特別障害者手当は要介護度だけでは対象になりません。障害の程度を診断書で個別に判定する仕組みで、施設入所中や長期入院中は対象外になります。認定の考え方と申請の実務を整理しました。
制度の基本
特別障害者手当とはどんな制度か
特別障害者手当(ja: 特別障害者手当/romaji: tokubetsu shougaisha teate/en: special disability allowance)は、精神または身体に著しく重度の障害があり、日常生活において常時特別の介護を必要とする状態にある、在宅の20歳以上の人に支給される国の手当です。根拠となる法律は「特別児童扶養手当等の支給に関する法律」で、財源・制度としては障害福祉の枠組みに位置づけられています。障害者手帳を持っていなくても、障害の程度が基準に該当すれば申請できる点は見落とされがちな情報です。
判定は「要介護度」ではなく「障害の程度」
家族から最もよく聞く誤解が、「要介護5なら当然もらえるはず」というものです。しかし特別障害者手当の認定は、介護保険の要介護度とは別の基準で行われます。判定に使われるのは要介護認定の結果ではなく、専用の診断書に記載された障害の内容・程度です。目安としては、身体障害者手帳1級または2級に相当する障害が複数重なっている状態、あるいはそれと同等以上に日常生活の全般で常時の介護を要する状態が想定されています。精神障害の場合は、食事・着替え・排せつ・外出時の危険回避などが一人ではほとんどできない状態であることが求められます。要介護度が重い高齢者であっても、診断書の記載内容次第では基準に届かないと判断されることがあるという点は、申請前に知っておく価値があります。
支給額と所得制限
2026年4月時点の支給額は月額30,450円です。物価の変動に応じて毎年度改定されるため、実際に申請する際は市区町村の窓口で最新の金額を確認してください。支給には所得制限があり、本人の所得、または配偶者・扶養義務者の所得が一定の限度額を超えると支給停止になります(限度額は扶養親族の人数によって変わり、市区町村の窓口で個別に確認する必要があります)。海外在住の家族がいる世帯でも、日本国内での扶養関係・所得の申告状況によって判定されるため、家族構成が複雑な場合ほど早めに窓口へ相談しておくと見通しが立てやすくなります。
除外規定を早めに知る
特別養護老人ホームなど施設入所中は対象外
特別障害者手当は「在宅」であることが要件のひとつです。特別養護老人ホームなどの施設に入所している場合、通所サービス(デイサービスなど)の利用は問題ありませんが、入所してしまうと支給対象から外れます。すでに手当を受けている人が施設入所を決めた場合も、入所した時点で支給が止まる扱いになります。在宅か施設かを検討している段階で、この除外規定を知らずに施設入所を進めてしまうと、後から手当が止まって家計の見通しが狂うことがあります。施設入所を検討し始めた早い段階で、この点を家族間で共有しておくことが大切です。
病院・診療所への3か月超の継続入院も対象外
病院や診療所に継続して3か月を超えて入院している場合も、特別障害者手当の対象から外れます。短期の入院であれば影響しませんが、入院が長引きそうな見通しが立った時点で、この3か月という区切りを意識しておく必要があります。介護老人保健施設などの施設入所も、施設種別によって対象外となります。すでに受給している人が長期入院や施設入所に至った場合は、届出が必要になることが一般的です。手続きを怠ると、後から返還を求められる可能性もあるため、早めに市区町村の窓口に相談しておくのが安全です。
「もらえるはず」と思って施設入所を決める前に
家族が「要介護5だから特別障害者手当は当然もらえる」と思い込んだまま施設入所を先に決めてしまうと、実際には入所時点で対象外になっていた、という事態が起こり得ます。逆に、在宅介護を続ける前提で申請していた手当が、施設入所を機に打ち切られることを想定していなかった、というケースも見られます。介護保険の要介護度と、この手当の対象可否は別の判断であることを踏まえたうえで、在宅を続けるか施設に移るかの検討と合わせて、手当の扱いも早い段階で確認しておくことをおすすめします。
申請の実務
申請窓口と必要書類
申請窓口は、本人が住民登録をしている市区町村の障害福祉担当課です。認定請求書、所定の様式による診断書、障害者手帳を持っている場合はその手帳、年金を受給している場合はその金額が分かる書類、振込先の口座情報などが一般的に必要になります。診断書は障害の種類ごとに様式が分かれており、市区町村の窓口またはウェブサイトから取得できます。診断書を書く医師について特別な資格要件はなく、かかりつけ医で作成してもらえるのが一般的です。
診断書取得の実務 ― 誰に何を書いてもらうか
認定の可否は、この診断書に日常生活の困難さがどれだけ具体的に記載されているかに大きく左右されます。「歩行が不安定」「見守りが必要」といった抽象的な記載だけでは、常時の介護が必要な状態であることが審査側に伝わりにくいことがあります。食事・着替え・排せつ・移動・外出時の危険回避など、具体的な場面でどの程度の介助が必要かを、かかりつけ医に日頃の様子として伝えたうえで診断書に反映してもらうことが、申請の実務上は重要です。ケアマネジャーや訪問看護師など、日常の様子を把握している専門職に同席してもらい、家庭での状態を医師に共有してもらう方法も有効です。
申請しても却下されるケースがある
特別障害者手当は、申請すれば必ず認定されるわけではありません。診断書の記載が日常生活の困難さを十分に反映していない場合や、精神障害単独で「常時特別の介護を要する」水準に達していないと判断された場合、あるいは所得制限を超えている場合は、審査の結果、不支給となることがあります。要介護度が重くても、障害の程度の基準に届かないと判断されれば却下される可能性があるという点は、申請前に家族が理解しておくべき現実です。結果に納得できない場合は、市区町村の窓口に理由を確認したうえで、診断書の内容を見直して再申請できるかどうかを相談する方法があります。
