制度ガイド

訪問看護の制度|医療保険と介護保険の使い分け

要介護認定を受けた人の訪問看護は原則介護保険が優先されますが、末期がんなど厚生労働大臣が定める20疾病、特別訪問看護指示書(14日間)、精神科訪問看護に該当すると医療保険に切り替わります。費用と回数の枠組みの違いも整理しました。

公開日
2026-07-11
最終更新日
2026-07-11
情報確認日
2026-07-11
出典
5件の一次情報・公的情報

要介護認定を受けた人の訪問看護は原則介護保険が優先されますが、末期がんなど厚生労働大臣が定める20疾病、特別訪問看護指示書(14日間)、精神科訪問看護に該当すると医療保険に切り替わります。費用と回数の枠組みの違いも整理しました。

保険の振り分け

訪問看護と訪問介護の制度上の線引き

訪問看護は、看護師や保健師などの看護職が自宅を訪問し、体温・血圧などの状態観察、主治医の指示に基づく医療的な管理、服薬の確認、療養上の相談などを行うサービスです。名前がよく似た「訪問介護」は、介護職員(ホームヘルパー)が食事・入浴・排泄の介助や生活援助を行う別のサービスで、担う職種も根拠となる制度も異なります。訪問介護は常に介護保険のサービスですが、訪問看護は利用者の状態によって介護保険と医療保険のどちらか一方から給付されるという、二重構造を持っています。訪問介護の内容と料金の考え方は訪問介護の料金とサービス内容で詳しく扱っています。

海外在住の家族が親の請求書を見て混乱しやすいのは、この「同じ訪問系サービスでも財布が違う」構造が原因です。まずは、いま親に入っているのが看護職か介護職か、給付元が介護保険か医療保険かを切り分けることが出発点になります。

介護保険優先の原則と対象者の線引き

要介護・要支援認定を受けている人の訪問看護は、原則として介護保険からの給付が優先されます。介護保険と医療保険の両方で給付できるサービスについては、介護保険の給付が優先されるという調整ルールが介護保険法に基づいて設けられているためです。同じ期間に同じ訪問看護を両方の保険で受けることはできません。

一方、要介護認定を受けていない人が主治医の指示で訪問看護を利用する場合は、医療保険からの給付になります。たとえば認定申請前の高齢者や、要介護認定の対象にならない病気の療養中の人がこれにあたります。親がまだ認定を受けていない段階なら、まず介護保険の基本を確認し、認定申請とあわせて訪問看護の相談を進めると流れが整理しやすくなります。

医療保険に切り替わる3つの例外類型

要介護認定を受けていても、次の3つの類型に該当する場合は、訪問看護が医療保険からの給付に切り替わります。1つ目は「厚生労働大臣が定める疾病等」への該当です。診療報酬の告示(特掲診療料の施設基準等)の別表第七に列挙された疾病で、末期の悪性腫瘍やALSなど20の疾病・状態が定められています(詳細はPart 4で列挙します)。2つ目は、急性増悪などの際に主治医が交付する「特別訪問看護指示書」の期間中です。3つ目は、精神科訪問看護指示書に基づく精神科訪問看護です。ただし認知症を主傷病とする場合は原則として精神科訪問看護の対象とならず、通常の訪問看護として介護保険優先のルールに戻ります。

この3類型のどれにも該当しない限り、要介護認定者の訪問看護は介護保険のままです。「がんなら医療保険」と単純化されがちですが、正確には「末期の悪性腫瘍」が要件で、がんの治療中というだけでは切り替わりません。該当するかどうかの判断は主治医の診断と指示書の記載によるため、家族が自分で判定する必要はありませんが、仕組みを知っておくと請求書や説明の意味が読めるようになります。

利用開始の準備

主治医への相談とケアマネジャーとの調整

訪問看護は、どちらの保険を使う場合でも主治医の「訪問看護指示書」がなければ始められません。最初の一歩は、かかりつけ医や入院中の主治医に「自宅での療養に看護師の訪問を入れたい」と相談することです。介護保険で使う場合は、あわせてケアマネジャーに連絡し、ケアプランに訪問看護を位置づけてもらいます。ケアマネジャーの探し方や役割はケアマネジャーのガイドにまとめています。

