制度ガイド

高齢の親と日本へ移住する前に

高齢の親御さんと日本へ移住する前に確認しておきたい、在留資格、医療体制、介護保険が使えるまでの期間、住まい選び、到着後90日の動き方をまとめたガイドです。

公開日
2026-06-03
最終更新日
2026-06-21
情報確認日
2026-06-21
出典
2件の一次情報・公的情報

高齢の親と一緒に日本へ移住する、あるいは海外生活を終えて親を連れて帰国する。そのとき介護や医療の準備は、住まい探しより先に考えるべきテーマです。このガイドでは、移住前に確認しておきたいことを、つまずきやすい順番に整理しました。

在留資格・医療保険という制度の壁

最初の関門は在留資格(外国籍の親の場合)

外国籍の親を日本に呼び寄せて暮らす場合、最大のハードルは介護ではなく在留資格です。日本には「高齢の親を呼び寄せるためのビザ」という一般的な区分がなく、認められる道は限られ、個別事情に大きく左右されます。

住まいや介護の計画を立てる前に、まず入管手続きに詳しい行政書士や弁護士に相談し、在留資格の見通しを確認してください。ここが成立しなければ、後の計画はすべて宙に浮きます。なお、日本国籍の親を海外から呼び戻す場合はこの問題はなく、住民票を戻すところから始まります。

在留資格「特定活動」の、現実的なハードル

外国籍の高齢の親を呼び寄せる道は、ある程度決まった形がありますが、許可のハードルは高いのが実情です。期待だけで計画を進めず、現実を知っておきます。

高齢の親を呼び寄せるための専用の在留資格はありません。実務では、いったん短期滞在で入国し、そこから「特定活動」への在留資格変更を申請するのが一般的です。在留が認められても期間は原則1年で、毎年の更新が必要です。審査では、本国に身寄りがいないこと、親が高齢で扶養が必要なこと、日本側に十分な扶養能力があること、ほかに扶養できる親族がいないことなどが、個別に厳しく見られます。出入国在留管理庁の基本的な姿勢は「本国で支え合えるなら本国で」であり、許可は容易ではありません。だからこそ、住まいや介護を考える前に、必ず入管手続きにくわしい行政書士・弁護士に相談し、見通しを立ててから動いてください。これは一般的な情報であり、個別の可否は専門家の判断が必要です。

呼び寄せた親の医療保険は、どうなる?

在留資格が認められ、日本に住民登録すると、医療保険への加入が始まります。年齢で入る制度が変わります。

中長期の在留資格を得て住民登録をした外国籍の方は、原則として公的医療保険に加入します。おおむね74歳までは国民健康保険、75歳以上は後期高齢者医療制度の対象です。保険料の負担も同時に始まります。注意したいのは、来日直後から大きな医療や介護が必要な状態だと、在留資格の審査で問われる「扶養能力」の面でも、実際の家計の面でも負担が重くなる点です。加入手続きが整うまでの空白を埋めるため、来日初期は海外旅行保険などでつなぐ計画にしておくと安心です。介護保険も、40歳以上で住民登録があれば加入対象になりますが、サービスを使うには要介護認定の手続きが要ります。

住民登録で何が始まるか

日本での暮らしの土台は住民登録です。登録すると、医療保険と介護保険への加入が始まり(保険料の負担も始まります)、各種の行政サービスの窓口が住所地の市区町村に定まります。

注意したいのはタイムラグです。介護保険のサービスを使うには、登録後に要介護認定を申請し、結果まで約1か月、その後ケアプラン作成を経てようやく開始となります。到着直後から公的サービスに頼る計画は成り立ちません。最初の数か月は、家族の支えと民間サービスでつなぐ前提で設計しましょう。

薬の問題は、出発前に解決しておく

移住準備で最も事故が起きやすいのが薬です。海外で処方されている薬が日本では承認されていない、成分が規制対象、という場合があります。

  • 今の処方薬が日本で入手できるか、同等薬は何かを出発前に確認
  • 一定量を超える薬の持ち込みには「薬監証明」という手続きが必要な場合があります
  • 診断書・処方歴・検査結果の英文サマリーを用意し、重要部分は日本語訳を
  • 到着後できるだけ早く日本の医師にかかり、処方を日本の薬に切り替える

