認定調査は74項目の聞き取りと調査員が残す特記事項で一次判定・二次判定が動きます。本人が実際より軽く答えがちな当日の対策と、立ち会えない海外家族が事前メモと電話同席で備える方法を整理しました。
調査の全体像
認定調査は何を確認するための訪問か
要介護認定の申請をすると、市区町村の職員またはその委託を受けたケアマネジャー等が自宅や入所先を訪れ、本人の心身の状態を聞き取る「認定調査」が行われます。ここで得られる情報は2種類に分かれます。1つは全国共通の様式に沿った「基本調査」で、身体機能・起居動作、生活機能、認知機能、精神・行動障害、社会生活への適応という5つの分野にまたがる項目を確認するものです。もう1つは、基本調査だけでは伝えきれない具体的な事情を調査員が文章で書き残す「特記事項」です。基本調査の結果はコンピュータによる一次判定に使われ、特記事項と主治医意見書は介護認定審査会が行う二次判定で一次判定の結果を修正する材料になります。区分の意味そのものは要介護度の考え方で、一次判定・二次判定の仕組みは要介護認定の一次判定と二次判定で扱っているので、本記事では「調査当日までに家族が何をすべきか」に絞って進めます。
訪問日が決まってから当日までにやること
申請後、市区町村から訪問日程の調整連絡が入ります。在宅であれば自宅、入院・入所中であれば病院や施設が調査の場所になり、必ずしも自宅で受ける必要はありません。日程が決まったら、家族がまず取り組みたいのは「ふだんの生活で困っていること」を思い出しながら書き出す作業です。調査の場では限られた時間で多くの項目を確認するため、その場で急に聞かれても具体的なエピソードがすぐに出てこないことが少なくありません。転倒しかけた場面、薬の飲み忘れ、夜間のトイレの様子など、日付や頻度が分かる形でメモしておくと、当日の聞き取りに厚みが出ます。
このほか、当日までに準備しておきたいのは書類だけではありません。本人が緊張しやすいタイプであれば、ふだん過ごしている部屋で調査を受けられるよう場を整える、聞き取りの前に本人へ「困っていることをそのまま話してほしい」と一声かけておくといった環境面の準備も、実際の受け答えに影響します。調査員が来訪する時間帯に本人の体調が最も安定している時間を選べないか、あらかじめ家族側の希望として伝えておくことも実務上の工夫の一つです。
当日にかかる時間と流れ
調査は基本調査の項目を1つずつ質問しながら、本人の動作を実際に確認する形で進みます。所要時間は本人の状態や質問への応答の仕方によって変わりますが、一般的には30分から1時間程度が目安とされています。調査員は聞き取りと並行して、選択に迷う内容や基本調査の選択肢だけでは表現しきれない事情を特記事項として記録していきます。家族が同席する場合、この特記事項に何を書いてもらうかが、当日の準備の中心になります。
立ち会い方の比較
家族本人が立ち会う場合
家族が実際に同席できるなら、本人が答えにくい質問や、実際より軽く答えてしまいそうな場面で、あとから補足を伝えられる利点があります。ただし、本人の目の前で「できていません」と言い切ると本人が気分を害することもあるため、調査員に別室や電話で補足を伝える、本人が答えた後に「先ほどの点について補足があります」と切り出すなど、伝え方には配慮が要ります。立ち会いは義務ではなく、申請書に立会い希望を書いた場合でも、後日変更を相談できる自治体が多い点も知っておくとよいでしょう。
立ち会えないときの代理を頼む
家族が仕事や海外在住で立ち会えない場合、日頃の様子をよく知るケアマネジャーや、施設入所中であれば施設職員に代わりに立ち会ってもらう方法があります。ケアマネジャーは既に本人の生活状況を把握していることが多く、家族が伝えたいポイントを事前に共有しておけば、調査員への説明を代行してもらいやすくなります。担当ケアマネジャーとの連携の基本はケアマネジャーの役割にまとめています。代理を頼む場合は、家族が気づいている変化や心配な点を、口頭でなく書面やメールで事前に渡しておくと、伝達漏れを防げます。
電話・ビデオ通話で同席する場合
自治体や調査員によっては、家族が調査当日に自宅にいなくても、調査終了後の電話連絡や、調査中の電話での確認に応じてもらえることがあります。ビデオ通話をつないで遠方から様子を見守る家族もいますが、これは調査員・自治体の運用に左右されるため、可能かどうかは事前に自治体の介護保険担当窓口またはケアマネジャーに相談して確認しておく必要があります。可能と分かった場合は、通話がつながる時間帯を事前に共有し、聞かれそうな項目についてあらかじめ要点を絞ったメモを送っておくと、限られた通話時間を有効に使えます。
当日の実務
「取り繕い」にどう備えるか
