制度ガイド

生活福祉資金貸付制度|介護費用が払えないときの公的貸付

介護費用が一時的に払えない低所得世帯向けに、社会福祉協議会を窓口とする公的貸付「生活福祉資金貸付制度」があります。介護関連費用は目安170万〜230万円、保証人ありなら無利子。借りる前に検討すべき他制度の順序も整理しました。

公開日
2026-07-11
最終更新日
2026-07-11
情報確認日
2026-07-11
出典
7件の一次情報・公的情報

介護費用が一時的に払えない低所得世帯向けに、社会福祉協議会を窓口とする公的貸付「生活福祉資金貸付制度」があります。介護関連費用は目安170万〜230万円、保証人ありなら無利子。借りる前に検討すべき他制度の順序も整理しました。

費用が払えない現実

貯蓄と年金だけでは介護費用を賄いきれない世帯がある

親の介護が始まると、介護保険の自己負担分に加えて、施設の食費・居住費、保険外の生活援助サービス、一時的な入院費などが重なり、数か月単位でまとまった出費が発生します。年金収入が少なく貯蓄も乏しい世帯では、この一時的な出費をどう工面するかが切実な問題になります。銀行の消費者向けローンを検討する前に、公的な貸付制度が存在することを知らない家族は少なくありません。

日本には、低所得世帯・障害者世帯・高齢者世帯を対象に、生活を続けながら経済的に自立できるよう相談支援とセットで資金を貸し付ける「生活福祉資金貸付制度」があります。窓口は市区町村の社会福祉協議会(社協)で、民生委員が仲介する場合もあります。ここでいう低所得世帯とは、必要な資金を他から借り受けることが困難な世帯(おおむね市町村民税非課税程度)を指し、障害者世帯は身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた人がいる世帯、高齢者世帯は65歳以上の高齢者がいる世帯を指します。3つの区分のいずれかに当てはまれば申請の対象になり得るため、親自身が高齢者世帯に該当するかどうかをまず確認するのが出発点になります。

借りる前に「貸付であって給付でない」ことを踏まえる

この制度を検討するうえで最初に押さえておきたいのは、生活福祉資金貸付制度が返済義務のある「貸付」であり、返済不要の「給付」ではないという点です。低利子・無利子という条件は家計への負担を抑えてくれますが、借りた元金はいずれ返さなければなりません。したがって、介護費用が重いと感じたときに真っ先に検討すべきは、この貸付制度ではなく、返済不要の負担軽減策です。具体的には、施設の食費・居住費を下げる負担限度額認定、それでも重い世帯向けの社会福祉法人等利用者負担軽減制度、生活保護に至る手前で負担を下げる境界層該当、そして生活保護そのものを受けている場合の介護扶助という順序です。これらを確認し、それでも一時的な資金不足が残る場合に、生活福祉資金貸付制度が選択肢に入ってきます。

制度の中身

資金は4種類、介護関連は福祉費に含まれる

生活福祉資金貸付制度には、総合支援資金・福祉費(福祉資金)・教育支援資金・不動産担保型生活資金の4種類があります。総合支援資金は失業等で生活に困窮した世帯向けの生活支援費・住宅入居費・一時生活再建費で構成され、介護費用そのものを直接の対象とはしていません。介護サービスを受けるための費用は、福祉費の対象経費「介護サービス、障害者サービス等を受けるのに必要な経費及びその期間中の生計を維持するために必要な経費」に該当します。福祉費は生業を営むための経費、住宅の増改築費用、福祉用具等の購入費用など幅広い用途をカバーする資金の総称で、貸付上限額は用途を問わず580万円以内という枠が設けられています。

介護関連の貸付上限は170万円〜230万円が目安

福祉費全体の上限は580万円ですが、実際の貸付額は用途ごとに定められた目安上限の範囲内で決まります。介護サービスを受けるのに必要な経費については、サービスを受ける期間が1年を超えないときは170万円、1年を超え1年6月以内で世帯の自立に必要なときは230万円が目安額です。参考までに、同じ福祉費のなかでも住宅の増改築等は250万円、福祉用具等の購入は170万円が目安額として設定されており、いずれも実際の必要額と世帯の状況を踏まえて社協が個別に審査します。

据置期間6月・償還期間5年で返済の負担を抑える

返済のしくみは、据置期間と償還期間の2段階に分かれており、借りてすぐに元金の返済が始まるわけではありません。据置期間は貸付けを受けてから元金の返済が始まるまでの猶予期間で、介護関連の福祉費では据置期間が6月以内です。この間は元金の返済が不要ですが、連帯保証人を立てていない場合は利子のみの支払いが発生します。据置期間が終わると償還期間に入り、介護サービスを受けるための経費については償還期間が5年以内と定められています。これは同じ福祉費のなかでも比較的短い部類で、生業を営むための経費(償還20年以内)や技能習得のための経費(償還8年以内)とは異なる点に注意が必要です。