住まいと呼び寄せの計画づくり

住まい選びは「介護と医療への近さ」で決める

高齢の親にとって、住まい選びと介護・医療アクセスの確保は同じ意思決定です。物件の便利さだけで決めると、あとで動きが取れなくなります。

  • 親自身の足で歩ける範囲に、診療所・薬局・食料品店があるか
  • その地域に訪問介護やデイサービスの事業所があるか(事業所には対応エリアがあります)
  • 段差・エレベーター・浴室など、住宅自体の安全性
  • 実際に動ける家族との距離

国内の呼び寄せ(地方の実家から、自分の街へ)

海外からだけでなく、国内で親を自分の住む街へ呼び寄せる場合も、手続きと環境の両面で準備が要ります。

認定そのものは引き継げるので、移ってすぐに再申請からやり直す必要はありません。ただし、現地のサービス事業者やかかりつけ医は変わるため、引っ越し前のケアマネジャーから新しい担当へ、状況を申し送ってもらうと切れ目が減ります。引っ越しのタイミングは、認定の更新時期や入院・退院のタイミングと重ねると、手続きをまとめやすくなります。

  • 住所が変わると、担当の地域包括支援センターと、要支援の場合のプラン作成窓口が変わります
  • 要介護認定は引っ越し先へ引き継げます。転出時に受給資格証明書を受け取り、転入から14日以内に転入先の市区町村で手続きします
  • 要介護のケアマネジャーや事業者は、引っ越し先の地域で新たに探し直すことになります
  • 施設に入るために別の市区町村へ住民票を移した場合は、住所地特例で元の市区町村が保険者のまま続くことがあります

環境が変わること自体が、負担になる

移住や呼び寄せを考えるとき、見落とされがちなのが、住み慣れた場所を離れること自体の心身への影響です。

高齢になってからの引っ越しは、それだけで体調や認知機能に影響することが知られています。長年の友人、近所付き合い、慣れた生活動線、母語の環境を失うと、気力が落ち、認知症が進む引き金になることもあります。家族のそばで暮らせる安心と、慣れた土地を離れる喪失を、両方の重さで考えてください。とくに認知症のある親の場合、環境の急な変化は症状を悪化させやすいので、移住の是非はより慎重に判断します。移すと決めた場合も、なじみの家具や写真を持っていく、引っ越し後しばらくは家族が手厚く関わる、といった配慮が、適応を助けます。

最初の90日をプロジェクトとして計画する

到着後の数か月を「落ち着いたら考える」期間にせず、順番を決めて進めると、つまずきが大きく減ります。

  • 1〜2週目:住民登録、保険関係、マイナンバーの手続き
  • 2〜4週目:日本語訳した医療サマリーを持って初回受診。薬の切り替えを確定
  • 2〜6週目:地域包括支援センターに挨拶。介護の必要があれば要介護認定を申請
  • 1〜2か月目:住まいの安全対策、近所への挨拶、生活動線づくり
  • 2〜3か月目:認定結果が出たらケアプラン作成・サービス開始。計画の抜けを点検

持っていく書類と医療記録を、先にそろえる

移住・帰国でつまずきやすいのが、あとから取り寄せにくい書類です。出発前に、本国側でしか手に入らないものを集めておきます。

とくに医療記録は、日本での初回受診と薬の切り替えに直結します。「どんな病気で、何の薬を、なぜ飲んでいるか」が日本の医師に正確に伝わるかどうかで、移行のスムーズさが変わります。本国を離れてからでは取りにくい書類が多いので、出発前のチェックリストにしておきましょう。

  • 医療記録:これまでの病歴、処方歴、検査結果、予防接種歴。英文サマリーと、重要部分の日本語訳
  • 身分関係:戸籍や出生・婚姻の証明、年金や保険に関する書類
  • お金まわり:本国の口座・資産・負債の一覧、年金の受給状況
  • 在留資格の関係書類(外国籍の親の場合は、専門家の指示に従ってそろえます)

移住・帰国にかかるお金を見積もる

移住には、引っ越しそのものの費用に加えて、当面の生活を支えるお金が要ります。介護が必要なら、なおさら厚めに見ておきます。

公的サービスが始まるまでの最初の数か月は、家族の支えと民間サービスでつなぐ前提なので、その期間の費用を厚めに見積もっておきます。介護にかかるお金の全体像は介護費用のガイドを、お金の管理は親のお金と権限のガイドを参考にしてください。

