介護保険料は2024年度から標準13段階に分かれ、基準額に0.285倍〜2.4倍を掛けて決まります。災害・収入急減時は介護保険法142条に基づき市町村へ減免を申請できます。世帯分離以外にもある下げ方を整理しました。
所得段階制度の骨格
Shotoku Dankai(所得段階)という区分の考え方
介護保険料は、全国一律の金額ではなく、本人や世帯の所得に応じて段階分けされた金額を、市町村ごとの基準額に掛け合わせて決まります。基準額は、その市町村で見込まれる介護サービスの給付費総額を高齢者人口の見込みで割り、3年ごとの介護保険事業計画で算定され、地域差があります。同じ「第5段階(基準)」であっても、基準額が月6千円台の市町村と月9千円台の市町村では年額が数万円単位で変わります。段階の考え方そのものは全国共通ですが、実際に支払う金額は住んでいる自治体によって異なる、という前提をまず押さえておく必要があります。親がどの段階に該当するかを知りたい場合は、毎年7月頃に送付される保険料の決定通知書に、適用されている段階名と年額が明記されています。
2024年度の標準13段階への多段階化
厚生労働省の資料によれば、2024年度(令和6年度)から2026年度の第9期計画期間にかけて、第1号被保険者(65歳以上)の保険料の標準段階が、従来の9段階から13段階へと細分化されました。目的は、高所得層の乗率を引き上げる一方で低所得層の乗率を引き下げ、同じ第1号被保険者間での所得再分配の機能を強めることです。具体的な乗率は、第1段階0.285倍、第2段階0.485倍、第3段階0.685倍、第4段階0.9倍、第5段階(基準)1.0倍、第6段階1.2倍、第7段階1.3倍、第8段階1.5倍、第9段階1.7倍、第10段階1.9倍、第11段階2.1倍、第12段階2.3倍、第13段階2.4倍です。第6段階以上は本人の前年の合計所得金額で区分され、120万円未満・120万円以上210万円未満・210万円以上320万円未満・320万円以上420万円未満・420万円以上520万円未満・520万円以上620万円未満・620万円以上720万円未満・720万円以上という基準額(境界線)が国の標準として示されています。第1〜5段階は住民税の非課税・課税区分と年金収入等の額(80万円が目安)の組み合わせで決まります。
自治体独自の多段階化という上乗せ
国の13段階はあくまで「標準」であり、各市町村は条例でこれを超える段階数を設定できます。高所得層をさらに細分化している自治体の例として、14段階を採用する市や16段階を採用する区、19段階まで細分化している市などが公表資料で確認できます。段階を細かく分けるほど、所得の近い人同士の保険料の差は小さくなり、逆に最高段階と最低段階の開きは大きくなる傾向があります。自分の親が住む市町村が国の標準13段階のままなのか、それを超える独自の段階を設けているのかは、送付される決定通知書や市町村のウェブサイトで確認できます。介護保険制度全体の枠組みは介護保険の解説にまとめています。
段階数や乗率、基準額そのものは、3年ごとの介護保険事業計画の策定にあわせて地方議会の議決を経た条例によって定められる仕組みです。高所得層の段階を細かく増やす改定は、中間所得層の保険料を大きく引き上げずに財源を確保する手段としてよく使われますが、その分だけ高所得層の負担は重くなります。親の保険料が前の3年間より上がった場合、原因が「基準額自体の値上げ」なのか「段階構成の見直し」なのかは、決定通知書に同封される説明資料で見分けられることが多く、疑問があれば担当課に問い合わせると経緯を確認できます。
減免制度の実際
Genmen(減免)を検討する典型的な場面
保険料そのものの区分ではなく、一時的に納付が難しくなったときに使えるのが減免制度です。典型的に想定されているのは、震災や火災などの災害で住宅・家財に著しい損害を受けた場合、生計を維持している人が死亡・障害・長期入院などにより収入が著しく減少した場合、事業の休廃止や失業などにより収入が著しく減少した場合です。これらに該当し、資産を活用してもなお保険料の納付が困難と認められると、申請により保険料の減額・免除、または一定期間(多くの自治体で1年以内)の徴収猶予を受けられる可能性があります。世帯分離によって保険料の所得段階そのものが下がる仕組みとは別の、緊急避難的な救済措置と位置づけられます。世帯分離の仕組みは世帯分離と介護保険料の関係で扱っています。
介護保険法142条という根拠と三原則
