日本人本人は無条件で一時帰国できますが、外国籍の配偶者・子は短期滞在ビザの対象で、90日以内・原則就労不可という制約を受けます。介護のために長期滞在が必要なときの考え方と、配偶者ビザ取得済みの場合との違いを整理しました。
制度の全体像
日本人本人の入国・在留に制約がないという前提
親の介護のために一時帰国を検討するとき、まず整理しておきたいのは「日本国籍を持つ本人」と「同行する外国籍の配偶者・子」とでは、入管法上の扱いがまったく別だという点です。日本人は自国への入国・在留について在留資格の枠組みそのものの対象外であり、パスポートさえあれば何度でも自由に出入国でき、滞在期間の制約もありません。一時帰国そのもののタイミングや頻度をどう考えるかは一時帰国の頻度・点検の考え方で扱っていますが、この記事が対象にするのは、その本人に同行する外国籍の配偶者や子どもの在留資格という、手続き上の別の壁です。
同行家族が原則対象になる「短期滞在」
外国籍の配偶者や子が、観光・親族訪問・一時的な介護の手伝いといった目的で日本に入国する場合、多くのケースで対象になるのが「短期滞在」という在留資格です。出入国在留管理庁の説明によれば、短期滞在は「九十日若しくは三十日又は十五日以内の日を単位とする期間」で付与される在留資格で、収入を伴う活動や就労を目的とする在留資格ではありません。観光・保養・親族の訪問・見学・講習や会合への参加といった活動が想定されており、介護の手伝いそのものを在留資格上の目的として明記した区分は存在しません。つまり、短期滞在ビザで入国した外国籍配偶者が親の介護を手伝うこと自体は妨げられませんが、その滞在は「観光・親族訪問に準じる短期の来日」という枠組みの中で扱われることになります。
出身国で異なる「ビザなし入国」の期間
配偶者の国籍によっては、そもそも短期滞在の「ビザ(査証)」自体を事前に取得しなくても入国できる場合があります。外務省によれば、2025年9月1日時点で74の国・地域が日本の査証免除措置の対象になっており、対象国・地域の国籍者は査証なしで短期滞在の在留資格を得て入国できます。ただし、免除される場合でも上陸時に付与される在留期間は国籍によって差があり、インドネシア及びタイの国籍者は「15日」、ブルネイ及びカタールの国籍者は「30日」、それ以外の対象国・地域の国籍者は「90日」とされています。査証免除の対象国・地域に含まれない国籍の配偶者は、来日前に日本大使館・総領事館で短期滞在ビザそのものを取得する必要があり、その審査には一定の期間がかかります。親の介護のために急に一時帰国が必要になった場合でも、配偶者の国籍によっては渡航前の準備期間そのものが変わってくるため、早い段階で配偶者の国籍がどちらに該当するかを確認しておくことが実務上重要です。
この区別が重要な理由
この区別が重要なのは、短期滞在という在留資格には「短期の来日」を前提にした強い制約が組み込まれているためです。具体的には、日数の上限があること、原則として資格外活動(就労)が認められないこと、そして他の在留資格への変更が原則として認められないことの3点です。親の介護が長引きそうだと分かった時点で「とりあえず短期滞在で来日して、必要になったら延長すればよい」と考えてしまうと、実際の制度運用とのずれに直面しやすくなります。海外からの日本の親のサポート全般の考え方は海外から日本の親を支える方法にまとめていますが、外国籍の配偶者・子が同行する家庭では、この在留資格の壁を早めに理解しておくことが、介護の初動を左右します。
同行する子どもの在留資格も配偶者と同じ考え方
日本人本人と外国籍配偶者の間に生まれた子が外国籍を選択している場合や、配偶者の連れ子が同行する場合も、基本的な考え方は配偶者と同じです。日本人本人の親族として一時的に来日する場合は短期滞在の対象になり、15日・30日・90日のいずれかの期間、資格外活動が原則できないという制約を受けます。一方で、子が生まれながらに日本国籍と外国籍を重国籍として持っている場合や、すでに「日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者」に該当する在留資格を得ている場合は、就労制限のない枠組みで滞在できます。家庭ごとに子の国籍・在留資格の状況が異なるため、配偶者だけでなく同行する子についても、パスポート・在留カードの記載を事前に確認しておくと、入国時の混乱を避けられます。
長期滞在への道筋
短期滞在中は原則就労不可
短期滞在の在留資格を持つ人は、資格外活動許可を得る道が原則として開かれていません。「技術・人文知識・国際業務」「技能実習」「特定技能」「短期滞在」「研修」といった在留資格は、資格外活動許可の対象になりにくい区分として扱われており、短期滞在のまま日本国内で報酬を伴う仕事に就くことは想定されていません。介護のために長期間同行する外国籍配偶者が、日本滞在中の生活費を日本国内での就労でまかなうという計画は、短期滞在のままでは成り立たない前提として押さえておく必要があります。
条件が厳しい在留期間更新許可申請という道
