制度ガイド

負担限度額認定|施設の食費・部屋代を下げる制度

特養や老健の食費・部屋代(居住費)は原則自己負担ですが、住民税非課税で預貯金が一定以下の世帯は「負担限度額認定」を申請すると下がります。2026年8月からは所得の線引きが82.65万円に変わり、食費・居住費の上限額も一部引き上げられます。

公開日
2026-07-05
最終更新日
2026-07-05
情報確認日
2026-07-05
出典
6件の一次情報・公的情報

特養や老健の食費・部屋代(居住費)は原則自己負担ですが、住民税非課税で預貯金が一定以下の世帯は「負担限度額認定」を申請すると下がります。2026年8月からは所得の線引きが82.65万円に変わり、食費・居住費の上限額も一部引き上げられます。

制度の基本

食費と居住費はもともと全額自己負担

介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院)やショートステイを利用するとき、サービスそのものの1〜3割負担とは別に、食費と居住費(部屋代)がかかります。この2つは介護保険の給付対象ではなく、原則として施設と利用者の契約で決まる全額自己負担です。施設費用の全体像で扱っている月額の目安のうち、食費・居住費部分は特にこの仕組みの影響を受けます。

厚生労働省が示す全国的な目安(基準費用額)は、食費が1日1,545円、居住費は部屋のタイプによって437円〜2,066円の幅があります。多床室(相部屋)がもっとも安く、ユニット型個室がもっとも高くなります。この基準費用額どおりに請求する施設が多いものの、実際の金額は施設ごとに契約で定められるため、入居前に見積もりを確認することが欠かせません。

「負担限度額認定」は住民税非課税世帯向けの軽減制度

世帯全員が住民税非課税であるなど一定の所得・資産要件を満たす方は、市区町村に申請して「介護保険負担限度額認定証」を受け取ると、食費・居住費が所得段階に応じた上限額まで軽減されます。基準費用額と負担限度額の差額は、介護保険から「特定入所者介護サービス費」として施設に支払われる仕組みで、利用者本人が上限を超える差額分を負担することはなくなります。要介護認定の申請支援と同様、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談しながら進めると、対象になりそうかどうかの見立てをもらいやすくなります。

対象になる施設・サービス

対象は介護保険施設(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院)への入所と、短期入所生活介護・短期入所療養介護(ショートステイ)です。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など、介護保険施設に該当しない住まいは対象になりません。特養の入居条件や費用の全体像は特養のガイドで扱っています。

なお、介護老人保健施設と介護医療院については、居住費のうち「室料」を施設側が別途徴収するかどうかで基準費用額が変わる区分があります。室料を徴収する多床室の基準費用額は1日697円である一方、室料を徴収しない多床室は437円と、同じ「多床室」でも施設の運営方針によって基準となる金額そのものが異なります。負担限度額(利用者が実際に払う上限)は、いずれの区分でも第1〜第3段階①は共通した水準に設定されていますが、基準費用額との差額(介護保険からの給付額)は異なります。入居を検討している施設がどちらの区分に該当するかは、契約前に施設のパンフレットや重要事項説明書で確認しておくと安心です。

社会福祉法人等による軽減とは別の制度

特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人の中には、独自に「社会福祉法人等による利用者負担軽減制度」を実施しているところがあります。これは負担限度額認定とは別の制度で、実施していない社会福祉法人もあります。負担限度額認定を受けたうえで、さらに軽減を受けられる場合があるため、入居先の施設や自治体の窓口に、両方の制度の対象になるかどうかを併せて確認しておくとよいでしょう。

所得段階と資産要件

第1段階から第3段階②までの4区分

負担限度額は、所得と資産によって決まる4つの段階(第1段階・第2段階・第3段階①・第3段階②)ごとに設定されています。

第1段階:生活保護受給者、または世帯全員が住民税非課税で老齢福祉年金を受給している方。預貯金等の要件は単身1,000万円以下(夫婦の場合2,000万円以下)

第2段階:世帯全員が住民税非課税で、年金収入額と合計所得金額の合計が一定額以下の方。預貯金等は単身650万円以下(夫婦1,650万円以下)

