生活援助中心型の訪問回数には要介護度別の基準があり、要介護1なら月27回が目安です。これを超えるケアプランは市町村への届出が必要になりますが、利用を止める制度ではありません。地域ケア会議で内容を確認する仕組みで、正当な理由があれば継続できます。
回数基準の仕組み
生活援助の回数に上限があるわけではない
まず整理しておきたいのは、生活援助中心型サービスに絶対的な「上限」があるわけではないという点です。なお、そもそも同居家族がいる場合に生活援助を利用できるかどうかという入口の判断は別の論点で、同居家族がいると生活援助は頼めない?原則と例外で扱っています。ここでは、利用できることを前提に、回数の基準を整理します。介護保険には、要介護度ごとに1か月に使えるサービス量全体の枠(区分支給限度基準額)があり、その枠内であれば理論上は生活援助を何回でも組み込めます。今回扱う回数基準は、この支給限度額とは別の仕組みで、「通常の利用状況からかけ離れて多い生活援助中心型サービス」を市町村が把握し、内容を確認するための目安です。訪問介護の料金や単位数の全体像は訪問介護の料金ガイドで扱っています。
基準は全国平均利用回数をもとに要介護度別で決まる
基準となる回数は、直近1年間の給付実績から算出した「全国平均利用回数+2標準偏差」を要介護度別に求め、月ごとの最大値を採用する形で厚生労働大臣が定めています。この基準は平成30年(2018年)5月2日の厚生労働省告示第218号で定められ、同年10月からケアプランへの届出義務が始まりました。以下が現在も使われている要介護度別の基準回数です。
要介護3が最も回数が多く、要介護4・5でむしろ数字が下がっているのは不思議に見えるかもしれませんが、これは重度になるほど生活援助よりも身体介護中心の訪問介護や、通所・入所系サービスに置き換わりやすいという全国的な利用実態を反映した結果です。数字だけを見て「要介護3の親は43回まで自由に使える」と捉えず、あくまで届出の要否を分けるラインとして理解しておくとよいでしょう。
| 要介護度 | 基準回数(月あたり) |
|---|---|
| 要介護1 | 27回 |
| 要介護2 | 34回 |
| 要介護3 | 43回 |
| 要介護4 | 38回 |
| 要介護5 | 31回 |
この基準は自治体が独自に決めているわけではない
堺市や姫路市、東大阪市など、複数の自治体の案内ページを確認すると、いずれも同じ要介護度別の回数(27・34・43・38・31)を掲載しています。基準そのものは国が全国一律で定めており、市町村ごとに数字が変わる制度ではありません。一方で、届出書の様式や提出先の窓口、確認の進め方には自治体ごとの運用差があるため、実際の手続きは親が住む市区町村のケアマネジャーを通じて確認するのが確実です。
「平均+2標準偏差」を平たく言うと
制度の説明で出てくる「全国平均利用回数+2標準偏差(2SD)」という言葉は分かりにくいので、平たく言い換えます。まず全国のケアプランから要介護度ごとの生活援助の利用回数を集計し、平均的な回数を出します。次に、利用回数のばらつき具合(標準偏差)を計算し、平均からその2倍分だけ多い回数を基準線とします。統計的には、この基準線を超える利用は全体のごく一部に限られる、いわば「特に多い部類」に入る水準です。基準を超えたからといって不正利用を疑われるという意味ではありません。単に「珍しいほど回数が多いので、内容を一度確認させてください」という位置づけだと理解しておくと、必要以上に身構えずに済みます。
基準回数は2018年から据え置き
平成30年(2018年)10月の施行以降、2026年時点までこの5段階の基準回数(27・34・43・38・31)が全国一律の目安として使われ続けています。介護報酬改定のたびに単位数や自己負担割合の基準は見直されますが、この回数基準そのものが改定のたびに変わる仕組みではありません。ただし将来的に見直される可能性はゼロではないため、基準に近い利用が続く場合は、担当ケアマネジャーに最新の運用を確認しておくと安心です。
超過時の3つの選択肢
なぜケアマネジャーは回数を渋ることがあるのか
