居宅療養管理指導は医師・薬剤師などの自宅訪問に介護保険から給付が出る制度で、区分支給限度基準額の枠外として扱われます。職種ごとに月2〜4回の回数上限があり、自己負担1割ならおおむね月1,000〜2,000円が目安です。
制度の位置づけ
居宅療養管理指導という制度
「訪問診療」と「居宅療養管理指導」という似た名前の項目が同じ月の請求書に並んでいて、何が二重に請求されているのか分からない、という戸惑いは海外在住家族からよく聞かれます。実際には二重請求ではなく、訪問診療と居宅療養管理指導という別々の制度からそれぞれ支払われています。訪問診療は医師が診察・治療方針の決定を行う医療行為そのもので医療保険から支払われ、居宅療養管理指導はその診察と合わせて、医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士が生活面の療養上の管理や指導を行った場合に介護保険から支払われる、別建ての給付です。介護保険制度の基本で扱っている要介護認定を受けている人が対象になります。
医療保険(訪問診療)との違い
訪問診療は医師が計画的に自宅を訪れて診察・処方・治療方針の判断を行うもので、費用は医療保険(後期高齢者医療制度や国民健康保険など)から支払われます。居宅療養管理指導は、その診察の機会をとらえて、薬の飲み方や生活上の注意点を本人・家族に伝え、ケアマネジャーへ情報提供することが中心です。同じ訪問の場面でも請求される保険制度が違うため、負担割合や上限額の計算方法もそれぞれ別に扱われます。担当のケアマネジャーに明細の見方を確認しておくと、請求書を見たときの戸惑いを減らせます。
対象になる人の要件
居宅療養管理指導を受けられるのは、要介護認定を受けており、心身の状態から通院が困難な人です。以前は「通院又は通所が困難な者」という基準でしたが、令和6年度改定で通所(デイサービスなどに通う形)の可否は問わず「通院が困難な者」に見直され、管理栄養士による栄養食事指導や歯科衛生士等による口腔ケアの指導を、デイサービス利用者でも受けやすくする方向に整理されています。要支援1・2の人も、介護予防居宅療養管理指導として同様の枠組みで利用できます。まだ要介護認定を受けていない段階では対象にならないため、介護保険の申請の流れを先に確認しておくと見通しが立てやすくなります。
職種別の内容
医師・歯科医師が行う場合の単位数
令和6年度介護報酬改定後、医師が行う居宅療養管理指導(Ⅰ)は、単一建物居住者が1人の場合515単位、2〜9人の場合487単位、10人以上の場合446単位です。在宅時医学総合管理料等を算定している利用者を対象とする居宅療養管理指導(Ⅱ)は、1人の場合299単位、2〜9人の場合287単位、10人以上の場合260単位と、やや低く設定されています。歯科医師が行う場合は、単一建物居住者1人で517単位です。医師・歯科医師・管理栄養士は月2回までという回数の上限があります。
薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士が行う場合の単位数
薬局の薬剤師が対面で訪問する場合、令和6年度改定後は単一建物居住者1人で518単位、2〜9人で379単位、10人以上で342単位です。情報通信機器を活用した服薬指導は一律46単位という別区分もあります。管理栄養士が行う場合は単一建物居住者1人で545単位、歯科衛生士等が口腔ケアや服薬管理の指導を行う場合は単一建物居住者1人で362単位です。薬剤師・歯科衛生士等は月4回まで、末期がんの利用者に限り歯科衛生士等は月6回まで認められています。
単一建物居住者の人数区分による単価差
「単一建物居住者」とは、同じ建物(マンションやサ高住など)に住む利用者のうち、同じ月に同じ事業者から訪問系サービスを受けている人数を指します。1人だけの一戸建てに訪問する場合よりも、同じ建物に複数の利用者がいる場合の方が1人あたりの単価は下がる仕組みです。訪問1回あたりの移動効率を踏まえた設計で、訪問介護の料金や24時間対応の在宅ケアでも同じ考え方が使われています。
情報通信機器を使った服薬指導の位置づけ
薬剤師による居宅療養管理指導には、薬剤師が実際に自宅を訪問して対面で行う区分のほかに、情報通信機器(ビデオ通話など)を使って服薬指導を行う区分があり、単位数は一律46単位です。対面の訪問より単価は低く設定されていますが、体調が安定している時期のフォローや、対面訪問の間を補う手段として位置づけられています。ただし、初回の指導や状態の変化が疑われる場面では対面での訪問が基本になる点に注意が必要です。実際にどちらの形を使えるかは、担当の薬局・主治医の判断によります。
枠外という核心
区分支給限度基準額に含まれない理由
要介護度ごとに決まる区分支給限度基準額は、利用者が自分の判断で組み合わせる訪問介護・デイサービス・福祉用具貸与などの月間上限を定めるものです。居宅療養管理指導は、利用者本人の希望で回数を増減できるものではなく、医師など専門職が医学的な必要性を判断して実施するサービスであるため、この上限額の対象から外れています。つまり、訪問介護やデイサービスをすでに上限近くまで使っている家庭でも、居宅療養管理指導を追加で受けることで他のサービスの利用枠が圧迫されることはありません。