第3段階①:世帯全員が住民税非課税で、年金収入額と合計所得金額の合計が第2段階の基準額を超え120万円以下の方。預貯金等は単身550万円以下(夫婦1,550万円以下)

第3段階②:世帯全員が住民税非課税で、年金収入額と合計所得金額の合計が120万円を超える方。預貯金等は単身500万円以下(夫婦1,500万円以下)

世帯に住民税課税者がいる場合や本人が住民税課税者の場合は「第4段階」となり、この軽減制度の対象外です。預貯金等には預貯金だけでなく有価証券や投資信託、一定額を超える現金なども含まれるため、通帳の残高だけで判断しない注意が必要です。なお、40〜64歳の第2号被保険者については、所得段階に関わらず預貯金等の要件が単身1,000万円以下・夫婦2,000万円以下に統一されている点も、第1号被保険者(65歳以上)向けの段階別の要件と異なります。

世帯を分けている配偶者がいる場合の扱いにも注意が必要です。住民票上は世帯を分離していても、法律上婚姻関係にある配偶者は原則として合算の対象になります。介護を機に親と配偶者の世帯を形式的に分けていても、この制度の判定では「世帯分離している配偶者を含む」扱いになるため、実際の所得・資産状況をそのまま伝える必要があります。

2026年8月からの所得の線引き変更(82 65万円)

2026年(令和8年)8月1日から施行される令和8年厚生労働省告示第88号(令和8年3月13日公布)により、第2段階と第3段階①を分ける所得の基準額が、これまでの「年金収入額と合計所得金額の合計が80万9,000円以下」から「82万6,500円以下」に引き上げられます。同じ年金額でも段階の判定が変わりうるため、これまで第3段階①だった方が第2段階に該当し直すケースも出てきます。資産要件(預貯金等の上限)自体は据え置かれます。

軽減開始の前提となる申請手続き

この制度で最も見落とされやすいのは、要件を満たしていても、申請しなければ自動的には適用されないという点です。施設に入所する前、あるいは入所後でもできるだけ早い段階で、お住まいの市区町村(多くは各区役所・市役所の高齢者福祉窓口や介護保険課)に「介護保険負担限度額認定申請書」を提出し、認定証の交付を受ける必要があります。認定の効力は原則として申請月の1日にさかのぼりますが、申請が遅れるほど、その間の食費・居住費は軽減されないまま全額自己負担になります。

申請時に必要となる主な書類は、介護保険負担限度額認定申請書、介護保険被保険者証、預貯金額が分かる通帳の写しや有価証券の残高が分かる書類です。40〜64歳の第2号被保険者は医療保険被保険者証の提示も求められます。マイナンバー(個人番号)の記載を求める自治体が多いため、本人のマイナンバーが確認できる書類もあわせて準備しておくと窓口でのやり取りがスムーズです。窓口は多くの自治体で各区役所・市役所の高齢者支援課や介護給付担当課で、本人が来庁できない場合は家族が代理で申請できるのが一般的です。

上限額の実際

食費の上限額(1日あたり)

食費の負担限度額は、厚生労働省の基準費用額(1日1,545円)に対し、2026年8月からは第1段階300円、第2段階390円、第3段階①680円、第3段階②1,420円になります(ショートステイ利用時は第2段階600円、第3段階①1,030円、第3段階②1,360円とやや異なる額が設定されています)。第3段階①・②では、これまでの水準から食費が日額30〜60円引き上げられる見直しです。

居住費の上限額は部屋タイプで大きく変わる

居住費の負担限度額は、多床室(相部屋)・従来型個室・ユニット型個室のどれに入るかで水準が大きく異なります。2026年8月からの基準では、特養等の多床室は第1段階0円・第2段階430円・第3段階①430円・第3段階②530円です。従来型個室(特養等)は第1段階380円・第2段階480円・第3段階①880円・第3段階②980円まで上がります。もっとも高いユニット型個室は、第1段階880円・第2段階880円・第3段階①1,370円・第3段階②1,470円です。同じ第1段階の方でも、多床室なら居住費0円のまま据え置かれる一方、ユニット型個室を選ぶと880円かかる、という部屋タイプによる差の大きさが実務上のポイントになります。

