要介護認定を受けていても自動的に対象になるわけではありません。市区町村の認定基準表で判定され、認定書を確定申告や年末調整に添付すると27万円、特別障害者なら40万円の所得控除が受けられます。
制度の基本
障害者控除対象者認定書とは
障害者控除対象者認定書は、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれも持っていない65歳以上の高齢者について、市区町村長が「障害者に準ずる」または「特別障害者に準ずる」と認定し、税の申告に使えるようにする書類です。国税庁のタックスアンサーでも、65歳以上で精神または身体に障害がある人が「市町村長等の認定を受けた場合」に障害者控除の対象になり得ると案内されています。手帳を取得する手間や本人・家族の心理的なハードルを避けつつ、要介護状態にある高齢者の税負担を軽くするための仕組みだと理解しておくとよい制度です。
要介護認定を受けていても自動的に対象にはならない
ここが最も誤解されやすい点です。国税庁は「介護保険法の要介護認定を受けられただけでは障害者控除の対象とはなりません」と明記しています。要介護度はあくまで参考指標のひとつで、実際の判定は市区町村が持つ介護認定資料の中の「障害高齢者の日常生活自立度」(寝たきり度に近い指標)と「認知症高齢者の日常生活自立度」という2つの自立度を基準表に当てはめて行われます。つまり、同じ要介護3でも、自立度の評価次第で「障害者」相当と判定される人もいれば、対象外になる人もあります。逆に要介護1・2でも、自立度の評価によっては対象になることがあります。要介護度の区分そのものは要介護認定のガイドで解説していますが、この制度の判定はそれとは別の物差しで行われる点を押さえておく必要があります。
自治体ごとに基準表・様式が異なる
判定基準は法令で全国一律に細かく定められているわけではなく、各市区町村が独自に基準表を運用しています。たとえば浦安市は、介護認定審査会議資料から把握した「障害高齢者の日常生活自立度」ランクA以上(A・B・C)、「認知症高齢者の日常生活自立度」ランクII以上(II・III・IV・M)を目安に、要介護度も参考にしながら「障害者に準ずる」か「特別障害者に準ずる」かを判定しています。八王子市も同様に、認定調査票や主治医意見書に記載された自立度が一定基準を満たす場合に対象とする運用をとっており、詳細な判定基準は自治体ごとのPDF資料で公表されています。基準の考え方は近い自治体が多いものの、細部の運用や申請様式は自治体ごとに異なるため、親の住所地の窓口で確認するのが確実です。
申請と控除額
申請窓口と必要なもの
申請先は、親(本人)が住民票を置く市区町村の窓口です。多くの自治体では高齢福祉課や介護保険課がこの認定書の交付を担当しています。窓口・郵送・オンラインのいずれかで申請書を提出する自治体が増えており、成年後見人など家族以外が代理で申請する場合は委任状や身分証明書の提示を求められることが一般的です。申請時には要介護認定の結果が参照されるため、事前に介護保険の申請から認定までの流れを把握しておくと手続きの見通しが立てやすくなります。
浦安市の案内では、この認定は過去にさかのぼって申請できる余地があり、実際に「最長で5年分を遡及して申請することが可能」としています。すでに介護保険の要介護認定を受けている親がいる場合、これまで申請していなかった年についても、あきらめずに窓口へ確認する価値があります。
控除額はいくらか
障害者控除対象者認定書で「障害者」に準ずると認定された場合は、所得税で27万円の障害者控除が受けられます。より重度の状態で「特別障害者」に準ずると認定された場合は、40万円の特別障害者控除になります。さらに、その対象者が納税者と常に同居している場合は、同居特別障害者控除として合計75万円(40万円に35万円が加算される形)まで控除額が上がります。これらの金額は所得税の話であり、住民税では控除額の水準が異なります。具体的な控除額は年ごとに国税庁の案内で確認するのが確実です。
確定申告・年末調整での使い方
確定申告では、確定申告書第二表の「障害者控除」欄に対象者の氏名を記入し、特別障害者に該当する場合は氏名を〇で囲んで区別します。認定書そのものは添付書類として保管・提示する扱いになります。会社員などが年末調整で控除を受ける場合は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に控除対象の障害者として記載し、認定書を勤務先に提出する流れになります。認定書は税の所得控除にのみ使えるものであり、これによって新たに介護保険の福祉サービスが受けられるようになるわけではない点も、あわせて押さえておくとよい情報です。
海外・遠距離から
申請自体は国内にいる家族や委任でも進められる
障害者控除対象者認定書の申請は、必ずしも扶養する本人が窓口に出向く必要はありません。国内に同居・近居する親族が代理で申請するケースは自治体の想定の範囲内で、成年後見人が代理申請するケースについても手続きが用意されています。海外に住んでいて日本に一時帰国できるタイミングが限られる場合は、国内にいる親族に事前に事情を共有し、申請書の記入・提出を委任する形で進めるのが現実的です。窓口によっては委任状のひな形を用意しているため、渡航前にメールや電話で必要書類を確認しておくと、帰国のタイミングに縛られずに準備できます。
海外在住の子が親を扶養している場合、障害者控除は使えるか
「海外に住みながら日本の親を扶養している場合、確定申告で障害者控除を使えるか」という疑問を持つ家族は少なくありません。整理すべき点は、扶養控除そのものの要件(生計を一にしているか、親の所得が一定額以下か)と、障害者控除対象者認定書による障害者控除は別建ての制度だという点です。親を扶養控除の対象として申告できている前提であれば、その親が障害者控除対象者認定書の交付を受けている場合、扶養控除に加えて障害者控除(または特別障害者控除)を上乗せして適用できる可能性があります。
