制度ガイド

親の転居と要介護認定|住所地特例と14日ルール

親を呼び寄せる、または施設入所のために転居させるとき、要介護認定は自動で引き継がれません。転入先で14日以内に申請する通常ルートと、施設入所では元の市が保険者のままになる住所地特例という例外を、手続きの順番で整理します。

公開日
2026-07-11
最終更新日
2026-07-11
情報確認日
2026-07-11
出典
6件の一次情報・公的情報

親を呼び寄せる、または施設入所のために転居させるとき、要介護認定は自動で引き継がれません。転入先で14日以内に申請する通常ルートと、施設入所では元の市が保険者のままになる住所地特例という例外を、手続きの順番で整理します。

転居前の準備

要介護認定は転居しても自動継続しない

親がすでに要介護認定や要支援認定を受けている場合でも、住民票を別の市区町村に移すと、その認定は自動的には引き継がれません。介護保険は市区町村ごとに運営される制度で、認定審査も保険料の徴収も転居先の市区町村が新たに担うのが原則だからです。認定が引き継がれない期間ができてしまうと、その間に利用したサービスの費用は原則として全額自己負担になります。介護保険制度そのものの仕組みは介護保険の基本ガイドで扱っていますが、この記事では「転居に伴う手続き」という一点に絞って時系列で見ていきます。

転居前に確認する2つの分岐

転居の手続きを始める前に、まず自分たちのケースがどちらに当たるかを確認しておくと迷いが減ります。1つは、親が自宅からもう1つの自宅(子の家や賃貸住宅など)へ住民票ごと転居する在宅ケースです。もう1つは、介護保険施設・有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅など特定の施設に入所・入居し、住民票を施設所在地に移すケースです。後者では、後述する住所地特例という例外が働き、在宅の転居とは保険者の扱いが変わります。呼び寄せの検討段階では、高齢の親と日本へ移住する前にで扱う住まい探しの視点と合わせて確認しておくとよいでしょう。

転居のスケジュールを逆算しておく

親の転居を伴う手続きは、住民票の異動・介護保険の届出・在宅サービスや施設との契約が同時期に重なります。転居日が決まったら、その日から数えて何日以内に何をすませる必要があるかを逆算しておくと、後述する14日という期限に慌てずに対応できます。特に在宅での呼び寄せの場合、転入先の市区町村での申請期限は転入日を起点に数えるため、引っ越し当日ではなく住民票の異動日を基準に数える点を家族間で共有しておくと行き違いが減ります。転居先で希望する在宅サービスの空き状況を早めに確認しておくことも、認定の引き継ぎと並行して進めておきたい準備の1つです。

転出時の手続き

転出届と受給資格証明書の交付

すでに要介護・要支援認定を受けている親が別の市区町村へ転出する場合、転出届を出す際に、これまでの住所地の介護保険担当窓口(区役所・市役所の保険年金課など)で「受給資格証明書」の交付を申請します。この証明書には、認定されている要介護度・認定の有効期間・支給限度額などが記載されており、転入先の市区町村が認定を引き継ぐかどうかを判断するための書類になります。川崎市の案内でも、要介護認定を受けたまま市外へ転居する場合はこの証明書の交付を受けるよう案内されています。

介護保険被保険者証の返納

受給資格証明書の交付と合わせて、それまで使っていた介護保険被保険者証は転出元の市区町村に返納します。転出時にこの手続きを済ませておかないと、転入先での申請時に必要な情報がそろわず、確認のやり取りに時間がかかることがあります。転居のタイミングでは住民票の移動・国民健康保険・年金など複数の届出が重なりやすいため、介護保険担当窓口でも同時に済ませられる手続きがないか、事前に確認しておくと動きやすくなります。

窓口へ持参するものと本人以外が手続きする場合

転出届と受給資格証明書の交付を窓口で申請する際は、本人確認書類に加えて、これまでの介護保険被保険者証、マイナンバーが分かる書類の提示を求められることが一般的です。親本人が窓口に行けない場合、同居家族や委任を受けた代理人が手続きを進めることもできますが、委任状の様式や代理人の範囲は自治体ごとに定めがあるため、事前に電話などで確認しておくと窓口での手戻りを防げます。海外在住の家族が直接窓口に行けないケースでは、国内にいる別の親族に代理を頼む形が現実的な進め方になります。

転入後14日以内の手続き

14日以内に申請すれば認定を引き継げる

転入先の市区町村で、転入した日から14日以内に受給資格証明書を添えて要介護認定の申請をすると、転出元で受けていた要介護度・認定の有効期間をそのまま引き継ぐことができます。新規の認定調査をやり直す必要がなく、転居直後から従来どおりのサービスを利用しやすくなる点が、この14日ルールの実務上の意味です。転入先での相談窓口としては、地域の窓口である地域包括支援センターや、担当となるケアマネジャー探しも同時に進めておくと、その後のサービス利用がスムーズになります。

