要支援1・2の認定を受けると、訪問介護・通所介護は保険給付ではなく市町村運営の「総合事業」に移り、担当窓口もケアマネジャーから地域包括支援センターに変わります。実際に使えるサービスの種類と単価差、要介護へ進んだときの切替手順を整理しました。
制度への入り口
総合事業に移る要支援の位置づけ
要介護認定の結果が「要支援1」または「要支援2」だった場合、訪問介護と通所介護は、要介護1〜5の人が使う介護保険の保険給付とは別の枠組みに入ります。この枠組みが「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」で、市町村が地域支援事業の一環として運営しています。もともとは要支援者向けの「介護予防訪問介護」「介護予防通所介護」も全国一律の基準で給付されるサービスでしたが、2014年の法改正を経て2015年度から段階的に総合事業へ移行し、2017年度末までに全市町村で実施されています。要介護度そのものの意味や区分の一覧は要介護度の考え方で扱っていますが、本稿は「要支援になったあと、実際に何が使えるか」という一歩先の実務に絞ります。
給付から総合事業に移ったことで変わるのは財源ではなく運用のルールです。国が定める全国一律の基準・単価から離れ、各市町村が地域の実情に応じてサービスの種類・単価・担い手の基準を決められるようになりました。このため、同じ「要支援1」でも、住んでいる市によって使えるサービスの選択肢や利用料が異なるという状況が生まれています。移行は2015年度に一部の市町村で始まり、2年間の猶予期間を経て、2017年度末までに全国のすべての市町村で実施されるようになりました。制度が動き出してから年数が経っているとはいえ、対象になって初めて仕組みを知る家族は今も多くいます。
移行の対象になったのは、要支援者向けの「介護予防訪問介護」と「介護予防通所介護」の2つに限られます。福祉用具のレンタルや訪問看護、通所リハビリテーションなど、その他の予防給付サービスは従来どおり全国共通の基準で保険給付として提供され続けている点も、あわせて押さえておくと混乱が少なくなります。認定結果の通知書だけを見ても、この線引きは分かりにくいことが多いため、案内文書に「総合事業対象」といった記載がある場合は、担当窓口に一つずつ確認しておくと安心です。
担当窓口はケアマネジャーでなく地域包括支援センター
要介護1以上ではケアマネジャー(居宅介護支援事業者)がケアプランを作りますが、要支援1・2では担当が変わり、地域包括支援センターの保健師や社会福祉士等が介護予防ケアマネジメントとしてプランを作成します。「認定結果が来たのに、これまで案内されていた居宅介護支援事業所から連絡が来ない」と戸惑う家族は多いのですが、これは制度上の役割分担であり、対応が遅れているわけではありません。地域包括支援センターへの相談の流れ自体は、要介護認定を受ける前の相談窓口としても機能しており、詳しくは前述の地域包括支援センターのガイドに整理しています。
なお、地域包括支援センターが直接すべてのプランを作成するとは限らず、業務の一部を居宅介護支援事業所に委託している地域もあります。委託の有無や連絡先は、認定結果の通知と一緒に案内されるのが一般的ですが、案内が分かりにくい場合は市町村の介護保険担当窓口に確認すると早いです。
使えるサービスの実際
訪問型サービスの類型
総合事業の訪問型サービスには、大きく分けて「訪問介護相当サービス」と、基準を緩和した多様なサービスがあります。訪問介護相当サービスは、これまでの介護予防訪問介護とほぼ同じ内容(身体介護・生活援助)を、有資格のヘルパーが提供するものです。これに対し、多くの市町村が設けている「訪問型サービスA」は生活援助(掃除・調理・買い物等)のみを対象とし、人員基準を緩和した事業所や研修修了者が担うことで単価を抑えています。さらに「訪問型サービスB」は住民主体の支え合い活動で、地域のボランティア団体等が担うケースが中心です。市町村によっては、保健師等が短期間集中的に関わる「訪問型サービスC」を設けている例もあります。
通所型サービスの類型
通所型サービスも同様の構造です。従来のデイサービスに相当する「通所介護相当サービス」に加え、NPOや民間事業者が運動・レクリエーション中心の内容を短時間で提供する「通所型サービスA」、住民主体の「通いの場」として体操や交流の場を設ける「通所型サービスB」、市町村の保健・医療専門職が3〜6か月程度の短期集中で運動器の機能向上・栄養改善・口腔機能向上に取り組む「通所型サービスC」があります。どの類型が実際に設けられているか、名称や利用料がどうなっているかは市町村ごとに異なるため、介護保険の解説で扱う全国共通の給付サービスと違い、住んでいる自治体の窓口で個別に確認する必要があります。
要介護のサービスとの単価・回数の差
総合事業のサービスは、要介護向けの保険給付サービスに比べて、1回あたりの単価や1か月に使える回数の目安が抑えられているのが一般的です。これは、要支援の段階では自立支援・介護予防に重点を置き、多様な担い手による柔軟な支援で状態悪化を防ぐという制度の考え方によるものです。実際の単価は市町村が独自に定めるサービスコード表で決まっており、例えば川崎市では訪問型・通所型それぞれのサービスコードと単位数を公表しています。要支援者の1か月あたりの支給限度額の目安は、要支援1で5,032単位(1単位おおむね10円換算で約50,320円)、要支援2で10,531単位(約105,310円)とされており、この枠の中で総合事業のサービスと福祉用具貸与等を組み合わせて利用します。要介護1以上になると区分支給限度基準額はさらに引き上がり、使える保険給付サービスの幅も広がります。費用の全体像は介護費用のガイドと合わせて確認すると分かりやすくなります。
