2020年に厚労省がオンライン面会の実施を促して以降、多くの施設がZoomやビデオ通話での面会に対応していますが、予約の要否・時間制限・職員の立ち会いは施設ごとに異なります。入居前の見学段階から時差を含めて確認しておく方法を整理しました。
入居前の準備
施設にオンライン見学を打診するときの聞き方
特養・老健・有料老人ホーム・グループホームなど、施設の種類によって入居前に見学できる余地は大きく異なります。まず施設の種類と費用の全体像を掴んで候補を絞ったうえで、電話や問い合わせフォームで「体調や渡航の都合で直接伺うのが難しいため、まずはオンラインで施設内をご案内いただくことは可能でしょうか」と切り出すと、施設側も対応の可否を判断しやすくなります。
候補となる施設が複数ある場合は、一度にすべてを回ろうとせず、優先度の高い2〜3施設に絞ってオンライン見学を依頼するほうが実務的です。各施設に同じ質問項目(居室の広さ、費用の内訳、看取りへの対応方針など)をあらかじめ用意しておけば、施設ごとの回答を横並びで比較でき、遠隔からでも判断材料を揃えやすくなります。
民間の有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、タブレットやスマートフォンを使った案内に慣れているスタッフが増えています。一方で特養のような公的性格の強い施設では、他の入居者の個人情報保護を理由に、映せる範囲を居室内や共用部の一部に限定する運用も珍しくありません。オンライン見学を依頼する段階で、映せる範囲や所要時間の目安をあわせて確認しておくと当日の進行がスムーズです。
問い合わせ先が窓口担当者なのか生活相談員なのかによっても、案内できる内容の幅が変わります。入居相談の窓口に連絡がついた時点で、当日オンラインで案内してくれるのが営業担当者なのか、実際に現場で入居者と接する生活相談員なのかを確認しておくと、居室の使い勝手や日々のスケジュールといった具体的な質問にその場で答えてもらいやすくなります。連絡手段についても、メール・電話・専用アプリのどれで進めたいかを最初に伝えておくと、その後のやり取りが1本化され、返信の行き違いを防げます。
バーチャル見学と動画共有でわかることわからないこと
施設が用意する紹介動画やビデオ通話での案内では、共用スペースの雰囲気、居室の広さ、スタッフの応対の様子まではおおむね確認できます。一方で、においや物音、他の入居者との距離感、実際の生活動線といった感覚的な情報は、画面越しだけでは伝わりにくいという限界があります。
海外在住のまま入居を決める場合は、代理で見学に行ける親族や知人がいれば同行してもらい、オンライン案内と組み合わせるのが現実的な進め方です。認知症グループホームや介護付き有料老人ホームを検討している場合は、見学の段階で入居後の面会運用についても質問しておくと、入居してから「思っていたのと違う」という行き違いを防げます。
見学の際は、施設側が撮影した既存の動画を見せてもらう方法と、その場でスタッフがスマートフォンを持って館内を歩きながら中継してくれる方法の2通りがあります。前者は編集済みで見やすい一方、質問したい箇所をその場で映してもらうことはできません。後者はその場で気になる場所を追加で見せてもらえる柔軟さがある一方、通信環境によって映像が乱れることもあります。事前にどちらの方式になるかを確認し、質問したい項目をリスト化して当日に備えておくと、限られた通話時間を無駄にせずに済みます。
定例化の実務
施設ごとに異なるオンライン面会の対応
2020年5月、厚生労働省は「高齢者施設等におけるオンラインでの面会の実施について」という事務連絡を出し、パソコンやタブレットを使ったオンライン面会の活用を全国の施設に促しました。これ以降、Zoomやスマートフォンのビデオ通話機能を使った面会は多くの施設で定着していますが、予約が必要かどうか、1回あたりの時間に上限があるか、職員が立ち会うかどうかは施設の人員体制によって差があります。特に夜勤帯の職員数が限られる施設では、日中の決まった時間帯に面会枠を集約していることが多く、海外側の都合だけで自由に時間を決められるとは限りません。
面会に使うアプリも施設ごとにまちまちです。施設が導入している専用のオンライン面会システムを使う施設もあれば、家族が使い慣れているZoomやLINEのビデオ通話をそのまま使わせてくれる施設もあります。専用システムの場合はアカウント登録や事前の接続テストが必要になることが多いため、初回の面会日より前に案内を受け取れるよう依頼しておくと、当日になって接続できないという事態を避けやすくなります。
時差を踏まえた定例面会の組み方
海外在住の家族にとって最初のハードルは、施設の面会対応時間と自分の生活時間帯の時差です。まず施設の面会受付時間を確認したうえで、自分の時間帯で無理なく続けられる曜日と時刻を1つか2つに絞って提案すると、施設側も予定を組みやすくなります。毎回日程を調整し直すより「隔週水曜日、日本時間の午後3時から」のように定例化してしまうほうが、施設・家族双方の負担が減ります。遠距離介護の進め方でも触れているとおり、決まった頻度をあらかじめ決めておくことが、負担を溜め込まない遠距離介護の基本になります。
