要介護認定は、認定調査と主治医意見書をもとにしたコンピュータによる一次判定と、介護認定審査会が特記事項や主治医意見書を踏まえて見直す二次判定の2段階で決まります。結果が調査の内容通りにならないことがあるのは、この2段階目の仕組みが働くためです。
審査プロセスの全体像
要介護認定は2段階の審査で決まる
要介護認定の結果は、市区町村の窓口に申請書を出した瞬間に決まるわけではありません。申請後、市区町村の認定調査員が自宅や入院先を訪れて行う認定調査、そして本人のかかりつけ医が作成する主治医意見書という2種類の材料がそろってから、審査が始まります。この審査は一度で終わらず、コンピュータによる「一次判定」と、人による「二次判定」という2段階の仕組みで進みます。
一次判定は、認定調査の基本調査結果と主治医意見書の一部項目を全国共通のロジックにかけて機械的に算出するもので、いわば「たたき台」です。二次判定は、このたたき台を介護認定審査会という合議体が見直し、最終的な要介護度を決定する段階です。海外在住の家族から見ると「認定調査でこう答えたのに、結果はなぜ違うのか」と疑問に思う場面がありますが、その理由の多くはこの二段階構造にあります。要介護度そのものが何を意味するかは要介護度の考え方で扱っているため、本記事は「その区分がどう決まるか」という審査の仕組みに絞って解説します。
一次判定に使われる材料は2つ
一次判定で使われる材料は、認定調査員が記録する基本調査(後述する74項目)と、主治医意見書のうち一部の項目(心身の状態に関する定型項目)です。主治医意見書には自由記述の特記事項も含まれますが、一次判定のコンピュータ処理では定型項目のみが数値化の対象になり、自由記述部分は一次判定には反映されません。この自由記述部分が二次判定で重要な役割を果たす、という構造を先に押さえておくと、後の章の理解がスムーズになります。
認定調査から結果通知までのおおまかな日数
市区町村への申請から認定結果の通知までは、標準的には30日程度とされています。この間に、認定調査の実施、主治医意見書の取り寄せ、一次判定の算出、介護認定審査会の開催という順で処理が進みます。主治医意見書の作成に時間がかかる、審査会の開催日程が合わないといった事情で30日を超えることもあり、実際の期間は自治体・時期によって差が出ます。急ぎの事情がある場合は、申請時に市区町村の担当窓口へ事情を伝えておくと状況を把握しやすくなります。
なぜ2段階に分かれているのか
この2段階構造には理由があります。全国どこで申請しても同じ基準で機械的に判定できるようにするのが一次判定の役割で、認定調査員の経験や地域ごとの慣習によって評価がぶれることを防いでいます。一方で、機械的な処理だけでは、同じ基準時間帯にいても実際の介護の手間が家庭ごとに違うという事情を拾いきれません。そこで、人による合議体が個別の記録を見て補正するのが二次判定の役割です。「全国一律の公平さ」と「個別事情の反映」という、本来ぶつかりやすい2つの要請を、判定を2段階に分けることで両立させているのが、この制度の設計思想だといえます。
コンピュータ判定の仕組み
基本調査74項目とコンピュータ処理
認定調査の中核をなすのが、全国共通の基本調査です。「身体機能・起居動作」「生活機能」「認知機能」「精神・行動障害」「社会生活への適応」という5つの分野にわたって、合計およそ74項目のチェックが行われます。歩行や起き上がりができるか、食事や排せつに介助が要るか、意思の伝達ができるか、物忘れによる行動があるかといった内容を、認定調査員が本人の状態を見ながら一つずつ判定していきます。
これらの回答は点数化され、統計データに基づいて「1分間タイムスタディ」という手法で推計された「要介護認定等基準時間」という指標に変換されます。要介護認定等基準時間は、実際に何分間介護をしているかという実測値ではなく、同じような状態の高齢者に対して統計上どれくらいの介護の手間がかかるかを表す相対的な指標です。この数値の長さによって、一次判定の区分がコンピュータにより機械的に振り分けられます。
5つの分野のうち、「身体機能・起居動作」は麻痺の有無や関節の動き、歩行や起き上がりの能力を、「生活機能」は移乗・食事摂取・排せつ・洗顔といった日常生活の動作や外出頻度を、「認知機能」は意思の伝達や短期記憶、場所や日付の理解を、「精神・行動障害」は物を壊す、大声を出す、外に出て戻れないといった行動面の有無を、「社会生活への適応」は薬の管理や金銭管理、集団への不適応といった社会生活上の能力を、それぞれ調べる項目群です。基本調査とは別に、家族構成や現在利用しているサービス、居住環境などを尋ねる概況調査も行われますが、この概況調査の内容は一次判定の数値算出には使われません。
要介護認定等基準時間の区分
要介護認定等基準時間の区分は次のとおりです。非該当は25分未満、要支援1は25分以上32分未満、要支援2と要介護1はいずれも32分以上50分未満、要介護2は50分以上70分未満、要介護3は70分以上90分未満、要介護4は90分以上110分未満、要介護5は110分以上とされています。要支援2と要介護1の基準時間帯が同じ点は見落とされやすいポイントで、この2つの区分は基準時間の長さではなく、後述する認知機能の状態と状態の安定性という別の基準で振り分けられます。介護保険の申請から利用開始までの一連の流れは介護保険の解説にまとめています。