高齢の本人が、調査員という「よそ行きの相手」を前にすると、ふだんできないことも「できます」「大丈夫です」と答えてしまう傾向は広く知られており、介護の現場では「取り繕い」と呼ばれます。これ自体は珍しいことではなく、本人の見栄や気遣いから起こる自然な反応です。対策の基本は、本人の前で否定せず、調査員に「ふだんの様子」を別途伝える時間を作ってもらうことです。調査員も取り繕いが起こりうることを前提に聞き取りを行いますが、家族側から具体的な事実を伝えなければ、その場の受け答えだけで基本調査の選択肢が決まってしまうリスクは残ります。
取り繕いは、身体機能に関する項目よりも、認知機能や精神・行動障害の分野で起こりやすいとされています。「今日は何月何日か分かりますか」と聞かれて、本人がとっさに正しく答えられなくても、後から取り繕って別の答えに言い直すことがある一方、日々の生活で実際に日付や曜日を混同している場面は家族の方がよく知っています。調査員がその場で見る本人の様子と、家族が日常的に見ている様子にずれが生じやすいのは、こうした認知面の項目に集中していることも背景にあります。
特記事項に残してもらう伝え方
特記事項は調査員が自分の判断で書く文章であり、家族が直接書き込むものではありません。そのため、家族の役割は「調査員に、書くべき材料を渡すこと」になります。有効なのは、日時・頻度・具体的な状況が分かる短い事実の積み重ねを伝えることです。「最近は物忘れがひどい」という感想ではなく、「先週火曜日、鍋を火にかけたまま2時間忘れていた」「今月に入って3回、夜中にトイレの場所が分からなくなり廊下で立ち止まっていた」というように、いつ・何が起きたかを具体的に伝えると、調査員が特記事項として書き残しやすくなります。抽象的な心配より、数えられる事実の方が二次判定の材料として重みを持ちます。
特記事項が重要なのは、一次判定のコンピュータ処理では基本調査の定型項目と主治医意見書の一部項目しか数値化の対象にならないためです。自由記述である特記事項そのものは一次判定には反映されず、介護認定審査会が一次判定の結果を見直す二次判定の段階で初めて参照されます。つまり、家族が調査員に伝えた具体的な事実は、その場では点数化されなくても、二次判定という別の審査で改めて効いてくる仕組みになっています。一次判定・二次判定の審査プロセス全体は要介護認定の一次判定と二次判定で詳しく扱っています。
74項目を時系列でなく分野別に整理する
事前メモを作るとき、やりがちな失敗は「朝起きてから寝るまで」の時系列で書いてしまうことです。これでは基本調査の項目と対応づけにくく、調査員も参照しにくくなります。効果的なのは、基本調査の5つの分野(身体機能・起居動作、生活機能、認知機能、精神・行動障害、社会生活への適応)に沿って、気になる出来事を仕分けて書くことです。例えば「歩行が不安定で先月2回転倒しかけた」は身体機能・起居動作の分野に、「薬の飲み忘れが週に数回ある」「請求書の管理ができなくなってきた」は生活機能や社会生活への適応の分野に、「同じ話を繰り返す」「今日の日付が分からないことがある」は認知機能の分野に振り分けます。分野別にまとまったメモは、調査員がその場で該当する基本調査項目と照らし合わせやすく、特記事項に反映されやすくなります。
調査員に渡すメモの実例
実際に渡すメモは、A4用紙1枚程度に収まる分量が扱いやすいとされています。見出しを分野名にし、その下に「いつ・何が起きたか」を箇条書きで2〜4行ずつ書く形式が基本です。主治医意見書に書かれる医学的な内容と、家族が伝える生活場面の様子は視点が異なるため、両方が食い違って見えても不自然ではありません。主治医意見書の準備や医師とのやり取りについては主治医意見書とはで扱っています。本人が調査を拒む・嫌がる場合の声かけの工夫は親が介護を拒否するときを参考にしてください。
メモを渡すタイミングも工夫のしどころです。調査が始まる前に「事前に整理したものがあります」と一言添えて渡せば、調査員はそれを見ながら質問を進められます。逆に調査が終わってから渡すと、聞き取りには反映されても特記事項としてまとめる段階で参照する時間が短くなりがちです。可能であれば訪問の冒頭、遅くとも聞き取りの最中に渡すことを意識しておくとよいでしょう。
海外・遠距離から
帰国して立ち会うか、現地から関わるかの判断
海外在住の家族にとって、調査日に合わせて一時帰国するかどうかは大きな判断になります。渡航や滞在の負担と、立ち会うことで得られる情報の確実性を天秤にかけることになりますが、必ずしも現地にいなければ何もできないわけではありません。事前に日本国内の親族やケアマネジャーへ具体的な事実をまとめたメモを送っておけば、その場にいなくても調査に反映される可能性は残ります。逆に、認知機能の低下が急速に進んでいる、家族間で状況の受け止め方が大きく違うなど、直接目で確認したい事情がある場合は、一時帰国して立ち会う価値が高くなります。
