制度ガイド

高額介護サービス費の申請方法|上限額表と2年の時効

高額介護サービス費は自己負担が月の上限を超えた分の払い戻しで、初回申請すれば以後は自動振込です。所得区分別の上限額、世帯合算の仕組み、2年の時効での遡り申請、海外在住の子が代理で進める実務をまとめました。

公開日
2026-07-03
最終更新日
2026-07-03
情報確認日
2026-07-03
出典
5件の一次情報・公的情報

高額介護サービス費は自己負担が月の上限を超えた分の払い戻しで、初回申請すれば以後は自動振込です。所得区分別の上限額、世帯合算の仕組み、2年の時効での遡り申請、海外在住の子が代理で進める実務をまとめました。

制度の仕組み

高額介護サービス費とは何を払い戻す制度か

高額介護サービス費は、介護保険サービスを利用した際の1〜3割の自己負担額が、1か月の合計で上限額を超えた場合に、超えた分を後から払い戻す制度です。対象になるのは介護サービス費用の自己負担分のみで、福祉用具の購入費や住宅改修費の自己負担、施設の食費・居住費・日常生活費などは対象に含まれません。区分支給限度額の範囲内で介護サービスを組んでいても、要介護度が重く利用量が多い月は、自己負担の合計が上限を超えることがあります。この制度を知らないまま自己負担を払い続けると、本来戻ってくるはずのお金を受け取り損ねることになります。

海外在住の家族にとってこの制度が特に見落とされやすいのは、日本国内に住んでいれば当たり前に届く自治体からの案内郵便を、確認できないまま放置してしまいやすいからです。制度そのものの存在は知っていても、申請書が実際に届いているかどうかを誰も把握していない、という状況は珍しくありません。まずは制度の骨格を押さえたうえで、後半の海外家族の実務パートで具体的な確認方法を扱います。

所得区分別の上限額表

上限額は、本人または同一世帯の課税状況によって6段階に区分されます。代表的な区分と月額上限は次のとおりです。

第1段階・第2段階の15,000円は個人単位の上限で、世帯合算で計算する場合の世帯上限は第1段階が15,000円、第2段階が24,600円と異なります。ここを取り違えると払い戻し額の見積もりがずれるので注意してください。また、第2段階の判定に使う所得基準(80万9千円)などの金額は年度によって見直されることがあるため、実際に該当する区分と正確な金額は、市区町村の介護保険課に確認するのが確実です。

第5段階・第6段階という高所得層向けの区分は、もともとの制度にはなく、医療保険の高額療養費制度の見直しに合わせて導入された比較的新しい区分です。導入の背景にあるのは、現役世代並みの所得がある高齢者にも、所得に応じた負担を求める考え方です。親の世帯が該当するかどうかは、課税所得の額だけでなく、同一世帯に65歳以上でこの基準を満たす人がいるかどうかでも変わるため、単純に年収の見た目だけで判断しないほうが安全です。

区分対象の目安上限額
第1段階区市町村民税非課税世帯で老齢福祉年金受給者・生活保護受給者個人15,000円(世帯上限も15,000円)
第2段階区市町村民税非課税世帯で、合計所得金額と課税年金収入額の合計が80万9千円以下個人15,000円・世帯24,600円
第3段階区市町村民税非課税世帯で第2段階以外世帯24,600円
第4段階一般区分(第1〜3段階に該当せず課税所得380万円未満)世帯44,400円
第5段階課税所得380万円以上690万円未満世帯93,000円
第6段階課税所得690万円以上世帯140,100円

支給されるかどうかの具体例

たとえば住民税課税世帯(第4段階、上限44,400円)で、ある月の自己負担合計が60,000円だった場合、60,000円から44,400円を差し引いた15,600円が高額介護サービス費として支給されます。一方、住民税非課税世帯(第3段階、上限24,600円)で自己負担合計が32,000円だった場合は、32,000円から24,600円を差し引いた7,400円が支給されます。逆に自己負担合計が上限額以下の月は、そもそも支給の対象になりません。福祉用具購入費や住宅改修費、施設の食費・居住費はこの計算に含めない点も、家計を見積もるときに誤解しやすいところです。