要支援2と要介護1はどう区別されるか
同じ32分以上50分未満の帯に入っていても、要支援2になるか要介護1になるかは、「認知機能の低下があるかどうか」と「今後6か月程度の間に状態が大きく変化する可能性が高いかどうか」という2つの観点で判定されます。認知機能の低下が見られず、適切な予防的支援によって状態の維持・改善が見込める場合は要支援2、軽度の認知機能低下があり状態の変化が見込まれる場合は要介護1へ振り分けられる、という考え方です。この振り分けは一次判定のロジックに組み込まれていますが、最終的には二次判定でも確認され、必要であれば審査会の判断で変更されることがあります。
要支援2と要介護1では、その後に受けられるサービスの体系も変わってきます。要支援と判定された場合は介護予防を目的としたサービス体系に、要介護と判定された場合は介護給付のサービス体系に進むため、基準時間の帯が同じでも、この振り分けの結果次第でケアプランの組み立て方が変わります。どちらに振り分けられても、認定の有効期間内に状態が変わったと感じた場合は、区分変更の申請という選択肢があります。
介護認定審査会の役割
介護認定審査会という合議体
二次判定を行うのは、保健・医療・福祉の分野の学識経験者で構成される介護認定審査会です。市区町村が委嘱した医師・看護師・介護福祉士・社会福祉士などの委員が合議体を組み、通常は1つの合議体につき5人前後で審査に当たります。審査会は、一次判定の結果を原案としつつ、それだけでは見えない個々の事情を、認定調査の特記事項と主治医意見書の記載内容から読み取って審査します。
一次判定が実態より軽く出やすい典型パターン
一次判定のコンピュータ処理は全国一律のロジックで動くため、個々の事情による介護の手間の増減を反映しにくいという性質があります。特に次のようなケースでは、一次判定の区分が実態より軽く出やすいとされています。1つは、認知症があるものの身体機能自体は比較的保たれている場合です。基本調査の身体機能項目では「できる」に近い評価になりやすい一方、見守りや声かけに要する手間、行動・心理症状(BPSD)への対応の負担は基本調査だけでは十分に拾いきれないことがあります。もう1つは、認定調査の当日だけ本人がしっかりと受け答えしてしまう、いわゆる「取り繕い」の場面です。普段は物忘れや混乱が見られても、調査員の前では気を張って普段どおりに振る舞ってしまい、調査結果が実際の生活の様子と食い違うことがあります。
こうした食い違いが起きたとき、それを補正できるのが特記事項と主治医意見書です。認定調査員が調査中に感じた違和感や、家族から聞き取った普段の様子は、基本調査の選択肢には反映されなくても、特記事項の欄に記録として残せます。同様に、主治医意見書の自由記述欄にも、診察室では分かりにくい生活上の困りごとを医師の所見として記載してもらうことができます。
基本調査の選択肢自体に含まれていない具体的な症状、例えば幻視・幻聴による混乱や、物でないものを口に入れてしまう行動、暴言・暴力に至る場面などは、関連する調査項目の特記事項欄や、認知症高齢者の日常生活自立度に関する特記事項欄に、具体的な状況として記録することになっています。認定調査員がその場を見ていなくても、家族が普段の様子を具体的に伝えられれば、特記事項として反映してもらえる余地があります。
審査会が変更してよい場合・変更できない場合
介護認定審査会は、一次判定の結果を無条件に変更できるわけではありません。変更が認められるのは、特記事項や主治医意見書に、一次判定の基本調査項目だけでは分からない介護の手間について、具体的な記載がある場合です。逆に、次のような事項は変更の理由にはならないとされています。すでに一次判定の基本調査結果に含まれている内容そのものの言い換え、特記事項や主治医意見書に具体的な記載がない抽象的な要望、住環境や介護者の有無、本人の希望、現在利用しているサービスの状況など、介護の手間の量そのものとは直接関係しない事情です。つまり、「家族が大変だから」「一人暮らしだから」といった事情だけでは区分は変わらず、あくまで「介護にどれだけの手間がかかるか」を裏づける具体的な記録があるかどうかが判断材料になります。認定調査と主治医意見書の内容にずれがある場合の対応は、主治医意見書の役割でも扱っています。
海外・遠距離から確認できること
認定結果通知書のどこを見るか
要介護認定の結果は、市区町村から本人宛てに認定結果通知書として届きます。通知書には決定した要介護度(または要支援区分・非該当)、認定の有効期間、被保険者証に記載される内容などが記されています。海外在住の家族が現地から状況を把握したい場合は、国内で通知書を受け取る家族や、地域包括支援センターを通じて、決定区分と有効期間の2点をまず確認するとよいでしょう。認定の有効期間が近づくと更新の手続きが必要になりますが、更新の具体的な進め方や必要書類は要介護認定の更新ガイドにまとめています。
通知書だけを見ても、一次判定の数値がそのまま採用されたのか、二次判定で変更されたのかまでは分かりません。もしその点が気になる場合は、担当のケアマネジャーや市区町村の介護保険担当窓口に問い合わせれば、審査の経過について一般的な説明を受けられることがあります。海外にいて直接窓口に出向けない場合も、国内の家族から代理で問い合わせてもらう、あるいは電話で状況を確認してもらう形で対応できます。