短期滞在のまま90日を超えて滞在を続けたい場合、選択肢になるのが「在留期間更新許可申請」です。ただし出入国在留管理庁は、短期滞在に係る在留期間の更新は「人道上の真にやむをえない事情又はこれに相当する特別な事情がある場合に認められるもの」としており、例として病気治療の必要がある場合を挙げています。親の介護のために同行してきた配偶者が、来日後に親の病状が悪化し、当初の予定より長く介護に関わらざるを得なくなったといった事情は、この「特別な事情」として考慮される余地がありますが、自動的に認められるものではなく、診断書など客観的な資料で事情を裏づける必要があります。手数料は2026年7月時点で、書面申請の場合6,000円、オンライン申請の場合5,500円です(2025年4月の改定後の金額)。ただし2026年7月3日に出入国在留管理庁が公表した政令改正案では、在留期間更新許可申請の手数料を在留期間に応じて最大7万5,000円程度まで引き上げる案が示されており、2026年10月1日以降の申請分から適用される見通しです。この改正案は2026年8月2日までパブリックコメントを募集している段階で、正式決定ではありませんが、今後長期滞在の延長を検討している家庭は、この手数料の動きを確認しておくとよいでしょう。
申請先と審査にかかる時間の目安
在留期間更新許可申請は、住居地を管轄する地方出入国在留管理局に対して行います。申請書のほか、在留カード(交付されている場合)、パスポート、そして更新が必要な理由を裏づける資料(親の病状に関する診断書、入院や通院の状況が分かる資料など)の提出が求められます。審査には一定の日数がかかり、申請してすぐに結果が出るものではないため、短期滞在の期間が残り少なくなってから慌てて申請するのではなく、介護の長期化が見込まれた時点で早めに準備を始めることが望ましいとされています。申請中であっても在留期間を過ぎてしまうと不法滞在の扱いになり得るため、期限管理は本人任せにせず、家族で共有しておく価値があります。
短期滞在からの在留資格変更は原則不可
「介護のために長く滞在するなら、いっそ配偶者ビザに切り替えればよいのでは」と考える家庭もありますが、短期滞在から「日本人の配偶者等」への在留資格変更は、原則として認められていません。これは、短期滞在という在留資格そのものが「短期の来日」を前提にした枠組みであり、入国時点の目的と異なる長期の身分系の在留資格への切り替えを、国内での変更手続きだけで安易に認めてしまうと、制度の趣旨が崩れてしまうためです。結婚などにより「やむを得ない特別の事情」があると認められる場合に限り、例外的に変更が認められることがありますが、単に「介護のために長く日本にいたい」という理由だけでは、この例外に該当するとは限りません。
配偶者ビザ取得済みのケース
「日本人の配偶者等」は在留期間も就労制限も別枠
すでに「日本人の配偶者等」の在留資格を取得している外国籍配偶者は、短期滞在とはまったく異なる条件で日本に滞在できます。出入国在留管理庁によれば、日本人の配偶者等の在留期間は5年・3年・1年・6か月のいずれかで、就労制限のない在留資格に分類されます。従事できる業務に制限がなく、日本国内でどのような職業に就くことも可能です。親の介護のために長期間日本に滞在しながら、必要に応じて働くこともできるという点で、短期滞在とは前提がまったく異なります。付与される在留期間が5年・3年・1年・6か月のどれになるかは、提出資料やこれまでの在留状況などから入管が総合的に判断するため、一律に決まるものではありません。
時間がかかる前提の配偶者ビザの準備
配偶者ビザ(日本人の配偶者等)を新たに取得するには、婚姻の実態を示す資料や在留資格認定証明書交付申請など、一定の準備期間と書類が必要です。親の介護が急に必要になったタイミングから配偶者ビザの取得を始めても、短期間で取得できるとは限りません。すでに配偶者ビザを取得している家庭であればこの壁自体が存在しませんが、これから婚姻届を出す予定の家庭や、配偶者ビザの取得を検討し始めたばかりの家庭は、短期滞在での一時帰国と並行して、早い段階から専門家(行政書士・入管業務の専門家)に相談しておくことが、介護と手続きの両立を助けます。
永住者・特別永住者の配偶者の条件の違い
配偶者が外国籍であっても、その配偶者自身がすでに永住者や特別永住者などの在留資格を持っている場合は、日本人の配偶者等とはまた別の枠組みで在留が続きます。永住者は在留期間や就労の制限を受けず、在留資格そのものが安定しているため、親の介護のために長期間日本に滞在すること自体に、短期滞在特有の日数の壁は生じません。自分の配偶者がどの在留資格に該当するのか、まず在留カードの記載を確認することが、次に何をすべきかを判断する出発点になります。
海外・遠距離からの備え
在留資格の確認から始める一時帰国の計画
