払うのが一般的です。福祉タクシー利用券を使う場合は、乗車後に利用券を運転手へ渡す形で1枚500円分が差し引かれ、残額があれば現金等で精算します。医療費控除の申告に備えて、通院にかかったタクシー代・介護タクシー代の領収書は月ごとにまとめて保管しておくと、確定申告の時期に慌てずに済みます。費用全体の家計への影響は介護費用のガイドでも整理していますので、通院の移動費だけでなく年間の介護費用全体の見通しを立てる際にあわせて確認するとよいでしょう。
なお、当日になって予約していた事業者の車両が急に手配できなくなる、といった事態も起こり得ます。こうした場合に備えて、介護タクシー会社を1社だけでなく2〜3社把握しておく、ケアマネジャーに代替の連絡先を確認しておく、といった二重の備えをしておくと、当日慌てずに済みます。特に通院日が固定されている透析や定期検査などは、キャンセル待ちや代替便の少なさが影響しやすいため、早めの予約が結果的に費用も手間も抑えることにつながります。天候不良や道路状況で到着が遅れることもあるため、初診や検査など予約時間の融通が利きにくい通院の際は、余裕を持った出発時刻を事業者と相談しておくと安心です。
海外から手配する場合
通院日前の手配と役割分担
海外に住んでいて当日の送迎に立ち会えない家族にとって、通院の移動手段は「誰が現地で決めて動くか」を先に固めておくことが安心につながります。実務としては、ケアマネジャーに海外在住の家族がいることを伝え、通院等乗降介助をケアプランに位置づけてもらったうえで、介護タクシー・福祉有償運送のどちらを使うかも含めて事業者の連絡先を共有してもらうのが現実的です。一時帰国のタイミングと通院日を合わせられる場合は、その回だけ自分が付き添い、それ以外の回はヘルパーや介護タクシーに任せる、という形で役割分担すると、毎回の移動手段の心配を減らせます。遠距離介護の進め方や海外から親の介護を支える方法にも、現地の連絡網を整えておく考え方をまとめています。
緊急時の移送手段の事前共有
もう一つ準備しておきたいのが、緊急ではないが急に病院へ行く必要が生じたときの選択肢です。サポート救急のような紹介制度があることを、日本国内にいる兄弟や近くに住む親族と事前に共有しておけば、海外にいる自分が電話越しに状況を把握しきれない場面でも、国内側の家族が落ち着いて手配できます。交通費や介助料の負担についても、誰がいくら立て替えるか、あとで清算する方法を決めておくと、費用面での行き違いを防げます。家族の帰省にかかる交通費を抑える工夫は介護帰省の交通費割引ガイドにまとめていますので、親自身の通院移動費とあわせて年間の費用感をつかんでおくと、海外からの介護全体の見通しを立てやすくなります。
区役所の高齢・障害課や地域包括支援センターの連絡先、担当ケアマネジャーの電話番号、契約している介護タクシー・福祉有償運送の事業者名と連絡先は、一枚のメモにまとめて国内の家族と共有しておくと役立ちます。誰が今どの制度を使っているか、次の更新時期はいつかを家族全員が把握できていれば、海外にいる自分が急に連絡を受けても、慌てずに国内側へ的確な指示を出せます。こうした連絡網づくりは、通院の移動手段に限らず、介護全体の備えとしても効果があります。
比較表
主な違いを表で見比べられるように並べます。
| 手段 | 対象 | 料金の目安 | 予約のしやすさ |
|---|---|---|---|
| 通院等乗降介助(介護保険) | 要介護1〜5・ケアプラン位置づけ必須 | 97単位/回(1〜3割負担) | ケアマネジャー経由で調整 |
| 民間介護タクシー | 制限なし(自費) | 運賃+迎車料+基本介助料約1,000円+機材料 | 事業者へ直接予約・比較的取りやすい |
| 福祉有償運送(NPO等) | 要介護・要支援認定者や障害者手帳保持者等、単独移動が困難な人 | タクシー運賃の概ね半分以下+迎車料等 | 会員登録制が多く事前手続きが必要 |
| 福祉タクシー利用券/サポート救急(川崎市) | 主に障害者手帳等の保持者(利用券)/制限なし(サポート救急) | 利用券1枚500円まで助成/事業者ごとに異なる | 交付申請・事業者紹介が必要 |
よくある質問
母は要介護3ですが、通院のたびに介護保険で乗り降りの介助をお願いできますか?
要介護1〜5であれば、ケアプランに通院等乗降介助が位置づけられていることを条件に利用できます。まずはケアマネジャーに相談し、訪問介護計画書に位置づけてもらう必要があります。要支援の認定では利用できません。
ケアマネジャーに相談せずに、いきなり介護タクシー会社へ直接予約してもよいですか?
予約自体は可能ですが、その場合は介護保険が適用されず全額自己負担になります。介護保険を使いたい場合は、先にケアマネジャーへ相談してケアプランへ位置づけてもらう手順を踏んでください。
父は障害者手帳を持っていませんが、川崎市の福祉タクシー利用券は使えますか?
使えません。福祉タクシー利用券の対象は身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の保持者に限られており、要介護認定を受けているだけでは対象になりません。この券が障害福祉の制度である点を押さえておくと、他の移動手段を早めに検討しやすくなります。
急な体調不良ではないのですが、家族だけで親を病院に連れて行けないときはどうすればよいですか?
川崎市消防局が認定する「サポート救急」を使うと、応急手当の講習を受けた乗務員がいる民間の搬送事業者を紹介してもらえます。料金は事業者ごとに異なるため、事前に確認してください。なお緊急性がある場合は119番を利用します。
NPOの福祉有償運送を使いたいのですが、川崎市内でどこに問い合わせればよいですか?
川崎市の福祉有償運送のページや市社会福祉協議会、地域の運営協議会を通じて事業者を紹介してもらえます。担当のケアマネジャーに探してもらう方法も現実的です。多くの団体は会員登録制のため、通院日が決まったら早めに問い合わせておくと安心です。
海外に住んでいて当日の送迎に立ち会えない場合、代わりに誰が手配してくれますか?
ケアマネジャーに海外在住の家族がいることを伝えておくと、通院等乗降介助のケアプラン位置づけや、介護タクシー・福祉有償運送の連絡先の共有まで含めて調整してもらいやすくなります。一時帰国のタイミングに合わせて自分が付き添う回を決めておく家庭もあります。
介護タクシーの料金は、通院1回あたりいくら準備しておけば安心ですか?
距離や介助内容によって幅がありますが、迎車料・メーター運賃・基本介助料(目安1,000円程度)・車いすなどの機材料を合わせて考えておくと見積もりが立てやすくなります。正確な金額は予約前に事業者へ見積もりを確認してください。
一次情報・公的情報
本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-11.
この記事について
この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。