利子は連帯保証人の有無で無利子か年1 5%かに分かれる

利子は、連帯保証人を立てる場合は無利子、立てない場合は年1.5%です。連帯保証人は原則必要とされていますが、連帯保証人を立てなくても貸付を受けられる仕組みになっており、その代わりに利子が発生する設計です。連帯保証人を頼める家族・親族がいない世帯や、海外在住の家族に保証人を頼みにくい世帯では、年1.5%の利子を受け入れて借りる選択も現実的です。実際にどちらを選ぶかは、返済総額の見込みと、保証人を頼むことによる家族関係への影響を天秤にかけて判断することになります。

持ち家がある高齢者世帯は不動産担保型生活資金も選択肢になる

貯蓄は少ないものの持ち家がある高齢者世帯には、不動産担保型生活資金という別の枠組みもあります。これは、居住用の不動産を担保に、生活費や介護費用を月ごとに借り入れる仕組みで、貸付限度額は土地の評価額の70%程度、月あたりの貸付額は30万円以内が目安です。据置期間は契約終了後3月以内、償還期限は据置期間終了時で、利子は年3%または長期プライムレートのいずれか低い利率が適用されます。保証人は必要で、推定相続人のなかから選任することが求められます。持ち家を将来手放す前提になるため、相続予定の家族の理解を得ておくことが実務上の前提になります。

数日単位で急を要するときは緊急小口資金という別枠もある

福祉費の審査には一定の日数がかかるため、「来月の施設費の支払いに数万円だけ足りない」といった数日単位の急場には向きません。このような場合、同じ生活福祉資金貸付制度のなかに「緊急小口資金」という別枠があります。貸付限度額は10万円以内、無利子・保証人不要という条件で、据置期間は貸付けの日から2月以内、償還期間は据置期間経過後12月以内です。ただし対象はあくまで緊急かつ一時的に生計の維持が困難になった場合に限られ、継続的に不足する介護費用そのものをまかなう制度ではありません。数万円規模の一時的な不足なのか、数か月にわたって継続する不足なのかを見極めたうえで、緊急小口資金と福祉費のどちらを申し込むかを社協の窓口で相談すると整理しやすくなります。

相談と申請の実務

市区町村社会福祉協議会に相談する

申請窓口は、住んでいる市区町村の社会福祉協議会です。どこに相談すればよいか分からない場合は、都道府県社会福祉協議会に問い合わせれば案内してもらえます。地域によっては民生委員が最初の相談相手になり、申請書類の準備を手伝ってくれる場合もあります。相談の段階で、介護費用のどの部分にいくら不足しているのか、いつまでにいくら必要かを整理して伝えると、担当者が該当する資金の種類や目安額を照らし合わせやすくなります。

相談時に準備しておきたい書類

初回相談をスムーズに進めるために、事前に準備しておくとよい資料があります。世帯の収入がわかるもの(年金の振込通知書や源泉徴収票など)、介護サービスの利用状況がわかるもの(ケアプランや利用明細)、そして何にいくら必要かを説明できる見積書や請求書です。すでに負担限度額認定や介護保険の負担割合証を持っている場合は、それらも合わせて提示すると、担当者が世帯の状況を早く把握できます。地域によって求められる書類の細部は異なるため、最終的には相談時に社協の案内に従うのが確実です。

審査では償還可能性が重視される

貸付の決定にあたっては、貸付条件を満たしているかに加えて、返済していける見込みがあるか(償還可能性)が考慮されます。年金収入や家族の収入、他の借入状況などから、5年以内という償還期間で無理なく返せるかどうかが確認される点は、消費者金融の審査とは異なる公的貸付ならではの特徴です。返済の見通しが立たない場合は、貸付ではなく生活保護など別の支援制度に案内されることもあります。

返済中に困ったときは償還猶予の相談ができる

借りたあとに親の症状悪化で追加の介護費用がかさむ、あるいは家族の収入が減るなど、当初の見込みどおりに返済できなくなる場合もあります。生活福祉資金貸付制度には、償還開始時期を遅らせる「償還猶予」の仕組みがあり、猶予された期間について延滞利子が加算されない扱いになります。返済が苦しくなったときは、滞納したまま連絡を絶ってしまわず、早めに借入先の社協へ事情を伝えることが、後々の負担を大きくしないための実務上のポイントです。具体的な猶予の条件や手続きは、借入時の社協ごとに確認しておく必要があります。