「もっと生活援助の回数を増やしてほしい」と頼んだのに、ケアマネジャーが慎重な姿勢を見せることがあります。これは意地悪をしているのではなく、基準を超えるケアプランは市町村への届出と、その後の内容確認の対象になるためです。届出自体は禁止されている行為ではありませんが、ケアマネジャーの側には、なぜその回数が必要なのかを客観的な根拠とともに説明できる状態にしておく責任があります。回数を増やす相談は、まずこの背景を家族が理解したうえで進めると話がかみ合いやすくなります。ケアマネジャーとの関わり方全般はケアマネジャーの役割で扱っています。
分岐1:正当な理由を整理して届出のうえ継続する
親が一人暮らしで、認知症による見守りの必要性が高い、家族が近くにいない、他のサービスでは代替しにくいなど、回数が多くなる合理的な理由がある場合は、その事情を記録し、届出のうえで生活援助を継続する道があります。ケアプランには、なぜその回数が必要かという根拠をアセスメント記録やサービス担当者会議の記録として残すことが求められます。家族としては、日々の生活の様子や困りごとをケアマネジャーに具体的に伝え、記録に反映してもらうことが実務上の準備になります。
分岐2:サービスの組み合わせを見直す
回数そのものを増やす前に、生活援助以外のサービスと組み合わせてケアプラン全体を見直す方法もあります。たとえば、通所系サービスで日中の生活支援をまとめて受ける、福祉用具や住宅改修で身の回りの負担そのものを減らす、地域包括支援センターが把握している見守り資源を組み込むなどです。回数を単純に積み増すより、生活全体の課題を洗い出して再設計したほうが、結果的に本人の負担も軽くなることがあります。
分岐3:保険外(自費)サービスを併用する
区分支給限度額の枠内に収めつつ、どうしても足りない部分は保険外の家事代行や自費ヘルパーを組み合わせる方法もあります。保険内の生活援助を基準の範囲に抑えたまま、平日の特定の時間帯だけ自費で補うといった使い分けです。保険と自費を組み合わせる考え方の全体像は、費用の見通しを含めて事前に確認しておくと、届出の要否で悩む場面自体を減らせます。
3つの選択肢をどう比べるか
3つの分岐に優劣はなく、親の状態と家計の事情で向き不向きが変わります。認知症の見守りなど生活援助でなければ対応しにくい理由がはっきりしているなら、分岐1(届出のうえ継続)が本人の生活実態に一番合います。生活援助以外の手段で代替できる余地があるなら、分岐2(組み合わせの見直し)のほうが本人の活動量を保ちながら生活を支えやすくなります。すでに区分支給限度額をほぼ使い切っていて、これ以上保険内で回数を増やす余地がないなら、分岐3(保険外の併用)が現実的です。保険外の家事代行は事業者や地域で単価に幅がありますが、1回あたり数千円台からという相場感を踏まえ、月にどの程度追加できるかを家計と相談しながら決めるとよいでしょう。どの分岐を選ぶ場合も、最終的にケアプランに反映するのはケアマネジャーなので、家族の希望と本人の状態の両方を伝えたうえで一緒に組み立てていく進め方になります。
届出後の検証の実際
届出は利用禁止の通知ではない
届出制度の目的について、大阪市など複数の自治体は「利用者の自立支援・重度化防止や地域資源の有効活用等の観点から、利用者にとってより良いサービスとすることを目的としており、サービス利用を制限するものではない」という趣旨を案内しています。つまり届出書を出したからといって、その場でサービスが止められたり、給付が拒否されたりすることはありません。あくまで内容を確認し、必要があればより良い形に見直すための手続きです。
地域ケア会議で何が確認されるか
市町村は、届出のあったケアプランについて、まず担当ケアマネジャーへの聞き取りや書類での内容確認を行います。それでも状況の把握が必要と判断された場合は、地域ケア会議などの場で、ケアマネジャー1人の視点だけでなく、医療・福祉の多職種が加わって多角的にケアプランを検証します。確認されるのは主に、なぜその回数が必要なのか、他のサービスや地域資源で代替できないか、利用者本人の自立を妨げていないかといった点です。検証の結果、回数はそのままで継続が認められることもあれば、サービス内容の見直しを提案されることもあります。
見直しを提案されたときの実際