認定後の流れ
認定されると、申請した月の翌月分から手当の対象になり、通常は年4回(2月・5月・8月・11月)にまとめて振り込まれます。有効期間が設定されている場合は、更新の時期に改めて診断書の提出が必要になることが一般的です。状態が変化した場合(改善・悪化のいずれも)は、次回更新時の判定に影響することがあるため、更新案内が届いたら早めに準備を始めることをおすすめします。
海外・遠距離から
申請手続きをどこまで代理で進められるか
海外在住の子が親の代わりに窓口へ出向いて手続きすることは難しい場面が多くありますが、国内にいる別の親族が代理で窓口とやり取りすることは可能です。委任状の要否や郵送での申請可否は市区町村によって扱いが異なるため、まずは電話で「郵送申請は可能か」「代理人が窓口で手続きできるか」を確認するのが最初の一歩です。海外からは、必要書類のリストアップや診断書取得のスケジュール調整など、国内の親族と分担できる部分を早めに整理しておくと、実際の窓口対応がスムーズになります。
かかりつけ医・国内親族との連携の組み立て方
診断書の質を左右するのは、医師が本人の日常生活をどれだけ具体的に把握しているかです。海外在住のため本人の様子を日常的に見られない場合、国内の親族やケアマネジャーに、直近の生活の様子(転倒の有無、食事や着替えにどれだけ介助が必要か等)をメモにまとめてもらい、診察時にかかりつけ医へ共有してもらう方法が現実的です。電話や国際通話アプリで受診に同席できる医療機関であれば、海外から直接医師に状況を伝える方法も検討できます。海外在住家族向けの介護コーディネートガイドや遠距離介護のガイドも、かかりつけ医・親族との役割分担を組み立てる際の参考になります。
施設入所を検討中なら、手当のことは早めに確認する
海外在住の家族は、本人の状態が悪化してから施設入所を急に検討し始めることが少なくありません。しかし前述の通り、施設に入所すると特別障害者手当は対象外になります。施設入所を検討し始めた時点で、現在手当を受給しているかどうか、受給している場合は入所によって家計にどのような影響が出るかを、親のお金の管理とあわせて早めに整理しておくと、入所後に想定外の収入減で慌てることを避けられます。手当の有無は毎月の収支に直結するため、施設探しと並行して確認しておきたい項目のひとつです。
一時帰国のタイミングで動かせること
一時帰国のタイミングは、診断書取得のために本人をかかりつけ医の受診に同行させたり、市区町村の窓口で直接相談したりする好機になります。滞在期間が短い場合は、事前に電話で必要書類を確認し、滞在中に受診・窓口相談・書類提出までをまとめて済ませられるよう段取りを組んでおくと、限られた日数を有効に使えます。
比較表
どこが分かれ目になるかを、次の表で確認できます。
| 項目 | 特別障害者手当 | 参考: 障害者控除対象者認定書 |
|---|---|---|
| 性質 | 毎月現金が支給される給付 | 確定申告で使う税控除のための証明書類 |
| 判定基準 | 障害の程度(診断書による個別判定) | 市区町村が独自基準で判定(要介護度等を参考にする場合がある) |
| 要介護度との関係 | 連動しない(要介護5でも不支給の場合がある) | 自治体により要介護度を参考情報として扱う場合がある |
| 施設入所中 | 対象外 | 制度上は施設入所中でも申請できる場合がある(自治体により異なる) |
| 3か月超の継続入院 | 対象外 | 制度上は入院中でも申請できる場合がある(自治体により異なる) |
| 所得制限 | あり(本人・扶養義務者) | 制度上は所得制限なし(税控除の適用可否は別途所得による) |
| 申請窓口 | 市区町村の障害福祉担当課 | 市区町村の高齢福祉・介護保険担当課が多い |
よくある質問
要介護5の認定を受けていれば、特別障害者手当は自動的にもらえますか
自動的にはもらえません。判定に使われるのは専用の診断書に基づく障害の程度で、要介護度が重くても、診断書の内容次第では不支給と判断されることがあります。
特別養護老人ホームに入所していますが、特別障害者手当を申請できますか
施設に入所している場合は対象外です。通所サービス(デイサービスなど)の利用は入所にあたらないため、影響しません。
入院が長引きそうですが、特別障害者手当への影響はありますか
病院や診療所に継続して3か月を超えて入院すると対象外になります。介護老人保健施設などの施設入所も、施設種別によって対象外となるため、すでに受給している場合は早めに市区町村の窓口へ届け出てください。
障害者手帳を持っていなくても申請できますか
障害者手帳がなくても、専用の診断書によって障害の程度が基準に該当すると判断されれば申請できます。
申請したのに却下されました もう一度申請できますか
却下の理由を市区町村の窓口で確認したうえで、診断書の記載内容を見直して再申請できる場合があります。日常生活の困難さがどの程度具体的に記載されていたかが、判定に大きく影響します。
海外在住の子が、親の代わりに窓口で申請手続きを進めることはできますか
郵送申請の可否や代理人による窓口手続きの可否は市区町村によって扱いが異なります。まずは電話で申請方法を確認し、国内にいる親族と役割を分担して進める方法が現実的です。
特別障害者手当と、確定申告で使う障害者控除対象者認定書は同じものですか
別の制度です。特別障害者手当は毎月現金が支給される給付、障害者控除対象者認定書は税控除を受けるための証明書類で、判定基準も申請窓口も異なります。
施設入所を検討していますが、今受給している手当はどうなりますか
施設に入所すると特別障害者手当は対象外になり、支給が止まります。施設入所を検討し始めた時点で、家計への影響を早めに確認しておくことをおすすめします。
一次情報・公的情報
本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-02.
この記事について
この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。