海外在住の家族が動く場合は、一時帰国のタイミングで主治医の外来に同席するか、ケアマネジャー経由で主治医への依頼を進めてもらうのが現実的です。医師・薬剤師などが自宅を訪問して療養管理を行う居宅療養管理指導と組み合わせる場合も、窓口はケアマネジャーに一本化しておくと調整が進めやすくなります。

訪問看護ステーションとの契約と初回訪問

主治医が訪問看護指示書を交付すると、訪問看護ステーション(または医療機関の訪問看護部門)と利用契約を結び、サービスが始まります。ステーションは自宅の地域を担当エリアに含む事業所から選びます。契約時には、訪問の曜日と時間帯、緊急時の連絡体制(24時間対応体制の有無)、家族への報告方法を確認しておきましょう。

初回訪問では、看護師が本人の状態を評価し、指示書とケアプランに沿った訪問看護計画を立てます。この段階で「介護保険での利用か、医療保険での利用か」も事業所側が指示書と認定情報から判定するため、家族が保険の選択を迫られる場面は基本的にありません。ただし、どちらの扱いになっているかは契約書類や重要事項説明で必ず示されるので、遠方の家族も写しを共有してもらうと安心です。

利用開始前に確認したい費用の見取り図

契約前に確認しておきたいのは、月あたりの訪問回数と概算費用です。介護保険の場合は、訪問時間に応じた単位数の積み上げがケアプラン全体の枠に収まるかどうか、医療保険の場合は週あたりの訪問日数と自己負担割合が目安になります。夜間・早朝の対応や緊急時訪問の加算が付く場合もあるため、夜間・24時間の在宅介護の体制と重ねて、月合計でいくらになるかを事業所に試算してもらうと、後の請求書との突き合わせが楽になります。

費用と回数の違い

介護保険の訪問看護と区分支給限度基準額

介護保険で訪問看護を使う場合、料金はサービスの種類と訪問時間に応じた単位数で決まり、自己負担は所得に応じて費用の1割から3割です。重要なのは、訪問看護の単位数が要介護度ごとの月間上限である区分支給限度基準額の枠に含まれる点です。訪問介護やデイサービスなど他のサービスと同じ枠を分け合うため、訪問看護の回数を増やすと、その分だけ他のサービスに使える枠が減ります。枠を超えた分は全額自己負担です。

つまり介護保険の訪問看護には「週何回まで」という直接の回数制限はないものの、実際にはケアプラン全体の枠との兼ね合いで回数が決まります。看護師の訪問を増やしたいのに枠が足りない、という場面では、ケアマネジャーとプラン全体の組み替えを相談することになります。

医療保険の訪問看護と週3日の原則

医療保険で訪問看護を使う場合、自己負担は年齢と所得に応じた割合負担(現役世代は3割、70〜74歳は原則2割、75歳以上は原則1割で、所得により2〜3割)です。回数には原則として週3日までという制限があり、1日1回・1か所のステーションからの利用が基本形です。

ただし、この週3日の原則には例外があります。別表7の疾病等に該当する人、特別訪問看護指示書の期間中の人、「厚生労働大臣が定める状態等」(同告示の別表第八。気管カニューレを使用している状態など)に該当する人は、週4日以上の訪問や1日複数回の訪問、複数ステーションの利用が認められます。医療的な必要度が高い人ほど制限が外れる設計になっており、「医療保険だから回数が少ない」とは一概に言えません。

自己負担の上限制度の違いと家計への影響

どちらの保険になるかで、月々の自己負担が青天井にならないための上限制度も変わります。介護保険の訪問看護の自己負担は、他の介護サービスと合算して高額介護サービス費の対象になります。医療保険の訪問看護の自己負担は、医療費として高額療養費制度の対象です。それぞれ別の制度なので、訪問看護が医療保険に切り替わった月は、介護サービスの合算からは外れて医療費側の上限計算に移ります。