14日を過ぎた場合の不利益

14日の期限を過ぎると引き継ぎの手続きは使えず、新規の要介護認定申請として扱われることになります。新規申請では認定調査や主治医意見書の取り寄せから始まるため、結果が出るまでの間にサービスを利用した費用は、原則として全額自己負担になります。すでに要介護度が分かっている親の状態が、転居のタイミングで空白期間によって不利益を受けることになるため、転居が決まった時点で早めにスケジュールを組んでおくことが実務上の対策になります。

引っ越し当日は荷物の搬出入や住民票の異動届で予定が埋まりやすく、介護保険の申請が後回しになりがちです。転入先の窓口の開庁時間や、予約制を採用している自治体かどうかも事前に確認しておくと、14日という短い期間の中で無駄な足踏みを減らせます。特に年末年始やゴールデンウィークなど窓口が閉まる期間をまたぐ転居では、実質的に動ける日数がさらに短くなる点にも注意が必要です。

マイナンバー連携で証明書がなくても手続きできる場合がある

近年はマイナンバー制度による情報連携が進み、転入先の市区町村が転出元の認定情報を確認できる場合は、受給資格証明書の提示がなくても手続きが進められる自治体が増えています。ただし、情報連携の運用は自治体ごとに異なり、すべてのケースで証明書が不要になるとは限りません。転居前に転出元・転入先どちらの窓口にも、証明書の要否を含めて事前に確認しておくと確実です。

転入後に並行して進めたい手続き

要介護認定の引き継ぎ申請と同時に、転入先の自治体での介護保険被保険者証の交付、担当ケアマネジャーの選定、利用するサービス事業所との契約見直しも進める必要があります。転出元で契約していた事業所とは別の事業所に切り替える場合、サービス開始までにも一定の準備期間がかかるため、14日以内の認定引き継ぎ申請と並行して、転入先の地域包括支援センターへ早めに相談を始めておくと、生活の空白期間を短くできます。同居する家族がいない場合は、転居直後の生活を支える体制づくりも合わせて考えておく必要があります。

施設入所時の住所地特例

住所地特例とは何か

親を呼び寄せるための在宅の転居とは別に、介護保険施設や有料老人ホームなどに入所・入居して住民票を施設所在地に移す場合には、住所地特例という例外的な仕組みが適用されます。通常は住民票がある市区町村が保険者になりますが、住所地特例対象施設に入所して住所を移した場合に限り、施設に入る前に住んでいた市区町村が引き続き保険者になります。介護施設が集中して立地する市区町村に給付費の負担が偏らないよう調整するための仕組みで、介護保険法第13条に定めがあります。

対象になる施設

住所地特例の対象になる施設には、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)・介護老人保健施設・介護医療院・有料老人ホーム・養護老人ホーム・軽費老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅などが含まれます。対象施設かどうかは施設の種類によって決まるため、遠方の施設への入所を検討する段階で、施設側または自治体の窓口に住所地特例の対象施設かどうかを確認しておくと、その後の手続きの見通しが立てやすくなります。

施設側での届出も必要になる

住所地特例の対象施設に入所すると、施設の運営者が入所者の住所地特例に関する届出を行う仕組みになっています。家族の側でも、施設との入所契約の際に住所地特例の対象になることを施設から説明されるのが一般的ですが、説明がない場合は自分から確認しておくと安心です。転居前の市区町村が保険者であり続けるため、その後のケアプランの作成や給付管理も、転居前の市区町村の制度に基づいて行われることになります。

在宅の転居と施設入所の転居で扱いが違う理由

在宅のまま親を呼び寄せる転居では、転入先の市区町村が新たな保険者になり、前述の14日ルールで認定を引き継ぐ流れになります。一方、施設入所のための転居では、住所地特例により転居前の市区町村が保険者であり続けるため、転入先の市区町村へ改めて要介護認定の申請をし直す必要はありません。同じ「親を別の市区町村に転居させる」という行為でも、在宅か施設入所かで手続きの窓口・期限・保険者が変わる点が、この分野でもっとも混同されやすいポイントです。費用面の見通しは日本の高齢者介護にかかる費用も合わせて確認しておくと、転居後の生活設計を立てやすくなります。

海外家族の備え

海外在住の家族が事前に確認すること

海外に住む家族が、日本国内の親の転居手続きを遠隔で支える場面では、まず自分たちのケースが在宅の転居なのか施設入所なのかを最初にはっきりさせておくことが役に立ちます。在宅であれば転出元での受給資格証明書の交付と転入先での14日以内の申請、施設入所であれば住所地特例で保険者が変わらないことの確認、というように、動き方がまったく異なるためです。海外からの介護コーディネート全般については海外から日本の親を支える方法、遠距離での役割分担の考え方は遠距離介護の進め方にまとめています。

呼び寄せと施設入所の見極め方

親を自分の近くに呼び寄せて在宅で見守りたいのか、遠方でも受け入れ先のある施設に入所させたいのかによって、必要な手続きの順番が変わります。呼び寄せを検討している場合は、転居先の自治体でどのような在宅サービスが利用できるか、地域包括支援センターへの相談を転居前から始めておくと、転入後の申請と並行して支援体制を整えやすくなります。施設入所を検討している場合は、住所地特例の対象施設であるかどうかを施設の契約前に確認しておくことが、後々の保険者をめぐる行き違いを避けるポイントになります。