  • 渡航・引っ越し費用、本国の住居の解約や荷物の整理にかかる費用
  • 日本の住居の初期費用(敷金・礼金・家具家電)と、バリアフリー化の費用
  • 保険料(医療・介護)と、認定が出るまでの保険外サービスの費用
  • 当面の生活費(収入が安定するまでの数か月分の蓄え)

本国に残すもの・たたむものを決める

親が日本へ移ると、本国の暮らしの後始末が必要になります。これも、本人の判断力があるうちに進めておきたい作業です。

本国の住居(売却・賃貸・解約)、銀行口座、年金、保険、医療機関との関係をどうするか。完全に引き払うのか、当面は残すのか。これらは、移住が一時的か恒久的かによっても変わります。本国の年金を日本で受け取れるか、二国間の社会保障協定があるかなども、確認しておくと安心です。手続きには本人の署名や委任が必要なものが多く、判断力が落ちてからでは進められません。専門家や本国の家族の手も借りながら、移住の計画と並行して整理していきます。

言葉と孤立の壁を、最初から計画に入れる

外国籍の親を呼び寄せる場合も、長く海外にいた日本人の親を連れ帰る場合も、言葉と人間関係の壁は同じように立ちはだかります。

母語で話せる相手が周りにいない暮らしは、想像以上に孤立を生みます。デイサービスや地域の通いの場、同じ言語の人が集まるコミュニティ、やさしい日本語での見守りなど、孤立を防ぐ仕組みを最初から計画に組み込みます。本人が外に出る理由をつくることが、介護予防にも、心の健康にもつながります。家族がそばにいる安心だけに頼らず、本人自身の居場所をどう作るかまで考えると、移住後の暮らしが続きやすくなります。

入国後の手続きと生活基盤の整備

短期滞在から特定活動へ — 手続きの流れ

外国籍の親を呼び寄せる場合の、一般的な手続きの順番を知っておくと、何にどれだけ時間がかかるかの見当がつきます。

この呼び寄せは、制度に明文化された「老親扶養ビザ」があるわけではなく、出入国在留管理庁が個別に判断する告示外特定活動という枠です。審査では、親が高齢で日本で扶養される必要があること、本国に身寄りがない(ほかに扶養できる親族がいない)こと、日本側に十分な扶養能力があることなどが、総合的に見られます。あらかじめ入管の審査部門に相談しておくのが前提で、許可は近年とくに厳しく、不許可も現実にあります。

  • 本国で短期滞在ビザを申請し、親が日本に入国します
  • 入国後、住所地を管轄する地方出入国在留管理局に、特定活動への在留資格変更許可を申請します
  • 扶養能力や本国の事情などを示す多くの書類をそろえ、審査を受けます
  • 許可されれば在留資格が付き(原則1年)、以後は1年ごとに更新します

申請でそろえる主な書類

告示外特定活動の申請は、必要書類の多さが特徴です。本国側でしか取れないものもあるため、早めに把握しておきます(最終的な書類は専門家・入管の指示に従ってください)。

「本国に身寄りがない」「日本側に扶養能力がある」を、客観的な書類でどこまで示せるかが鍵になります。書類の組み立ては個別性が高く、不備が不許可に直結するため、入管手続きにくわしい行政書士・弁護士と準備してください。これは一般的な情報であり、可否や要件の詳細は出入国在留管理庁・専門家への確認が必要です。

  • 親本人:パスポート、写真、親子関係を示す書類、健康状態の書類、本国の資産・収入の状況、本国にほかに扶養できる親族がいないことを示す書類
  • 日本側の扶養者:在留カードまたは戸籍・住民票、在職証明、直近1年分の課税・納税証明、預金残高証明、住居の書類
  • 扶養の必要性と経緯を説明する理由書

住民登録・マイナンバー・銀行口座の順に整える

在留資格が認められたら、日本での暮らしの土台になる手続きを順番に進めます。どれも住民登録が起点です。

これらは互いに前後関係があり、住民登録が済まないと進まないものが多いです。到着直後の数週間で集中して片づける前提で、チェックリストにしておくと抜けが防げます。日本語の手続きが難しい場合は、家族や支援者の同行を計画に入れておきましょう。

  • 在留カードを受け取り、住所地の市区町村で住民登録(転入届)をします
  • 住民登録に伴い、マイナンバーが付番され、医療保険・介護保険の加入が始まります
  • 銀行口座を開きます(在留期間が短いと開設に制限がある場合があるため、在留カードを持って相談します)
  • 携帯電話やライフラインの契約、必要なら印鑑の用意も進めます