認定申請なしのルート
事業対象者という区分
総合事業を使うために、必ずしも要介護認定の申請から始める必要はありません。65歳以上の第1号被保険者は、地域包括支援センターの窓口で「基本チェックリスト」という全25項目の質問に答えることで、要介護認定の結果を待たずに総合事業のサービスを利用できる場合があります。この結果、日常生活動作・運動機能・栄養状態・口腔機能・閉じこもり・うつ傾向などのいずれかで一定の基準に該当すると判定されると、「事業対象者」として総合事業のサービスにつながります。事業対象者は要介護認定の区分ではないため、要介護度が付かない点が要支援1・2との違いです。
基本チェックリストの25項目は、日常生活関連動作(バスや電車で外出しているか、階段を上がっているか等)、運動器の機能(片足立ちで靴下が履けるか等)、栄養状態(体重の減少がないか)、口腔機能(むせやすくなっていないか)、閉じこもり傾向、認知機能、うつ傾向という複数の分野から成り立っており、地域包括支援センターの窓口で本人または家族が回答する形で実施されます。回答内容から複数の分野で基準に該当すると、事業対象者として認定される仕組みです。
基本チェックリストが向く場面
基本チェックリストが特に向いているのは、要介護認定の結果が出るまで待たずに、早めに生活援助や通いの場につながりたい場面です。要介護認定の申請から認定調査・審査を経て結果が出るまでには一定の日数がかかりますが、基本チェックリストは地域包括支援センターの窓口でその場で実施でき、該当すればすぐにサービス利用の相談に進めます。ただし、事業対象者として利用できるのは総合事業のサービスに限られ、福祉用具のレンタルなど保険給付側のサービスは対象外になる点には注意が必要です。より重い支援が必要と分かった場合は、あらためて要介護認定の申請に進む選択肢もあります。
前提としての市町村差
基本チェックリストの実施場所や案内の丁寧さ、事業対象者と判定されたあとに実際につながれるサービスの種類は、市町村によって差があります。都市部では訪問型・通所型ともに複数の類型が用意されている一方、地域によってはサービスAやBの担い手が十分に確保できていない場合もあります。「隣の市では使えていたサービスが、自分の親の市にはない」ということも起こり得るため、一般的な制度の枠組みを理解したうえで、最終的な可否は必ず居住地の地域包括支援センターまたは市町村の介護保険担当窓口で確認することが欠かせません。
要介護への切替実務
要支援から要介護へ進む区分変更
総合事業を利用している間に、骨折や病状の進行などで状態が悪化することがあります。この場合、次回の更新を待たずに「区分変更申請」を行うことで、要介護度の見直しを求めることができます。区分変更申請が認められて要介護1以上の認定が下りると、総合事業のサービスから、ケアマネジャーが作成するケアプランに基づく保険給付サービスへ切り替わります。この切替のタイミングでは、地域包括支援センターから居宅介護支援事業所への引き継ぎが発生するため、これまで使っていた訪問型・通所型サービスがそのまま継続できるとは限らず、事業所側との調整が必要になる場合があります。
切替の実務で確認しておきたいこと
要介護側への切替が決まったら、担当が地域包括支援センターから居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)に変わること、これまでの訪問型・通所型サービスの事業所が引き続き保険給付側のサービスも提供しているかどうか、支給限度額の範囲内でどこまでサービス量を増やせるかを、地域包括支援センターまたは新しく担当するケアマネジャーに確認しておくと、切替時の空白期間を減らせます。逆に、要介護の認定を受けたあとに状態が安定し、更新のタイミングで要支援に区分が戻ることもあり、その場合は反対の手順で担当と使えるサービスが再び切り替わります。
区分変更申請の結果が出るまでは、それまで利用していた総合事業のサービスを継続しながら結果を待つのが一般的です。認定結果が出るより前に慌てて事業所を解約してしまうと、結果が要支援のままだった場合に利用の空白期間が生まれてしまうため、まずは現在の担当者に区分変更申請中である旨を伝え、結果が出てから正式に切り替える順番を守ると混乱が少なくなります。
海外在住家族が今からできること
親がまだ元気なうちから「基本チェックリストという入り口がある」と知っておくと、将来の対応がスムーズになります。海外在住で日常的に様子を見られない家族にとって、要介護認定の申請は「はっきり介護が必要になってから」というイメージが強く、初期の変化を見逃しがちです。帰省時や電話で「最近、買い物や掃除が少しおっくうになってきた」といった様子が見えたら、まずは地域包括支援センターに相談し、基本チェックリストで事業対象者に該当するかを確認する選択肢があることを、親や国内にいる兄弟と共有しておくとよいでしょう。遠距離介護のガイドや海外在住家族向けの介護コーディネートガイドでも触れているとおり、制度の入り口を早めに知っておくことが、結果的に本人の自立した生活を長く支えることにつながります。