一方で、確定申告を行う納税者自身が日本の非居住者に該当する場合、扶養控除等の適用要件や必要な手続きは国内に住む納税者とは異なる部分があります。国外に住む親族を扶養する場合の「親族関係書類」「送金関係書類」の提出義務についての案内は国税庁が公表していますが、これは基本的に「海外に住む親族を、日本国内の納税者が扶養する」ケースを想定した資料です。今回のように「日本に住む親を、海外在住の納税者が扶養する」という逆方向のケースで、申告そのものをどう行うか(確定申告書の提出先、必要書類、扶養控除の適用可否)は、納税者自身の居住形態や所得の状況によって取り扱いが変わるため、個別の判断は税務署や税理士に確認することが欠かせません。
認定書の申請と確定申告を分担する
実務上は、認定書の申請(市区町村の手続き)と確定申告(税務署の手続き)を別の担当者が分担して進めても問題ありません。たとえば、国内にいる親族が市区町村へ認定書の申請を行い、交付された認定書を海外在住の子(または確定申告を担当する家族)に共有し、その情報をもとに確定申告書に記載するという役割分担です。認定書は郵送や写真データでの共有で足りることが多いため、原本のやり取りに時間をかけすぎず、必要なタイミングで確実に情報が渡るように事前に段取りを決めておくとよいでしょう。海外在住家族向けの介護コーディネートガイドや遠距離介護のガイドでも、こうした国内外での役割分担の考え方をあわせて解説しています。
誤解と相談先
「要介護3以上なら自動的に対象」ではない
介護の現場や家族の間では「要介護3以上なら障害者控除対象者認定書がもらえる」といった目安が語られることがありますが、これは自治体の基準表を単純化した俗説にとどまります。実際の判定は自立度の組み合わせで行われ、要介護度はあくまで参考情報のひとつです。要介護度が高くても対象外と判定される場合もあれば、要介護度がそれほど高くなくても対象になる場合もあるため、申告のタイミングになって慌てないよう、認定を受けたら念のため申請してみるという姿勢のほうが実態に合っています。
手帳を持っている親がいる場合との違い
すでに身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている親については、その手帳の等級に応じて通常どおり障害者控除・特別障害者控除の対象になり、障害者控除対象者認定書は不要です。この認定書は、あくまで手帳を持っていない高齢者を対象にした別ルートの制度だと理解しておくと、窓口での案内も理解しやすくなります。
費用や介護保険の負担軽減策とはあわせて考える
障害者控除対象者認定書は税務上の控除であり、介護保険サービス自体の自己負担を直接減らす仕組みではありません。介護にかかる費用全体を見直す際は、高額介護サービス費や負担限度額認定といった介護保険側の軽減制度もあわせて確認しておくと、家計への影響をより正確に把握できます。費用の全体像は介護費用のガイドにまとめています。
相談先を間違えない
認定の可否や基準表の詳細は市区町村(高齢福祉課・介護保険課)、控除額や確定申告の書き方は税務署や税理士が担当窓口です。両方にまたがる制度のため、「税金の話だから税務署だけに聞けばよい」「介護保険の話だから市区町村だけでよい」と決めつけず、それぞれの担当窓口に確認する意識を持つと手続きがスムーズに進みます。
比較表
判断に関わる違いだけを抜き出して表にします。
| 判定区分 | 目安となる自立度(浦安市の例) | 所得控除額(同居していない場合) |
|---|---|---|
| 障害者控除対象者認定書なし(要介護認定のみ) | - | 控除なし |
| 「障害者」に準ずる認定 | 障害高齢者の自立度A以上・認知症高齢者の自立度II以上を目安に判定 | 27万円(障害者控除) |
| 「特別障害者」に準ずる認定 | より重度の自立度を目安に判定 | 40万円(特別障害者控除) |
| 特別障害者かつ納税者と同居 | 上記に加え同居の事実 | 75万円(同居特別障害者控除) |
よくある質問
要介護3で認定を受けていれば、障害者控除対象者認定書は自動的にもらえますか
自動的には交付されません。要介護度は参考情報の一つに過ぎず、市区町村が自立度の基準表に基づいて個別に審査したうえで認定するかどうかを決めます。
障害者控除対象者認定書の申請はどこで行いますか
親が住民票を置く市区町村の窓口で申請します。多くの自治体では高齢福祉課や介護保険課が担当しています。
認定書をもらえば、介護保険の自己負担も軽くなりますか
なりません。この認定書は税の所得控除に使うものであり、介護保険サービスの負担割合や利用できるサービスの範囲を変えるものではありません。
過去の年分についても、さかのぼって申請できますか
自治体によっては複数年分の遡及申請を受け付けています。浦安市のように最長5年分の遡及を案内している例もあるため、これまで申請していなかった年がある場合は窓口に確認してみる価値があります。
海外在住で日本の親を扶養控除の対象にしている場合、障害者控除もあわせて使えますか
親が扶養控除の対象として申告できており、かつ障害者控除対象者認定書の交付を受けていれば、扶養控除に加えて障害者控除(または特別障害者控除)をあわせて適用できる可能性があります。ただし、確定申告を行う納税者自身が非居住者に該当する場合の具体的な取り扱いは個別事情によって変わるため、税務署や税理士に確認してください。
親がすでに身体障害者手帳を持っている場合も、この認定書が必要ですか
不要です。手帳の等級に応じて通常どおり障害者控除・特別障害者控除の対象になるため、障害者控除対象者認定書は手帳を持っていない高齢者向けの別ルートです。
認定書の申請は、海外にいる自分の代わりに国内の親族に頼めますか
頼めます。国内にいる親族による代理申請は自治体の想定の範囲内で、成年後見人による申請の仕組みが用意されている自治体もあります。委任状の要否は窓口に確認してください。
一次情報・公的情報
本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-02.
この記事について
この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。