市町村独自の保険料減免は、介護保険法第142条を根拠に、市町村が条例で定める仕組みです。この条文は「市町村は、条例で定めるところにより、その介護保険の被保険者資格を有する者であって、保険料を納付する義務を負う者に対し、当該保険料を減免し、又はその徴収を猶予することができる」という趣旨を定めています。ただし国は、この独自減免の運用にあたって「全額は免除しない」「低所得であることのみに着目して一律に減免しない(資産状況等の個別事情もあわせて判断する)」「減免分の財源に一般財源を繰り入れない」という三原則を示してきました。この三原則があるため、自治体によって減免の対象・割合・手続きにばらつきがあり、「隣の市では認められたのに自分の市では認められない」ということが起こり得ます。
ここで誤解しやすいのは、減免を申請すれば保険料の支払い自体がなくなると考えてしまうことです。三原則の一つ目が示すとおり、多くの自治体の運用は「一定割合の減額」または「一定期間の徴収猶予」にとどまり、全額かつ無期限の免除にはなりません。徴収猶予はあくまで納付を先送りする措置であり、猶予期間が終われば納付義務自体は残ります。減免が認められなかった場合や、そもそも要件に当てはまらない場合でも、分割納付の相談には応じてもらえることが多いため、「対象外だから何もできない」と諦めず、まずは窓口で状況を伝えることが実務上の次善策になります。
申請の流れと必要書類
減免を申請する場合、多くの自治体で申請期限は当該保険料年度の年度末(3月31日)までとされています。窓口は市町村の介護保険担当課で、世帯全員の収入が分かる書類、預貯金額が分かる通帳の写しなど資産状況を示す書類、罹災証明書(災害の場合)、離職票や休業を証明する書類(収入減少の場合)などの提出を求められるのが一般的です。審査の結果、減免が認められなかった場合でも、通常の分割納付や納付相談には応じてもらえることが多いため、まずは滞納を放置せず窓口に相談することが実務上重要です。保険料そのものは減免されなくても、施設利用時の食費・居住費を軽減する負担限度額認定など、給付側で費用を抑えられる制度が別にあります。介護費用全体の内訳は介護費用のガイドで確認できます。
徴収方法の仕組み
Tokubetsu Choushuu(特別徴収)という年金天引きの原則
65歳以上(第1号被保険者)で、老齢基礎年金・老齢厚生年金・遺族年金・障害年金などの年額が一定額以上ある人は、原則として年金からの天引き(特別徴収)で介護保険料を納めます。日本年金機構の案内によれば、この特別徴収の対象となる基準は、年金の年額が18万円(月額1万5千円)以上であることです。特別徴収は年6回(4月・6月・8月・10月・12月・2月)の年金支給に合わせて行われ、4月・6月・8月分は前年度の保険料額を仮に徴収する「仮徴収」、10月・12月・2月分はその年度の所得が確定したあとの本来の保険料額で調整する「本徴収」に分かれます。
Futsuu Choushuu(普通徴収)に切り替わる条件
年金の年額が18万円未満の人、年度の途中で65歳になった人、他の市町村から転入したばかりの人などは、特別徴収の対象にならず、口座振替や納付書での支払い(普通徴収)になります。また、これまで特別徴収だった人が年度の途中で年金の支給が停止された場合などにも、普通徴収に切り替わることがあります。特別徴収から普通徴収へ切り替わる通知が届くと不安に感じる家族もいますが、多くのケースは年金の受給状況や年度の切り替わりに伴う事務上の変更であり、必ずしも滞納を意味するものではありません。心配な場合は通知書に記載の担当課へ確認するのが確実です。
仮徴収と本徴収の差額が生まれる理由
特別徴収の4月・6月・8月分(仮徴収)は、前年度2月分と同じ金額で暫定的に天引きされます。その後、7月頃にその年度の所得が確定して正式な年額保険料が決まると、10月・12月・2月分(本徴収)で年間の過不足を調整します。このため、段階が変わった年や基準額が改定された年は、10月分から急に天引き額が変わったように見えることがありますが、これは制度上想定された調整であり、誤徴収や増額のミスとは限りません。天引き額が前年と大きく違うと感じた場合は、決定通知書に記載された年額と仮徴収・本徴収それぞれの内訳を照らし合わせると原因が分かります。
海外家族の役割
天引き額を確認する具体的な方法
親と離れて暮らす海外在住の家族にとって、介護保険料が年金からいくら天引きされているかは見えにくい情報です。確認する方法としては、毎年7月頃に市町村から送付される保険料の決定通知書(特別徴収額・普通徴収額が記載される)を親から共有してもらう、年金の支払通知書(各支給月に日本年金機構等から届く)で天引き後の振込額を確認する、市町村の窓口や電話で本人または委任を受けた家族が問い合わせる、という3つが基本になります。海外からでも、親の同意を得たうえで市町村へ国際電話で問い合わせられる場合が多く、必要な代理権限の整理は親のお金と権限の整理で扱っています。