さらに、介護と医療の両方の負担が重なる世帯には、年単位で両者を合算して払い戻す高額医療・高額介護合算療養費制度もあります。末期がんなどで訪問看護が医療保険に切り替わると、区分支給限度基準額の枠から訪問看護分が外れるため、介護保険の枠を他のサービスに回せるようになる一方、医療費側の負担が増えます。切り替えは家計の枠組みの組み替えでもある、と捉えておくと請求書の変化に慌てずにすみます。

切り替えの実際

特別訪問看護指示書のしくみ

在宅療養中に肺炎を起こした、状態が急に悪化した、退院直後で集中的な看護が必要になった。こうした急性増悪などの局面では、主治医が「特別訪問看護指示書」を交付できます。交付されると、その期間中の訪問看護は医療保険からの給付に切り替わり、週3日の原則を超える頻回の訪問が可能になります。有効期間は指示の日から14日間が限度で、交付は原則として月1回です。気管カニューレを使用している場合や真皮を越える褥瘡がある場合には、月2回まで交付できるとされています。

期間が終われば、介護保険の訪問看護に戻ります。一時的に濃い看護を入れて在宅療養を立て直すための仕組みなので、家族としては「いまは特別指示書の期間かどうか」を事業所に確認しておくと、訪問回数や請求の変化を理解しやすくなります。

厚生労働大臣が定める疾病等(別表7)の20疾病

医療保険への切り替えが継続的に適用されるのが、告示の別表第七に定められた「厚生労働大臣が定める疾病等」です。具体的には、末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、重症筋無力症、スモン、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、進行性筋ジストロフィー症、パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、およびホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上かつ生活機能障害度がⅡ度またはⅢ度のパーキンソン病)、多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群)、プリオン病、亜急性硬化性全脳炎、ライソゾーム病、副腎白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、後天性免疫不全症候群、頸髄損傷、人工呼吸器を使用している状態です。

該当すると、要介護認定の有無にかかわらず訪問看護は医療保険からの給付になり、週4日以上・1日複数回・複数ステーションの利用も認められます。パーキンソン病のように重症度の条件が付くものもあるため、該当の判断は必ず主治医に確認してください。この記事は制度上の振り分けを整理するもので、個々の病状への医学的な助言はできません。

入院と退院をはさむ場合の給付の動き

入院すると、在宅サービスである訪問看護は原則として利用できなくなります。入院中の看護は入院医療の一部として提供されるためです。入院をはさんで介護保険サービス全体がどう止まり、どう再開するかは入院で介護保険サービスが止まる理由で扱っています。退院が決まったら、退院前カンファレンスの段階で訪問看護の再開(または新規導入)を病院の相談室とケアマネジャーに依頼しておくと、退院直後の空白期間を作らずにすみます。退院直後に集中的な看護が必要な場合は、前述の特別訪問看護指示書が使われることもあります。

海外からの見守り

看護職が定期的に入ることの遠隔見守りとしての価値

海外在住の家族にとって、訪問看護には医療的なケアそのものに加えて、もうひとつ大きな価値があります。医療職の目が毎週決まった頻度で親の生活に入る、という定点観測です。体重や血圧の推移、食事量、皮膚の状態、服薬の実際といった変化は、電話やビデオ通話ではまず把握できません。看護師は変化があれば主治医とケアマネジャーに報告する立場にあるため、訪問看護が入っているだけで「異変が誰にも気づかれないまま進む」リスクを大きく下げられます。

とくに独居の親の場合、訪問介護と訪問看護の両方が入っていれば、生活面と医療面の両方に定期的な観察の目があることになります。海外からサービス全体をどう手配し維持するかは海外から介護サービスを手配するで扱っています。

報告の受け方と家族側の準備

訪問看護の記録は、訪問のたびに作成され、主治医への報告書も定期的に交付されます。海外の家族が状況を把握するには、契約時に「家族への報告方法」を具体的に取り決めておくことが要になります。実務的には、①月1回の書面報告(訪問看護報告書の写しなど)をメールで受け取る、②連絡ノートやケア記録アプリを家族も閲覧できるようにする、③状態変化時の連絡先として海外の家族の連絡手段(メール・メッセージアプリ)を契約書類に明記する、の3点を初回契約時に依頼しておくと、時差があっても情報が途切れません。