検証の結果、地域ケア会議から「この部分は他のサービスで代替できるのではないか」といった提案が出ることがあります。この提案は行政処分のような強制力を持つものではありません。あくまでケアプランをよりよくするための助言という位置づけです。提案を受けてケアマネジャーと家族が話し合い、実情に合わないと判断すれば、理由を説明したうえで元のケアプランを維持することも制度上可能です。逆に、提案を踏まえて生活援助の一部を通所系サービスに置き換えるなど、実際にプランを調整して本人の生活の質が上がるケースもあります。いずれにしても、検証の場に一度だけ立ち会えばそれで終わりというより、その後もケアマネジャーとのやり取りの中で状況に応じて見直していくものだと捉えておくとよいでしょう。
利用者側が準備しておくとよいこと
届出や検証の場面で慌てないために、家族が普段からできる備えがあります。まず、生活援助が必要な具体的な理由(買い物や掃除がどの程度自力でできないか、同居家族の有無、認知機能の状態など)を、日々の様子として記録しておくこと。次に、他のサービスで代替できない事情があれば、それも合わせてケアマネジャーに伝えておくこと。最後に、ケアプランの内容(第1〜7表)は自分でも一度目を通しておくことです。ケアプランの様式や見方はケアプランの内容にまとめています。記録が整理されているほど、地域ケア会議での確認もスムーズに進みます。
海外家族の視点
一人暮らしの親ほど生活援助が多回数になりやすい
親が一人暮らしで、同居家族も近くに住む家族もいない場合、掃除・調理・買い物といった生活援助の必要量そのものが増える傾向があります。海外在住の家族は日常的に手伝うことができないため、生活援助への依存度が高くなりやすく、結果として基準回数に近づく、あるいは超えるケースが出てきます。基準を超えること自体は問題ではありませんが、海外にいる家族ほど「なぜその回数が必要か」を裏づける材料を用意しづらいという事情があります。海外から日本の親を支える基本的な考え方は海外から日本の親を支える方法で扱っています。
家族ができる補完のかたち
海外在住の家族が現地でできることは限られますが、いくつかの補完は可能です。1つは、帰国したタイミングでケアマネジャーと直接会い、日頃オンラインで見えている親の様子(食事の様子、会話の受け答えなど)を伝えて記録に反映してもらうこと。もう1つは、見守りサービスや通所系サービスなど、生活援助以外の手段を組み合わせて全体の負担を分散させることです。遠距離での役割分担の考え方は遠距離介護の進め方にまとめています。回数の増減を家族だけで判断せず、ケアマネジャーや地域包括支援センターと一緒に組み立てていく姿勢が、結果的に届出後の検証もスムーズにします。
相談窓口を先に押さえておく
回数の基準や届出の実務は自治体ごとに窓口や様式が異なるため、疑問が出た時点でまず担当ケアマネジャーに確認し、それでも解決しない場合は親の住む市区町村の介護保険担当課、または地域包括支援センターに相談するのが確実です。海外からでも、担当ケアマネジャーとの連絡手段さえ確保できていれば、届出の準備や地域ケア会議の結果を後から共有してもらうことは十分可能です。
オンラインでも記録は残せる
海外在住の家族がよくある不安として、「現地に行けないので状況を証明できないのではないか」というものがあります。実際には、ビデオ通話での様子、メッセージアプリでのやり取り、帰国時に撮った写真や介護日誌の共有など、オンラインで残せる記録も検証の材料として役立ちます。大切なのは記録の量よりも、いつ・何を確認したかが分かる形で残しておくことです。国内に住むきょうだいがいる場合は、役割分担のなかで記録係を決めておくと、海外側の家族も後から状況を追いやすくなります。時差があって電話でのやり取りが難しい時間帯でも、メッセージで先に要点を送っておき、後からケアマネジャーに折り返してもらう形にすれば、記録を止めずに続けられます。
比較表
どこが分かれ目になるかを、次の表で確認できます。
| 要介護度 | 基準回数(月あたり) | 超過時の届出義務 | 主な確認内容 |
|---|---|---|---|
| 要介護1 | 27回 | あり | 生活援助が必要な理由・代替手段の有無 |
| 要介護2 | 34回 | あり | 同上 |
| 要介護3 | 43回 | あり | 同上(最も基準回数が高い区分) |
| 要介護4 | 38回 | あり | 身体介護・通所系サービスとの組み合わせ状況 |
| 要介護5 | 31回 | あり | 同上 |
よくある質問
生活援助の回数が基準を超えると、サービスは使えなくなりますか?