判断に迷う場合は、親の心身の状態や希望、家族が現実的に見守れる頻度を踏まえて考える必要があります。在宅での呼び寄せは日常的な見守りがしやすくなる一方で、転居先での生活基盤を新たに整える負担が生じます。施設入所は住まいの心配が減る一方で、住所地特例により保険者は転居前の市区町村のままであることを理解した上で、施設との契約内容やケアプランの引き継ぎを確認しておく必要があります。

手続きの窓口は自治体ごとに異なる

受給資格証明書の様式や、マイナンバー連携による省略の可否、住所地特例の運用の細部は自治体によって異なります。転出元・転入先双方の介護保険担当窓口に早めに連絡を取り、必要な書類と期限を具体的に確認しておくことが、遠隔で手続きを支える家族にとって最も確実な進め方です。海外からの連絡が難しい時間帯もあるため、国内にいる親族やケアマネジャーと役割を分担しておくと、14日という短い期限にも対応しやすくなります。

一時帰国のタイミングに合わせて手続きを組む

海外在住の家族が一時帰国できる期間が限られている場合、その期間内に転出届・受給資格証明書の受領・転入先での申請まで進められるかどうかを、渡航前から逆算しておくと動きやすくなります。窓口での本人確認や委任状の準備には時間がかかることもあるため、一時帰国の日程が決まった時点で、必要書類を事前に用紙だけでも取り寄せておく、電話やオンラインで予約できる自治体は予約を入れておくといった準備が、限られた滞在日数を有効に使う工夫になります。

施設探しと手続きを同時並行で進める場合の注意

親を呼び寄せるか、あるいは受け入れ先の施設を探すかで迷っている段階から、両方の可能性を並行して検討する家族も少なくありません。この場合、在宅の呼び寄せを前提に転入先の市区町村への相談を進めつつ、同時に住所地特例の対象になる施設への入所も候補として動くと、どちらの結論になっても手続きの窓口や期限の見通しをあらかじめ把握できます。方針が固まってから初めて自治体に問い合わせるより、迷っている段階から両方の窓口に状況を伝えておく方が、直前になって期限に追われる事態を避けやすくなります。

比較表

実際に選ぶときに効いてくる違いを表にまとめました。

転居のパターン保険者必要な手続き認定の扱い
在宅のまま他市区町村へ転居転入先の市区町村に変わる転出時に受給資格証明書を受領、転入後14日以内に申請14日以内なら従来の要介護度・有効期間を引き継ぎ
施設入所のために転居(住所地特例対象施設)転居前の市区町村のまま変わらない施設所在地の自治体への改めての認定申請は不要転居前の認定がそのまま有効
同一市区町村内での転居変わらない住所変更の届出のみ(認定申請は不要)そのまま有効

よくある質問

海外にいる自分が代わりに、親の転出届と受給資格証明書の交付を窓口で申請できますか

委任状や代理権の範囲は自治体によって取り扱いが異なるため、事前に転出元の介護保険担当窓口へ確認する必要があります。国内に親族がいる場合は、その親族が窓口対応を担い、海外の家族は書類の準備や日程調整を担当するといった役割分担が現実的です。

親を呼び寄せてから14日以内に引っ越し作業と申請を両方終えられるか不安です 何を先に済ませておけばよいですか

転居が決まった時点で、転出元での受給資格証明書の交付だけは先に済ませておくと、転入後の申請までの流れがスムーズになります。転入先の住まいや在宅サービスの見通しも、転居前から地域包括支援センターに相談しておくと、14日の期限内に動きやすくなります。

特別養護老人ホームに親を入所させるために住民票を施設のある市に移す予定です 介護保険料はどちらの市に払うことになりますか

住所地特例の対象施設に該当する場合、施設所在地の市区町村ではなく、施設に入る前に住んでいた市区町村が引き続き保険者となり、保険料もその市区町村に納めることになります。対象施設かどうかは、契約前に自治体または施設に確認しておくと安心です。

転入した日から14日を過ぎてしまいそうです その場合、それまでの認定はどうなりますか

14日を過ぎると、認定の引き継ぎではなく新規の要介護認定申請として扱われます。認定調査や主治医意見書の取り寄せから始まるため結果が出るまで時間がかかり、その間にサービスを利用した費用は原則として全額自己負担になる点に注意が必要です。

マイナンバーで情報連携されているなら、受給資格証明書を用意しなくても転入先で手続きできますか

自治体によっては、マイナンバーの情報連携により転出元の認定情報を確認できるため証明書なしで手続きが進められる場合があります。ただし運用は自治体ごとに異なるため、転居前に転入先の窓口へ証明書の要否を確認しておくと確実です。

サービス付き高齢者向け住宅への入居も、特別養護老人ホームと同じように住所地特例の対象になりますか

サービス付き高齢者向け住宅は住所地特例の対象施設に含まれる場合がありますが、契約形態や自治体の運用によって扱いが分かれることがあります。入居を検討している住宅が対象施設に当たるかどうかは、契約前に自治体の介護保険担当窓口に確認してください。

一次情報・公的情報

本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-11.

この記事について

この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。

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