段階が上がりやすい典型パターンを把握しておく
海外家族が特に見落としやすいのが、一時的な所得の増加で段階が上がるケースです。不動産の売却や満期保険金の受け取りなど、通常より大きな所得が発生した年は、その年の合計所得金額をもとに翌年度の段階が判定されるため、一時的にもかかわらず保険料が跳ね上がることがあります。事前にこうした所得が見込まれる場合は、市町村の窓口で翌年度の段階への影響を確認しておくと、資金計画を立てやすくなります。年金天引きの仕組みと合わせて、遠距離介護のガイドでも家族が定期的に確認しておきたい項目を整理しています。
滞納時のペナルティ
滞納1年で始まる支払い方法の変更
介護保険料を正当な理由なく納期限から1年以上滞納すると、介護サービスを利用する際の支払い方法が変わります。通常は費用の1〜3割を窓口で支払えばよいところ、いったん費用の全額を自己負担で支払い、あとから申請して保険給付分の払い戻しを受ける「償還払い」に切り替わります。市町村は滞納が1年を超えることが見込まれる時点で、被保険者に弁明の機会を設けたうえでこの措置を行うのが通例です。
滞納1年6か月からの給付差し止め
滞納がさらに続き1年6か月以上になると、償還払いに加えて、払い戻されるはずの保険給付の一部または全部が一時的に差し止められる場合があります。滞納している保険料額が、差し止められた給付額から充当されることもあり、滞納が長引くほど手元に戻る金額が目減りしていく仕組みです。この段階になると、家族が気づかないうちに親の介護費用の実質的な自己負担が大きく増えている可能性があるため、通知書や督促状が届いていないか確認する価値があります。
滞納2年の時効と自己負担の引き上げ
滞納した保険料は、督促状が届いた日の翌日など時効の起算日から2年が経過すると、時効により納めることができなくなります。ここで注意したいのは、時効により納付できなくなった期間があると、その未納期間に応じて一定期間、通常1〜2割の自己負担が3割に、3割の人は4割に引き上げられるという点です。つまり時効を迎えたあとも「払わなくてよくなって終わり」にはならず、自己負担割合が引き上げられる形でペナルティが続きます。この引き上げ期間は未納月数に応じて決まり、市町村ごとに一律の運用ではないため、対象になった場合は担当課に適用期間を確認しておくと見通しが立てやすくなります。海外在住の家族が代わりに納付状況を把握し、滞納が長期化する前に市町村へ相談することが、結果的に親の自己負担を抑えることにつながります。
こうした一連のペナルティは、1年・1年6か月・2年という三つの節目を境に段階的に重くなっていく点が特徴です。逆に言えば、1年未満の一時的な滞納であれば通常どおりの1〜3割負担のままサービスを利用でき、償還払いへの切り替えも発生しません。海外にいて親の納付状況を日常的に見られない家族にとっては、督促状や催告書が届いた時点で早めに市町村へ連絡を取ることが、償還払いや給付差し止めという重い段階に進む前に対応できる、実務上もっとも現実的な防衛線になります。
比較表
検討の材料になるよう、違いを表で整理しました。
| 所得段階 | 対象となる目安(本人・世帯の状況) | 保険料率(基準額に対する倍率) |
|---|---|---|
| 第1段階 | 生活保護受給者/世帯全員が住民税非課税かつ老齢福祉年金受給者等 | 基準額×0.285 |
| 第2段階 | 世帯全員が住民税非課税・本人の合計所得金額+課税年金収入額が80万円以下 | 基準額×0.485 |
| 第3段階 | 世帯全員が住民税非課税・上記を超える | 基準額×0.685 |
| 第4段階 | 世帯に課税者がいる(本人は非課税)・年金収入等80万円以下 | 基準額×0.9 |
| 第5段階(基準) | 世帯に課税者がいる(本人は非課税)・年金収入等80万円超 | 基準額×1.0 |
| 第7段階 | 本人課税・合計所得金額120万円以上210万円未満 | 基準額×1.3 |
| 第9段階 | 本人課税・合計所得金額320万円以上420万円未満 | 基準額×1.7 |
| 第13段階 | 本人課税・合計所得金額720万円以上 | 基準額×2.4 |
よくある質問
前年に不動産を売却して一時的に所得が増えた場合、翌年度の介護保険料の段階はどうなりますか?