使えなくなるわけではありません。基準を超えるケアプランは市町村への届出が必要になりますが、これはサービスを止めるための制度ではなく、地域ケア会議などで内容を確認するための仕組みです。正当な理由が確認できれば、基準を超えたまま継続できます。
要介護度によって基準回数はどのくらい違いますか?
要介護1は月27回、要介護2は34回、要介護3は43回、要介護4は38回、要介護5は31回が目安です。要介護3が最も高く、要介護4・5でやや下がるのは、重度になるほど身体介護中心の訪問介護や通所・入所系サービスに置き換わりやすい全国的な利用実態を反映しているためです。
届出をした後、地域ケア会議では具体的に何を聞かれますか?
まず担当ケアマネジャーへの聞き取りや書類確認が行われ、必要に応じて地域ケア会議で多職種が加わって検証されます。確認されるのは主に、その回数の生活援助が必要な理由、他のサービスや地域資源で代替できないか、本人の自立を妨げていないかといった点です。
基準を超えそうなとき、家族はどんな選択肢を検討できますか?
正当な理由を整理して届出のうえ継続する、通所系サービスや福祉用具の活用でケアプラン全体を見直す、保険外(自費)の家事代行やヘルパーを併用する、という3つの方向が考えられます。どれが向くかは本人の生活状況とケアマネジャーとの相談次第です。
海外在住で親の様子を毎日見られない場合、届出の準備で不利になりますか?
海外にいること自体が不利になるわけではありませんが、生活援助が必要な理由を裏づける記録が用意しにくくなりがちです。帰国時にケアマネジャーへ日頃の様子を伝えて記録に反映してもらう、見守りサービスなど他の手段も組み合わせるといった補完が助けになります。
この回数の基準は、区分支給限度基準額の上限と同じものですか?
別の仕組みです。区分支給限度基準額は1か月に保険で使えるサービス量全体の枠で、超えた分は全額自己負担になります。今回の回数基準は、その枠内であっても生活援助中心型サービスが通常より多いケアプランを市町村が確認するための目安で、両者は独立した制度です。
届出が必要かどうかは、自分たちで計算できますか?
要介護度別の基準回数(27・34・43・38・31回)と照らし合わせればおおよその目安は分かりますが、実際に届出が必要かどうかの判断や書類の作成はケアマネジャーが行います。回数が基準に近づいてきたと感じたら、早めに担当ケアマネジャーへ相談しておくと安心です。
一次情報・公的情報
本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-11.
- 訪問介護(生活援助中心型)を位置付けたケアプランの届出について(厚生労働省老健局振興課長通知 老振発0510第1号, curl verified 200)
- 厚生労働大臣が定める回数及び訪問介護(平成30年5月2日厚生労働省告示第218号)(厚生労働省, curl verified 200)
- 訪問介護(生活援助中心型)の回数が多いケアプランの届出について(堺市, curl verified 200)
- 訪問介護(生活援助中心型)の回数が基準回数以上となるケアプラン(居宅サービス計画)の届出(姫路市, curl verified 200)
- 訪問回数の多い生活援助中心型の訪問介護サービスの取扱いについて(東大阪市, curl verified 200)
- 生活援助の訪問回数が多いケアプランの検証(紀の川市, curl verified 200)
この記事について
この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。