ケアマネジャーや親族への代理依頼の実務
海外から代理を頼む場合、依頼先が「誰が・いつ・どのように調査員に伝えるか」を具体的にイメージできるよう、メモの渡し方まで含めて依頼することが大切です。メールやメッセージアプリで分野別メモを送り、「この内容を調査当日に見せてほしい」「口頭で伝えるだけでなく紙で渡してほしい」と明確に依頼すると、代理を引き受ける側の負担も減ります。国内側の家族との役割分担や連絡の取り方は遠距離介護の進め方にも通じる考え方です。
電話同席を申し出るタイミング
電話やビデオ通話での同席を希望する場合は、調査日程が決まった直後に、自治体の介護保険担当窓口かケアマネジャーへ早めに相談しておくと調整がしやすくなります。当日いきなり電話をかけても調査員の対応時間が限られているため、通話が可能な時間帯や、聞かれる可能性が高い項目を事前にすり合わせておくことが実務上のコツです。海外からの介護全般の進め方は海外から日本の親を支える方法にまとめています。
準備が結果より大事な理由
認定調査の結果は基本調査の選択と特記事項、主治医意見書を総合して決まるため、家族の準備だけで区分が確定するわけではありません。それでも、本人が答えにくい事実を調査員に伝える機会は、この1回の訪問にほぼ限られています。海外にいて立ち会えない家族ほど、事前のメモと代理依頼という形で関与できる部分を丁寧に準備しておく価値があります。準備にかけた時間そのものは点数化されませんが、当日の限られたやり取りに反映される情報の質は、事前準備の有無で大きく変わります。
比較表
実際に選ぶときに効いてくる違いを表にまとめました。
| 立ち会い方 | 誰が対応するか | 向いているケース | 家族が準備すること |
|---|---|---|---|
| 家族本人が同席 | 本人・調査員・同席家族 | 本人の受け答えに不安があり直接補足したい場合 | 分野別メモ、補足を伝えるタイミングの想定 |
| ケアマネ・親族が代理 | 担当ケアマネジャーまたは同居・近居の親族 | 仕事や海外在住で当日不在の場合 | 分野別メモの事前共有、伝えてほしい要点の明確化 |
| 電話・ビデオ通話で同席 | 調査員が電話等で対応可能な場合のみ | 海外在住で代理も頼みにくい場合 | 通話時間の事前調整、要点を絞った簡潔なメモ |
| 施設職員が対応 | 入所先の施設職員・看護師 | 病院・施設に入所中で本人が自宅にいない場合 | 施設側への事前情報共有、面会時の様子の記録 |
よくある質問
認定調査は当日どのくらいの時間がかかりますか?
本人の状態や受け答えの様子によって変わりますが、一般的には30分から1時間程度が目安です。聞き取りと並行して調査員が特記事項をまとめるため、時間に幅が出やすくなります。
特記事項のもとになるメモは、調査当日の何日くらい前から準備すればよいですか?
決まった日数はありませんが、訪問日程が分かった時点からできるだけ早く書き始めるのが安全です。転倒しかけた回数や物忘れの頻度など、日時が分かる事実は時間が経つほど思い出しにくくなるためです。
電話で調査に同席する場合、通話料や追加費用はかかりますか?
本文で扱っているとおり、電話・ビデオ通話での同席が可能かどうかは自治体・調査員の運用次第です。認定調査自体に別料金はかかりませんが、電話がつながる時間帯の調整は事前に窓口へ相談しておく必要があります。
74項目のうち、家族が特にメモしておきたい分野はいくつありますか?
本文で紹介した身体機能・起居動作、生活機能、認知機能、精神・行動障害、社会生活への適応という5つの分野を意識して整理すると、調査員が参照しやすいメモになります。
調査員に渡すメモは、どのくらいの長さにまとめればよいですか?
目安としてA4用紙1枚程度に収め、分野ごとに2〜4行の箇条書きで具体的な事実を書く形式が扱いやすいとされています。長文の説明よりも、日時・頻度が分かる短い事実の積み重ねの方が伝わりやすくなります。
家族が立ち会えず、代理も頼めない場合、調査の結果は不利になりますか?
立ち会いは必須の手続きではありません。基本調査と主治医意見書だけでも認定は行われます。ただし、実際より軽い受け答えになりがちな点を補う機会が減るため、可能であれば事前メモを本人の身近な人経由で調査員に渡す、電話での同席を相談するなど、いずれかの形で情報を届けておくことをおすすめします。
一次情報・公的情報
本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-11.
この記事について
この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。
