川崎市の特養入居は申込み順ではなく点数制です。本人の状態(要介護度)に最大30点、認知症症状に最大10点、介護者の状況に最大40点、居住地に10点が加算され、点数の高い順に入居が決まります。窓口は川崎市老人福祉施設事業協会に一元化されています。
制度の全体像
点数の高さで決まる入居順位
「特養に申し込んだのに何年経っても連絡が来ない」という悩みの多くは、申込みが早い者勝ちの制度だという誤解から生まれています。川崎市の特別養護老人ホームは「川崎市特別養護老人ホーム入退居指針」(2018年8月1日施行、点数化に関する規定は2019年2月1日施行)に基づき、入居の必要性が高い人を優先するための点数化を行っています。各施設は合議制の入退居判定委員会を設置し、点数に基づく入居順位名簿を作成したうえで、上位から順に面接・入居判定を進めます。つまり、実質的な待ち順を左右するのは、申込み時点での本人と家族の状況が点数としてどう評価されるかであり、申込みの先後関係ではありません。特養と他の施設形態の違いや費用の考え方は特養の費用と入居条件のガイド、在宅で見るか施設に移るかの判断材料は在宅介護と施設介護の比較で扱っています。
対象は原則として要介護3以上
入居判定の対象になるのは、要介護3から要介護5までの認定を受けている人です。要介護1・2の人は、指針が定める特例入居の要件のいずれかに該当し、居宅において日常生活を営むことが困難な場合に限り対象になります。具体的には、①認知症により日常生活に支障を来す症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られること、②知的障害・精神障害等により同様の症状・行動が頻繁に見られること、③家族等による深刻な虐待が疑われるなど心身の安全・安心の確保が困難であること、④介護保険の利用限度額を超える全額自己負担の介護サービス利用が複数か月にわたって続いていること、⑤介護者がいない、または介護者が高齢・病弱で支援が期待できず、やむを得ない理由で必要な介護サービスや生活支援を十分に利用できない状態であること、のいずれかです。該当する場合は、通常の申込書類に加えて、申込みチェックシート(様式3)とケアマネジャー等意見書を、入居を希望する施設に提出します。要介護度の区分そのものの考え方は要介護度の考え方、認定の窓口や相談先はケアマネジャーの役割で整理しています。
申込み手続きの流れ
窓口は川崎市老人福祉施設事業協会に一元化
以前は施設ごとに個別に申し込む方式でしたが、2019年2月から申込み先が「川崎市老人福祉施設事業協会」に一元化されました。提出先は〒213-0001 川崎市高津区溝口1-6-10 てくのかわさき3階、川崎市老人福祉施設事業協会事務局です(電話044-812-1231、平日9時〜16時受付)。最寄りの施設に直接申し込むことも可能ですが、実務上は協会宛の郵送が中心です。
提出書類は要介護度で変わる
要介護3〜5の人は、入居申込書、生活状況等調書、同意書、介護保険被保険者証の写しの4点が基本です。要介護1・2で特例入居を希望する場合は、これに加えて申込みチェックシートと、ケアマネジャー等意見書の提出が必要になります。入居申込書の有効期限は、直近の要介護度の認定区分の更新または区分変更の効力が生じる日の前日までとされているため、認定の更新時期が近い場合は申込みのタイミングにも注意が必要です。
希望施設は原則5つまで書ける
申込書には、入居を希望する施設のうち原則5施設までを記入できます。記載した順番は優先順位を示す情報ではありません。各施設が独自に点数と個別事情を踏まえて判定するため、複数の施設からばらばらのタイミングで連絡が来ることも珍しくありません。定員30人以上の特養は市外在住者でも申込み可能ですが、定員29人以下の地域密着型(介護老人福祉施設入所者生活介護)は、本人または親族が川崎市民でない場合は申込みができない点も、施設を選ぶ際に確認しておきたいポイントです。
点数表の中身
本人の状態と認知症症状の加算
指針の別表では、本人の状態(要介護度等)に、要介護5=30点、要介護4=25点、要介護3=20点、要介護2=15点、要介護1=10点が配点されています。これに加えて、認知症等による症状が「常にある」項目が1つ以上あれば10点、「時々ある」項目が1つ以上あれば5点が加算されます。つまり、同じ要介護3でも、認知症の周辺症状の有無によって最大10点の差が生まれる仕組みです。
介護者の状況にもっとも大きな配点
もっとも配点が大きいのは「介護者の状態」の項目です。介護する者が同居・別居を問わずまったくいない場合は40点、介護者が要支援・要介護状態や高齢・病気療養中・障害を有する状況で十分な介護ができない場合は30点、介護者はいるが複数介護や育児中などの事情で十分な介護ができない場合は25点が配点されます。介護者が就労中で常時十分な介護ができない場合は、雇用契約上の勤務時間に応じて週35時間以上なら25点、週20時間以上35時間未満なら20点、週20時間未満なら10点のいずれか1つが選ばれます。これらの事由は1つを選択する仕組みのため、当てはまる状況のうち最も点数の高いものが適用されます。
