介護保険は3年ごとに見直され、2027年4月から第10期介護保険事業計画の期間に入ります。この改正について、事業者向けの記事では具体的な負担額の案が紹介されることがありますが、その多くは審議の途中で出た案であり、確定した内容ではありません。この記事は、厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会が2025年12月25日付でとりまとめた意見の原文をもとに、すでに方向が決まったこと、期限つきで結論を出すとされたこと、検討が続いていることの3つに分けて整理したものです。海外から親を支えている方が、いま何を確認しておけばよいかまで示します。
この記事が根拠にしているもの
2025年12月25日にまとまった審議会の意見
この記事は、社会保障審議会介護保険部会が2025年12月25日付でとりまとめた「介護保険制度の見直しに関する意見」を根拠にしています。介護保険は3年ごとに見直され、2027年4月から第10期介護保険事業計画の期間に入ります。この意見は、その第10期に向けて国が何を変えるかを議論した結果をまとめたものです。
注意していただきたいのは、意見そのものは法律ではないという点です。ここでまとまった内容をもとに法改正案がつくられ、国会での審議を経て決まります。したがって「意見に書かれている」ことと「決まった」ことは同じではありません。
報道や事業者向けの記事では、審議の途中で出た案が確定事項のように紹介されることがあります。この記事では、意見の原文でどう書かれているかを基準に、確定度を3つに分けて示します。
| 区分 | 意見での書かれ方 | この記事での扱い |
|---|---|---|
| 方向が決まった | 「〜する」と言い切っている | 実施される前提で準備してよい |
| 期限つきで検討中 | 「結論を得る」と期限が示されている | 決まっていない。ただし必ず結論が出る |
| 検討が続く | 「引き続き検討を行う」 | 今回は決まらなかった |
3年ごとの見直しという仕組み
介護保険には介護保険事業計画という3年単位の計画期間があり、市町村がその期間ごとに、必要なサービス量の見込みと第1号保険料の基準額を定めます。第9期が2024年度から2026年度まで、第10期が2027年度から2029年度までです。
この仕組みがあるため、2027年4月には制度改正の有無にかかわらず、全国のすべての保険者で第1号保険料の基準額が改定されます。保険料は市町村ごとに違い、所得に応じた段階も市町村ごとに設定されています。
親の保険料が2027年度にいくらになるかは、住んでいる市町村が第10期の計画を決めるまで分かりません。計画は2026年度中に各市町村で策定されます。
なお、負担能力に応じた保険料設定のあり方そのものについては、今回の意見では「引き続き検討を行う」とされ、結論は出ていません。
意見のなかの★印が意味すること
意見の資料には★印が付いた項目があります。これは「今後、詳細の要件や報酬設定等について介護給付費分科会等で議論することとされている項目」を指します。★が付いている項目は方向が決まっていても、金額や要件はこれから決まるということです。
家族の立場で読むときは、★の有無が「いつから具体的な金額が分かるか」の目安になります。方向が決まっただけの段階では、負担額の見積もりはできません。
すでに方向が決まったこと
施設の食費・部屋代の負担限度額の見直し
施設に入っている低所得の方の食費と部屋代を軽くする補足給付について、負担限度額を引き上げる方向が決まっています。段階によって開始時期が違います。
第3段階②はすでに2026年度から始まっています。2027年度からは段階の区分自体が細かくなり、同じ第3段階でも「ア」と「イ」で負担額が変わります。
対象になるかどうかは、負担限度額認定の申請をして市区町村が判定します。仕組みは負担限度額認定のガイドで説明しています。施設に入っている親が認定を受けているかどうかは、施設の請求書か市区町村の窓口で確認できます。
| 対象 | 内容 | 開始 |
|---|---|---|
| 第3段階② | 負担限度額の上乗せを行う | 令和8年度(2026年度) |
| 第3段階①イ・②イ | 第3段階①と②をそれぞれア・イに区分したうえで、イの負担限度額の上乗せを行う | 令和9年度(2027年度) |
介護保険証の交付タイミングと電子化
介護保険の被保険者証について、65歳になったときに全員へ交付する現在のやり方を改め、要介護認定の申請時などに交付する方式へ変更する方向が決まりました。あわせて電子資格確認の導入と、資格を失ったときの返還義務の一部免除も示されています。
65歳になっても介護が必要でない方には保険証が届かなくなるため、親の手元に保険証が見当たらないことが直ちに問題とは限らなくなります。逆に、認定を申請する段階で受け取ることになります。
