親の入院・施設入居で実家が空くとき、電気は基本料金維持、ガスは解約、水道は継続という判断が基本です。NHK・郵便・火災保険の整理と、海外家族が電話でしか進められない手続きの実際まで整理しました。
状況の整理
何がきっかけで実家が空くか
親が長期入院した、あるいは施設に入居したことで、それまで暮らしていた実家が誰も住まない状態になる場面は珍しくありません。売却や解体を前提とした「実家じまい」とは違い、この段階ではまだ「戻るかもしれない」「すぐには決められない」という宙ぶらりんな時期であることが多いはずです。処分や生前整理を前提にした片づけ方は実家じまいと生前整理のガイドで扱っていますが、この記事はそこまで踏み込まず、まだ維持する前提の実家について、電気・ガス・水道と周辺の契約をどう扱うかに絞って整理します。
想定される不在期間は家庭ごとに大きく違います。数週間の入院で退院後にそのまま自宅に戻る見込みが高いケースもあれば、リハビリを経て数か月かかるケース、そのまま施設入居が決まって半年以上、あるいは実質的に空き家化するケースもあります。この期間の見通しによって、電気・ガス・水道それぞれの選択肢の有利不利が変わってくるため、まず「いまの時点でどのくらいの不在を想定しているか」を家族内で共有しておくことが出発点になります。
判断を急がなくていい理由
入院や入所が決まった直後は、他に決めなければならないことが一度に押し寄せる時期でもあります。要介護認定の申請や施設探し、費用の見通しなど、優先度の高い判断が重なる中で、公共料金の扱いまで即断する必要はありません。電気・水道は契約を維持したまま様子を見ても大きな不利益にはなりにくく、ガスのように「止めたほうが安全」という要素がある契約から先に手をつければ十分です。焦って一括で解約してしまうと、退院や一時帰宅の際に電気も水道も使えない実家に戻ることになり、かえって家族の負担が増えます。まずは数週間から1か月程度の暫定対応を決め、入院・入所の見通しがはっきりした段階で改めて期間別の判断に進む、という2段階で考えるのが現実的です。
選択肢の比較
電気は休止か基本料金維持かの二択
電気は「契約を維持して基本料金だけ払う」か「使用を中止(休止)して基本料金も止める」かの二択になります。東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bであれば、契約アンペアが10Aの場合の基本料金は月額311.75円(税込)で、20Aなら623.50円、30Aなら935.25円という水準です(電力量料金は別途、使用した分だけ加算されます)。実家の冷蔵庫を動かし続けたい、防犯上いつでも明かりをつけられる状態にしておきたい、といった理由がある場合は、契約を維持して基本料金だけを払い続ける選択が現実的です。逆に、確実に半年以上使う予定がなく、電気を使う理由も特にない場合は、使用を中止して料金の発生自体を止めることもできます。ただし使用を中止したあとに再開する場合、電力会社の係員が訪問して立会いのもとで作業することがあり、その場ですぐには使えない点は踏まえておく必要があります。
ガスは解約が基本、その理由
電気や水道と違い、ガスについては使用を停止(閉栓)しておくことが基本的な考え方として広く紹介されています。理由は、長期間使わないガス設備は接続部の劣化などによってガス漏れが起きるリスクがあり、誰も住んでいない実家でその兆候に気づくのが遅れやすいためです。ガスの使用停止には立会いが原則として必要ですが、契約者本人でなくても家族が代理人として立ち会うことができる場合が一般的です。停止の連絡は各ガス会社のウェブサイトや電話窓口で受け付けており、東京ガスの管内であれば「ガス・電気の開始や停止のお手続き」のページから停止の申し込みができます。再開時には改めて立会い予約が必要になるため、退院や帰宅の時期がある程度見えている場合は、再開希望日を早めに伝えておくと当日困りにくくなります。
水道は止めない判断が基本