居住地点数と同点時の優先順位
本人の住民票が川崎市内にあれば10点が加算されます。ここまでの合計点が同じ場合は、施設所在地の近隣に家族等が居住しているかどうかという地域性、次いで年齢の高さの順で優先順位が調整されます。さらに居室の構造上考慮すべき性別、重度認知症等の受け入れ体制、医療的ケアが必要な場合の嘱託医の判断など、施設ごとの個別事情も最終判断に影響します。費用面の全体像は高齢者介護にかかる費用のガイドで確認できます。
点数合計の試算例
具体的な数字で考えると、要介護度と介護者の状況の組み合わせがどれだけ合計点に影響するかが分かりやすくなります。たとえば要介護4(25点)で認知症の周辺症状が「常にある」項目が1つ以上あり(10点)、同居する家族はいるものの就労中で週35時間以上勤務のため十分な介護ができない(25点)、住民票が川崎市内にある(10点)という状況なら、合計は70点になります。一方、要介護5(30点)で介護する者がまったくいない(40点)、市内居住(10点)という状況であれば、合計は80点です。要介護度自体は同じ、あるいは1段階しか違わなくても、介護者の状況欄の内容次第で合計点が10点以上変わることがあります。要介護度だけを見て順番を諦める前に、生活状況等調書の介護者の状況欄が実態を正しく反映できているかを見直す価値があります。
判定から入居までの流れ
入退居判定委員会は月1回程度開催
各施設は施設長・生活相談員・介護支援専門員・看護職員・介護職員等で構成する入退居判定委員会を、原則として月1回程度開催し、点数を基本とした総合判断で入居順位名簿を作成します。より公平性を確保する観点から、施設外の第三者を委員に加えることが望ましいともされています。審議内容は議事録として作成され、入居順位名簿とともに当該年度終了後2年間保管されます。
特例的に優先される入居・長期入院からの再申込み
老人福祉法に基づく措置入所依頼、家庭での虐待や介護放棄・事故の発生等で市が緊急性を認めた場合、災害等で判定委員会が開催できない場合は、指針の点数によらず入居が決定されることがあります。また、3か月を超える長期入院からの退院にあたって在宅生活が困難な場合や、いったん退居して在宅復帰した後に再び在宅での生活が難しくなった場合も、再入居の希望として扱われます。入居希望者側の都合で辞退した場合は、一時的に入居決定が繰り下げられ、その後の順位付けは辞退理由等を踏まえて各施設が判断します。
要介護度が下がった場合は退居検討の対象になり得る
入居後に要介護認定で自立・要支援1・要支援2と判定された場合や、要介護1・2に改善した場合(2015年3月31日以前からの入居者等、一定の経過措置に該当する場合を除く)は、退居の検討対象になり得ます。ただし施設は入居者・家族の意向を十分に尊重し、安易に退居を促さないよう配慮する立場であることも指針に明記されています。退居に際しては地域包括支援センター等への情報提供と連携が行われる仕組みです。地域の相談窓口の役割は地域包括支援センターとはで解説しています。
虚偽記載や守秘義務についての定め
生活状況等調書などの申込書類に虚偽の記載が認められた場合、施設は入居の決定を取り消すことができるとされています。介護者の状況や本人の状態は正確に、実態のまま記載することが前提です。一方で施設側にも、入居希望者や退居予定者、家族から求めがあれば指針の内容を説明する義務があり、職員や入退居判定委員会の委員には、業務上知り得た個人情報を漏らしてはならないという守秘義務が課されています。点数や判定の根拠に納得できない場合は、施設に説明を求めることができる仕組みだと理解しておくとよいでしょう。
海外家族の申込み実務
「介護者がいない」の欄の書き方
海外在住や遠距離で、実際の介護を担えていない家族にとって気になるのが「介護者の状態」欄の書き方です。指針上、介護する者が同居・別居を問わずいない場合は40点と、もっとも高い配点になっています。海外在住の家族しかいない、または国内にいても仕事や自身の健康状態で十分な介護ができないという実態は、点数を押し下げる要因ではありません。むしろ点数化の対象として正しく評価される項目です。実態を正確に生活状況等調書に反映させることが、点数を適切に受け取るための最初のステップになります。海外からの介護コーディネートの全体像は海外から日本の親を支える方法、遠距離での役割分担の考え方は遠距離介護の進め方にまとめています。
相談窓口に問い合わせる際に伝えたいこと