介護保険料の所得段階は、原則としてその年の合計所得金額をもとに翌年度分が判定されます。不動産の売却益や満期保険金の受け取りなど一時的な所得であっても、その年の所得として計算に含まれるため、翌年度だけ段階が上がり保険料が高くなることがあります。事前に大きな所得が見込まれる場合は、市町村の窓口で影響を確認しておくと安心です。
特別徴収だった保険料が急に普通徴収(納付書払い)に変わった通知が届きました 何かの滞納を意味しますか?
多くの場合、滞納ではなく制度上の切り替わりです。年金の支給が一時的に止まった、年度の途中で他の市町村から転入した、年金の年額が特別徴収の基準を下回ったなどの理由で普通徴収に変わることがあります。不安な場合は通知書に記載の窓口へ確認してください。
台風や火災で自宅が被害を受けた年は、介護保険料の減免を申請できますか?
申請できる可能性があります。介護保険法第142条に基づき、多くの市町村では災害により住宅や家財に著しい損害を受けた場合を減免の対象としています。罹災証明書などの提出を求められるのが一般的で、申請期限は当該年度末までとされていることが多いです。
海外に住む家族が、親の年金から天引きされている介護保険料の金額を確認する方法はありますか?
親の同意があれば、市町村から届く保険料の決定通知書を共有してもらう方法や、市町村の窓口・電話に家族が問い合わせる方法があります。年金の支払通知書に記載された天引き後の振込額からも、おおよその天引き額を把握できます。
65歳以上の親が転職や事業の休廃止で一時的に収入がなくなった場合、収入減少を理由に保険料の減免は認められますか?
認められる可能性はありますが、国は「収入の低さのみに着目して一律に減免しない」という原則を示しており、資産状況なども含めて総合的に判断されます。収入減少を証明する書類(離職票など)を添えて、居住する市町村の窓口に個別に相談する必要があります。
介護保険料を2年以上滞納したまま時効になった場合、その後の自己負担割合はどうなりますか?
時効により保険料を納められなくなった期間があると、その未納期間に応じて一定期間、自己負担割合が通常より重く引き上げられます(1〜2割の人は3割に、3割の人は4割に)。時効を迎えたあとも一定期間このペナルティが続く点に注意が必要です。
一次情報・公的情報
本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-11.
- 介護保険法(e-Gov法令検索、第129条・第142条ほか、curl verified 200)
- 介護保険料等における基準額の調整について(厚生労働省 老健局介護保険計画課、社会保障審議会介護保険部会第116回資料、curl verified 200)
- 保険料滞納者に対する保険給付の制限等に係るQ&Aについて(厚生労働省、curl verified 200)
- 年金Q&A(年金からの介護保険料などの徴収)(日本年金機構、curl verified 200)
- 介護保険料の減免・減額制度(江東区、curl verified 200)
- 介護保険料について(川崎市、独自の多段階化の実例、curl verified 200)
この記事について
この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。