支給申請書に実際に記入する項目

市区町村から届く支給申請書には、被保険者番号、本人の氏名・生年月日・住所、印鑑、振込先の金融機関名・支店名・口座番号・口座名義が主な記入項目として並びます。あわせて、その月に利用した介護サービスの自己負担額が分かる領収書の写しを求められる自治体もあります。書式は自治体ごとに細部が異なりますが、記入項目そのものは共通しているところが多く、初めて申請する家族でも記入に迷う場面は少ない設計です。分からない欄があれば、空欄のまま提出せず、介護保険課に電話で確認してから記入すると差し戻しを避けられます。

合算と時効

同一世帯に複数の利用者がいる場合の合算

同じ世帯に介護サービスを利用している人が2人以上いる場合、それぞれの自己負担額を世帯単位で合算し、世帯全体の上限額との差額が高額介護サービス費として支給されます。個人単位では上限を超えていなくても、世帯で合算すると超える、というケースは珍しくありません。親が2人とも介護サービスを利用している世帯や、親と同居する高齢の親族も利用者である世帯では、この合算のしくみを把握しておくと払い戻し漏れを防ぎやすくなります。なお、住民票上の世帯を分けると、この合算そのものができなくなる点には注意が必要です。世帯分離が保険料や上限区分に与える影響は世帯分離のガイドで詳しく解説しています。

合算の具体例で見ると分かりやすくなります。住民税課税の一般区分(第4段階、世帯上限44,400円)の世帯で、父の自己負担が30,000円、同居する母の自己負担が25,000円だったとします。個人単位ではどちらも44,400円を超えていませんが、世帯で合算すると55,000円になり、上限44,400円との差額10,600円が高額介護サービス費として支給されます。片方だけの自己負担額を見て「上限を超えていないから対象外」と判断してしまうと、この差額を受け取り損ねることになります。

申請は最初の1回、以後は自動振込

高額介護サービス費に新たに該当すると、サービスを利用した月からおよそ3か月後に、市区町村から支給申請書が自宅に郵送されます。必要事項を記入し、振込先口座の情報を添えて申請書を提出すれば、支給決定通知書が届いた後、指定口座に振り込まれます。ここで重要なのは、この最初の申請さえ済ませれば、その後同じ状況が続く限り、毎回申請しなくても該当する月分が自動的に同じ口座へ振り込まれる仕組みになっていることです。逆に言えば、最初の申請を放置していると、該当していた月分の払い戻しをまだ一度も受け取れていない可能性があります。

2年の時効と、さかのぼって申請できる範囲

高額介護サービス費の請求権には時効があり、サービスを利用した月の翌月1日を起算日として2年間です。自己負担分の支払いが翌月1日以降にずれ込んだ場合は、実際に支払った日の翌日が起算日になります。つまり、申請を忘れていた月があっても、時効の2年以内であればさかのぼって申請し、払い戻しを受けられる可能性があります。市区町村から申請書が届いていたのに提出し忘れていた場合や、要介護認定の更新などで一時的に申請の案内が来なかった場合は、介護保険課に問い合わせて過去分の対象月を確認する価値があります。時効が過ぎた月分は請求できないため、心当たりがあれば早めに確認することをすすめます。

特に確認しておきたいのは、施設入所や退院直後などサービス利用量が一時的に増えた月です。要介護度が急に重くなった時期や、ショートステイを連続して使った時期は、自己負担が普段より膨らみやすく、その分だけ上限を超えている可能性も高くなります。過去の利用明細や領収書が手元に残っていれば、月ごとの自己負担額を並べて見直すだけでも、申請漏れがないかの見当がつきやすくなります。