水道は、電気・ガスとは逆に「契約を維持し、止めない」ことが基本の考え方です。水道を完全に止めてしまうと、配管内に残った水が抜けきらず、冬季には凍結による破裂のリスクが高まりますし、排水管のトラップ部分が乾いて悪臭や害虫の侵入経路になることもあります。東京都水道局の口径13mmの基本料金は月額860円(税抜)が目安で、これに使用した分の従量料金が加わりますが、誰も使っていなければ従量料金はほとんど発生しません。実家が空く間も月に1回程度は帰省や近隣の協力者による通水(蛇口をひねって水を流すこと)ができると、配管の劣化を防ぎやすくなります。防犯の観点でも、水道メーターが動いている状態は「人の出入りがある家」という印象を与えやすく、完全に契約を止めてしまうよりも安心材料になります。
期間別に見る選択肢の組み合わせ
電気・ガス・水道は個別に判断するよりも、想定される不在期間に応じてセットで組み合わせて考えると迷いにくくなります。数週間から1か月程度であれば、電気・水道はそのまま維持し、ガスだけ停止しておくのが手間の少ない組み合わせです。数か月単位になりそうな場合は、電気も使用中止に切り替えて基本料金の負担を減らす選択肢が現実味を帯びてきます。半年以上、あるいは施設入居が固まって実質的に空き家になる見通しが立った場合は、電気・ガスは解約し、水道だけ最低限の契約を残して定期的な通水を続ける、という形に落ち着く家庭が多いようです。次の比較表に、期間別の目安をまとめています。
なお、電気については使用中止まで踏み切らなくても、契約アンペアを下げることで基本料金だけを抑えるという中間の選択肢もあります。冷蔵庫と照明程度しか使わない実家であれば、10Aや15Aへの変更を電力会社に相談することで、契約を維持したまま毎月の基本料金を数百円単位で抑えられる場合があります。アンペア変更は電気の使用中止・再開のような立会いを伴わないことが多く、退院後にすぐ普段どおりの生活へ戻したい家庭にとっては扱いやすい選択肢です。ガスの再契約についても触れておくと、いったん解約した契約を再開する際には、開栓作業のための立会い予約に加えて、設備の点検や場合によってはガス管内の空気抜き作業が必要になることがあり、申し込みから実際に使えるようになるまで数日から1週間程度の余裕を見ておくと安心です。
周辺契約の整理
NHKは住所変更か解約かの分岐
NHK受信料の扱いは、親がどこに移るかによって手続きが分かれます。親が有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に入居し、実家にあったテレビなどの受信機を施設に持ち込む場合は、解約ではなく住所変更の手続きが必要です。一方、受信機を実家に残したまま持ち込まない場合は、実家側の受信契約について解約の手続きが必要になります。また、特別養護老人ホームなど社会福祉法上の社会福祉事業にあたる施設に入居する場合は、受信料が全額免除の対象になる制度があり、住所変更をしたうえで免除の申請をすることで支払いをなくせます。どちらの手続きも、NHK受信料の窓口(ふれあいセンター)への連絡から始めるのが基本です。
固定電話・新聞・サブスクの止め方
実家の固定電話は、電話会社への連絡で休止(番号を残したまま利用を止める)か解約かを選べます。将来また使う可能性がある番号であれば休止扱いにしておくと、番号を失わずに済みます。新聞は販売店に直接連絡して配達を止めるだけで手続きが完了することがほとんどで、未読分がたまって郵便受けに溢れる前に早めに連絡しておくと近隣への迷惑も防げます。動画配信やセキュリティサービスなどのサブスクリプション契約は、実家の住所や固定回線に紐づいているものがないかを確認し、使わなくなったものから解約していくと、気づかないまま費用だけが発生し続ける事態を避けられます。
郵便物は転送、e転居の代理申請
実家宛ての郵便物は、そのまま放置すると郵便受けにあふれて防犯上も好ましくありません。日本郵便の転居・転送サービスを利用すると、届出日から1年間、旧住所宛ての郵便物を新しい住所(子の自宅や施設の住所など)へ無料で転送してもらえます。届出はインターネット上で完結する「e転居」でも申し込めて、転居する本人以外の家族が代理で申請することも可能です。ただし代理で申請する場合は、申請者自身の本人確認に加えて、転居者本人の確認資料の提出が必要になる点は踏まえておく必要があります。親のお金や重要書類の管理を家族が引き継ぐ準備は親のお金と権限のガイドにも整理しているので、あわせて確認しておくと郵便物の管理と重要書類の管理を同じタイミングで進められます。
火災保険は空き家条項の確認が必須