日本の医療に「つなぎ直す」

移住で最も命に直結するのが、医療の引き継ぎです。本国の主治医から、日本のかかりつけ医へ、切れ目なくつなぎます。

到着後できるだけ早く、英文と日本語訳の医療サマリーを持って、近くの医療機関を受診します。最初にかかりつけ医を決めておくと、その後の体調変化や専門医への紹介がスムーズです。お薬手帳を作って薬を一元管理し、処方を日本の薬へ切り替えます。日本語での受診が不安なときは、医療通訳の手配ができる医療機関や、自治体の多言語相談窓口を探します。健康診断を一度受けておくと、日本での医療のスタート地点が明確になります。持病のある親ほど、住まいは医療機関への近さで選ぶ価値があります。

介護・年金・生活習慣への備え

介護認定の調査で、言葉が壁になるとき

来日した親が要介護認定を受けるとき、認定調査は日本語で行われます。言葉の壁が、実態の伝わり方を左右します。

認定調査員の聞き取りに本人がうまく答えられないと、状態が正しく伝わらないおそれがあります。家族が立ち会って普段の様子を補い、できれば通訳を手配します。日々の困りごと(移動・食事・排せつ・服薬・もの忘れなど)を、日付つきで具体的にメモしておくと、本人の自己申告に頼らずに実態を届けられます。主治医意見書を書く医師にも、来日前からの経過を整理して伝えておくと、判定が実態に近づきます。要介護認定の仕組みは要介護度のガイドにまとめています。

親の年金は、本国と日本のあいだで確認する

移住すると、親の収入の柱である年金の扱いが問題になります。本国の年金を受け取り続けられるか、早めに確認します。

日本は多くの国と社会保障協定を結んでおり、加入期間の通算や、二重加入の防止などのルールがあります。本国の年金を日本で受け取れるか、為替や送金の扱いはどうなるかは、国によって異なります。本国の年金事務所や、日本の年金相談窓口、社会保険にくわしい専門家に確認しておくと安心です。年金が親の生活費の中心になることが多いので、移住後の家計を組み立てる前に、ここを固めておきます。

文化・食事・生活習慣の違いに備える

暮らしが変わると、食事や入浴、生活のリズムといった毎日のことが、思った以上にストレスになります。先に手を打っておきます。

食事の好みや宗教上の制約、入浴の習慣、生活のリズムは、長年の積み重ねです。これが急に変わると、食が細る、気力が落ちるといった形で表れます。デイサービスや配食を選ぶときに、こうした事情に配慮してくれるかを確認すると、本人の負担が減ります。本人がなじめるものを生活の中に残しつつ、少しずつ日本の暮らしに慣れていく、という移行のさせ方が、心身の安定につながります。

言葉・緊急時・帰国という運用課題

日本語を話せない親の、サービス選び

多言語に対応できる介護事業者は、まだ多くありません。言葉の壁を前提に、サービスを選び、補う工夫をします。

やさしい日本語で接してくれる事業所、家族や通訳が間に入れる体制、絵やジェスチャーでの意思疎通など、現実的な工夫を組み合わせます。ケアマネジャーには、最初に「本人は日本語が難しい」と明確に伝え、対応できる事業者を一緒に探します。同じ言語のコミュニティや、本人が安心できる相手とのつながりも、孤立を防ぐ大切な要素です。日本語と日本の制度の橋渡しは、私たちJapan Care Conciergeがお手伝いできる部分でもあります。

緊急時・入院・看取りまで見据える

考えたくないことですが、高齢の親の移住は、緊急時や人生の最終段階の備えまで含めて計画します。

急病や入院のときに誰が対応するか、身元保証をどうするか、救急隊や病院に伝える情報をどう用意するかを、元気なうちに決めておきます。入院や施設では身元保証人を求められることが多く、身寄りの少ない移住では特に課題になります。さらに、終末期にどこまでの医療を望むか、言葉や文化・宗教の面で配慮してほしいことは何かを、本人と話しておくことが、いざというときの家族の迷いを減らします。これは一般的な情報であり、具体的な医療やケアの選択は、主治医や専門職とよく相談してください。