似た制度との違い

高額医療・高額介護合算療養費制度との違い

高額介護サービス費は、あくまで1か月単位で介護サービスの自己負担だけを対象にした制度です。これに対して、医療費と介護費の両方が同じ年にかさんだ世帯を対象にした年単位の制度が、高額医療・高額介護合算療養費制度です。毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間で、医療保険と介護保険の自己負担を合算し、世帯の所得に応じた基準額を超えた分が払い戻されます。介護保険にかかる部分は「高額医療合算介護サービス費」、医療保険にかかる部分は「高額介護合算療養費」として、それぞれ支給される仕組みです。入院と介護が同じ年に重なった世帯は、高額介護サービス費だけでなくこの合算制度も確認すると、払い戻し漏れを防ぎやすくなります。費用全体の中でこの制度がどう位置づくかは介護費用のガイドでも扱っています。

対象に含まれない費用

高額介護サービス費の計算に含まれるのは介護サービス費用の自己負担分のみで、福祉用具の購入費、住宅改修費の自己負担、施設の食費・居住費(滞在費)、日常生活費などは対象外です。これらの費用が家計を圧迫している場合は、高額介護サービス費とは別に、施設の食費・居住費を軽減する負担限度額認定などの制度を確認する必要があります。制度ごとに対象範囲が異なるため、「介護費用が高いから高額介護サービス費を申請すれば全部戻る」という誤解は避けたいところです。制度全体の組み合わせ方は介護保険のガイドで整理しています。

現役並み所得世帯・低所得世帯それぞれの注意点

課税所得380万円以上の世帯(第5段階・第6段階)は、上限額が93,000円・140,100円と高く、月々の払い戻し自体が発生しにくい所得層です。この見直しは、医療保険の高額療養費制度に合わせて導入された経緯があり、同じ世帯に課税所得380万円以上の65歳以上の人がいるかどうかで区分が変わります。一方、住民税非課税世帯や生活保護受給者にあたる第1段階・第2段階は個人の上限が15,000円(世帯上限は第1段階15,000円・第2段階24,600円)と低く抑えられており、所得が少ない世帯ほど早い段階で払い戻しの対象になる設計です。自分の世帯がどの段階に当てはまるかを漠然と推測するのではなく、実際の課税証明書の内容をもとに介護保険課へ確認することをすすめます。

海外から進める実務

申請書が届いているか、まず確認する

海外在住の家族にとって最初のハードルは、申請書が届いているかどうかを本人以外が把握しづらいことです。国内に同居・近居の親族がいれば、郵便物を確認してもらうのが最も早い方法です。近くに頼れる親族がいない場合は、担当のケアマネジャーに「高額介護サービス費の対象になっていないか、市区町村に確認してほしい」と相談する方法もあります。ケアマネジャーの役割や相談の仕方はケアマネジャーのガイドにまとめています。

振込口座と委任状の扱い

支給申請書に記入する振込先口座は、原則として本人名義の口座です。本人が高齢で手続きが難しい場合や、口座の管理を家族が代行している場合は、委任状を添えることで代理での申請・受け取りが可能になる自治体が多くあります。委任状の様式や必要書類は自治体ごとに異なるため、申請前に介護保険課へ電話やオンライン申請フォームで確認しておくと、帰国のタイミングに合わせて動きやすくなります。本人が亡くなった後に未受給分が残っていた場合は、振込先口座を相続人の口座に変更する手続きが必要になり、法定相続人であることを示す資料の提出を求められることもあります。

海外在住のまま委任状を整える場合、現地の日本領事館で在留証明やサイン証明を取得し、それを添付書類として提出できるかどうかを事前に自治体へ確認しておくと二度手間になりません。委任状に押す印鑑を本人が既に持っていない、あるいは判断能力に不安がある場合は、成年後見制度の利用も視野に入れる必要があり、この点は財産管理全般に関わるため、必要に応じて司法書士など専門職への相談を検討してください。