火災保険は、契約時に「人が居住している住宅」であることを前提にしている商品が多く、長期間の不在によって空き家状態が続くと、契約内容によっては補償の対象外になったり、水災・盗難などの一部補償が付帯できなくなったりすることがあります。転勤や入院など一時的な不在で、家財が残ったままの状態であれば通常の住宅総合保険の対象として継続できる契約もありますが、これは保険会社や商品によって扱いが異なります。実家の火災保険証券を確認し、契約している保険会社に「入院・施設入居で長期間留守にする場合の補償はどうなるか」を直接問い合わせておくことが、あとから補償が受けられなかったという事態を避ける一番確実な方法です。
海外・遠距離から
電話でしか受け付けない手続きの現実
電気・ガスの契約変更は、多くの大手電力会社・ガス会社がウェブサイト上の会員向けサービスで24時間受け付けており、海外からでも時差を気にせず申し込めます。一方で、水道は自治体ごとの水道局(水道事業者)が窓口になっており、東京都のように一部の手続きをオンラインで受け付けている自治体がある一方、電話や郵送でのやり取りが中心という自治体も少なくありません。NHK受信料の住所変更・解約や、固定電話の休止手続きも、電話での本人確認が求められる場面が多く残っています。海外から日本の平日日中の窓口に国際電話をかけるのは時差の調整や通話料の負担が伴うため、海外から親を支えるための全体像を踏まえたうえで、日本に住む親族に代理での連絡を頼めるか、あらかじめ決めておくことをおすすめします。
委任状が必要な窓口とそうでない窓口
銀行口座の解約や不動産の名義変更のような法的な効力を伴う手続きでは、委任状や在外公館での署名証明が必要になるのが一般的です。委任状の書き方や在外公館での証明の取り方は海外在住家族の委任状ガイドにまとめています。これに対して、電気・ガス・水道の使用停止や住所変更のような手続きは、契約の名義そのものを変えるわけではないため、電話口で契約者の氏名・住所・お客様番号・生年月日などを確認できれば、家族からの連絡でも対応してもらえる場合が多いようです。ただし、これは会社や自治体ごとの運用によって差があり、契約者本人でなければ受け付けないという方針の窓口も残っています。事前に一度、対象の会社・自治体に「家族が代理で連絡してもよいか」を確認しておくと、いざというときに慌てずに済みます。
入院・入所の見込み期間による決め方
最終的にどこまで契約を維持し、どこから止めるかは、想定される不在期間と、実家に戻る可能性がどれくらい残っているかで決めるのが実務的です。退院してそのまま自宅に戻る見込みが高い数週間程度の入院であれば、電気・水道は維持し、ガスだけ止めておく組み合わせで十分な場合がほとんどです。リハビリを経て数か月かかりそうな場合は、電気の使用中止も選択肢に入れつつ、水道は凍結防止のために維持を続けます。施設入居が決まり、実家に戻る予定がなくなった場合は、電気・ガスは解約し、水道は防犯目的の最低限の契約を残しながら、遠距離介護の進め方や介護費用のガイドで扱っている費用の見通しとあわせて、実家をどう扱うか(維持を続けるか、次の段階として売却や賃貸を検討するか)を家族で話し合う時期に入っていきます。決めきれない場合は、いったん現状維持のまま様子を見て、状況が固まってから動くという選択も十分に合理的です。
比較表
検討の材料になるよう、違いを表で整理しました。
| 想定される不在期間 | 電気 | ガス | 水道 | 郵便物・その他 |
|---|---|---|---|---|
| 数週間〜1か月程度 | 契約維持、基本料金のみ発生(10Aで月311円台) | 停止(閉栓)を検討、再開の立会い予約を早めに | 契約維持、月1回程度の通水を | 郵便受けの確認を近隣に依頼、NHKは住所変更不要 |
| 数か月(リハビリ含む長期入院) | 契約維持か使用中止かを比較、再開の手間も考慮 | 停止が基本、再開は立会い予約制 | 契約維持が基本、凍結防止に注意 | e転居で転送を検討、固定電話は休止扱いに |
| 半年〜1年以上(施設入居が固まった場合) | 使用中止または解約、電気設備の劣化に留意 | 解約、再契約時の手数料や工事の要否を確認 | 契約は維持しつつ最低限の通水は続ける | 転送継続、NHKは住所変更+施設種別による免除申請、火災保険は空き家条項を保険会社に確認 |
よくある質問
親が入院している間、実家の電気は止めるべきですか?