決める前に、一度「お試し」する

移住は大きな決断です。可能なら、本決まりにする前に、長めの滞在で日本の暮らしを試してみると、判断材料が増えます。

数週間から数か月、日本で実際に暮らしてみると、気候や食事、医療へのかかりやすさ、言葉の壁、孤立しないかどうかが、机上の検討より具体的に見えてきます。本人が「ここでなら暮らせそうか」を体で確かめる機会にもなります。お試しの滞在で見えた課題を、本格的な移住の計画に反映すれば、移ってからの「こんなはずではなかった」を減らせます。家族にとっても、介護を含めた生活が回るかを試す貴重な機会になります。

帰国する日本人の親の、手続きの実際

日本国籍の親を海外から連れ帰る場合は、在留資格の問題がないぶん、手続きの中心は住民票と保険の再開です。

海外に住んでいた期間は日本の公的医療保険に入っていないため、帰国直後に医療が必要なら、加入手続きを急ぎます。手続きの大枠は外国籍の親と同じく、医療の引き継ぎ、住まい選び、最初の90日の計画という流れに沿います。在留資格の関門がないぶん、医療と介護の準備に早く取りかかれます。

  • 市区町村に転入届を出し、住民票を回復します(マイナンバーも以前のものが使えます)
  • 医療保険に加入します(おおむね74歳までは国民健康保険、75歳以上は後期高齢者医療制度)
  • 年金の住所変更や受給の手続きを行います
  • 介護が必要なら、住民登録のあと要介護認定を申請します

家族と本人の視点で決める

家族の生活への影響を、正直に見積もる

呼び寄せは「同居」とは限りません。どんな距離で支えるにせよ、家族の生活が受ける影響を、きれいごとにせず見積もっておきます。

同居するのか、近くに住んでもらうのか。介護の負担を誰がどれだけ担うのか。配偶者やきょうだい、子どもの暮らしにどう影響するのか。自分の仕事やキャリアは続けられるのか。これらを移住の前に話し合い、合意しておかないと、あとで家族の中に不満やすれ違いが生まれます。親孝行の気持ちは尊いものですが、支える側が倒れては元も子もありません。家族が無理なく続けられる形を、介護保険のサービスや外部の手も組み込んで設計してください。

呼び寄せを支える、専門家チームをつくる

高齢の親の移住は、一人や一家族だけで抱えるには大きすぎます。役割の違う専門家を、早めにそろえておきます。

誰に何を頼むかを最初に決めておくと、問題が起きるたびに窓口を探し回らずに済みます。私たちJapan Care Conciergeは、この全体の調整役として、海外のご家族と日本の専門家・サービスのあいだをつなぐ役割を担っています。

  • 在留資格:入管手続きにくわしい行政書士・弁護士(外国籍の親の場合の要)
  • 介護:地域包括支援センターとケアマネジャー
  • 医療:かかりつけ医と、必要なら医療通訳の手配先
  • お金・年金:社会保険や国際的な年金にくわしい専門家、税理士
  • 全体の調整・通訳:日本語と日本の制度の橋渡しをする調整サービス

本人の意思を、決断の中心に置く

最後に、最も大切なことを。移住は、支える家族の都合だけで決められるものではありません。動くのは、親本人の人生です。

住み慣れた土地、友人、母語の環境を離れることの重みは、本人にしか分かりません。家族の安心のための移住が、本人にとっては大きな喪失になることもあります。ですから、「どこで、どう暮らしたいか」を本人に率直に聞き、その希望を決断の中心に置いてください。判断能力があるうちに、繰り返し、押し付けずに話し合うこと。それが、移住という大きな選択を、本人にとっても納得のいくものにします。家族の愛情と、本人の自己決定の両方を大切にした選択が、移住後の暮らしを支えます。そして、迷ったときは一度立ち止まり、本人の言葉にもう一度耳を傾けてください。急いで決めた移住より、本人が腑に落ちた移住のほうが、結局は長く穏やかに続きます。

「日本に呼ぶ」以外の選択肢も並べて比べる

検討の結果、移住が最善ではないと分かることもあります。それは計画の失敗ではなく、良い検討の成果です。

親が今いる国で支援体制を強化する、長期の滞在を繰り返す形にする、家族の側が拠点を移す。こうした選択肢を並べ、親自身の希望(言葉、友人、住み慣れた環境を離れることの重み)も含めて比べてください。高齢になってからの環境の変化はそれ自体が心身の負担になります。移住する場合も、孤立を防ぐ仕組み(日本語学習、コミュニティ、通いの場)を計画に組み込みましょう。