報告を受けたときに見るポイントは、訪問回数の変化と保険区分の変化です。訪問が急に増えた、請求書の様式が介護保険から医療保険に変わった、という動きは、状態の変化(急性増悪や別表7該当)を意味していることが多いためです。数字の変化に気づいたら、ケアマネジャーか訪問看護ステーションに理由を確認する。この習慣が、遠距離からの早期対応につながります。

比較表

違いが出やすいところを、表の形でまとめます。

項目訪問看護(介護保険)訪問看護(医療保険)訪問介護
使われる保険介護保険医療保険常に介護保険
主な対象要介護・要支援認定者(原則)認定なしの人/別表7該当者/特別指示書期間中/精神科訪問看護要介護認定者
担う職種看護師・保健師等看護師・保健師等介護職員(ホームヘルパー)
必要な書類訪問看護指示書+ケアプラン訪問看護指示書(特別指示書・精神科指示書を含む)ケアプラン
回数の枠組み区分支給限度基準額の枠内原則週3日まで(別表7・別表8・特別指示書は例外)区分支給限度基準額の枠内
自己負担費用の1〜3割(所得による)年齢・所得に応じ1〜3割費用の1〜3割(所得による)
負担上限の制度高額介護サービス費高額療養費高額介護サービス費

よくある質問

要介護2の母が週1回訪問看護を使っています パーキンソン病が進んだ場合、医療保険への切り替えは自動的に行われるのですか?

自動ではなく、主治医の診断と指示書の記載に基づいて事業所が扱いを変えます。パーキンソン病は、ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上かつ生活機能障害度Ⅱ度またはⅢ度という条件を満たした場合に「厚生労働大臣が定める疾病等」に該当します。該当しそうな状態になったら、主治医に確認するのが確実です。

父が末期がんと診断されました 訪問看護が医療保険に切り替わると、介護保険の限度額の心配はなくなりますか?

訪問看護の分は区分支給限度基準額の枠から外れるため、介護保険の枠を訪問介護など他のサービスに回せるようになります。ただし医療保険側の自己負担は発生するので、負担が重い月は高額療養費制度の対象になるか確認してください。介護と医療の両方が重なる場合は、年単位で合算する高額医療・高額介護合算療養費制度もあります。

海外在住で母の訪問看護の様子が分かりません 看護師からの報告を私が直接受け取ることはできますか?

一般的に可能です。契約時に家族への報告方法を取り決め、月次の報告書の写しをメールで受け取る、記録アプリの閲覧権限をもらう、状態変化時の連絡先に自分のメールを登録する、といった形を初回契約の場で依頼しておくとスムーズです。事業所により対応方法は異なるため、契約前に確認してください。

退院直後の父に毎日看護師に来てほしいのですが、医療保険は週3日までと言われました 回数を増やす方法はありますか?

主治医が特別訪問看護指示書を交付すると、指示の日から14日間を限度に頻回の訪問が可能になります。また、別表7の疾病等や別表8の状態等に該当する場合は、継続的に週4日以上・1日複数回の訪問が認められます。まずは退院前に病院の主治医へ在宅での看護の必要性を相談してください。

認知症の母に精神科訪問看護を頼めば医療保険になると聞きましたが、本当ですか?

原則として違います。認知症を主傷病とする場合は精神科訪問看護指示書の対象外とされており、通常の訪問看護として要介護認定者は介護保険優先のルールが適用されます。精神科訪問看護が使えるかどうかは主治医(精神科医)の判断によるため、個別のケースは医師に確認してください。

母のもとに訪問看護と訪問介護の両方が入っていて、請求書が2種類届きます 別々の保険から出ているのですか?

訪問介護は常に介護保険のサービスです。訪問看護は状態によって介護保険か医療保険のどちらかになるため、訪問看護が医療保険扱いの期間は、給付元の異なる2種類の請求書が届くことになります。請求書の様式が変わったときは、状態変化のサインであることが多いので、ケアマネジャーに理由を確認してみてください。

一次情報・公的情報

本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-11.

この記事について

この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。

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