不在期間が数週間程度であれば、契約を維持して基本料金だけを払う形で十分です。東京電力の従量電灯Bで10A契約の場合、基本料金は月額311.75円(税込)が目安です。数か月以上になりそうな場合は、使用を中止して基本料金の発生自体を止める選択肢もありますが、再開時に係員の訪問と立会いが必要になることがあります。
ガスは入院中も契約を続けたほうがいいですか?
ガスは空き家の間、接続部の劣化などによるガス漏れのリスクを避けるため、使用を停止(閉栓)しておくのが基本的な考え方です。停止には立会いが原則必要ですが、契約者本人でなくても家族が代理で立ち会える場合があります。再開時にも立会い予約が必要になるため、帰宅時期が見えたら早めに連絡しておくと安心です。
水道を止めても問題ないですか?
水道は凍結防止や排水管の乾燥防止の観点から、契約を維持して定期的に通水することが勧められます。東京都水道局の口径13mmの基本料金は月額860円(税抜)が目安で、使わなければ従量料金はほとんど発生しません。完全に止めてしまうと、再開時に配管トラブルへの対応が必要になることがあります。
NHKの受信料は施設入居後どうなりますか?
受信機を施設に持ち込む場合は住所変更、実家に残したまま持ち込まない場合は解約の手続きが必要です。特別養護老人ホームなど社会福祉法上の施設に入居する場合は、住所変更後に受信料全額免除の申請ができる制度があります。手続きはNHK受信料の窓口への連絡から始めます。
実家の公共料金の手続きを、海外にいる家族が代理で進めるときのポイントは何ですか?
電気・ガスの契約変更はウェブサイトで24時間手続きできる会社が多く、海外からでも進めやすい部分です。一方で水道局やNHKなど、電話での本人確認が必要な窓口も残っています。委任状が必須というより契約者情報の確認で対応してもらえる場合が多いですが、対応は会社・自治体ごとに異なるため、事前に「家族が代理で連絡してよいか」を確認しておくと安心です。
実家宛ての郵便物はどう転送すればいいですか?
日本郵便の転居・転送サービスを使うと、届出から1年間、旧住所宛ての郵便物を新しい住所へ無料で転送できます。インターネット上の「e転居」では家族が代理で申請することもできますが、申請者自身に加えて転居者本人の確認資料の提出が必要になる点は踏まえておいてください。
火災保険は入院・入所中もそのままで大丈夫ですか?
一般の火災保険は「人が住んでいる住宅」を前提にした契約が多く、長期間の空き家状態が続くと補償対象外になる契約もあります。転勤や入院など一時的な不在で家財が残っている場合は継続できる契約もありますが、扱いは保険会社・商品によって異なるため、契約している保険会社に直接確認しておくことをおすすめします。
実家の公共料金を止めるかどうか、いつまでに決める必要がありますか?
明確な期限があるわけではありません。入院・入所の直後は他に優先すべき判断が多いため、数週間から1か月程度は現状維持で様子を見て、不在期間の見通しが立った段階で電気・ガス・水道それぞれの対応を決めていく進め方で問題ありません。
一次情報・公的情報
本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-11.
この記事について
この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。