結果に納得できないと感じたときの選択肢
通知された要介護度が、家族が実感している介護の必要度と大きく食い違うと感じることもあります。その場合、まず考えられるのは、認定調査の際に本人の普段の様子が正確に伝わっていたか、主治医意見書に生活上の困りごとが具体的に記載されていたかを振り返ることです。認定結果に不服がある場合は、都道府県に設置される介護保険審査会への審査請求という制度もありますが、実務上は、状態の変化を理由とする区分変更の申請を検討するケースの方が多いとされています。区分変更の申請方法は更新の記事と合わせて確認できます。
海外からでも申請・確認は代行できる
「本人が日本にいて自分は海外にいるから、審査の内容には関わりようがない」と考える必要はありません。認定調査への立ち会いや主治医との情報共有は、国内にいる家族やケアマネジャー、地域包括支援センターが窓口となって進めることができ、海外からは電話やビデオ通話で状況を伝えることも可能です。制度の全体像や申請の入口は介護保険の解説にまとめているので、申請前の段階からあわせて確認しておくと流れがつかみやすくなります。認定調査の当日にどう備えるかという実務的な準備の詳細は、別記事で扱う予定です。
比較表
両者の違いは、次の表のとおりです。
| 観点 | 一次判定 | 二次判定 |
|---|---|---|
| 判定主体 | コンピュータ(全国共通ロジック) | 介護認定審査会(保健・医療・福祉の学識経験者) |
| 使う材料 | 認定調査の基本調査74項目・主治医意見書の定型項目 | 一次判定結果・認定調査の特記事項・主治医意見書全体 |
| 出てくる結果 | 要介護認定等基準時間に基づく暫定区分 | 最終的な要介護度(非該当〜要介護5) |
| 個別事情の反映 | 反映されにくい(全国一律の統計処理) | 特記事項・主治医意見書に具体的記載があれば反映 |
| 結果が変わる主な理由 | - | 認知症等で介護の手間が基本調査だけでは拾いきれない場合など |
よくある質問
認定調査では歩けると答えてしまったのですが、結果は変わりますか?
認定調査の基本調査結果自体は一次判定にそのまま反映されるため、回答内容を後から変えることはできません。ただし、普段の生活で介助が必要な場面があるのに調査当日だけできてしまった、という事情がある場合は、その具体的な状況を特記事項として記録してもらえるよう、調査員や家族から補足することができます。
親は認知症ですが体は元気です この場合、一次判定は軽く出やすいのですか?
基本調査の身体機能項目では「できる」に近い評価になりやすく、見守りや声かけの手間、行動・心理症状への対応負担が基本調査だけでは十分に拾いきれないことがあるため、一次判定の区分が実態より軽く出やすいとされています。この差は、特記事項や主治医意見書に具体的な状況が記載されることで、二次判定の段階で補われる可能性があります。
二次判定で一次判定の結果が変わることはよくあるのですか?
介護認定審査会は、特記事項や主治医意見書に一次判定の基本調査だけでは分からない介護の手間について具体的な記載がある場合に、区分を変更することができます。記載が抽象的だったり、住環境や本人の希望など介護の手間そのものと直接関係しない事情だけの場合は、変更の理由にはならないとされています。
海外在住で認定調査に立ち会えません 結果が実態と違っても分かりようがないのでしょうか?
認定調査への立ち会いは国内にいる家族やケアマネジャー、地域包括支援センターに担ってもらうことができ、海外からは電話やビデオ通話で普段の様子を伝えることも可能です。認定結果通知書は国内で受け取ってもらい、決定区分と有効期間を共有してもらうとよいでしょう。
要支援2と要介護1は基準時間が同じと聞きました 何で区別されるのですか?
どちらも要介護認定等基準時間は32分以上50分未満で同じですが、認知機能の低下があるかどうかと、今後6か月程度で状態が大きく変化する可能性が高いかどうかという2つの観点で振り分けられます。この判定は一次判定のロジックに組み込まれており、二次判定でも確認されます。
認定結果に納得できない場合、審査をやり直してもらうことはできますか?
都道府県の介護保険審査会に審査請求をする制度がありますが、実務上は、その後の状態の変化を理由とする区分変更の申請を検討するケースの方が多いとされています。まずは認定調査や主治医意見書に本人の状況が具体的に伝わっていたかを振り返ることをおすすめします。
JCCに相談すれば、一次判定・二次判定の結果がどう出るか事前に教えてもらえますか?
JCCは審査会の判定そのものを予測したり代行したりする機関ではないため、個別の判定結果の見通しをお答えすることはできません。この記事で扱っているのは審査の仕組みについての一般的な整理です。個別の状況については、担当のケアマネジャーや市区町村の窓口にご相談ください。
一次情報・公的情報
本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-11.
この記事について
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