高額介護サービス費との関係
自己負担額が高額になった月に払い戻しを受けられる高額介護サービス費の対象には、居宅療養管理指導の自己負担分も含まれます。区分支給限度基準額の枠外であることと、高額介護サービス費の対象になることは別の話で、両方をあわせて理解しておくと請求書の見方に迷いにくくなります。福祉用具のレンタルや訪問介護など、区分支給限度基準額の範囲内で使っているサービスの自己負担と、枠外である居宅療養管理指導の自己負担は合算して1か月分の総額として扱われ、上限を超えた分がまとめて払い戻される仕組みです。
訪問看護・訪問介護との違い
名前が紛らわしいサービスとして、看護師が医療的な処置や観察を行う訪問看護、介護職員が身体介護や生活援助を行う訪問介護があります。居宅療養管理指導はこれらと異なり、医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士という専門職が「療養上の管理指導」に特化して関わる点が特徴です。訪問看護は状態によって医療保険と介護保険のどちらでも実施されうる一方、居宅療養管理指導は要介護認定を受けている人向けの介護保険給付として整理されています。
ケアプランへの位置づけ
居宅療養管理指導は、ケアマネジャーが作成するケアプランに位置づけられて初めて計画的に利用できます。医師や薬剤師からの情報提供を受けたケアマネジャーが、訪問介護やデイサービスなど他のサービスとのバランスを見ながら、居宅療養管理指導をケアプランに書き込みます。区分支給限度基準額の枠外であっても、ケアプラン全体の中でどのサービスがどのように関わっているかを家族が把握しておくと、サービス担当者会議での質問や見直しの相談がしやすくなります。
決め方の分岐
通院できるうちは外来で十分か?
本人が家族や介護タクシーの付き添いで無理なく通院できている段階では、外来の主治医のもとに通うだけで居宅療養管理指導は不要です。通院そのものが本人の外出機会や社会とのつながりを保つ意味を持つこともあるため、まずは通院が本人・家族にとって負担になっていないかを見極めることが最初の判断材料になります。
訪問診療+居宅療養管理指導へ切り替える目安
通院そのものが本人・付き添う家族双方にとって大きな負担になってきた場合や、認知症の進行・身体機能の低下で通院自体が難しくなった場合は、訪問診療への切り替えを主治医に相談する段階です。訪問診療に切り替わると、多くの場合セットで居宅療養管理指導も始まり、服薬管理や生活上の注意点についての情報がケアマネジャーへも共有されるようになります。
薬剤師の訪問だけ先に頼むという選択肢
通院自体はまだ続けられるものの、薬の飲み忘れや飲み間違いが心配な場合は、訪問診療全体に切り替える前に、薬局の薬剤師による居宅療養管理指導だけを先に頼むという選び方もあります。薬剤師が自宅を訪問して薬の整理・一包化の提案・残薬の確認を行い、主治医やケアマネジャーに報告する仕組みで、通院を続けながら服薬面の不安だけを補うことができます。
誰に相談すればいいか?
利用を検討する際は、まず通院先の主治医に訪問診療・居宅療養管理指導の対象になるかを相談するのが基本の窓口です。すでに要介護認定を受けている場合は、担当のケアマネジャーにケアプランへの位置づけを相談する流れになります。薬剤師の訪問だけを先に検討したい場合は、かかりつけの薬局に相談することから始められます。
一つの家庭の中でも、この3つの選択肢を固定的に選ぶ必要はありません。最初は外来通院を続けながら薬剤師の訪問だけを取り入れ、半年・一年という単位で本人の状態を見ながら、通院の負担が大きくなってきた段階で訪問診療への切り替えを検討する、という段階的な進め方も現実的です。判断のたびに、本人の希望(できるだけ外出したい、逆に外出自体がつらい、など)を確認しながら進めることが、医療・介護の選択で家族が後悔を残さないための基本になります。
海外・遠距離から
遠隔で服薬状況を把握する手段としての薬剤師訪問
海外在住の家族にとって、親が処方薬をきちんと飲めているかどうかは、電話だけでは把握しにくい心配事の一つです。薬剤師による居宅療養管理指導は、訪問のたびに服薬状況・残薬・副作用の有無を確認し、主治医やケアマネジャーに報告する仕組みを持つため、海外にいる家族が現地の目を借りて服薬状況を継続的に把握する手段として活用できます。海外から親を支える方法でも触れているとおり、専門職による定期的な訪問記録は、電話やビデオ通話だけでは埋められない部分を補ってくれます。