電子化の全体像と、いま家族が確認しておくことは介護保険証とマイナンバーカードの一体化で扱っています。
要介護認定の申請を代行できる人の拡大
要介護認定について、申請代行が可能な者を拡大する方向が決まりました。あわせて、主治医意見書を事前に入手できることを明確化するとも書かれています。
海外にいる家族にとっては影響の大きい項目です。現在も地域包括支援センターや居宅介護支援事業所が申請を代行できますが、代行できる範囲が広がれば、日本に頼れる親族が少ない場合の選択肢が増えます。
誰が代行できるかの現行ルールは要介護認定の代理申請にまとめています。拡大後の具体的な範囲は、今後の制度設計で決まります。
主治医意見書を事前に入手できることの明確化は、認定にかかる期間の短縮につながる可能性があります。現在の認定の流れは要介護認定の進み方で説明しています。
期限つきで結論を出すことになったもの
2割負担の対象範囲は2027年度の前までに結論
利用者負担が2割になる「一定以上所得」の判断基準について、意見は見直しを検討する必要があるとしたうえで、本部会で継続検討し、第10期介護保険事業計画期間の開始(令和9年度〜)の前までに結論を得る、と書いています。
つまり2027年度が始まる前に結論は出ますが、2025年12月の時点では基準は決まっていません。検討にあたっては、介護サービスが長期間利用されることを踏まえつつ、高齢者の生活実態や生活への影響に加えて、令和8年度に見込まれる医療保険制度における給付と負担の見直しなども踏まえるとされています。
事業者向けの記事などで具体的な年収額の案が紹介されることがありますが、この意見の本文に金額基準は書かれていません。現時点で自分の負担割合がいくらになるかを見積もることはできません。
現行の判定方法は介護の自己負担割合はどう決まるかで解説しています。まず現在の割合を確認しておくことが、変更後の影響を測る出発点になります。
なお、3割負担の対象となる「現役並み所得」の判断基準については、医療保険制度との整合性や利用者への影響を踏まえつつ引き続き検討する、とされており、期限は示されていません。
今回は決まらなかったこと
検討が続く5つの項目
次の項目は「引き続き検討を行う」とされ、今回は結論に至りませんでした。近い将来に変わる可能性は残りますが、2027年4月の時点で変わるとは限りません。
軽度者のサービスについては、要支援と総合事業で現在の仕組みを説明しています。高額介護サービス費の現行の上限額は高額介護サービス費の申請方法にあります。
金融資産の反映については、預貯金等へのマイナンバーの付番を政府として推進し、その状況を踏まえてマイナンバーの活用を検討する、という段階です。すぐに親の預貯金が負担額の判定に使われるわけではありません。
| 項目 | 意見での書かれ方 |
|---|---|
| 要介護1・2の生活援助などを総合事業へ移すか | データを収集・分析しつつ、引き続き包括的に検討 |
| 高額介護サービス費のあり方 | 制度の運用状況を踏まえ、引き続き検討 |
| 第1号保険料の負担能力に応じた設定 | 引き続き検討 |
| 金融所得・金融資産を負担に反映するか | 将来的な導入について引き続き検討 |
| 現役並み所得(3割負担)の判断基準 | 医療保険制度との整合性を踏まえつつ引き続き検討 |
ケアプランの有料化として報じられているもの
ケアマネジメントへの利用者負担については、対象を限った記述にとどまっています。意見は、登録制といった事前規制の対象となる有料老人ホームの入居者に係る新たな相談支援の類型に対して利用者負担を求めることが考えられるとしたうえで、丁寧に検討を行う、と書いています。
居宅介護支援全体を有料にするという記述ではありません。対象は有料老人ホームの入居者に関する新しい類型で、しかも結論は出ていません。在宅でケアマネジャーに計画を立ててもらう場合の自己負担が2027年度から発生すると読むのは、現時点では誤りです。
背景には、ケアプラン作成を含めて利用者負担の対象としている特定施設入居者生活介護等との均衡という考え方があります。ケアマネジャーの役割は現在も利用者負担なしで受けられます。
海外の家族が今できること
改正を待たずに確認しておく3つ
結論が出ていない項目が多いため、いま制度改正に備えて特別な手続きをする必要はありません。ただし、変更の影響を測るための現在地は確認しておけます。
いずれも市区町村と地域包括支援センターで無料で確認できます。制度が変わったときに何がどれだけ変わるかは、変更前の状態を記録しているかどうかで分かりやすさが大きく変わります。
負担割合証は毎年7月に交付され、8月から翌年7月までの割合が書かれています。手元にない場合は市区町村の介護保険担当課で再交付を受けられます。
- 親の現在の負担割合(1割・2割・3割)を負担割合証で確認する