定例化するときは、サマータイムの有無で時差が変わる地域に住んでいる場合、年に2回、切り替えのタイミングで施設側と時間帯を再確認しておく必要があります。また祝日は日本と滞在国とで異なるため、日本の祝日・年末年始・お盆の時期は面会枠が縮小されやすいことも見込んでおくと、予定が急に流れて戸惑うことを防げます。1回の通話時間は15分から30分程度を目安に区切っておくと、入居者本人の体力面でも負担になりにくく、施設側もスケジュールを立てやすくなります。
施設への依頼メールの文例
初めて依頼するときは、電話よりもメールやお問い合わせフォームで要件を明確に伝えるほうが、施設側の担当者間でも共有しやすくなります。以下はそのまま使える依頼文の一例です。
「〇〇様 いつもお世話になっております。海外在住のため直接お伺いすることが難しく、月2回程度、日本時間の水曜午後3時ごろからビデオ通話での面会をお願いできればと考えております。使用するアプリはZoomまたはLINEのビデオ通話を想定しております。母の体調やご都合に合わせて曜日・時間を調整いただければ幸いです。可能であれば、継続的な枠として今後もお願いできますでしょうか。ご検討のほど、よろしくお願いいたします。」
このように「頻度」「想定するアプリ」「時間帯の希望」の3点を最初に伝えておくと、施設側も担当者を割り当てやすくなり、返信までの時間が短くなる傾向があります。
一度決めた面会枠を変更したいときも、できるだけ早めに連絡するのが基本です。例えば「来月から仕事の都合で水曜が難しくなったため、火曜の同じ時間帯に変更いただけますか」のように、変更後の希望日時までセットで伝えると、施設側の予定調整の手間が減ります。逆に施設側の都合で急に面会が難しくなることもあるため、代替日をいくつか提示してもらえるよう、最初の依頼時に「変更が必要な場合はご連絡いただければ、こちらの都合をあわせます」と添えておくと、双方にとって負担の少ないやり取りになります。
会話の工夫
会話が成立する段階での工夫
認知症の初期から中期で、こちらの話しかけに反応して会話が続けられる段階では、画面越しであっても普段どおりの会話を心がけることが基本になります。長い説明や込み入った相談ごとを画面越しに伝えるのは避け、天気や食事、孫の様子など答えやすい話題を短く区切って話すほうが会話が続きやすくなります。認知症の在宅介護と限界の見極めでも触れているとおり、認知症の症状は日によって波があるため、うまく話せない日があっても気にしすぎない姿勢が大切です。症状の進行度の医学的な判断は主治医や施設の看護職に確認することとし、この記事では会話の工夫にとどめます。
画面越しの会話では、普段一緒に暮らしていないぶん話題を見つけにくいと感じる家族も少なくありません。孫の写真や家の周りの風景を画面越しに見せながら話す、飼っているペットの様子を映すなど、言葉だけに頼らず視覚的な話題を用意しておくと、会話のきっかけを作りやすくなります。あらかじめ手紙や写真を郵送しておき、面会の際にその内容を話題にする方法も、画面越しでは伝わりにくい親密さを補う工夫の1つです。
反応が読み取りにくい段階での工夫
会話でのやり取りが難しくなってきた段階では、画面越しに一方的に話しかけるだけでも十分に意味があります。言葉のやり取りが成立しなくても、声のトーンや表情は伝わるためです。面会後に施設の職員へ「今日はどのような様子でしたか」と一言尋ねる習慣をつけておくと、画面越しでは読み取りにくい体調の変化を補うことができます。オンライン面会だけに頼らず、高齢者の見守りサービス比較のような別の手段と組み合わせて、面会と面会の間を埋めることも選択肢になります。
この段階では、面会の時間帯や長さも見直しどきです。長時間の通話がかえって本人の負担になる場合は、5分から10分程度の短い接触を、頻度を上げて重ねる形に切り替えたほうが合っている場合もあります。職員に「今日は疲れているようであれば、短めに切り上げていただいて構いません」と事前に伝えておくと、現場の判断で無理なく調整してもらいやすくなります。反応が乏しい日が続いても、面会自体をやめてしまうのではなく、頻度や時間の長さを本人の状態に合わせて変えながら続けていくという考え方が現実的です。
きょうだいや親族が複数いる場合は、誰が・いつオンライン面会を担当するかを大まかに決めておくと、施設側の対応回数も予測しやすくなります。全員がばらばらのタイミングで依頼すると、施設の人員体制によっては断られる回数も増えてしまうため、家族内であらかじめ役割分担の目安を共有しておくことが、結果的に面会自体を続けやすくする工夫になります。
情報共有の継続
サービス担当者会議・退院前カンファレンスへのオンライン参加
入居後も、ケアプランの見直しや退院前カンファレンスなど、家族の同席が想定される場面があります。海外在住のため出席できないことをあらかじめケアマネジャーや施設の相談員に伝え、ビデオ通話での参加、または後日の議事録共有を依頼しておくと、方針の変更を後から一方的に知らされるという事態を避けられます。ケアマネジャーの役割でも触れているとおり、こうした会議への参加希望は早めに申し出るほど調整してもらいやすくなります。