月額換算で広がる差

1日あたりの差は小さく見えても、30日換算するとまとまった金額になります。たとえば第2段階の方が多床室(居住費430円)を選ぶ場合と、ユニット型個室(居住費880円)を選ぶ場合とでは、居住費だけで月あたり1万3,000円以上の差になります。食費も含めた月額の総額イメージは、施設費用の全体ガイドの月額相場と合わせて確認すると、部屋タイプ選びの判断材料になります。

同じ考え方で第3段階②を見ると、多床室(特養等・居住費530円)とユニット型個室(居住費1,470円)の差は月換算で約2万8,000円にもなります。所得段階が上がるほど、部屋タイプ選びが家計に与える影響も大きくなる構図です。入居先を検討する段階で「その施設の空きがユニット型個室しかないのか、多床室も選べるのか」を確認しておくことは、費用面での意思決定に直結します。

ショートステイでは食費の上限額が異なる

短期入所生活介護・短期入所療養介護(ショートステイ)を利用する場合、食費の負担限度額は入所とは別の額が設定されています。2026年8月からの基準では、第2段階が600円、第3段階①が1,030円、第3段階②が1,360円と、いずれも長期入所より高い水準です(第1段階は300円で共通)。数日〜数週間のショートステイを繰り返し利用する家庭では、この差が積み重なって家計への影響が意外と大きくなることがあるため、頻度が多い場合は事前に月あたりの負担イメージを施設やケアマネジャーに確認しておくと安心です。

高額介護サービス費との違い

負担限度額認定としばしば混同されるのが「高額介護サービス費」です。高額介護サービス費は、介護サービスそのものの1〜3割の自己負担額が所得に応じた上限を超えた場合に、超過分が払い戻される仕組みで、食費・居住費は対象になりません。一方で負担限度額認定は、サービスの自己負担ではなく食費・居住費そのものの上限を下げる仕組みです。両方の制度は併用でき、対象になる方はどちらも申請しておくことで、施設利用にかかる費用全体を抑えられます。介護サービスの自己負担の仕組み自体は介護保険の基本ガイドで扱っています。

海外・遠距離から

資産の把握と書類準備は早いほうがいい

負担限度額認定の申請では、預貯金通帳の写しや有価証券の残高が分かる書類の提出を求められることが一般的です。親と離れて暮らしている、あるいは海外に住んでいる家族の場合、親がどの金融機関にどれだけの資産を持っているかを把握できていないまま、施設入所の話が急に進むケースが少なくありません。日頃から親のお金の状況を家族で共有し、通帳や証券口座の所在を把握しておくことが、いざというときの申請のスピードに直結します。海外からの資産把握や権限整理の考え方は親のお金と権限の整理にまとめています。

申請の代行と窓口でのやり取り

負担限度額認定の申請自体は、本人が窓口に行けなくても、家族が代理で行うことができる自治体がほとんどです。海外在住で一時帰国のタイミングが限られる家族は、日本国内にいる別の家族や、ケアマネジャー、地域包括支援センターに相談し、必要書類を事前にそろえておくと、短い帰国期間の中でも手続きを終えやすくなります。マイナンバーの記載を求める自治体が多いため、本人のマイナンバーが分かる書類も準備しておくと安心です。

有効期間と毎年の更新を忘れない

負担限度額認定証には有効期間があり、多くの自治体では「申請した月の1日から、翌年7月31日まで」という区切りで運用され、毎年6月下旬ごろから次の期間の更新申請の受付が始まります。更新を忘れると、有効期間が切れた月から軽減が止まり、全額自己負担に戻ってしまいます。海外在住の家族がいる場合、更新の案内が届く住所や、誰が更新手続きを担当するかを家族内であらかじめ決めておくと、うっかり失効を防げます。遠距離での役割分担の考え方は遠距離介護の進め方海外から日本の親を支える方法でも扱っています。