比較表
違いが出やすいところを、表の形でまとめます。
| 項目 | 要支援1・2(総合事業) | 要介護1以上(保険給付) |
|---|---|---|
| 担当窓口 | 地域包括支援センター | 居宅介護支援事業所(ケアマネジャー) |
| プラン作成者 | 保健師・社会福祉士等(介護予防ケアマネジメント) | 介護支援専門員(ケアマネジャー) |
| 使えるサービスの主な種類 | 訪問型・通所型サービス(相当サービス/A型/B型/C型等、市町村ごとに異なる) | 訪問介護・通所介護・短期入所・施設サービス等、全国共通の保険給付 |
| 単価・基準 | 市町村が独自に設定(全国一律ではない) | 全国一律の介護報酬(地域区分による調整あり) |
| 状態悪化時の対応 | 区分変更申請で要介護側へ切替可能 | 区分変更申請で要介護度を見直し可能 |
よくある質問
親が要支援1と認定されたのですが、これまで案内を受けていたケアマネジャーに引き続きお願いできますか?
要支援1・2の場合、ケアプランの作成は原則として地域包括支援センターが担当します。地域によっては業務の一部を居宅介護支援事業所に委託していることもあるため、これまでのケアマネジャーが引き続き関わる場合もありますが、まずは認定結果の通知に記載された窓口、または地域包括支援センターに確認するのが確実です。
要介護認定の申請をせず、基本チェックリストだけで総合事業のサービスを使えますか?
使える場合があります。地域包括支援センターの窓口で基本チェックリストを受け、日常生活動作や運動機能などの基準に該当すると判定されると「事業対象者」として総合事業のサービスにつながれます。ただし福祉用具のレンタルなど保険給付側のサービスは対象外で、より重い支援が必要であれば要介護認定の申請に進む必要があります。
隣の市に住む知人の親は使えているサービスが、うちの親の市では案内されません 市町村によって違うのですか?
はい、総合事業のサービスの種類・単価・担い手の基準は各市町村が独自に定めているため、自治体によって選択肢に差があります。一般的な制度の枠組みを理解したうえで、実際に使えるサービスは居住地の地域包括支援センターまたは市町村の窓口で確認する必要があります。
総合事業のサービスを使っている間に親の状態が悪化しました 次の更新まで待たないといけませんか?
待つ必要はありません。状態が悪化した場合は、更新のタイミングを待たずに区分変更申請を行うことができます。申請が認められて要介護1以上の認定が下りると、担当が地域包括支援センターから居宅介護支援事業所に引き継がれ、保険給付側のサービスに切り替わります。
海外に住んでいて頻繁に帰国できません 親がまだ元気なうちに何をしておけばよいですか?
まだ介護保険の申請をするほどではない段階でも、地域包括支援センターに相談し、基本チェックリストで事業対象者に該当するか確認する選択肢があることを知っておくとよいでしょう。帰省時や電話で日常生活の小さな変化に気づいたときに、早めに相談する入り口として活用できます。
通所型サービスA型・B型は、内容が違うだけで料金は同じですか?
料金は同じではありません。通所型サービスAはNPOや民間事業者による基準を緩和した内容、通所型サービスBは住民主体の通いの場が中心で、いずれも単価は市町村が個別に設定しています。従来相当の通所介護相当サービスより単価が抑えられているのが一般的ですが、具体的な金額は市町村ごとの単位数表で異なります。
要支援から要介護に切り替わったら、それまで使っていた訪問型サービスの事業所はそのまま使えますか?
事業所によって異なります。総合事業の訪問型サービスを提供している事業所が、保険給付側の訪問介護も併せて提供していれば継続しやすいですが、そうでない場合は新しいケアマネジャーと相談して事業所を選び直す必要があります。切替のタイミングで地域包括支援センターまたは新しい担当者に確認しておくと安心です。
一次情報・公的情報
本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-11.
- 介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案(概要)(厚生労働省老健局振興課, curl verified 200)
- 介護予防・日常生活支援総合事業の基本的な考え方(厚生労働省老健局振興課, curl verified 200)
- 基本チェックリストとは(公益財団法人健康長寿ネット, curl verified 200)
- 介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)の通所型サービスとは(公益財団法人健康長寿ネット, curl verified 200)
- 川崎市:介護予防・日常生活支援総合事業(川崎市, curl verified 200)
- 介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第115条の45ほか(e-Gov法令検索, curl verified 200)
この記事について
この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。