サービス担当者会議は複数の専門職が同席するため、家族の発言時間は限られがちです。事前に「聞きたいこと」「伝えたいこと」を箇条書きにして施設やケアマネジャーに送っておくと、限られた時間の中でも要点を漏らさず確認できます。会議自体への参加が難しい場合でも、決定事項だけを後日メールで簡潔にまとめてもらえるよう頼んでおけば、最低限の情報共有は確保できます。
時差の関係で会議の開催時刻がどうしても深夜になってしまう場合は、無理に毎回出席しようとせず、重要な方針変更が議題に上る回のみオンラインで参加し、それ以外の回は議事録の共有で済ませるという使い分けも現実的です。全ての会議に完璧に対応しようとするより、優先順位をつけて関わり方を調整するほうが、海外在住という制約のなかでは長続きしやすくなります。
面会できなかった時期の記録共有を依頼する
一時帰国のタイミングと施設側の受け入れ体制が合わず、しばらく直接の面会もオンライン面会もできない時期が生じることもあります。そうした期間は、施設の生活記録や看護記録の一部を共有してもらえるか相談してみる価値があります。一時帰国の頻度と確認事項にまとめたとおり、次にいつ帰国できるかの見通しをあらかじめ施設に伝えておくと、施設側も情報共有のタイミングを合わせやすくなります。オンライン面会は万能な手段ではありませんが、直接会えない期間を完全な空白にしないための1つの手段として、記録共有と組み合わせて使うのが現実的です。
長期間にわたって面会の間隔が空いてしまった場合は、再開する際に一度に多くを聞き出そうとせず、まず現状を簡潔に確認するところから始めると、施設側の負担も抑えられます。定期的な情報共有の仕組みを一度作っておけば、一時帰国のたびにゼロから状況を把握し直す手間も減り、長い目で見て家族・施設双方の負担軽減につながります。
比較表
どこが分かれ目になるかを、次の表で確認できます。
| 施設類型 | オンライン面会への対応傾向 | 想定される制約 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 職員が調整すれば対応する施設が多いが個別対応が中心 | 人員体制がひっ迫しやすく、時間帯・頻度の希望が通りにくいことがある |
| 民間の有料老人ホーム | タブレット等の活用に積極的な施設が比較的多い | 施設ごとの独自ルール(アプリ指定・予約制)が細かく分かれる |
| サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 入居者の自室に家族が直接電話・通話することも多い | 見守り中心の施設では職員の立ち会いが前提にならないこともある |
| 認知症グループホーム | 少人数体制のため個別の柔軟な対応が期待できる | 職員数が少なく、対応できる時間帯が限られやすい |
よくある質問
母が入居している特養に、海外からオンライン面会を頼んでも断られることはありますか?
断られるとは限りませんが、特養は人員体制がひっ迫しやすく、個別の希望がすぐに通らないことがあります。まずは相談員やケアマネジャーに、頻度と希望時間帯を具体的に伝えて相談してみることをおすすめします。
時差があって深夜にしか対応できない場合、施設に相談しても大丈夫ですか?
相談自体は問題ありません。ただし施設の面会受付時間は日中に限られていることが多いため、深夜の対応は難しい場合があります。施設の受付時間内で無理のない曜日・時刻を提案し、定例化できるかを話し合うほうが現実的です。
認知症が進んで会話が難しい父に、それでもビデオ通話をする意味はありますか?
あります。言葉のやり取りが難しくなっても、声のトーンや表情が伝わることには意味があります。面会後に施設の職員へ様子を尋ね、画面越しでは分かりにくい変化を補う使い方も現実的です。
入居前の見学をすべてオンラインだけで済ませても大丈夫ですか?
におい、物音、他の入居者との距離感などはオンラインだけでは伝わりにくいという限界があります。可能であれば代理で見学できる親族や知人に同行してもらい、オンライン案内と組み合わせることをおすすめします。
サービス担当者会議にオンラインで参加したいとき、誰に伝えればよいですか?
担当のケアマネジャーか施設の相談員に、海外在住で出席できない旨と、ビデオ通話参加または議事録共有の希望を早めに伝えてください。早く伝えるほど日程や方法を調整してもらいやすくなります。
オンライン面会用の機材は家族側で用意する必要がありますか?
家族側はスマートフォンやパソコンとビデオ通話アプリがあれば対応できることがほとんどです。施設側の機材やインターネット環境については、依頼の際にあわせて確認しておくと当日のトラブルを防げます。
一時帰国のタイミングと施設の面会枠が合わないとき、どうすればいいですか?
直接会えない期間が生じる場合は、その期間だけでも生活記録や看護記録の一部を共有してもらえるか相談してみてください。次にいつ帰国できるかの見通しを伝えておくと、施設側も対応しやすくなります。
一次情報・公的情報
本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-11.
この記事について
この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。