海外から進める場合の全体像

海外在住のまま日本の行政手続きを進めるのは、時差や郵送のタイムラグもあって思うように進まないことが多いものです。高額介護サービス費のように「申請さえ済ませれば以後は自動」という制度は、一度きちんと初回申請を通しておく価値が特に高いと言えます。帰国のタイミングで介護保険課の窓口に相談する、電話で状況を確認する、ケアマネジャーに窓口とのやり取りを依頼するなど、複数の手段を組み合わせて進めるのが現実的です。海外家族が介護全体をどう調整していくかは海外在住家族向けの介護コーディネートガイド遠距離介護のガイドもあわせて参考にしてください。

一時帰国の機会が限られている家族向けに、優先度の高い確認事項を整理すると次のようになります。

介護保険課の窓口で、過去2年分の対象月が残っていないかをまとめて確認する

振込先口座が本人名義のままで問題ないか、委任状が必要な状況かを確認する

ケアマネジャーに、次回のモニタリング時に自己負担額の推移を共有してもらえるか相談する

住民税非課税かどうかの区分が、直近の課税状況で変わっていないかを確認する

限られた滞在時間の中でこれらを一度に済ませようとせず、電話やオンライン申請フォームで先に用件を伝えてから窓口に行くと、当日のやり取りが短く済みます。

比較表

表で並べると、違いは次のようになります。

制度単位対象
高額介護サービス費1か月介護サービスの自己負担のみ
高額医療・高額介護合算療養費1年(8月〜翌年7月)医療保険と介護保険の自己負担の合計
負担限度額認定(補足給付)都度施設の食費・居住費

よくある質問

高額介護サービス費の上限額は誰の所得で決まりますか?

本人または同一世帯の課税状況で6段階に区分されます。世帯全員が住民税非課税かどうかが最初の分かれ目になり、課税世帯の場合はさらに課税所得の額で区分が分かれます。実際の該当区分は市区町村の介護保険課に確認してください。

申請を忘れていた月があっても、後から払い戻しを受けられるのでしょうか?

可能な場合があります。請求権の時効はサービスを利用した月の翌月1日から2年間で、その範囲内であればさかのぼって申請できます。時効を過ぎた月分は請求できないため、心当たりがあれば早めに介護保険課へ確認してください。

一度申請すれば、毎月申請しなくても払い戻されますか?

はい。最初に申請して支給が決定すると、以後は同じ口座に自動的に振り込まれる運用になっています。状況が変わらない限り、月ごとの再申請は不要です。

福祉用具のレンタル費用や施設の食費も、高額介護サービス費で戻ってきますか?

戻りません。対象になるのは介護サービス費用の自己負担分のみで、福祉用具購入費、住宅改修費の自己負担、施設の食費・居住費、日常生活費は含まれません。これらは別の軽減制度で確認する必要があります。

高額介護サービス費と高額医療・高額介護合算療養費は、両方申請できますか?

両方に該当することがあります。高額介護サービス費は月単位で介護費だけを対象にし、高額医療・高額介護合算療養費は年単位で医療費と介護費の合計を対象にする別の制度です。医療と介護の両方の負担が重かった年は、両方を確認してください。

海外に住んでいて本人の郵便物を確認できない場合、申請の対象になっているかをどう調べればよいでしょうか?

国内の親族に郵便物を確認してもらう方法や、担当のケアマネジャーに市区町村への確認を依頼する方法があります。窓口とのやり取りをケアマネジャーに相談する形でも進められます。

振込先の口座を本人名義ではなく、代理の家族の口座にすることはできますか?

委任状を添えることで代理での申請・受け取りが可能になる自治体が多くありますが、様式や必要書類は自治体ごとに異なります。申請前に介護保険課へ確認しておくと手続きがスムーズです。

世帯分離をすると、高額介護サービス費の払い戻しに影響はありますか?

影響することがあります。世帯分離で上限区分が下がる場合がある一方、世帯合算ができなくなるため、同じ世帯に複数の利用者がいる場合はかえって世帯全体の払い戻し額が減ることもあります。詳しくは世帯分離のガイドを確認してください。

一次情報・公的情報

本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-03.

この記事について

この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。

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