- 施設に入っている場合、負担限度額認定を受けているかを市区町村に確認する
- 要介護認定の更新時期を把握し、次回の申請を誰が行うか決めておく
これからのスケジュール
審議会の意見がまとまった後は、法改正案の国会提出、成立、政令や省令による具体的な基準の公表という順で進みます。家族が具体的な金額を知ることができるのは、最後の段階です。
この記事で扱っているのは最初の段階です。負担額の見積もりができるのは3段階目より後になります。
| 段階 | 何が分かるか |
|---|---|
| 審議会の意見(2025年12月25日) | 変える方向と、結論を出す期限 |
| 法改正案の国会提出・成立 | 制度として何を変えるか |
| 政令・省令・告示 | 対象となる所得や金額の具体的な基準 |
| 市町村の第10期計画 | 住んでいる市町村の保険料の基準額 |
この記事の更新方針
確定度が変わった時点で更新
この記事は審議の途中段階を扱っています。法改正案の国会提出、成立、政令や告示による具体的な基準の公表という段階を経て、確定度が変わります。
更新するのは、一次情報である厚生労働省の資料で確定度が変わったことを確認できた時点です。報道が先行して具体的な数字を伝えることがありますが、この記事では一次情報を確認できるまで数字を載せません。
更新した場合は、ページ上の更新日を実際の更新日で書き換えます。日付だけを新しくして内容を変えないという運用はしません。
よくある質問
2027年4月から介護保険の自己負担は必ず2割になりますか?
いいえ。2割負担の対象になる「一定以上所得」の判断基準は、2025年12月の審議会意見の時点では決まっていません。意見は第10期介護保険事業計画期間の開始(令和9年度〜)の前までに結論を得るとしており、結論は2027年度が始まる前に出ます。現時点で自分が対象になるかどうかは分かりません。
ケアプランの作成が有料になると聞きましたが本当ですか?
居宅介護支援全体を有料にすると決まった事実はありません。審議会意見に書かれているのは、登録制といった事前規制の対象となる有料老人ホームの入居者に係る新たな相談支援の類型について利用者負担を求めることが考えられる、という内容で、結論は「丁寧に検討を行う」とされています。在宅でケアマネジャーに計画を立ててもらう場合の負担が2027年度から発生すると決まったわけではありません。
2027年度から確実に変わることはありますか?
補足給付の負担限度額の見直しが令和9年度から予定されています。第3段階①と②をそれぞれア・イに区分したうえで、イの負担限度額を上乗せする内容です。第3段階②の上乗せは令和8年度からすでに始まっています。また、制度改正とは別に、2027年4月には第10期計画の開始にともなって全国のすべての保険者で第1号保険料の基準額が改定されます。
要介護1・2の訪問介護は総合事業に移りますか?
今回の意見では移行は決まりませんでした。データを多角的に収集・分析しつつ、市町村の意向や利用者への影響も踏まえながら引き続き包括的に検討する、とされています。2027年4月の時点で移行するとは限りません。
海外に住んでいます。改正で親の手続きに影響はありますか?
要介護認定の申請代行が可能な者を拡大する方向が決まっているため、日本に頼れる親族が少ない場合の選択肢が増える可能性があります。また介護保険証は65歳到達時の一律交付から要介護認定の申請時などの交付へ変わるため、親の手元に保険証がないことが直ちに問題とは限らなくなります。
親の保険料は2027年度にいくらになりますか?
住んでいる市町村が第10期介護保険事業計画を決めるまで分かりません。保険料の基準額は市町村ごとに違い、3年ごとの計画期間に合わせて改定されます。第10期の計画は2026年度中に各市町村で策定されるため、金額が分かるのはそれ以降です。
この情報はいつの時点のものですか?
2025年12月25日付の社会保障審議会介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」に基づいています。この後、法改正案の国会提出と成立、具体的な基準の公表という段階があり、その都度内容が具体化します。確定度が変わった時点でこの記事を更新します。
一次情報・公的情報
本文は一次情報・公的情報を優先して確認しています。制度、費用、窓口の扱いは自治体や時期で変わるため、最終判断の前にリンク先の公式情報も確認してください。 最終確認日: 2026-08-28.
この記事について
この記事は一般的な情報の整理であり、医療・法律・介護の個別アドバイスではありません。制度の運用、費用、サービスの有無は自治体や状況によって異なるため、具体的な判断は関係機関や資格を持つ専門職にご確認ください。記事の作成・出典・修正の方針は編集方針をご覧ください。