段階が変わったときの対応

親の年金額が変わったり、2026年8月のような制度改正で所得の線引き自体が動いたりすると、これまでと違う段階に判定し直されることがあります。段階が上がれば負担限度額も上がるため、家計の見通しに影響します。毎年の更新申請のタイミングで送られてくる通知や、認定証に記載された段階を必ず確認し、想定外に負担が増えていないかをチェックする習慣を持つと安心です。

帰国のたびに手続きが重なるのを防ぐ工夫

海外在住の家族が一時帰国できる期間は限られていることが多く、その短い期間に「負担限度額認定の更新」「要介護認定の更新」「ケアプランの見直し」といった手続きが重なると、対応しきれずに後回しになりがちです。負担限度額認定の有効期間(多くの自治体で7月末まで)と、要介護認定の有効期間は別々に管理されているため、どちらもカレンダーに控えておき、可能であれば更新月の前後に合わせて一時帰国のタイミングを調整する家庭もあります。要介護認定の更新時期や必要書類の考え方は、認定の仕組み自体を扱う介護保険の基本ガイドも参考になります。

比較表

主な違いを表で見比べられるように並べます。

所得段階主な対象・年金収入等の目安(2026年8月〜)預貯金等の要件(単身/夫婦)食費の上限(1日)居住費の上限(多床室・特養等/ユニット型個室)
第1段階生活保護受給者/住民税非課税世帯の老齢福祉年金受給者1,000万円以下/2,000万円以下300円0円/880円
第2段階住民税非課税世帯・年金収入等82.65万円以下650万円以下/1,650万円以下390円430円/880円
第3段階①住民税非課税世帯・年金収入等82.65万円超〜120万円以下550万円以下/1,550万円以下680円430円/1,370円
第3段階②住民税非課税世帯・年金収入等120万円超500万円以下/1,500万円以下1,420円530円/1,470円

よくある質問

親の預貯金がいくらあるか正確に把握していないのですが、申請前に確認しておく必要がありますか

負担限度額認定の申請では預貯金通帳の写しや有価証券の残高証明の提出が一般的に求められるため、事前の把握が欠かせません。金融機関・口座の所在がわからないと申請自体が進められないため、早めに親と一緒に確認しておくことをおすすめします。

有料老人ホームに入居している親でも、この制度で食費・居住費が安くなりますか

なりません。負担限度額認定の対象は特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院などの介護保険施設と、短期入所生活介護・短期入所療養介護(ショートステイ)に限られます。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は対象外です。

親は住民税非課税のはずですが、何もしなくても食費・居住費は自動的に安くなりますか

自動的には適用されません。要件を満たしていても、市区町村に申請して認定証の交付を受けなければ軽減は始まらず、申請が遅れた分は全額自己負担のままになります。入所前後のできるだけ早い時期に申請することが重要です。

海外に住んでいて日本にすぐ戻れないのですが、負担限度額認定の申請は家族が代理でできますか

多くの自治体で、家族が代理で申請することができます。国内にいる別の家族やケアマネジャー、地域包括支援センターに相談し、預貯金通帳の写しなど必要書類を事前にそろえておくと、限られた帰国期間でも手続きを進めやすくなります。

一度認定を受ければ、その後は何もしなくてもずっと軽減は続きますか

続きません。認定証には有効期間があり、多くの自治体では申請した月の1日から翌年7月31日までの区切りで運用され、毎年更新の申請が必要です。更新を忘れると有効期間切れの月から軽減が止まり、全額自己負担に戻ってしまいます。

2026年8月の制度変更で、これまで対象外だった親が新たに対象になることはありますか

所得の線引きが年金収入等80.9万円以下から82.65万円以下に引き上げられるため、これまで第3段階①だった方の一部が第2段階に該当し直すなど、段階の判定が変わる可能性があります。ただし対象そのものが広がるわけではなく、資産要件は据え置かれます。

多床室(相部屋)とユニット型個室では、負担限度額にどれくらい差がありますか

部屋タイプによって居住費の上限が大きく異なります。たとえば第1段階では多床室(特養等)が0円であるのに対し、ユニット型個室は880円です。段階が上がるほど差は縮まりますが、月額に換算すると数千円から1万円以上の差になり得ます。

一次情報・公的情報

本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-05.

この記事について

この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。

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