服薬状況の共有をどこまで受け取れるかは事業所によって差があります。一時帰国のタイミングで薬局に直接あいさつし、海外からの連絡方法(電話・メール・ビデオ通話のどれを使うか)と、報告してほしい内容(残薬の量、体調の変化、飲み忘れの有無など)をあらかじめ伝えておくと、その後のやり取りが具体的になります。ケアマネジャーを窓口に一本化し、薬局からの情報もケアマネジャー経由でまとめて受け取る形にしておくと、海外側の負担も軽くなります。
月額自己負担の実額例
自己負担1割の場合、医師による居宅療養管理指導(Ⅰ・単一建物居住者1人)を月2回利用すると、1回515単位×1割でおよそ515円前後、2回でおおむね1,000円程度の負担です。薬剤師の訪問を月4回利用する場合は、1回518単位×1割でおよそ520円前後、4回でおおむね2,000円程度になります。実際の負担額は自己負担割合(1〜3割)、単一建物居住者の人数区分、各種加算の有無によって変わるため、ここでの金額は目安として理解してください。介護費用全体の目安と合わせて、家計の見通しを立てる参考にできます。
利用開始までの流れ
利用開始までの実務は、多くの場合①主治医に訪問診療・居宅療養管理指導の対象になるか相談する、②要介護認定を受けていない場合は認定申請を先に済ませる(介護保険の申請を参照)、③ケアマネジャーがケアプランに位置づける、④薬剤師の訪問を追加したい場合はかかりつけ薬局にも相談する、という順に進みます。遠距離介護の進め方にあるとおり、海外や遠方にいる家族は、電話やオンラインでケアマネジャーと定期的に情報共有できる体制を最初に整えておくと、その後のやり取りがスムーズになります。
一時帰国のタイミングが合えば、その機会にケアマネジャー・主治医・薬局の3者と一度は顔を合わせておくと、その後の遠隔でのやり取りに信頼関係の土台ができます。日程が合わない場合も、ケアマネジャーに依頼すれば、サービス担当者会議の内容や居宅療養管理指導の実施記録を後からまとめて共有してもらえることが一般的です。制度の細かな運用は自治体・事業所によって差があるため、疑問点はその都度、担当のケアマネジャーや薬局に確認する姿勢が実務的です。
比較表
表で並べると、違いは次のようになります。
| 職種 | 単一建物居住者1人・1回あたりの単位数(令和6年度改定後) | 月の回数上限 | 区分支給限度基準額 |
|---|---|---|---|
| 医師(Ⅰ) | 515単位 | 月2回 | 対象外(枠外) |
| 医師(Ⅱ・在宅時医学総合管理料等算定者) | 299単位 | 月2回 | 対象外(枠外) |
| 歯科医師 | 517単位 | 月2回 | 対象外(枠外) |
| 薬剤師(薬局・対面) | 518単位 | 月4回 | 対象外(枠外) |
| 管理栄養士 | 545単位 | 月2回 | 対象外(枠外) |
| 歯科衛生士等 | 362単位 | 月4回(末期がんは月6回) | 対象外(枠外) |
よくある質問
居宅療養管理指導は1回いくらくらいかかりますか?
自己負担1割の場合、医師(Ⅰ・単一建物居住者1人)で1回あたり約515円前後、薬剤師(薬局・対面)で約518円前後が目安です。単一建物居住者の人数区分や加算の有無で金額は変わります。
訪問診療と居宅療養管理指導を両方使うと月額はいくらになりますか?
訪問診療の医学管理料などは医療保険、居宅療養管理指導は介護保険からとそれぞれ別の保険で計算されます。居宅療養管理指導だけを見れば、医師が月2回訪問する場合はおおむね1,000円程度(自己負担1割)が目安ですが、正確な総額は訪問診療側の明細と合わせて確認する必要があります。
薬剤師の訪問だけを月4回使うといくらですか?
自己負担1割の場合、1回あたり約518円前後(単一建物居住者1人)で、月4回利用するとおおむね2,000円程度が目安です。人数区分が変わると単価も下がります。
居宅療養管理指導を使うと、他のサービスの利用限度額は減りますか?
減りません。居宅療養管理指導は要介護度別に決まる区分支給限度基準額の対象外(枠外)として扱われるため、訪問介護やデイサービスの利用可能枠には影響しません。
単一建物に住む人数が多いと料金は変わりますか?
変わります。同じ建物内で同じ月に複数の利用者が訪問を受けている場合、1人あたりの単価は下がる仕組みです。マンションやサ高住に住む場合と一戸建てに住む場合で単価区分が異なります。
海外に住んでいても、居宅療養管理指導の費用の内訳を確認できますか?
確認できます。担当のケアマネジャーに依頼して利用明細や給付管理票を共有してもらう、電話やビデオ通話で薬剤師・ケアマネジャーから説明を受けるといった方法があります。
要介護認定を受けていなくても居宅療養管理指導は使えますか?
使えません。居宅療養管理指導は介護保険の給付なので、要介護認定を受けていることが前提になります。認定を受けていない段階では、まず訪問診療や外来での対応となります。
一次情報・公的情報
本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-11.
この記事について
この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。