海外からの問い合わせでも、川崎市老人福祉施設事業協会や各施設への連絡は電話・郵送が基本です。国内に代理で書類を動かせる親族がいない場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターに間に入ってもらい、生活状況等調書の内容を一緒に確認してもらう方法もあります。時差がある地域からでも、平日9時から16時の受付時間内に電話できるタイミングをあらかじめ決めておくと、やり取りが滞りにくくなります。
認定区分の更新期限と申込書の有効期限に注意する
入居申込書の有効期限は、直近の要介護度の認定区分の更新または区分変更の効力が生じる日の前日までです。海外在住のため認定更新の手続きに立ち会いにくい家族は、国内のケアマネジャーや親族と、更新時期の情報共有をあらかじめ決めておくと、申込書の失効に気づかないまま待機期間だけが過ぎてしまう事態を避けやすくなります。
複数施設への同時申込みと定期的な状況更新
原則5施設まで希望を書ける仕組みを生かし、通える範囲や本人の状態に合う施設を複数リストアップしておくことが、結果的に入居までの時間を左右します。加えて、介護者の状況(就労時間・健康状態・海外滞在の実態など)は時間とともに変わるため、状況が変わった際は最新の内容を協会や施設に伝え直すことが望ましいとされています。日頃からの記録の残し方は海外から介護サービスを手配する方法でも扱っている考え方と共通しています。
比較表
検討の材料になるよう、違いを表で整理しました。
| 評価軸 | 配点の目安 | 点数が高くなる要因 |
|---|---|---|
| 本人の状態(要介護度) | 要介護1=10点〜要介護5=30点 | 要介護度が重いほど高い |
| 認知症等の症状 | 「時々ある」5点/「常にある」10点 | 周辺症状が頻繁に見られるほど加算 |
| 介護者の状況 | 10〜40点(1つを選択) | 介護者が「いない」場合が最も高い40点 |
| 本人の居住地 | 川崎市内に住民票があれば10点 | 市内居住で加点 |
| 同点時の優先事項 | 点数化なし(順位判断の基準) | 施設近隣への家族居住・年齢の高さ |
よくある質問
母は要介護1ですが、川崎市の特養に申し込むことはできますか?
原則として入居判定の対象は要介護3〜5ですが、要介護1・2でも、認知症症状が頻繁に見られる、介護者がいない・支援が期待できないなど特例入居の要件に該当する場合は申込みが可能です。その場合は通常の申込書類に加えて、申込みチェックシートとケアマネジャー等意見書の提出が必要になります。
申込書に5つの施設を書いたのに、1つの施設からしか連絡が来ません おかしいのでしょうか?
おかしくありません。記載した5施設は希望であり、優先順位の指定にはあたりません。各施設が独自に点数と入居状況を踏まえて判定するため、連絡が来るタイミングや順番は施設ごとにばらつきます。
私は海外に住んでいて父の介護をほとんどできていません それは申込みの点数で不利になりますか?
不利にはなりません。指針では「介護する者がいない(同居・別居を問わず)」場合が最も高い40点に配点されています。実態を生活状況等調書に正確に伝えることが重要です。
一度出した申込みは、要介護度が変わったら書き直す必要がありますか?
入居申込書の有効期限は、直近の要介護度の認定区分の更新または区分変更の効力が生じる日の前日までとされています。認定内容が変わった場合は、川崎市老人福祉施設事業協会または申込み先の施設に確認し、必要な手続きを取ることをおすすめします。
入院が長引いている祖母を、退院前に特養へ申し込んでおくことはできますか?
入院中でも申込み自体は可能です。指針では、3か月を超える長期入院後、退院にあたり在宅での生活が困難な場合は、再入居希望者として特別な事由による優先入居の対象になり得ると定められています。個別の判断は各施設や地域包括支援センターにご相談ください。
申込みしてから実際に入居できるまで、どのくらいの期間を見ておけばよいですか?
点数と各施設の空き状況によって大きく変わるため、川崎市が一律の期間を示しているわけではありません。入退居判定委員会は原則月1回程度開催されるため、点数が高くても空きが出るタイミング次第で数か月から数年単位まで幅があります。
川崎市民ではない場合、特養への申込み自体ができないのですか?
定員30人以上の特別養護老人ホームは、本人や申込者が川崎市民でなくても申込みが可能です。ただし定員29人以下の地域密着型の施設は、本人または親族が川崎市民でない場合は申込みができません。施設ごとの定員区分を事前に確認してください。
一次情報・公的情報
本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-11.
この記事について
この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。