親の介護のために一時帰国を計画する家庭は、日本人本人の帰国スケジュールだけでなく、同行する外国籍配偶者・子の在留資格と、付与される可能性のある滞在日数を先に確認しておくことが重要です。短期滞在の90日という上限を前提にすると、介護がどの程度長引きそうか、90日以内に区切りをつけられるのか、それとも延長や在留資格変更の相談が必要になりそうかを、事前にある程度見通しておけます。遠距離介護全体の進め方は遠距離介護の進め方で扱っていますが、外国籍配偶者が同行する家庭は、この在留資格の見通しを介護計画の一部として組み込んでおく必要があります。
早いほど選択肢が広がる専門家への相談
在留期間更新許可申請や在留資格変更は、申請してすぐに結果が出るものではなく、審査には一定の期間がかかります。親の病状が悪化してから慌てて相談するより、一時帰国の予定が決まった時点で、行政書士や入管業務に詳しい専門家に一度相談しておくと、短期滞在での滞在可能日数、延長の見込み、配偶者ビザ取得の検討状況に応じた選択肢を早めに整理できます。介護に関する費用面の見通しは日本の高齢者介護にかかる費用で扱っていますが、在留資格の手続きにかかる費用や手数料は、こうした介護費用とは別枠で準備しておく必要があります。
「やむを得ない事情」の説明を助ける記録
短期滞在の在留期間更新や在留資格変更の相談では、「なぜ当初の予定より長い滞在が必要になったのか」を客観的に説明できることが重要になります。親の病状の変化を示す診断書、入院・退院の記録、介護のために配偶者が実際にどのような対応をしてきたかの記録を日頃から残しておくと、専門家に相談する際にも、入管への説明資料としても役立ちます。家族間でのお金や権限の整理は親のお金と権限のガイドにまとめていますが、外国籍配偶者が介護に関わる家庭では、こうした記録に加えて、在留資格まわりの記録も並行して残しておく発想を持っておくとよいでしょう。
比較表
主な違いを表で見比べられるように並べます。
| 同行者の在留資格 | 滞在可能日数の目安 | 延長・変更の可否 | 就労の可否 |
|---|---|---|---|
| 短期滞在(新規入国) | 90日・30日・15日のいずれか | 原則不可。人道上やむを得ない事情がある場合のみ在留期間更新の余地 | 原則不可(資格外活動許可の対象になりにくい) |
| 短期滞在(更新後) | 人道上の事情が認められれば追加の期間 | さらなる更新も同様に厳格な審査 | 原則不可 |
| 日本人の配偶者等(配偶者ビザ取得済み) | 6か月・1年・3年・5年のいずれか | 通常の在留期間更新の枠組みで更新可能 | 制限なし |
| 永住者・特別永住者 | 在留期間の上限なし | 該当なし(在留資格自体が安定) | 制限なし |
よくある質問
外国籍の配偶者が短期滞在ビザで日本に滞在できるのは、最長で何日ですか?
短期滞在の在留期間は90日・30日・15日のいずれかを単位とする期間で付与されます。最長でも90日が上限で、それを超えて滞在するには在留期間更新許可申請などの手続きが必要になります。
短期滞在の在留期間更新の手数料はいくらですか?
2026年7月時点では、書面申請が6,000円、オンライン申請が5,500円です(2025年4月の改定後の金額)。ただし2026年7月3日に公表された政令改正案では、在留期間に応じて最大7万5,000円程度への引き上げが示されており、2026年10月1日申請分からの適用が見込まれています。改正案は2026年8月2日までパブリックコメント募集中で、正式決定ではありません。
短期滞在から日本人の配偶者等への在留資格変更に、費用や期間はどれくらいかかりますか?
短期滞在から日本人の配偶者等への変更は原則として認められておらず、結婚などの「やむを得ない特別の事情」がある場合の例外的な取り扱いです。費用・期間とも個別の事情によって大きく異なるため、一律の目安を示すことはできません。行政書士など専門家への相談が前提になります。
短期滞在中の外国籍配偶者は、介護の合間にアルバイトをして生活費の足しにしてもよいですか?
原則としてできません。短期滞在は資格外活動許可の対象になりにくい在留資格のひとつで、報酬を伴う活動は想定されていません。滞在中の生活費は、就労に頼らない形で準備しておく必要があります。
すでに「日本人の配偶者等」の在留資格を持っている配偶者なら、在留期間は何年になりますか?
5年・3年・1年・6か月のいずれかで、提出資料やこれまでの在留状況などをもとに入管が総合的に判断します。就労制限のない在留資格に分類されるため、短期滞在のような日数の上限や就労の制約はありません。
短期滞在の在留期間更新は、どのような事情があれば認められますか?
出入国在留管理庁は「人道上の真にやむをえない事情又はこれに相当する特別な事情がある場合」に限って認めるとしており、病気治療の必要がある場合を例に挙げています。親の病状悪化などにより介護の継続が必要になった事情も考慮の対象になり得ますが、診断書など客観的な資料での裏づけが前提です。
一次情報・公的情報
本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-11.
この記事について
この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。