海外に住む家族が立て替えるか親名義で借りるか判断する

海外在住の子が親の介護費用を心配する場面では、自分の口座から立て替え送金するか、親名義でこの貸付制度を利用してもらうかという選択に直面することがあります。立て替えは手続きが簡単な一方、送金のたびに為替や手数料の負担が生じ、金額が大きくなるほど継続が難しくなります。親名義での貸付は、日本国内での対面相談や書類のやり取りが必要になるため、国内に立ち会える親族がいない場合は手続きが進みにくいという制約があります。どちらを選ぶ場合も、親の介護は何から始める?進め方の全体像で扱っている費用と役割分担の整理を先に済ませておくと、貸付を申し込む段階での判断がしやすくなります。

申請前に他制度との使う順序を確認する

最後にもう一度、使う順序を確認しておきます。まず施設費用が重い場合は返済不要の負担限度額認定、それでも重い場合は社会福祉法人等利用者負担軽減制度を確認します。生活保護に至りそうであれば、その一歩手前で使える境界層該当という措置があり、すでに生活保護を受けている場合は介護扶助の仕組みで自己負担分がまかなわれます。これらの返済不要の制度を確認したうえで、それでも一時的な資金不足が残るときに、返済義務のある生活福祉資金貸付制度を検討するという順序が、家計への負担を最小限に抑える現実的な進め方です。

この順序を踏まずにいきなり貸付を申し込むと、後から「実は負担限度額認定を申請していれば借りる必要がなかった」という事態にもなりかねません。相談の際に社協の担当者へ、すでに確認済みの制度と未確認の制度を伝えておくと、重複や見落としを防ぎやすくなります。

比較表

項目ごとの違いを、次の表で押さえてください。

項目福祉費(介護サービス等の経費)不動産担保型生活資金
対象世帯低所得世帯・障害者世帯・高齢者世帯低所得の高齢者世帯(持ち家あり)
貸付上限の目安1年以内170万円/1年超1年6月以内230万円(福祉費全体の枠は580万円以内)土地評価額の70%程度、月30万円以内
据置期間6月以内契約終了後3月以内
償還期間5年以内据置期間終了時に一括
利子連帯保証人あり:無利子/なし:年1.5%年3%または長期プライムレートの低い方
保証人原則必要(立てなくても貸付可)必要(推定相続人から選任)
申請窓口市区町村社会福祉協議会市区町村社会福祉協議会

よくある質問

生活福祉資金貸付制度は返済しなくてよいお金ですか?

いいえ、返済義務のある「貸付」であり、返済不要の「給付」ではありません。連帯保証人がいれば無利子、いなければ年1.5%の利子が付き、据置期間6月を経て償還期間5年で返していく必要があります。負担限度額認定など返済不要の制度を先に確認したうえで検討するのが現実的な順序です。

介護費用のためにいくらまで借りられますか?

福祉費の枠は用途を問わず上限580万円以内ですが、介護サービスを受けるための経費については、サービスを受ける期間が1年以内なら170万円、1年を超え1年6月以内なら230万円が目安額です。実際の金額は世帯の状況をもとに社協が個別に審査します。

連帯保証人がいなくても借りられますか?

はい、連帯保証人を立てなくても貸付を受けることは可能です。ただしその場合は年1.5%の利子が発生します。連帯保証人を立てれば無利子になりますが、原則として保証人は必要とされているため、頼めるかどうかを事前に検討しておく必要があります。

持ち家があると生活福祉資金貸付制度は使えませんか?

持ち家があっても福祉費は利用できますが、持ち家があり貯蓄が少ない高齢者世帯には、不動産を担保にする不動産担保型生活資金という別の枠組みもあります。こちらは推定相続人からの保証人選任が必要で、将来的に不動産を手放す前提になるため、相続予定の家族との事前の話し合いが欠かせません。

どこに相談すれば申請できますか?

住んでいる市区町村の社会福祉協議会が窓口です。どこに相談すればよいか分からない場合は都道府県社会福祉協議会に問い合わせると案内してもらえます。地域によっては民生委員が最初の相談相手になることもあります。

審査ではどのような点が見られますか?

貸付条件に該当しているかに加えて、5年以内という償還期間で無理なく返済できる見込みがあるか(償還可能性)が考慮されます。年金収入や他の借入状況などが確認され、返済の見通しが立たない場合は貸付ではなく別の支援制度が案内されることもあります。

海外に住む家族が親の代わりに申請できますか?

申請そのものは本人または親族が国内で社協と対面や書類でやり取りする必要があり、海外在住の家族が単独で手続きを完結させるのは難しい場合があります。国内に立ち会える親族がいない場合は、まず立て替え送金など別の方法と比較したうえで、地域包括支援センターや社協に個別の対応可否を確認してください。

一次情報・公的情報

本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-07-11.

この記事について

この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。

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