移住の準備、どこまで自分で進めてどこから相談するか

在留資格や住民登録、要介護認定といった制度の手続きは、入管手続きにくわしい専門家や住所地の市区町村、地域包括支援センターで進められます。移住後の介護の相談も、無料の公的窓口でおおむね足ります。ビザの判断と申請は有資格者の領域なので私たちは扱わず、私たちが受け持つのは介護と暮らしの観点での移住設計と、到着後の段取りの代行です。下の表で、それぞれの持ち場を見比べてみてください。

在留資格や年金の最終判断は有資格者の領域なので私たちは踏み込まず、JCCが受け持つのは、介護と暮らしの設計と、到着後の現地段取りを英語で支えることです。

移住準備の役割分担
公的窓口・専門家(無料/有資格)で進めることJCCに相談したほうがよいこと
在留資格の可否判断・在留資格の変更申請(入管手続きにくわしい行政書士・弁護士)在留資格そのものは扱いません。資格が見えた前提で、介護と暮らしの観点から移住の全体計画を組むこと
住民登録・医療保険と介護保険の加入手続き(住所地の市区町村)到着後90日の受診・住まい・手続きを抜けなく回す現地の段取りと同行手配
要介護認定の申請・ケアプラン作成(地域包括支援センター・ケアマネジャー)認定調査での言葉の壁を補い、海外の医療記録を日本の医師へ橋渡しする準備
年金や社会保障協定の確認(年金相談窓口・専門家)英語での全体整理と、お金・医療・介護の各専門家へつなぐ準備

よくある質問

外国籍の親を日本に呼び寄せられますか?

「親の呼び寄せ」のための一般的な在留資格はなく、認められる道は限られ個別事情によります。計画の最初に、入管手続きに詳しい専門家(行政書士・弁護士)へ相談してください。

移住後すぐに介護保険サービスを使えますか?

すぐには使えません。住民登録→要介護認定の申請→約1か月で結果→ケアプラン作成、という流れが必要です。最初の数か月は家族と民間サービスでつなぐ計画にしましょう。

海外の薬はそのまま持ち込めますか?

量や成分によっては規制があり、一定量を超える持ち込みには薬監証明という手続きが必要な場合があります。出発前に必ず確認し、到着後早めに日本の処方へ切り替えてください。

海外在住の日本人が親を連れて帰国する場合は?

在留資格の問題はなく、住民票を戻し保険に再加入するところから始まります。医療の引き継ぎ、住まい選び、最初の90日の計画という本ガイドの流れはそのまま当てはまります。

呼び寄せた外国籍の親は、日本の医療保険に入れますか?

中長期の在留資格を得て住民登録をすれば、原則として公的医療保険に加入します。おおむね74歳までは国民健康保険、75歳以上は後期高齢者医療制度の対象です。保険料の負担も始まります。加入手続きが整うまでの空白は、来日初期の海外旅行保険などでつなぐと安心です。

国内で親を自分の住む街に引っ越させると、要介護認定はやり直しですか?

やり直しではありません。認定は引っ越し先へ引き継げます。転出時に受給資格証明書を受け取り、転入から14日以内に転入先の市区町村で手続きします。ただし、担当の地域包括支援センターやケアマネジャー、サービス事業者は新しい地域で探し直すことになります。

高齢の親の引っ越しは、認知症に影響しますか?

影響することがあります。住み慣れた環境や人間関係を離れることは、それ自体が心身の負担になり、認知症が進む引き金になることもあります。とくに認知症のある親は環境の急変で症状が悪化しやすいため、移住の是非は慎重に判断し、なじみの家具を持っていく、引っ越し後しばらく家族が手厚く関わるなどの配慮をします。

呼び寄せた親の本国の年金は、日本で受け取れますか?

国によって異なります。日本は多くの国と社会保障協定を結んでおり、加入期間の通算や二重加入の防止などのルールがあります。本国の年金を日本で受け取れるか、為替や送金の扱いはどうなるかは、本国の年金事務所や日本の年金相談窓口、社会保険にくわしい専門家に確認してください。年金は親の生活費の柱になることが多いので、移住前に固めておくと安心です。

呼び寄せは、必ず同居しないといけませんか?

同居が条件ではありません。近くに住んでもらう「近居」など、支え方はいくつかあります。大切なのは、介護の負担を誰がどれだけ担うかを家族で合意し、介護保険のサービスや外部の手も組み込んで、支える側が無理なく続けられる形にすることです。家族の生活への影響を、移住の前に正直に見積もっておきましょう。

一次情報・公的情報

本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-06-21.

この記事について

この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。

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